魔王子、ガールフレンドアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
2Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
3万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/13〜02/17
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●本文
「なぁなぁ、薫。お前、チョコは幾つ貰う予定?」
「えー、うーん? ママとお稽古の先生と‥‥2個かな?」
「俺も母ちゃんと妹からかな?」
「なぁんだ、誰もクラスの女子から貰う予定はなしか。だらしないなぁ」
夕暮れ時、学校からの帰り道。
笹原薫や同級生の男の子達は、わいわいと間近に迫ったバレンタインデーで幾つチョコを貰えるか楽し気に話している。
「じゃあ、お前は幾つ貰うつもりなんだよ」
「僕の家はアメリカ式にバレンタインデーは、ママやお手伝いのお姉さんに手紙やプレゼントをげるのさ」
「なんだ、結局お前も0(ゼロ)予想か」
「でもさ、貰ったら貰ったら大変そうじゃない? ホワイトデーに3倍返しが普通なんだって」と薫。
「えー? じゃあ、俺貰わない方がいいな。来月、ゲームが出るから」と別の少年が答える。
『皆、楽しそうだな』
頭の上の方から聞き馴れた声がした。
「権兵衛?」
薫達はキョロキョロと辺りを見回すが、誰もいない。
「‥‥‥今、権兵衛の声聞こえたよね?」と少年達に確認する薫。
『ここだ、ここ。空を見ろ』
そう言われて、空を見上げる薫達。
「「「うわっ!!」」」
空一面に広がる魔王子の顔に吃驚する薫達。
『ははっ、驚いたか? 皆、うちに来ないか? 今、客人がエム・ランドから来ているのだが、皆に会いたがっているんだ。それに土産に貰った面白い魔法のアイテムもあるぞ。これもその一つだ』
* * *
薄暗い石で出来た床に置かれている無気味な瓶「魔水鏡」。
その中に満たされている黒い水の中に頭を突っ込んでいる魔王子。
「こちょこちょこちょ♪」
無防備な背中をくすぐるチェルシー。
「『うわぁあ!』」
ゴボゴボと空気を吐き出し、顔を水からあげる魔王子。
同時に薫達が見上げる空に広がっていた魔王子の顔が消える。
「‥‥‥死ぬかと思った」
* * *
薫の友人である魔王子は、他の魔物たちと一緒に女王の命令で人間界に不思議な花を探しに来ていた。
色々人間界の常識が通じないエム・ランドの魔物達は人間界の事を学ぶのに「魔王子の召還主」兼「名付け人」の薫の家の隣、家と家とのほんのわずかな隙間に異空間を作って其処に住み着いたのである。
が、どうやら出口の一部が、薫の家のどこかに繋がっているらしく事ある毎に薫の家にやってくる。
「権兵衛の家か、面白そうじゃん」
「権兵衛って薫の隣に住んでいるんでしょ?」
「うーん? 住んでいるって言うのかな? 僕もまだ行った事がないんだ」
気がつくと魔王子は、勝手に薫の家の居間に出没している。
「魔法のアイテムとかも面白そうだよね。誰でも使えるのかな?」
「いや‥‥それはちょっと」
正月のカルタ大会を思い出して首を竦める薫。
「おふくろには、薫んちで宿題しているって言えばOKだよな」
「そうだね」
首から下げている携帯電話を掛ける少年。
「あ、ママ? 僕だけど、今日の塾お休みしていいかな? 笹原君の家に『外国からお客様』が来るんだって。『外国』珍しいお話が聞けるみたいで皆、行くんだけど僕も行っていいかな?」とやけに『外国』と強調する。暫くやり取りをして「僕は、OKだよ。ママ、外国に弱いから」と笑う。
「薫、俺は薫んちの電話を貸してくれよ。母ちゃんの事だから絶対、薫の母ちゃんと話したがるし」
「うーん‥‥」
結局、魔王子の家への興味が優り、皆で家に向かう薫。
●アニメ『魔王子、ガールフレンド』声優募集
あらすじ:魔王子が人間界にやって来て数カ月。色々不便だろうと魔王子の母親、エム・ランドの女王からの贈り物を持ってやって来た魔少女。その可愛い姿に薫達はちやほや、逆に不機嫌なのはチェルシーだった。魔王子の「魔少女の方が、チェルシーよりお淑やかで可愛い」と言った一言で腹を立てて、出ていってしまったチェルシー。「その内、お腹が空いたら帰って来るさ」と心配しない魔王子であったが‥‥。
魔王子とチェルシーと魔少女、三角関係ぼっ発? 魔王子と薫たちとの交流を描くハートルフルアニメ。
●主な登場人物
「魔王子:ゾーンゼー」通称:王子or権兵衛、モンスター達の王国、エム・ランドの王子。ちょっと小柄なイタズラ好きの男の子。仲良しの妖精と一緒に門を抜け、人間界にやって来た。寒がりで卵焼きが好き。本名で呼ばれる事が嫌い。
「妖精:チェルシー」魔王子のファンでヤキモチ焼き。魔王子と一緒に人間界にやって来た。着せ変え人形サイズで薫のママのお気に入りで衣装持ち。
「笹原薫」魔王子を呼び出した小学生。
「魔物」エム・ランドの住民。魔王子の世話係。吸血鬼や狼男等、人型に近い程人間の一般識をやや理解するが、通じない部分も多い。人間に近い物はアルバイトをしたりして、生活費を稼いでいる。
「魔少女」魔王子のガールフレンド、一部の噂では婚約者。過去に何度か人間界(外国)には来た事がある。
●リプレイ本文
●CAST
魔王子‥‥‥ウィルフレッド(fa4286)
チェルシー‥白井 木槿(fa1689)
デュラン‥‥藤井 和泉(fa3786)
プッチ‥‥‥小峯吉淑(fa3822)
笹原薫‥‥‥パイロ・シルヴァン(fa1772)
立花由沙‥‥木崎 朱音(fa4564)
ママ‥‥‥‥エマ・ゴールドウィン(fa3764)
グリッターナ‥麻倉 千尋(fa1406)
●恋のライバル登場?
チェルシーは不機嫌だった。
理由は簡単、昨日の晩から魔王子の所に女の子が訪ねて来ているからであった。
それもかなりの美少女。
「薫、これが『グリ子』だ」
「薫様、初めましてグリッターナです。お世話になります」
「どうも、初めまして笹原薫です」
くるくるとした巻き毛、潤んだ瞳を長い睫毛が縁取る。
にっこりと笑いかけられた薫が赤くなる。
『顔、顔なら負けていないもん! あたしだって、スタイルばっちり!』
「一応コレでも婚約者だったり、姫だったりするが気にするな。グリ子も『他所行きの挨拶』は良いぞ。五月蝿いデュランはいないしな」
グリッターナに同行して来たデュランは、魔王子の命令でママのスペシャル出汁巻き卵を貰いに行っている最中である。
「え、権兵衛の婚約者!?」と薫が驚く。
「デュラン様は立派な騎士様よ」
「首の取れる位しか能がないぞ、デュラハンなんて」
「あの格好良さが判らないなんて、王子はまだまだ子供ね!」
『王子様の婚約者‥‥魔物にとって契約は、一度成されたらどんな事があっても自分からは破れない。王様も女王様もなんでそんなの勝手にしちゃうの〜! って怒りたくなっちゃう! でも恋愛は別だもん! わたし、王子様が好きなのは誰にも負けていないもん!!』
現在、一番被害を受けているのはプッチであった。
毛を梳いていたはずのチェルシーに、今は毛を毟られそうな雰囲気である。
「なんで‥‥こぎゃん目に合わにゃ〜といけないんだぎゃ」
グリッターナに魔王子が笑いかける度にぎゅーっと毛を引っ張られる。
「男なら‥根性だぎゃ‥‥」
だが最早挫けそうな位、涙目である。
「これ以上されたらハゲてしまうだぎゃ〜」
ぶるぶると身体を振るプッチ。
ころん。とチェルシーを背の上から振り落とすと部屋の奥へ隠れてしまった。
「なによ〜。あたしが虐めたみたいじゃない」
プンプンと怒るチェルシー。
そんな事は知らずにグリッターナを中心に盛り上がる魔王子達。
「このアイテムはどう使うの?」
少し離れた机の上に転がる小さな水晶玉を抱えるチェルシー。
気が着けばいつのまにかグリッターナがいない。
水晶玉を抱えて魔王子達の方に飛んで行くチェルシー。
「ねぇねぇ、王子様‥‥」
魔王子の髪を引っ張るチェルシー。
「ん? 髪を引っ張るな、チェルシー」
邪険にチェルシーの腕を指で払う。
むぅと顔を赤くするチェルシー。
「でもグリッターナちゃんって可愛いよな」
「ああ『顔』は可愛いな」
性格は微妙だが。と続く魔王子の言葉はチェルシーの耳には入らなかったようである。
「王子様のばかっ!! もう知らないっ!」
「チェルシー? 何、怒っているんだ?」
ぽかんと口を開けてチェルシーの後ろ姿を見つめる魔王子。
「相変わらず王子は乙女心ってのを解ってないんだみゃ〜」
やれやれと机の下から這い出るプッチ。
「そうか? まあ、腹が空けば戻ってくるだろう」
「そんなもんなの?」と薫。
「そんなものだ。大体、妖精と言うのは食いしん坊な輩で‥‥」
「お待たせしましたわ。準備OKですわよ」
チェルシーが1人蚊帳の外にいる間、皆で人間界観光をする事になり、着替える為別の部屋に行っていたグリッターナが戻って来た。
「あら、チェルシーは?」
「出かけた」
「そう、残念ね。折角、皆で行けたら楽しかったのに」
* * *
薫の友人、由沙も同行してあちらこちらを見て回る魔王子達。
何度か人間界に来た事があるデュランだが、ゆっくり町を観光というのは初めてなのでどこかそわそわしているようだった。プッチは踏まれるのが嫌で薫のリュックの中から町を覗いている。
「グリ子珍しいだろう、あれが『くれーんげーむ』というものだ」
グリッターナを連れてゲームセンターに来ている魔王子達。
「あたしが行った所にはなかったわね」
興味津々でゲームを見るグリッターナ。
「ぬぬっ、魔物を倒すゲームもあるのですね」
複雑な顔をするデュラン、同族でなくても魔物が倒されるゲームはなんとなく気持ちが良くない。
「妖精は人気があるのね」
景品にチェルシーに似た妖精の人形を見つけるグリッターナ。
「やっぱりチェルシーも一緒にくれば良かったのに」
「たまには1人になりたいんだろう」
「なに、それ?」
グリッターナに問い質され、事の次第を話す魔王子。
「あの子が変な奴に捕まったりしたらどうするの!」
「ああ見えてチェルシーもしっかりしたもので‥‥」
グリッターナの剣幕にタジタジの魔王子。
「何かあったら許さないからね!」
魔法少女、グリッターナの右手に何時の間にか銀色の巨大ハンマーが握られている。
「え‥‥あ、いや〜っ、なんていうか」
「‥‥女性を泣かせる行為は、王子としても男としても恥ずべき行為ですよ」とデュラン。
「男の子は、そんな風に女の子を傷付けちゃいけないのよー!」と由沙。
「うるさい、ウルサイ、五月蝿い! 泣いてなんかいなかったぞ! 勝手に怒って出て行ったんだから、俺のせいじゃないぞ!」
「それが子供っていうの!」
グリッターナにぴしゃりと言われる魔王子。
「迎えに行ってあげなきゃ駄目じゃない。大体、チェルシーが何処にいるか心当たりはあるの」
「当たり前だ、その位はある。チェルシーとどれ位一緒にいると思っているんだ」
「という事は恥ずかしくって迎えに行けないって事? 全く子供なんだから!」
一同に突っ込まれた挙げ句のお子様扱いに「む〜ん」とする魔王子。
「あ、そうだ。一緒にチョコ作って渡さない? 今、丁度バレンタインデーだし、材料も簡単に手に入ると思うのよね」と由沙。
「ちょこ?」
「人間の世界では、好きな人にバレンタインデーにチョコを贈るのよ。あと、大切な家族とかにも『いつもありがとう』って感謝の気持ちを贈るの」
「いいアイデアですわね。王子、チェルシーにあげる『ちょこ』とやらを作りなさい。あたしも一緒に作るから」
「えー?」
「文句があるの?」
キラリとハンマーが光った。
* * *
特売の卵を大量にゲットし、ほくほくのママ。買い物籠を片手に土手を歩いている。
「権兵衛ちゃんはとても美味しそうに食べてくれるから作り甲斐あるのよね〜。‥‥あら?」
野良猫達の間に透明な羽根が見え隠れしている。
「王子様のバカ〜ぁ、本当に女心がわかってないんだから! あたしが誰の為にお洒落をしているんだと思っているのよ」
ブチブチと草を毟るチェルシー。
「そもそも王子様は女の子に甘い癖に、あたしのことはちゃんと女の子扱いしてくれたことないかも‥‥グリッターナが居れば、あたしのことなんてどうでも良いのかな‥‥あんたたち、どう思う?」
野良猫相手に愚痴を言うチェルシーに困ったように猫が「にゃ〜ん」と鳴く。
「チェルシーちゃん、どうしたの〜? 権兵衛ちゃんは一緒じゃないの〜?」
ママに声を掛けられて、顔をあげるチェルシー。
「ひ〜ん、ママぁ〜!」
ママに抱き着き、緊張がなくなったのか泣きじゃくるチェルシー。
「権兵衛ちゃんと喧嘩したの? チェルシーちゃん、段々寒くなって来るから一緒に帰りましょう」
チェルシーの頭を撫でるママ。
「でも‥‥」
「大好きなお友達と喧嘩したままって寂しいじゃない〜? ね、仲直りしましょ〜? 今日も権兵衛ちゃんが沢山卵焼きを食べるから沢山作らなくちゃ。だから、チェルシーちゃんも手伝ってね?」
「‥‥うん」
* * *
「手堅い所でチョコクッキーが無難かな?」
料理が得意な由沙に連れられて由沙の家に行く魔王子達。
テーブルに置かれた籠に入っているチョコを見て「70%‥99%カカオ‥数字の多い方が成功しそうだが?」と魔王子。
「お父さんのチョコは食べちゃ駄目よ」由沙と突っ込まれる。
「薫君はボールにチョコを削って入れてね。デュランさんは、こっちの粉を振って」
てきぱきと指示をして行く由沙。
「‥‥どうしてバレンタインなのに男同士でチョコクッキーなんか造らないといけないんだろう」とぼやく薫。
「でも皆初めてだけど、なかなか良い手付きじゃない?」とオーブンの温度を確認するグリッターナ。
思い思いに生地を型で抜き、オーブンでクッキーを焼き上げる。
焼き上がったクッキーに湯せんしたチョコをつけてたり、ある者はメッセージを書き‥‥‥。
「「「「できたぁ!」」」」
「ま、初めてだとこんなもんだろにゃ〜」
当然の結果として出来上がったクッキーをつまみ食いをしたプッチは皆の袋叩きに合った。
* * *
ママにエプロンを着させて貰い、自分とそう変わらない大きさの卵を持ち上げるチェルシー。
「‥‥お、重い」
頭より高く卵を持ち上げ、ボールの縁に叩き付ける筈が‥‥そのままボールの中、卵のプールに墜落する。
「ひ〜ん、あたし、役立たず。王子様に卵焼きも作ってあげられないの?」
卵まみれになりながら泣くチェルシーをボールの中から救出し、タオルで拭くママ。
なくしちゃいけないとエプロンのお腹のポケットに入れた水晶玉が光り出す。
「あら、あら? ‥‥まあ♪」
ママの目の前で人間サイズに大きくなるチェルシー。
「‥‥これのおかげ?」
水晶玉を指で摘むチェルシー。言っては何だが魔王子よりどう見ても頭2個は背が高い。
簡単に言えばモデル体型である。
「チェルシーちゃんだけ身長が高くなってズルいって権兵衛ちゃんが見たら言うわね〜☆」
「ママ、突っ込む所が違う‥‥でも、今なら思いっきり王子様の為に卵焼きが作れる!」
ある意味似ているチェルシー&ママコンビだった。
* * *
薫の家にやって来た魔王子。
「やっぱりここにいたな、チェルシー」
魔法アイテムの抗力が切れた途端、水晶玉は石に変わってしまった。
残ったのは、いつもの人形サイズに戻った卵だらけのチェルシーと大量の卵焼きの残骸‥‥‥。
「‥‥‥悪かったな、チェルシ−。コレをやる」
ずい、っとハート柄のラッピングに包まれたクッキーをぶっきらぼうに差し出す魔王子。
「上手いかは知らん‥‥初めて作ったしな。グリ子の奴がチェルシーの事だからカラスに誘拐されたりするんじゃないかと‥‥」
「ごめんね、王子様‥‥。でも、あたしのことちゃんと心配してくれたんだね」
「当たり前だ。チェルシーは大事な友達だ。ずっと一緒だったし、これからもずっと一緒だ」
む〜んと言う魔王子、てへへっ。と笑うチェルシー。
「薫のママに教わって、あたしが作ったんだよ♪」
皿に盛られた出汁巻き卵を指差すチェルシー。
ぱくりと出汁巻き卵を食べる魔王子。
「おお、これはちょっと焦げたり何だりしているが‥‥甘みとしょっぱさが丁度良いのだ、百点満点だ」
にっこりと笑う魔王子。
「やっぱり王子様大好き♪」
チェルシーは魔王子の首に抱き着いた。
* * *
薫の家のベランダで夜空を見上げる薫とグリッターナ。
「全く、王子は世話が焼けるんだから。薫も大変でしょう」
「グリ子ちゃん程じゃないだろうけど、もう慣れたよ」と笑う薫。
「あ、婚約の事言っているの? あたしや王子の場合は王族だから色々あるのよ」
くすくすと笑うグリッターナ。
「大人になったら結婚しなくちゃいけないかもしれないけど、あたしの旦那様になるんだったらもっと格好良くなってもらわなきゃね」
笑っていたグリッターナ、一瞬真顔になってこう言った。
「‥‥薫がね、王子の名付け人で良かったよ。王子もちょっと会わない内にしっかりしたし‥これなら安心かも」
「え?」
「あたしは先にエム・ランドに帰るから、王子やデュランには言っておいてね」
何時の間にかグリッターナの手に握られている羽根が着いた銀色のステッキ。
くるりと回すと、グリッターナの身体が中に浮かぶ。
まだ半月の筈の月が、空に満ちている。
「薫‥王子の事よろしくね‥‥」
そういうと月の光にグリッターナの姿が解ける。
一瞬まばゆい光がベランダに満ちたと思うと月は何ごともなかったように半分欠けたまま空に浮かんでいた。
「薫ちゃ〜ん、権兵衛ちゃ〜ん、皆、ゴハンよ〜☆」
ママの声が夜空に響いた。
●おまけ:それぞれのチョコ(結末)
*デュランの場合
『魔王子の婚約者』であるグリッターナからの置き土産のチョコを当初受取り拒否するも魔王子に「『婦女子を泣かせるな』と言ったのはデュランだろう。騎士として恥ずかしくないのか」と突っ込まれ渋々受け取る事に。だが受け取ったチョコレートを口にした途端首が落ち、次の満月迄、元に戻らなくなってしまった。
*プッチの場合
魔王子の卵焼き(ママ作)をこっそり味見をしているのを発見され、魔王子から虎刈りの刑にあう。
「ママの卵焼きは最高だぎゃ、一人占めは猾いだぎゃ!!」
ママが腹巻きを作成してくれたので風邪を引かずにすんだ模様である。
*薫の場合
塾から帰ると机の上にママからのチョコレートと‥‥手作りのチョコクッキー。
「誰からのだろう? なんか見覚えがある‥‥」
しばらくクッキーを見ていたが「あ!」と言って顔を赤くする薫。
受け取った人も受け取れなかった人もそれぞれに思い出深い聖バレンタインデーとなった。