わふわふ♪BOY&GIRLSアジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
有天
|
芸能 |
2Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
3万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
02/14〜02/18
|
●本文
寒さが少し和らいだ晩冬2月。
学生達には入試だったり、期末だったりで、色々に忙しかったりする2月であるが、もう一つ世の女性達(一部男子学生や親父達)の心揺り動かすイベントが待っている。
2月14日、バレンタインデーである。
製菓子メーカーに踊らされていると言われようが甘いチョコレートは、贈るにも貰うにも、ましてや自分の御褒美で消費するのも、この時期限定チョコレートが販売されている以上、老いも若きも女性達にはとても意味があるのである。
そしてここに2人の少女がいる。アサヒ中学2年の山崎 桃子と親友の米村 幸子である。
「ねえ、ヨネちゃん。バレンタインデー、どうする? やっぱり真人君にあげた方がいいよね」
「うん‥‥」
いつもならば「自分で考えろ」そう突き放す幸子であったが、今回は様子が少し違う。
幸子は性格がアニキで口も悪いが、才色兼備を地で行く美少女だった。
毎年のバレンタインデーとホワイトデー、男女の合計を合わせると学校で1、2を争い、よく他校の生徒からもラブレターを貰ったりしている。たまに力づくでGFにしようとする輩もいて、どちらかと言えば幸子にとってバレンタインデーは『うっとうしい物』である。
日直である二人は、日誌を職員室に届けに行く途中であった。鞄とコートはすでに靴箱に突っ込んであるので、すぐ帰れる状態になっている。
礼をして職員室に入り、担任に日誌を渡す桃子。
それに対し、キョロキョロと職員室を見回した挙げ句、物憂気に溜息を吐く幸子。
廊下に出た二人。
「‥‥‥ねえ、ヨネちゃん。やっぱりヨネちゃんは物理の柿崎が好きなんでしょう」
そう桃子に指摘され顔を赤くする幸子。
「‥‥判らないよ、そんなの」
「そうだよね。少なくても外見は、ヨネちゃんの好みじゃないよね」
「うん‥‥」
いかにも物理おたく感がある柿崎先生は、ハッキリ言って女子生徒に人気がない。
3年前に交通事故で父親を亡くしている幸子は、その分筋金入りのファザコンである。
桃子の覚えている幸子の父親は、強くて俳優のようにハンサムで優しかった。
幸子の家族は、街を歩くとほとんどの人が振り返ると言う絵に描いたような美男美女一家で、小学生の桃子はとても羨ましかった覚えがある。
ようやく3年経って気持ちの整理がついたと言う幸子の母親は、秋から保険の外交を始めていた。
「ねえ、一緒にチョコ作ろうよ」と桃子。
「え〜?」
「私はお父さんとお兄ちゃんと真人君にあげないといけないし、ねっ、ね♪」
珍しく積極的な桃子。
●ファミリードラマ「わふわふ わふん♪」役者及び声優募集
<主な登場人物>
山崎 桃子 アサヒ中学の2年生。平均的な中学生。山崎家最弱生物。
小学生の時に犬に噛まれて以来犬が恐いが、ペットのサクラだけは触れる。
米村 幸子(ヨネちゃん) 桃子の幼馴染みで同級生、大の犬好き。
フリルの似合う美少女だが、性格がアニキ。テコンドー黒帯保持者でファザコン。
現在、柿崎先生に片思い中?
千葉 真人 三中の学生、桃子のBF。X’masから「お友達で」付き合い出す。
柿崎先生 アサヒ中学の物理教師。物理おたくっぽい外見をしている。
サクラ 山崎家の子犬。雑種、メス。山崎家のアイドル。犬猫見知りしないフレンドリーな性格。
スズ 山崎家の猫。赤虎、メス。山崎家最強生物。サクラの教育係。なにげに関西弁。
<登場人物(参考)>
ガーゴ 公園を根城にしているカラス。スズの子分。趣味、ラッキーの毛を毟る事。
シロ 公園を根城にしている白猫、メス。スズを姐さんと呼び、憧れている?
犬嫌いだが、世間知らずのサクラは平気らしい。
ラッキー 真人の家(ペットショップ)の看板犬。ゴールデンレトリーバー、オス。
山崎 葵 桃子の兄、獣医助手。口が悪い。
氷上 彰 葵の務める病院の獣医師。
* * *
「今回は桃子ちゃんとヨネちゃんの恋話です☆」と脚本家のよしりん☆。
「大まかの話から行くとバレンタインデーに二人で各々思い人に手作りチョコレートを渡す訳ですが、最大のポイントは『柿崎先生のどこにヨネちゃんが惚れた』かです!」
びしっ! と出演者達に指を向けるよしりん☆。
「よしりん☆先生、変ですよ〜?」と言われ「ちょっと娯楽時代劇の脚本を書いていたものですから、てへ♪」と何処迄本気か判らない返答をする。
「桃子ちゃんと真人君の仲が進展するかとか、どんなチョコを渡すとかも決めて下さいね☆ あと途中でいつもの通りサクラやスズといった動物達が人間達にチャチャを入れる形になりますので、皆さんよろしくです♪」
「ちなみに参考迄にですが、チョコレートは動物に食べさせてはいけない理由は2点です☆ 『砂糖や生クリームが入っているので、高カロリーで太り易い&虫歯の原因になる』『カカオマスが刺激物である』です。でもチョコは甘くて美味しいので1度食べさせるとまた食べたがるので、犬用お菓子に『チョコもどき』が販売されています☆ ネギ類と同様『食べた=すぐ死んでしまう』という訳ではありませんが、体に悪いのは確かです。現場での取扱いには注意しましょう♪」
「先生、猫は食べないんですか〜?」
「苦味を感じる部分が犬より多いのとお酒を嫌う子が多いので、チョコが好きな子は少ないです。でも普段何を食べているかによって、例外はいますから注意が必要です♪」
段々微妙に動物ワンポイント講座になりつつある事前打ち合せであった。
●リプレイ本文
●オープニング
山崎 桃子(姫乃 唯(fa1463))と米村幸子(基町・走華(fa3262))の足下を猫のスズを追い掛けて子犬のサクラ(CV:豊田そあら(fa3863)2役)が駆け抜けて行く。
チョコレートの入ったボールを抱えたままひっくり返りそうになる桃子を支える山崎 葵(鳥羽京一郎(fa0443))。
黒板に方程式を書く柿崎先生(スティグマ(fa1742))。
公園で犬を散歩させる立つ千葉 真人(倉瀬 凛(fa5331))と芝生でのんびりと座って日向ぼっこ中の白い猫のシロ(CV:岩倉実佳(fa5239))が映る。
色々なペットの写真が写し出され、タイトルが画面に写し出される。スポンサーリストの表示後、CM。
本編がスタートする。
●わふわふ わふん♪ BOY&GIRLS
泊まり込み診療から解放された葵は、久しぶりに帰って来た自宅のキッチンの惨状に思わず眉を顰めた。
散乱するクリームと板チョコの破片に転がる料理用ラム酒の空き瓶。
「チョコレートを作るのか‥‥お前が?」
険しい顔をする葵。
「あのね、好きな人にあげる為のチョコを作ってるんだよ」
「桃子は千葉にあげるんでしょ?」
いや〜ん♪ と悲鳴をあげる桃子。
「‥‥正直言って、素人が作るよりも市販のモノをくれてやった方が、千葉とやらも喜ぶと思うがな?」
「メーカーのは美味しいけど、気持ちがないもん。どんな気持ちでプレゼントするか知らないんだから」
「全く‥‥女は、手作りこそが『愛情だ』といった間違った考えは捨てるべきだな」
学生時代貰った大量の手作りチョコで『偉い目』に合った事がある葵としては、手作りチョコ等殺人道具にしか見えない。
「いーの。それにヨネちゃんの恋が掛かってるんだもん、頑張らないとね。ね、ヨネちゃん♪」
「う‥‥ん」
「幸子ちゃんにも好きな人が出来たのか? どんな奴だ?」と葵。
「死んだお父さんみたいな人‥‥」
強気の桃子に対し、何時もの「男の子」のような姿とは違い、俯き項迄赤くする幸子。
珍しいモノを見るように二人を見比べる葵。
「お兄ちゃんみたいなモテ男には、判らない事情が女の子にはあるの!」
「桃子‥‥お前、酔っているのか?」
チョコに混ぜるラム酒の酒気にあたったのか、目が座っている。
「子供が酒を玩具代わりに使うな」
「玩具じゃないもん。ちゃんと本に書いてあるのをチェックしたんだから」
溜息を着く葵。
酔っ払いとの口喧嘩等馬鹿らしい限りである。
フンフンと床に溢れたチョコの匂いを嗅ぐサクラ。
『甘い匂いがする♪』
『人生経験は何より大切やけど、うちは食うのは勧めへんで』
サクラの隣に何時の間にかちょこんとスズが座っている。
「あ、これはサクラ達は駄目だよ。向こうでいい子にしててね」
「そっちは危険物が一杯だ」
慌ててサクラとスズを抱き上げる葵。
『葵はん、大丈夫や。うちは食わないよって(にゃ〜ん)』
「あ、お兄ちゃんそのまま。はい、チョコ」
チョコを葵のポケットに捻り込む桃子。
「1日早いけど家にいる時に渡した方がいいと思って」
「‥‥‥ちゃんと掃除をしろよ。お前らは避難だ。折角の休みなのにゆっくり出来ないなんて最悪だ」
そう言うサクラとスズを小脇に抱え、リビングを出て行く葵はなんやかんや言い乍らもしっかりチョコを受取った。例え物体Xかもしれないが妹の手作りは別物らしい。
●バレンタインデー
チョコレートを渡すなら放課後だろう。と別々に行動する事にした桃子と幸子。
「ヨネちゃん、ファイト!」
「お、おう!」
桃子は真人が行く公園へ、幸子は物理準備室へと各々チョコを持っていく。
物理準備室のドアを前に深呼吸する幸子。
ドキドキと高鳴る心臓が部屋の中にいる柿崎に聞こえてしまわないかと思わず心配してしまう。
覚悟を決め、思い切ってドアを叩く幸子。
「失礼します。柿崎先生、いらっしゃいますか?」
堆く積まれた教科書と専門書の間から柿崎が顔を出す。
「あれ、米村さん。どうしたんですか?」
「か、柿崎先生っ、これ、受け取ってください!」
柿崎に丁寧にラッピングしたチョコを差し出す幸子。
「‥‥私に、ですか?」
プレゼントの理由に心当たりがないので一瞬首をかしげるが「ああ、バレンタインデーでしたね」
「義理でも良いですから、受取って下さい!」
口を真一文字に閉じ、顔をまっかにして言う幸子の姿は普段の教室での姿からは想像出来ない。
「生徒からチョコレートをもらえて、喜ばない教師は居ないと思います。でも校則違反なので、誰にも見られないウチに食べて仕舞いましょう」
チョコレートを貰うなんて、久しぶりだな。と良い乍ら、包みを開ける柿崎。
一口食べ「うん、美味しい。お世辞なんかじゃなくて、とても美味しいですよ」
ぱっと嬉しそうに笑う笑顔はいつもの幸子だった。
「ありがとう」
そう言って柿崎が幸子の頭を撫でると、幸子は再び顔を赤くした。
* * *
近所の公園の芝生でのんびりと座って日向ぼっこをしているシロ。
『うは〜ぁあ、ひまぁ〜。なんか楽しい事ないかな?』
お日様の下、うつらうつらしているシロの目の前を呑気に雀達が餌を探しにやってきた。
『‥‥ふっ、良い暇つぶし見つけた』
しらんぷりをして眠ったフリをするシロ、雀達が近付いて来るのを待つ。
ダッ! と雀達に飛びかかるシロ。
勿論、捕まえる気は毛頭ないので、雀達は『大変、大変!』『ネコ、猫、ねこ!』とパニックし乍ら飛び立って行く。
『あははっ、面白い♪』と、そこに桃子がサクラを連れてやって来た。
真人と待ち合わせをしているのだった。
『あ、あれはスズ姐さんの所の桃子ちゃんとサクラちゃんだ。誰か待っているのかな?』
『今日は、特別な『ばれんたいんでー』っちゅう日らしい。全くお日様と同じで人間は「春」しとる』
何時の間にかシロの隣にスズがちょこんと座っている。
『あ、スズ姐さん。「ばれんたいんでー」って何です?』
『好きなオスに‥‥阿呆らしい事にメスの方からオスに「ちょこれーと」をやるんや。うちは、オスがエサ持って来るのが普通やろうと思うやけどな』
『ちょこ? 食べて大変な目に合った事がある‥‥嫌いにゃ!』
うひ〜っ。と舌を出し、顔をしかめるシロ。
『全くや‥‥あない変な物。なんで好きな奴にやるんやろう? よう判らん』
そんな猫達の会話を勿論知らない桃子は、真人を待っていた。
「柿崎先生、受け取ってくれるといいな‥‥好きな人かぁ、やっぱりまだよく分からないよ。友達の『好き』とどう違うのかな?」
学校が終わった後、決まった時間に愛犬をこの公園を散歩させている。
「あ、真人君」
「やあ、桃子ちゃん。それにサクラも元気?」
真人を見て駆け寄る桃子。
「あのね、今日バレンタインデーでしょう」
真人に小さなラッピングされた箱を差し出す桃子。
「有り難う。開けていいか?」
犬をベンチ繋ぎ、箱を開ける真人。
「もしかして手作りか? 凄いな。俺‥‥」期待して良いんだろうか?
続く言葉を聞く勇気の代りにチョコを一つ口の中に放り込む真人。
「ねぇ、真人君は他の子からもチョコ貰った?」
「うん。本命らしいチョコをくれた子が一人いるんだけど‥‥」
その言葉に一瞬吃驚する桃子。桃子の目を見て再び言葉を繋ぐ真人。
「俺、好きな子がいるからって断った」
「あ‥‥そ、そうなんだ」
どぎまぎし乍ら答える桃子。
「暗くなって来たな、そろそろ帰ろうか」
「あ、うん。そうだね」
ベンチを立つ二人。
「チョコありがとな。ホワイトデーにはお返しするから。それじゃ、また明日」
「う、うん」
そう言って別れる二人。
* * *
その夜。
「ねぇ、サクラ。他の子が真人君の事を好きになるなんて、考えた事なかったな」
ベットの上で寝転がり、サクラと遊ぶ桃子。
「真人君がチョコを受け取ってたらどうしようって思った。これが、好きって事なのかなぁ?」
「くぅ〜ん?」
小首を傾げて鳴くとサクラはトコトコと部屋の外に出て行く。
「サクラに言っても判らないよね」
ははっ。と笑う桃子。
トコトコとガムをくわえて戻って来るサクラ。
ぽとっ。と桃子の前にガムを落として「わん!」と鳴く。
「ありがと、サクラ。ホワイトデーにお返ししなくちゃね」
桃子はサクラを抱き締めるとそう言った。
* * *
そして翌朝。
リビングに葵の文字で「3点」と書かれた紙を見つける桃子。
「お兄ちゃん、素直に食べてくれたと喜ぶべきか、怒るべきか‥‥っていうか何点満点で3点? すっごい気になる!」
回答の主は、とっくに出勤していて家にいなかった。
ちなみに再び葵が家に帰って来た時に桃子はこの件をしっかり忘れており、結局何点満点でなのか葵の口から聞く事はなかった。何点満点なのかは葵の部屋を覗いたサクラとスズしか知らない。
<END>
●収録現場の一悶着
「苅部・愛純(fa4350)が、何をやるか決まってないだと?」
「はあ、本人曰く声優なら何んでもいいと‥‥」
「ウチは低予算だから役者が自主的に役を取りにいかないと撮影しないからな。真人の犬はオスだし‥‥」
撮影済VTRを思い出し、散々悩んだ総監督はこう言った。
「‥『雀』だな」