「7」成人式アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 01/08〜01/12

●本文

 古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
 厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいである。

「どうも8日が『成人式』なのは落ち着かねぇな」
「俺の時は10日でしたけど、今はまあ帰省した時に一緒に故郷で成人式を済ます子もいますからね」
 65歳の親父さんと40歳の浩介の会話である。
 ライブハウスは土日、祝日の関係がない仕事であるが、昔からの暦は大事にしたいという気持ちがある。
「まあ10日でも8日でも、今時の二十歳が子供っぽいのは変わりねぇが」と溜息をつく親父さん。
 少なくても俺がガキの頃は、年長者に対する尊敬念や礼儀、弱者に対する心遣いってのがあったのによ。と何時になく愚痴っぽい。
 買い物から店を出ようとした際、出入り口を塞いでいた大学生らしき人物に注意をした所、殴られたのである。勿論大人しく殴られっぱなしではない親父さん、店前で大喧嘩となり警察沙汰になったのである。
 もっとも目撃者の証言により大学生に負がある事が認められたが、おかんむりである。
「こういう時はスカっとした曲を聞くに限る」


「‥‥‥そんな訳で『聞いた人が元気になる曲』を演奏してくれ」
 並んだ出演者を見て浩介は、こう言った。
「親父さんだけじゃなく、受験を控えてる友達や病気の家族とか、そういう身近な人をモチーフに作るといいかもしれないね」


●出演者募集!
 テーマ 『聞いた人が元気になる曲』
 ジャンル、グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ)参加も可能
 インストゥルメンタルも可
 ピアノ&ドラムは、貸し出し可能
 ライブでの演奏は、タイトル・歌詞・曲は、オリジナル限定

※スタッフはスタッフジャンパーかTシャツを基本着用の事
 例外、成人式を迎える者は和服許可

●今回の参加者

 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1443 門屋・嬢(19歳・♀・狼)
 fa1478 諫早 清見(20歳・♂・狼)
 fa2172 駒沢ロビン(23歳・♂・小鳥)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)

●リプレイ本文

●In the Back
 思い思いに「元気が出る歌」を携えて「7」に集まった出演者達、開口一番。
「親父さん、喧嘩したって? 大丈夫なのかい?」と言う亜真音ひろみ(fa1339)。
「殴られたんだって? 新年早々ついてないと言うか何と言うか‥‥」といつもの黒のベアトップとダメージジーンズのラシア・エルミナール(fa1376)。
「20歳で成人とはいえ、それよりもっと早くから一人立ちしている人も居れば、成人後も学生な人も普通に居ますからね。なかなかアバウトです。あまり気を落とさないでください」とフォーマルの駒沢ロビン(fa2172)。
「でもさ、親父さんらしいって言うかさ‥‥‥」とローライズデニムホットパンツのTyrantess(fa3596)。
「どいつもこいつも耳が早いな。俺がへなちょこの若造に引けを取るかってんだ」と親父さん。
「まだ怒っているの? それより私らの成人式をお祝いくれへんの?」と雅楽川 陽向(fa4371)。
「そうそう♪」門屋・嬢(fa1443)。
 陽向は、紅と桜に染め上げられた振袖姿である。
「ん? ああ、陽向にジョーか、おめでとう」陽向は振袖か、良く似合っているぞ。と親父さん。
「一人で着たのか?」という浩介に「着せて貰いました♪ えへへっ」と笑い、くるりと親父達の前で回ってみせる陽向。
「門屋、雅楽川、成人式おめでとう」とひろみ。
「大人の仲間入りですね。‥‥まあ、俺自身、成人前と特別何かが変わったか、と聞かれると‥‥微妙‥‥ですが」とロビン。
「成人式かぁ‥‥一昔前の話ね」と遠い目をするEUREKA(fa3661)。白い開襟シャツが大人の色気を出している。
「桜が可愛いよね。あたしも振袖にすればよかったかな?」とジョー、皮ジャン姿である。
 買わなかったのか? という浩介に「貸し衣裳でも良いかな? って思っていたら行き忘れたんだよ」とジョー。
「多少古臭い柄で良かったら1つあるぞ。俺の姉が娘に着せるんだと取ってあるはずだが?」と浩介。
「え? でも悪くない?」とジョー。
「えー? 折角やし、借りて一緒に写真撮らへん♪」と陽向。
「姪は新しく買ってもらうつもりでいるから、着る宛のない振袖なんだよ。正絹のいい奴なんだが‥‥小袖に仕立て直すには少々派手でな」捨てるに捨てられないというのが本当の所で、ジョーが来てくれれば姉も喜ぶよ。と苦笑する。
「じゃあ、着付けの手伝いは私がしますね」とゆーり。

 * * *

 ジョーの着付けが終わる迄、出演者控え室で栗羊羹を片手に茶を啜っている一同。
「親父さんや店長の成人式は、どうやったんですか?」と陽向。
「俺は当時、修行で知合いの鉄工所に勤めていたな。成人式は一応出ろと親方に言われて鋼材を届けた帰りに会場にトラックを横付けにしたら偉く係の野郎に怒られて、喧嘩をした覚えがあるな」なので成人式に出なかった。という親父さん。
 一方「俺も出なかったな。俺は初めから行く気がなかったんだが、友達にしつこく誘われてた行く事になったんだが‥‥前日バイトがとても忙しくって目が覚めたら式が終わった後だった。お詫びにステーキをおごる羽目なった」人の金だと思って、あいつら散々食いやがって、思い出しても腹が立つ。とむっつりと言う浩介。親父二人、結構しつこく覚えているらしい。いや、爺になったからこそ嫌な事を思い出すのか。

 ライブ前に昔を思い出して不機嫌になってしまった親父二人に新しい話題を振るキヨミとひろみ。
「俺はロックは苦手意識あるんで出演するのどうしようかって悩んだんだ。でも、それより何より歌いたかったんだよな」とパーカー姿の諫早 清見(fa1478)。
「良い根性だな。俺も浩介もどんな形でもちゃんとお前らの魂の叫び(歌)は聞いていやるよ」と親父さん。
「苦手と言えば‥‥店長、付け焼き刃になるけどキーボードを教えてくれないか?」
「なんだ、ひろみ。珍しいな?」
「将来的に必要になりそうだし、ライブでも弾いてみたいんだ」
「俺も教える程できる訳じゃないが‥‥今回は時間もないし、とりあえず今日はウチにある物を貸してやるから、今度機会があれば選んでやろう。ある程度メロディは打ち込みをしておいて簡単なベースラインを弾くようにしてみれば平気かな?」と浩介。
 ジョーが着替えて出て来たので皆で記念撮影をした後、いよいよライブスタートである。


●1st stage「Recovering one’s good humor now, and going energetically」
「歌う曲は、気にしすぎてブルーになってる暇があったらその時間を明るく過ごすのに使えって意味合いもあったりする。あれこれ励ますより背中をバシバシ叩いてやる気にさせるって感じの曲かもね」そんなラシアの台詞に合わせ、ゆーりのエレキギターの音がリズムを取り、曲がスタートした。

【YOUR BRAVE】flicker−EX−
 Vo:ラシア・エルミナール G:EUREKA

♪♪♪
 落ち込んだり 傷つくこともあるけれど
 気にしてたらきりがないから 元気出して

 強気になれ 顔上げて歩こう
 嫌なこと吹き飛ばして 自分の力で

 前向きになること 難しくなんてない
 自分の力信じて い・こ・う!

 足りないものなんて後で足せばいい
 今はまだそんなこと気にしないで

 自分の中の壁 軽く踏みつけて
 飛び越えられたのなら 何処までもいけるよ
 (showyourbrave..)
♪♪♪


【光の導(しるべ)】Vo:諫早 清見

♪♪♪
 話し相手ならいくらでもなるけど
 答えはお前しかもってない わかるだろ
 ウサ晴らしもたまにゃいいけど
 逃げずに向かい合う時間も必要さ

 乗り越えた波と眠れない夜は明日への踏み台
 あがいた時間に無駄なもんは何もない

 闇が虹色に溶けてく 夜と朝のはざまで
 わずかな時間 何よりきらめく星

 そんな感じさ 夢とか呼べるものはきっと
 いつも見えなくても 胸に抱いたら歩きだせる 光の導

 それが見えたら 迷いも遠回りしても
 そこへたどり着くため 顔を上げて歩いていける 光の導
♪♪♪

 スポットライトに浮かび上がるキヨミ、キラリと左手のバングルが輝く。軽快なテンポのメロディはラストゆっくりとスローダウンして終了した。
「終わった、終わった緊張したぁ」控え室に戻って来たキヨミ。
「俺も早く20歳になって、ライブの後にカクテルを楽しみ乍ら観客席でゆったりってのやってみたいなー」今はウーロン茶で我慢だけど。と笑った。


「唄うのは親父さんに向けたこの唄『想いのカケラ』、もういい年なんだからあまり無茶しないで、皆に心配かけるなよ」とひろみ。客席から笑い声が上がる。そんな和やかな雰囲気で曲がスタートする。

【想いのカケラ】Vo:亜真音ひろみ

♪♪♪
 さあ飲み明かそうぜ
 今夜は無礼講!
 愚痴でもなんでも朝まで付き合うよ
 明日のために日頃の鬱憤全て吐き出そう

 さあ 語り明かそうぜ
 今夜は特別だから
 昔は逆だったけどあの頃はいつもこうしていたね
 夢や未来を想像して語り合い
 気が付くと毎日徹夜しててさ
 体はフラフラでも気持ちだけは真っすぐで
 いつも一杯の苦いコーヒーでまぶしい朝日の中に飛び出した

 大丈夫 あの時目指した道は途切れることなく今も続いている
 それでも目指していた道に迷い
 見えなくなったらまたいつでもここにおいで

 そして全て吐き出した後は二日酔いの頭をコーヒーですっきりさせて
 また明日へ駆け出そう

 あの時語り明かした未来は今も
 この手の中に強く握られている
♪♪♪


●2nd stage「First step to adult」
「歌は『始めの一歩』がテーマです。私みたいな新成人が対象やけど。それ以外でも悩んでいる人が、夢に向って歩いて見ようか?と思えて貰えたら嬉しいです」
 そんな陽向の言葉から曲がスタートする。

【ポケットの夢】Vo:雅楽川 陽向

♪♪♪
 小さな夢をポケットに詰め込んで
 大きな一歩を歩き出した
 はち切れそうな荷物は無いけど
 心に大きな希望を抱えているよ

 口笛軽く 鼻歌歌い
 ポケットに突っ込んだ手は
 確かに掴んでる小さな夢を

 足取軽く どこまで行こう?
 胸に抱いた希望が知ってる
 この道歩けば良いのだと

 小さな夢をポケットに詰め込んで
 大きな希望を心に抱え上げて
 最初の一歩を踏み出した
♪♪♪


「皆、いくぞー!」タイが客席を煽り、いつものように愛機のヘッドにキスをする。
「あたしも成人式に参加するんだ、宜しく! 最初っから飛ばすよ!」
 袂と裾を絡げたジョーのこんな言葉で曲はスタートした。

【Generation of Revolution】Tyrantess Joe
 作詞:Tyrantess、作曲:門屋・嬢

♪♪♪
 とうに時代に追い抜かれた 化石頭の大演説
 舞台の裏でため息ついた そんなのはもうやめにしよう
 そろそろマンネリじみてきた 世界という名の即興劇
 ここらで一つ流れを変えて あたしたちで盛り上げてこう!

 We are the generation
 準備はとうにできてるはず 迷うことなく飛び出そう!
 It’s time for ignition
 例えブーイング浴びたとしても そんなのすぐに黙らせてみせるさ

 We are the generation
 カビの生えた常識の壁 怯むことなく打ち破れ!
 Gonna make a revolution
 そこから差し込む眩しい光が スポットのようにみんなを照らすから

 We are the generation of revolution!!
♪♪♪


「成人おめでとうございます。冬の寒さの中でホロリと来つつも元気が出る‥‥そんな成人式がここにはある!」そういうロビンの挨拶で曲がスタートした。

【Way home】P:駒沢ロビン
 ゆったりとしたピアノのインストゥメンタルの曲が流れる。穏やかな曲は「一日の終わり、我が家への帰り道」をイメージさせる。サビの部分ではテッポアップし、気分を高揚させるも包み込むような温かさを持つ。聞く者をホッとさせるような静かな旋律を残し乍ら曲は終了した。

 今回本人の希望演奏順は序盤であったが、その提案は浩介から却下された。曲全体のイメージが「帰路」つまり「終わり」をイメージさせるからだ。
「成人式と言うのは『スタート』であり『終わり』ではないから、第二部のトップには持って来れなかった。君は今回の曲を『成人式の祝い曲』と位置付けているようだったから、第一部に持って来れなかったしね」というのが浩介の説明である。

 * * *

 ライブが終了して帰り支度をしているジョーと陽向を浩介が呼び止める。
「改めて二人とも成人式おめでとう。20歳になったからと言って君たち自身が変わる訳ではなく、社会が君たちを見る目が単に変わるだけなんだが。だが一人前の大人かどうかと言うのは今後の君たち自身の行動で決まる。これからも変わらず良い曲を作り続けてくれ」こいつはプレゼントだ。と浩介、二人に袋を押し付ける。
「どういうのが好きか判らなかったが、まあ良かったら使ってくれ」帰り際、呼び止めて悪かったな。と送りだす。

「無事、渡せたのか?」にやにやと笑い乍ら、浩介を出迎える親父さん。
「無理矢理押し付けましたよ」
「ふーん、まあお前がウロウロ女性用品売り場をうろつく姿は面白かったがな」
「全くです。妻に頼めば良かったと本当の思いましたよ。ここ何年も俺はバレンタインデーもホワイトデーも妻と娘と姉達以外関係なかったですから」と溜息をつく浩介。
 暦でいけばバレンタインデーは後1ヵ月、もう間近である。
「さて、何をしましょうか?」