「R・A」Jan南北アメリカ

種類 ショート
担当 有天
芸能 1Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/15〜01/19

●本文

「スキーに行きたい。だけど、こういう時に限ってケガぁー!!」
 インターネットコンテンツサービス会社の在宅職員ロック・ライフ(23)は珍しくスポーツに燃えたいらしい。動機は簡単、最近気になるファーストフードのカウンター嬢がスキーをすると聞き付けたのだった。
 板をどこかに仕舞っているはず。と物置きの棚を漁っていた所、踏み台から落ちて骨折したのである。
 カウンター嬢は明日からカナダへスキーである。
「いいんだい! 僕にはロックがあるから」ヤケである。

 ロックは、新人とインディーズの発掘する「ROCK・AWARS」の「お勧めの曲」とコーナーを担当していた。上司も「聴くのは、一般視聴者。プロじゃない。お前の好きに選べ」といった態度ゆえ、はっきりいってロックの主観(好き嫌い)で、通常、毎月「お勧めの曲」が選ばれる。なのでメジャーなアーティストが選ばれる時もあれば、全く無名のアーティストが選ばれる場合がある。

「『1月のお勧め曲』の募集をかけるぞー!! イケてる曲をガンガン聞いて、早く傷を治すぞー!」

「ROCK・AWARS」の片隅に小さく募集記事が掲載された。


●「『ROCK・AWARS』お勧め曲」への投稿者 募集!

 参加資格 プロ・アマ、ソロ・グループ問わず! オリジナルPVも受け付けます。

 テーマ   なし
 ジャンル  ロック
       歌詞&曲は、オリジナルのみ♪
       歌のみ(歌手ソロ)曲のみ(バンドマンソロ)の参加も可能♪
       オリジナルPVを作成しての投稿も可能♪

 ※1人(1グループ)1曲迄、曲を受け付けます。
 自分で曲を考え、衣装、PV演出、自主撮影した物も投稿可能です。
 逆に曲(歌)のみの一本勝負も受け付けます。
 撮影を当社に全てを頼む事も出来ますが、裏方さんと打ち合わせ・協力した方がより良い作品ができます。
 ミュージシャン以外の職業の方(アマ)も曲を投稿できます。

●プロモーションビデオ撮影スタッフの斡旋も致します

 ※低予算の為、人目が多い現場です。
 裏方さんはミュージシャンの個人指定もできます。
 ない場合は全部の仕事に関わります。

●今回の参加者

 fa2266 カリン・マーブル(20歳・♀・牛)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3867 アリエラ(22歳・♀・犬)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4852 堕姫 ルキ(16歳・♀・鴉)
 fa5035 ラファエロ・フラナガン(12歳・♂・狼)
 fa5181 雪架(18歳・♂・小鳥)

●リプレイ本文

●裏方三昧
「誕生日おめでとう〜! クッキー作ってみたの♪ 失敗してないと良いんだけど‥‥」とアリエラ(fa3867)、可愛い桃色リボンがついた包みを雪架(fa5181)に手渡す。
「ありがとう、誰もお祝してくれないかと思っていたよ」と苦笑いをするセッカ。
 1月17日は、セッカの誕生日である。
 ロックの家に資料を届けに来たカリン・マーブル(fa2266)からそう聞かされたロックは「戻る序でにセッカに渡して」とカリンにお使いを頼む。
「ロックさんが食べ物をあげるのって『物凄く』珍しいですよね」頭も打ったんですか? とカリン。
「本当はパーティしてあげたいけどこの足だし、今、医者から飲酒禁止を言われているんだ‥‥」とヴァジュルヌーヴォーをカリンに手渡す。
「判りました。ちゃんとセッカさんにお渡ししますね。でも赤い雪が降らないといいですね☆」
 カリンに言われっぱなしだが、本当の事なので怒れないロック。

 ロックは今回は大人しく撮影現場にも出かけず、PVや音源の到着を待っている。でも禁酒の他に地道にダイエットも継続中なので、ちょっとストレスが溜り気味である。手渡された資料(投稿者のプロファイル)を見乍ら「PV、早く届かないかな〜?」と呟いた。

 * * *

「は〜い、お待たせしました。頼まれ下着ですよ〜☆」段ボール箱を抱えてスタジオに入って来るカリン。何時の間にかメイド姿である。
「改めて着てみると動きやすいんですよね〜」との返事である。カリンのメイド姿もROCK・AWARSではトレードマークとなりつつある。(この姿で休憩の際、「SnowDrop」のPVで使用した消え物のデコレーションケーキ(カリン作)と紅茶やコーヒーを出演者やスタッフに配っていた)
 カリンはTyrantess(fa3596)と堕姫 ルキ(fa4852)のPVで使用する下着類を近くのランジェリーショップから借りて来たのである。
「あー、来た、来た♪」とルキに「待ってたぜ」とタイ。
「私達も見ていいですか?」アリエラ(fa3867)と「きゃ〜♪ 見せてぇな」雅楽川 陽向(fa4371)も段ボールを覗き込む。
 箱に入ったアリーと陽向には、余り縁のなさそうな超セクシーな下着の数々に興味津々である。
「きゃ〜♪ 全部ヒモやないの、どうやって隠すん?」
「レースが可愛い‥‥って、ここまでレースです」
 スタジオの端に設けられた更衣室は、女子校かランジェリーショップと化す。
「凄いセクシーだな、カリンのチョイス?」
「え〜? 使用目的とお店の人にサイズを言って適当に選んでもらいましたから‥‥でも凄いですねぇ」
 メタルがついたラバー素材のブラジャーを手にする。
「でもコレ、カリンさんに似合いそう」
「これ欲しいなぁ、買い取りOKなのかな?」
「何処に着ていくんですか?」
 薄い壁を隔てて、キャーキャーと騒ぐ声が筒抜けである。
 たまったもんではないのは、スタジオにいる男性陣。
「子供にはまだ早いです」とセッカがラファエロ・フラナガン(fa5035)の耳を必死に塞いでいた。
「おーい、お楽しみの所悪いが早く決めてくれないかな? 時間が押しているんだけど?」とスモーキー巻(fa3211)は中に声をかける。
「「「「「は〜い♪」」」」」
 あまり時間を気にした風もない軽い返事に溜息を吐いた。

 音楽プロデューサの肩書きを持つスモーキーは、撮影場所の許可手続きやスタジオなどのレンタルを含めた全て手配していた。低予算で作るPVである今回も纏めてスタジオやカメラ等を借り、複数のアーティストで共有して使う事になっている。特に今回のPVは演奏シーンとイメージ(演技)シーンから構成されるPVが多いのである。凝った分予算と日程がキツキツなのである。
 ──そして全ての撮影が終わってからが、スモーキーの本当の仕事である。
 編集と画像のCG処理を行うスモーキーは部外者を閉め出し、部屋に籠る。完獣化し「さて、これからが大変だな」と呟いた。
 タイとルキのPVで使用する洋館のエントランスと豪華な寝室はCGである。
 歴史的建造物やアンティークの用度品は手に入れるのが難しいのと同時に保険料がとても高いのである。ある程度の物に後から「らしく」CGで描き込みをしてしまった方が予算的にも日数的にも早く納まるのである。
 ラフィーからの指定された「夜のスキー場」というロケは、凍結し難い夜間撮影用高性能カメラのレンタル代は高く、撮影には高い技術を持つ専門家が必要という理由でCG合成で行う事になった。
 ロケがあったのは、セッカ&アリーの「SnowDrop」と陽向、陽向の草原はロケハンがSnowDrop用に建物をピックしている間に見つけた空き地を無断で撮り逃げをし、不足分は他の者と同様にブルーシートの前で歌い、草原が合成されたのである。
「綺麗な緑の草原は今の時期難しいけど、でも自然光が欲しかったから」スモーキー自ら仕事を増やして首を締めているとしか思えないが、引き受けたからにはその辺はこだわりだろう。

 * * *

 斯くしてスモーキーこだわりの完成PVと一緒にカリンが届けてくれた請求書を見乍ら「今迄は曲と映像の使用権を兼ねて全員にお金を出していたけど、次回から裏方と『お勧めの曲』だけ賞金を出す事にしようかな?」とロック溜息を吐いた。


●完成PV
【Anothercide】Vo:堕姫 ルキ、G:Tyrantess
♪♪♪
 気怠く揺れるVelvetの波
 絡みついたLunaの影
 夢幻の闇を迷う瞳に
 囁いた‥‥「really fill you?」

 (間奏)

 蒼褪めた夜を 燃え上げるのは誰?
 瞬いた紅蓮の万華鏡‥‥

 回り(くるり)‥‥回り‥‥ 月鏡に移ろう
 来る裏(くるり)‥‥来る裏‥‥ アナタだけのアタシ
 狂る理(くるり)‥‥狂る理‥‥ 熱く紅く咲き濡れ
 くるり‥‥クルリ‥‥ 揺れ溶けて逝く‥‥
♪♪♪

 豪奢な内装の寝室の中、ベットの上でセクシーな下着姿で寝転ぶタイとルキ。ベットの上で四つばいになり獣のように上目遣いで見つめるルキの怪しい視線。絡み付くような無気味さを感じさせる曲である。カットが変わり薄暗い洋館のエントランスに立ちドレスを着て歌うルキとタイ。台詞の部分で一瞬曲が止まり、問い詰めるような鋭い視線を投げかけるルキ。間奏の合間、画面上に現れる大きな月。蒼い月が紅く怪しく変色していく。ベットの上で背中合わせに座るタイとルキ。ベットの上でじゃれあう二人。カットが変わりエントランスのシーン、熱に浮かされたようなけだるげで切ない怪し気な表情で、自分の体を両手で抱くルキ。タイのコーラスが重なり、余韻を残し乍ら曲は終了した。


【thought】SnowDrop Vo:雪架、G:アリエラ ●ユニゾン、*ハモリ
♪♪♪
 アスファルト 染める雨が
 凍てつく空を舞う 雪に変わり 手のひらに落ちる
 携帯の履歴 一文字のイニシャルを
 指先辿らせて 胸に抱いた

*触れたい 言えなくて
 言葉詰まらせた 夜明け前の電話
*聞きたい 聞きえない
 僕がここにいるその理由(わけ)を
 君が知っているのなら

●夜が明ける
●二人の時間を止めたまま
 僕が息を止めても 色褪せず在るこの世界を
*白がただ染めていく
♪♪♪

 疾走感がある爽やかなポップロックのメロディが流れ、狭い路地、薄汚れたむき出しのコンクリートのびた建物を取り巻く錆びた鉄の階段。そこに座るセッカ、側に立つアリー。白い衣装にモノトーンの世界、画面上に雪が舞う。携帯電話を握るセッカの手の側に雪が落ちる。カットが真っ白なスタジオで歌うセッカ。ハモった声が高く強く伸び、その二人の上に舞い落ちるのは雪の代りに白い羽根。カットは屋上を写し、空に手を伸ばし雪を手に受けるセッカ。一瞬ちらりと覗いた青空に天使のように翼を広げ飛ぶのではなく、下に落ちるセッカ。カットは再びスタジオに変わり、舞い落ちる羽根を手で受け止めるセッカのアップ。寝転がって降る羽根に手を伸ばすアリー、そんなアリーに頭を寄せるセッカ。ラスト、二人を徐々に引きで写し、小さくなる。羽根の中で眠る二人、声の余韻だけを残し曲は終わった。


【未来への詩】Vo:雅楽川 陽向
♪♪♪
 手に入れたものは
 鏡に映った幻だった
 認めたく無くて
 泣きながら手放せなかった

 ZEROから始めようか
 限り無い可能性は
 この私の中に眠ると
 教えてくれたその言葉

 それを信じて 空を見上げた
 曇り空の向こうに広がる
 蒼空にやっと気付いたの

 一人では掴めない夢も
 「ZEROから始めたら良い
  限り無い可能性がある」
 それを教えてくれた
 君となら叶えられるよ
 未来への詩(うた)
♪♪♪

 8ビートでリズムを刻む軽快なポップロック。たった独り草原に俯き加減で、立つ陽向。優しい声で歌うも寂しげに腕で自分自身の身体を抱き締めてる。顔を少し上げ、問い掛けるように首を傾げる陽向のアップ。腕を自然に広げ、顔を上げ空へと視線を移す。青く清らかな青空が陽向の後ろに広がる。陽向を中心にカメラが回転し、開放感溢れる草原を写す。嬉しそうに、希望に溢れるような表情を浮かべる陽向。優しく人を誘うようにそっと胸の前で広げた両腕は、包み込む愛情に溢れていた。優しい余韻を残して画面をフェードアウトし曲が終了した。


【White explosion!】ラファエロ・フラナガン
♪♪♪
 White explosion! White explosion!
 It is that a star is not visible to a night sky. 
 Since sure and snow are falling, it is more nearly transitory than stars and momentary brightness!
 White explosion! White explosion!
 At any rate, if a morning comes, it is trampled down, and although it is the whiteness forgotten away, I will be in my heart, without forgetting eternals whiteness.
 ── whose ── explosion my thought shakes the atmosphere, serves as a wind, and does ── white explosion!
 White explosion!!
♪♪♪

(和訳)
♪♪♪
 白い爆発! 白い爆発!
 夜空に星が見えないって? そりゃ、雪が降っているからさ、星々よりも儚く、刹那の輝きが!
 
 白い爆発! 白い爆発!
 どうせ、朝になれば踏みにじられ、忘れ去られる白さだけど、俺の心の中では永久の白さを忘れずにいよう。
 俺の思いが大気を揺るがし、風となり──爆発する──白い爆発!
 白い爆発!!
♪♪♪

 夜のスキー場をバックに激しく画面の中をホワイトファーをあしらったレザーを着たラフィーが動き回る。派手な高速演奏にヘッドバッキング、見る者を圧倒するPVである。
「また、上手くなったなぁ」と馬ジャーキーを齧り乍らPVを見ていたロックの感想である。
「ジャーキーじゃお腹は膨れない‥‥ケーキが欲しい」とぽつりと漏らした。


●1月お勧め曲
「PVとして見た時のグレードの高さは『Anothercide』が1番、演出も凝っていたね。『thought』は歌詞が良かったし、二人のイメージに軽いポップ調ロックもあっていた。演奏と歌のバランスも取れていて、とても良かったと思う。Anothercideとの差は本当に僅差だった、ほんの少しだけAnothercideの方が僕の好みだった」とロック。
「『White explosion!』は夜のスキー場というのも面白い発想だけど、ハーフパイプとか違う演出でも良かったと思う。曲のノリは最高に良かったんだけどね」
「『未来への詩』はとても愛情に溢れていて、陽向がどれだけ愛されて育ったかを感じる。とても良い曲だったと思う。『通常』のお勧め曲とは別枠で推薦曲とさせて貰おうと思っている」

 こうして「1月のお勧め曲」として『Anothercide』が選ばれ、1ヵ月間ROCK・AWARSのホームページのトップを飾る事になった。タイ、ルキの二人には後日記念品を兼ねPVで使用したベビーキャットが贈られる事になった。
「それってセクハラぎりぎり?」という質問に。
「PVとかで使用した直接肌が触れる下着は出演者が基本買い取りなんだよ。今回は優勝したからプレゼントとしてこっちが費用を持っただけだし、僕の好みで行けばもっと肉感のある女性の方が好きだよ」ロックっていう部分では、とても二人は魅力的だったけどね。と微妙に失礼な事を言うロックであった。