女王様と万華鏡アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 1Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/04〜02/08

●本文

 ――キラキラと輝く赤や黄色、青といったセルロイド、小さなビーズが花を作り煌めく。
 小さなおかっぱの少女が父親の膝の上で万華鏡を覗き込み笑う。
 手に握られたそれは、少女がずっとお強請りしていた祖父が曾祖父(祖父の父親)から貰ったと言う舶来品であり、先日誕生日の祝いだと貰ったばかりの少女の宝物だ。
 居間に掘られた小さな囲炉裏の脇に鏡開きをした時に出た細かい餅で作った手製のあられが籠に入っている。
 母親は台所で皿を洗っている。
 小さい将棋盤を挟んで、難しい顔をした少年の顔がある。
『ほらほら、どうした。次の手は?』
 少女の兄であろうか?
 何度やっても負けると判っていても祖父との勝負は、少年の夕食の楽しみである。

 ――トントン
 誰かが裏木戸を叩く音がする。
 こんな時間に誰であろう?
 少し離れた隣家から隣の人が回覧板を持って来るには遅すぎる。
 そして今日は静かに深い雪が降る。

 ――トントン
 また木戸を叩く。
 電報かも知れない。
「あたし、取りに行く♪」
 少女は父親の膝から飛び下り、裏木戸を開ける。
 
 ずん!

 鈍い衝撃に自分の腹を見る少女。
 大きな鈎爪が自分の腹に突き刺さっているのを不思議そうな顔をし、相手を見上げる少女。
 黒い大きな影の赤い瞳と緑色の結晶が輝く。
 両親が何かを叫んでいる。
 小さな獲物に満足しないのか黒い影は、そのまま少女を外の雪の中に放り出し、木戸から家へと入り込む。
 少女の朱に染まりぼやける視界の中、完獣化する父親の姿が見える。

 ――嫌な夢を見た。

 TOMI−TVの局付き脚本家よしりん☆は、見なれた自分のベットの天蓋を見て安堵の溜息を吐く。
 口の中がからからに乾き、粘った感じがする。
 時計は午前4時を差している。
 起きるには少し早いが、水を飲む為にゆっくりとベットから体を起こす。
 ふとベットの周りに眠るペット達に姿に微笑む。
「また鍵を開けたのね。困った子たち‥‥」

 冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、そのまま口をつけるよしりん☆。
 片方の手が、無意識の内に塞がったはずの傷跡を弄る。
「普段、外国製の高級クリスタルガラスのグラスを愛用しています☆」と言っている彼女から今の想像できないだろう。
 ぺたぺたと裸足のまま、リビングに置いてある飾り棚を覗き込む。
 よしりん☆御自慢のカレイドスコープ(万華鏡)のコレクションである。

 * * *

 愛車で関越道を飛ばし、その日の昼すぎ実家のある県に到着する。
「相変わらず田舎ねぇ。雪が少ないって聞いていたけど」と苦笑するよしりん☆。
 20年近く雪山とは御縁がないし、実家も事件以来近付いていない。
 県道からよしりん☆の家(NWに襲われた後、遺棄し、現在廃屋である)までの私道は、雪が腰迄ある。
 ラッセルで進むよりしん☆。
「やっぱり最近ナマっているわねぇ‥‥」
 30分程ラッセルで進んだが、雪国生まれでテコンドーの黒帯保持者。
 同年代の女性に比べれば鍛えている方であるが、流石に疲れてしまったようである。
「スキーか、かんじきを持ってくれば良かったわね‥‥」
 どうしようか? と、考えて立ち止まって考えていると、ふと視線を感じる。
 少し離れた所にある林から誰かが見ている。
 刺す様な昔感じたその視線にチリチリとした不安が項を走る。
「まだ、同じ彼奴がいるとは思わないけど‥‥困ったわね」
 暗い笑顔を浮かべると、くるりと元来た道を急いで戻るよしりん☆。
 春ならば兎も角、蛇獣人にとって深い雪は絶対的に不利である。

 車に戻り、携帯を掛けるよしりん☆。
「おはようございます☆ プロデューサー、よしりん☆です♪ ちょっとお願いがあるんですけど、いいですか?」

 * * *

「ウチのもん(撮影隊)を私用で使うな」と鬼塚ディレクター。
「だってぇ、アレが出たんですよ☆ 退治には、これが一番確実なんですもの〜☆」
 TOMI−TVに「ザ・DOG」というバイオレンス深夜ドラマがある。
 よしりん☆は、そこのメイン脚本家である。
 バイオレンスドラマの癖にヒューマンドラマにメインを置いている為に普段はドンパチ禁止であるが、外伝用に派手にドンパチする予定である。
 それを撮ってしまえ。というのである。
「この辺りは禁漁区なんですよ☆ そりゃあ密猟者とかいますけど、下手に銃声したら警察が来ちゃいます♪」
「お前んちから隣は5km離れているだろうが」と鬼塚。
「冬の銃声は響くんです☆」
「まあ、まあ」とプロデューサーが宥める。
「とりあえずWEAから役者のフリをしてくれる獣人達が来る迄、私らは役所や警察に手回しの確認をしておくべきだね」
「は〜い♪」
 番組の若い連中は、スコップ片手にせっせと慣れない除雪を行っている。
 よしりん☆の家跡を拠点にする予定である。

●今回の参加者

 fa0640 湯ノ花 ゆくる(14歳・♀・蝙蝠)
 fa0669 志羽・武流(21歳・♂・鷹)
 fa0761 夏姫・シュトラウス(16歳・♀・虎)
 fa1890 泉 彩佳(15歳・♀・竜)
 fa3135 古河 甚五郎(27歳・♂・トカゲ)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa5387 神保原・輝璃(25歳・♂・狼)

●リプレイ本文

●2月4日 曇りのち雪
 WEAから連絡を受け撮影隊に合流すべく迎えのワゴン車(ボディに「−ザ・DOG−司法の犬達 TOMI−TV系ネット25時〜 絶賛放送中」というロゴ)で県道を上がる一同。
「『視線を感じた』それだけじゃあ、判断材料に欠けるだろ。信じてない訳は無いけどな」とつまらなそうに車外を見つめる神保原・輝璃(fa5387)。
「雪‥‥ゆくるの‥故郷とは‥‥正反対です‥」と湯ノ花 ゆくる(fa0640)。
「これがNW退治じゃなかったらなぁ‥‥って、そんな事言っても仕方がないよね」と溜息を吐く因幡 眠兎(fa4300)。
 空からちらちらと粉雪が舞う。
 道路の両脇に積み上げられた雪を見上げる泉 彩佳(fa1890)。
「この雪が凶と出るか吉と出るかですね」帽子を目深に被った夏姫・シュトラウス(fa0761)。

 合流場所に指定されたその場所、村の集会場に到着した一同が見たモノは。
 以前DOGのスタッフと仕事を何回かした事がある古河 甚五郎(fa3135)は、野次馬を足留めを含め何点のお願いをよしりん☆に連絡していた。確かにその時『地元の連中は、ノリが良い宴会好きだ』とは言っていたが‥‥集会場の中は、まだ昼と言うのに宴会場と化していた。

 呆然と立ちすくむメンバーに気がつくおばちゃん。
「あんれ、よしこちゃん。お友達が来たよ」
「よしこちゃん?」とパトリシア(fa3800)。
「きゃ〜☆ タケル君♪」
 ブンブンと手を振るよしりん☆。
「よしりん☆先生、お久しぶりです。共同作業以来ですね」
 顔を引きつらせる志羽・武流(fa0669)。
「よしこちゃんのボーイフレンドかね?」
「おばちゃんったら、正直者☆」
「どうやら、よしりん☆先生の事らしいですね」とタケル。
「可哀想にコガ君はスルーですか?」
 赤い顔をしたプロデューサー、すでに出来上がっているようだ。
「こいつの眼鏡男好きは、今日に始まった事じゃあないでしょう」
 酒が入った湯呑みを片手に持つ鬼塚ディレクター。

「あ! おめさ、知っとる。TVで見た事ある」
 目敏くおばちゃんがゆくるを見つけて言う。
「ゆくる‥です‥‥メロンパン‥‥おいしい‥ですよ」とメロンパンを差し出す。
「あんれぇ、ありがと。ええこやねぇ♪」
 それをきっかけに微妙なイントネーションで話し掛ける地元民達。
「本物はTVで見るよりめんこい」だの「やわこい」だの「おにんぎょさみてぇだ」「良い匂いさする」、挙げ句「よめこにこんか?」と娯楽に飢えた地元民の餌食になって絡まれている。
 苦笑するよしりん☆。
「おばちゃん達、それじゃあ皆が仕事にならないじゃない。彼女達は仕事で来たんだから」

 * * *

 現地着くとぐるりと家の周りをチェックする一同。
 古い一階建ての日本家屋の周りには暴風雪林がぐるりと囲み、更にその外側、北と南に畑、東に田が広がっていた。
 夜は集団でいる限り襲われる確立は減るが、闇に紛れての襲撃も考えられる。
 暮れていく陽を見乍ら軽い不安が一同によぎる。
 だがそれより先に敵はやって来た。
 集会場に行かなかったおばちゃん達が、がめ煮やら水団やら鍋を抱えて来襲して来たのだった。
 暖かく上手い料理は嬉しい反面、NWの危険を考えると迷惑なおばちゃん達なのである。
 打ち合せがあると早々にお引き取り願った。


●2月5日 曇りのち雪
「コガ、頼まれた橇(かんじき)とかは土間に用意しておいたぞ」と鬼塚。
「おはようございます。あれ、よしりん☆さんは?」
「よしりん☆は、監督を迎えにスタッフの1人と一緒に行っている」
 口八丁で監督の代りにスタッフを生け贄にするらしい。と鬼塚は溜息を着く。
 ははっ。と乾いた笑いを浮かべるコガ。
「今日は俺達は北側の畑に簡単な足場を組んで雪を撮るつもりだが、お前らはどうする?」
「自分は艝(そり)に道具を積んで、ワイヤトラップとか仕掛けて来ます」
「よしりん☆さんが視線を感じた場所周辺を見に行きます。それに雪上での戦闘は初めて、どれ位動けるのか確認しておきたいです」とナツキ、用意してもらった橇を履いている。

 * * *

「昨日の降雪でどれだけ残っているか不明ですが、足跡があるか林の方を見てきます」
 橇に慣れてきたナツキがそう言って林の中に消えて行く。
「じゃあ俺は南の方に入ってみるかな?」
 輝璃も単独行動をするようだ。
「俺は空から様子を見てきます。皆さんは待機していてください。見つけ次第、こちらに向かいますので」とタケルの白い翼があっという間に曇り空に溶けて見えなくなる。

「なんでそんな時計持って来たんです?」とふとミントが大事そうに抱えているアナログ時計(Night−War)を指差すパティ。
「半径50mにNWがいた場合、時計が淡く光るんだって」とミント。
「それ‥光っている‥気が‥‥します‥‥」とゆくる。帽子に着いているメロンパンは本当に食べれる優れ物だ。
 ゆくるの言葉にミントが慌ててスノーウェアの中に時計を入れて、上から覗き込む。薄ぼんやりとした淡い光が時計を包んでいる。
「NWがいるの? 何も見えないよ」慌てるミント。
 その言葉に警戒する一同、だが周囲にNWが潜伏しているらしい動物も見えない。
 必死に鋭敏聴覚で聞き耳を立てるミント。向こうも息を殺しているのか、何も聞こえない。
「ゆくる‥‥超音感視‥使います‥‥‥」
 超音感視の探知範囲は30m、ゆくるはダミーのリュックを外して飛び上がった。パティが鋭敏嗅覚、アヤは鋭敏視角で必死に探す。
「彩佳さん、志羽さんに聞いて貰えるかしら『何か見えますか?』って」とパティ。
 知友心話で上空のタケルに『声』を送るべく集中をするアヤ。
「‥‥志羽さんは『何も見えない』って」
 鼻をひくつかせるパティ。
 風は山頂から麓へと吹いている。
「ゆくるさん、風下の林の方を調べて貰えますか?」パティが言う。
「了解‥です‥‥いました。小さな‥‥動物‥‥‥‥あ‥‥時間切れ‥」
「あれ、光っていない? 壊れちゃったのかな?」
 時計を振るミント。
 アヤの『声』を聞いて走って来るナツキやタケル達が見える。
 どうやらNWは、その気配に隠れてしまったようである。
「見えないのは保護色なのかしら? それとも他の能力?」とパティ。
「もしかしたらイタチなのかも? 冬毛が白いよね」とアヤ。
「でもNWがいるのは決定だね」
 そう言ってミントが溜息を吐いた。


●2月6日 曇りのち晴
 連日の雪は止み、まあまあの撮影日和である。
 撮影場所は県道に近い所で行うのもあって宴会に飽きて現場を見に来た住民の数は、昨日よりかなり多い。スタッフやら見物人やら、現地採用の臨時のエキストラで50人近くが現場を行き来する。
 その為かちっともNWの影も形もない。

「‥‥出て来いよ! 近くに居るんだろ!」と輝璃。ヤヤ切れ気味である。
 さくっと退治してさくっと帰るつもりだったようだが、そうは問屋が降ろさないようである。

 臆病で慎重なのが野生の小型動物である。それ+NWである。
 ロケ現場近くは獣人(獲物)も多いが逆にNW自身も狩られる可能性を本能的に知っている。

 撮影がスムーズに進む為、御機嫌な鬼塚の罵声が現場に一段と響き渡っていた。
 だが鬼塚は知らなかった。エキストラ達との打ち上げ宴会が待っているのを。
 純国産和牛とカニが出ると聞き付けたコガもドサクサに紛れて宴会に混じりに行き、ちょこっと行ってちょこっと帰るつもりだったようだが、しっかり鬼塚共々地元民に捕まってしまった。

 * * *

 他の者達は夕飯のカレーうどん鍋をつっ突いていた。
「イタチは夜行性だよね。NWも夜行性。でも昼間よしりん☆さんと私達の前にも出たよね」とミント。
「例外っていうのはありますよ☆」とよしりん☆。

 一方、ナツキは1人半獣化の姿のまま、周囲の枯れ畑を歩いていた。
 陽が落ちてしまえば、近所の住民達は来ないので安心して獣の姿を曝して歩ける。
 雲の合間から月が見える。
 昨夜は畝やら水路跡にハマって脱出に手間取っていたが、それほど降雪量が多くない為に前日の足跡を辿れば道は外れないだろう。
 自分の足跡を追うように小さな動物の足跡がついている。昼間、皆が言っていたイタチの足跡らしい。
「昨夜は、着けられていたんですね」
 鋭敏視角で後ろを確認するナツキ。
 月明かりの中にNWの姿は確認出来なかった。


●2月7日 晴のち曇り
 地元の名士(?)であるよしりん☆が鬼塚達を解放してもらうべく集会場に行っているので、今日は人間の邪魔が入る事はほとんどない。
 ゆっくりとNWを狩る事ができるのだ。
 一同は5日に目撃された林の前で罠を張る事にしたのである。
 囮役を買って出たミントとパティ、護衛役のゆくる、アヤは通信役。
 他のメンバーは、上空や風下の林の中から待機である。

 雪だるま作りや雪合戦をして待つ4人。

 ぴょこり
「きゃ〜♪ 可愛いぃ♪」
 雪の穴から顔を出すテン。
 白いボディにつぶらな黒い瞳、耳の先っぽがちょっぴり黒い、可愛い冬の妖精。
 後ろ足で立ちアヤ達を見つめるテン。
「テン‥も‥イタチ科‥‥」

 シャーーーーッ!

 牙を向くテンの背中が、みちみちっと音を立てて肉が盛り上がっていく。
 50cm程度の小さい身体が膨れ上がりアヤ達とほぼ同じになる。
 その醜悪な姿は、牙と指先に鋭い鉤爪を持った獣とも虫ともつかない姿になった。
 アヤが待機しているメンバーに『声』をかける。
 飛び上がったゆくるが攻律音波でNWの鉤爪を破壊しようと攻撃するが、動きの早いNWに中々当らない。
「意外と‥早い‥です」
 ダークデュアルブレードを構え、俊敏脚足で一気に詰め寄ろうとする輝璃。
「待ってたぜ、この瞬間を!!」
 だがNWも鉤爪振り回して応戦する。
「させません!」
 タケルが急降下し飛羽針撃を放ち、NWを輝璃から引き離す。
 アヤが隙をついて、足払いをする。
 ダークデュアルブレードを振り降ろす輝璃。
 片腕を失い、林に逃げ込もうとするNWを先回りしたナツキの細振切爪が肉を抉る。

 キシャアァァァーーーー!

 NWが咆哮を上げる。

「見つけ‥ました。胸の奥‥‥に‥コア」
 NWの後ろに回り込んだナツキがNWの胴を抱え込んだまま締め上げ、反動を着けそのまま雪へと叩き付ける。ゆくるが闇波呪縛と吸触精気でNWの足を止めた所にナツキのパンチがコアを叩く。
「流石に固いです!」舌打ちをするナツキ。
「ナツキさん‥‥どいて‥ください!」
 自分の身長より長いSSXスレッジハンマーを構え、槍のようにNWに突き立てトリガーを弾くゆくる。
 耐NW用に開発されたと言うSSXスレッジハンマーの0m掃射。
 鈍い音を立てて緑色のコアが砕け散る。
 だがその激しい反動で後ろに吹っ飛び、雪溜りに頭から突っ込むゆくる。
 雪に倒れ込んだまま、空を見上げるゆくる。雲間から陽の光が差し込んでいた。
「お仕事‥完了‥‥です」

 * * *

 ナツキ達が集会場に向かうとよしりん☆とDOGの関係者だけが残っていた。
 と言っても、床に転がって寝ている者が殆どで、宴会の巻き添えを食ったコガは何故かガムテープの芯に埋もれていた。どうやら俗に「バリ芸」とも言われる「バリ職人」のテープ技を散々飲まされた後、強要されたようである。簡単に言えば散々飲んだ挙げ句に高速腕立てとヒンズースクワットをするような物で、非常に酔いが回る。
 恐ろしい物を見たような顔をするパティ。
「ところで首尾はどうでした?」
「無事に終わりました」
「そう、良かったです♪ ところで皆、お昼まだでしょう? お肉もカニもありますから一緒に食べませんか?」
 カニと聞いて目が変わる一同。
「明日は帰りの電車迄ゆっくりスキーやスノーボードを楽しんで下さいね♪」
 そう労を労うよしりん☆。
「「「乾杯ーぃ!」」」
 未成年組はジュースやお茶で乾杯をし、鍋やら刺身やらに手を出す。

「終わりましたね‥」とゆくるメロンパンをよしりん☆に渡す。
 一体幾つ持っているのだろう。もしかしたら毎朝こっそり焼いているのかも知れない。そう思うよしりん☆。
「よしりん☆さん。ところで『かれいどすこーぷ』って何ですか?」
 オニギリを食べているアヤが質問した。
「あら、やだ。そんな事迄連絡が行ったの?」
 苦笑するよしりん☆。
「質問‥です‥‥最初から‥‥WEAに‥要請していれば‥‥他のチームに‥‥任せる事も‥‥出来ていたと‥‥思うんですけど‥どうして‥‥DOG班で‥‥?」
「よしりん☆は昔ここに住んでいたんです☆ ある日突然NWが現れて‥‥まあ、簡単に言えばよしりん☆を残して家族は食べられて死んじゃったんです」
 他人事のように話すよしりん☆。
「襲って来たNWを倒したのか、それともどこかに行ったのか、再情報化したかどうかも不明だったので家はずっと放置していたんですが、昔祖父から貰った万華鏡なら媒介には不向きなので持ち出せるなぁって、ちょっと思っちゃった訳です」と苦笑する。
「WEAも『かも知れない』という不確定要素じゃあ動いてくれませんからね。なのでプロデューサーにお電話した訳です」とよしりん☆は言った。
「それで万華鏡は見つかったんですか?」とアヤ。
「なかったです。破片でも落ちているかとも思ったんですが残念です」
 でも良かったです☆ 皆に怪我がなくって♪
 よしりん☆は、にっこりと笑った。

●2月8日 曇りのち雪
 さて、コガが仕掛けたワイヤートラップだが野兎が掛かっており、地元民が兎鍋にしたのは内緒の話である。