「7」聖VDライブ・恋アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
不明
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/14〜02/17
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●本文
古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいである。
「浩介、バレンタインライブの準備はどうなっている?」
先日のメニュー決めの時はしっかりとんずらをしていた親父さんであったが、一応「7」のオーナーだったりするので気にしていたりする。
「料理の方は一律1000円で出そうかと思っています。カップルルームは通常着けているウェルカムドリンクをシャンパンかチョコレートカクテルを選択出来るよう、料理は10品目選んで頂いて席代とライブ代込みで16000円になります」
「まあ普通っちゃあ、普通の相場だが‥‥」
そういって浩介が差し出したメニューの数を見て閉口する親父さん。
「‥‥レストラン並みだな」
「そうですね。その為に今回スタッフを多めに募集します」
「後、内装はVIPルームは基本の白黒モノトーンのまま、カップルルームは赤に内装を変更します」
「‥‥‥塗るのか」だらりと汗を流す親父さん。
「照明と花とかが中心になります。元々、あそこのソファーは赤ですし、モダンな大人の赤にします」
「そうか‥‥」
大事な西洋甲冑や動物のトロフィーが赤く染められないと知って安堵する親父さん。
●バレンタインデーパーティ参加者募集!
ライブハウス「7」にてバレンタインデーパーティを行います。
ビートが効いた音楽に乗ってバレンタインデーを大事な人と一緒に楽しんでみませんか?
*1Fは立ち見席のみ、飲食物の持ち込みをお断りしてい折ります。
エントランスにあるスタンドバーにて飲食はお願い致します。
*カップルルーム御利用者はライブ当日来店時お部屋に恋人へ贈るメッセージカードを置く事ができます。
御利用になる場合は事前にスタッフにお申し付け下さい。
●料金表
『ライブチケット価格 3000円』
『VIPルーム+ワンドリンク +席料1000円』
『カップルルーム+フリードリンク +席料3000円』
●料理
<軽食>
ハートチップス
一口寿司のフライ
イカの詰め物
<スープ>
タラとアスパラとレタスの和風スープ
白湯美肌
<サラダ>
グリーンサラダ
シーザーサラダ
<パスタ>
4種のパスタ盛り合わせ(ペスカトーレ、ペペロンチーノ、カルボナーラ、ボロネーゼ)
ホワイトグラタン
<肉料理>
ホロホロ鳥のチョコレートソース掛け
小牛のチョコレートソース煮
紅茶煮豚肉
<デザート>
フォーチュン・カップケーキ
フルーツグラタン
バラのフロマージュ
メロン粥
チョコフォンデュ
「カクテル類など飲み物とナッツ類はこの期間は無料です」
「まあ、あんまり料金が高いと誰も来ないだろうしな」やってみろ。と親父さんのGOサインが出た。
●リプレイ本文
●2月14日、志祭 迅(fa4079)は無骨な鉄門の外で待ち合わせの相手、梓弓鶴(fa4048)を待っていた。
「‥‥緊張するな」
弓鶴とは、クリスマスに告白して以来、会っていない。
クリスマスも”ゆっくり”というよりは、どちらかと言えば慌ただしかったような気がする。
ジンは「弓鶴に会いたい」と思った。
今日も駄目元で誘ってみたらすんなり「OK」が出たので嬉しかった。
理由を聞かれて「会いたい」と言うのは照れくさく「理由は聞くな」と言うのが精一杯だった。
店に予約を入れる際に頼んだ『22本のバラとメッセージカード』‥‥ちゃんと用意されているのであろうか?
「やっぱり確認の電話入れれば良かったかな?」
そんな事を考え乍ら待っているジンの目に地下鉄の出入り口から上がって来る弓鶴の姿が見えた。
***
「2月14日、暇か? たまには音楽を聴きながら話すのもいいかな ってさ。おまえ、こういうの好きだっただろう」
そう電話から聞こえる侑(ジンの本名)の声は、どこか緊張しているようだった。
「ねえ、侑。どういう風の吹き回し? あたしをライブに誘うなんて」
「理由は聞くな」とぶっきらぼうに言う侑。
最近は仕事が重なるでもなく‥‥そう、告白されて以来だから丸2ヵ月お互いの顔を見ていない計算になる。
世間で言う恋人らしくはない状態に「告白したのって‥‥本気だったの?」「今でも、その気持ちは変わらなの?」と侑に訪ねたくなる。
「丁度、オフだから一緒に行きましょう。最近、お互いにすれ違いだから楽しみね」
そんな電話を交してから今日という日が早かった気がする。
ユズが侑との約束が決まって最初にした事は、侑へのプレゼント『ビタ−チョコのウィスキーボンボン』を買う事だった。
「甘いものは苦手だって言ってたけど、これなら大丈夫‥‥かも」
実際、それだけは先に選んで良かったと思う。
今日も現場が押して、おしゃれをする暇もなかった。
それでも何とか時間に間に合ったので良しとしなければ‥‥。
階段を上がると侑の姿が見えた。
「これを逃したら‥‥次、いつ会えるかわからないからな」
そう言う乍ら受付を済ます侑を横目に料金表を見る。
安くない料金に「あたしも払う」と言った所「俺が誘ったんだから、弓鶴の分も俺が払う」と侑。
こう言い出したら絶対聞かない侑の性格は判っている。
受付の女性が笑っているように見えたので、あたしは大人しく奢られる事にした。
階段を上がり奥のカップルルームにエスコートされ、入って行く。
真っ赤な部屋にあたしが一瞬吃驚していると、こっそり見ると侑もそうらしく顔が引きつっているので可笑しかった。
でもここ迄来て帰るのもなんだし、大人しく部屋に入るとローテーブルの上に薔薇の花束がメッセージカードと共に置いてあった。
「あたしに?」
頷く侑。
「クリスマスに告白したの覚えているか? あの言葉は、本当なんだぜ。今でも、その気持ちは変わらない。マジだぜ?」
開いたカードには『俺のパートナーはおまえだけだ。これからも宜しく』と侑の文字で書かれていた。
侑らしいバカな演出に胸が熱くなる。
「そんなこと言わなくても、あたし達は公私関わらずのパートナーよ」
そう言って、あたしは侑の胸に飛び込んで行った。
●2月15日、藤間 煉(fa5423)が訪れたのは偶然だった。
たまたま着飾ったカップルがその門をくぐったのを見たからだった。
首を巡らせると申し訳程度のネオン看板が見え、ライブハウスと知った位だった。
「ライブハウス‥‥何年振りだろ、懐かしいねぇ♪」
当日券を買い、上演開始迄の時間潰しに1Fエントランス脇のスタンドでビールを飲む。
若い女性4、カップル4、男性2という所だろうか?
「ああ‥バレンタインデーライブってあったな‥‥折角だからフリーっぽい可愛い子もいるし、声掛けてみようかね♪」
***
「え〜? 私、もうチケット買って中入っちゃったよ? う〜ん‥しょうがないけど‥‥うん、仕事頑張って」
そう言うと海鈴(fa3651)は携帯電話を切り、溜息を吐いた。楽しむ筈の気持ちが一気に凹む。
「どうしようかな? 折角来たのに一人じゃ‥‥」
エントランスをウロウロしている海鈴に声を掛けたのは、レオンだった。
「俺は煉って言うんだけど‥‥一緒にライブを楽しまないか?」
「う? なぁに? 一緒に遊んでくれるの?」
見知らぬレオンに声を掛けられ、内心どきどきする海鈴。
「煉さんって言うんだ‥‥私は海鈴! よろしくねぇー」
「海鈴ちゃんか、今日は1人で遊びに来たの?」
「ううん、ドタキャンされちゃってさぁ‥‥相手、急に仕事で‥‥来れなくなっちゃって」
「海鈴ちゃんの誘い断るヤツの顔がみたいわ」と苦笑するレオン。
「ちょっと煉さんに似ているかも‥‥忙しい人だって分かってるんだけど、でもやっぱ寂しい‥‥」
「じゃあ‥‥元気が出る様に奢ってあげよう」レオン。
「奢ってくれるの? やたっ! じゃあ、チョコフォンデュがいいなー♪」
「OK」
目指すチョコフォンデュというメニューがないのでスタッフに尋ねる。
「すみません。1Fの机だと鍋が安定しなくって‥‥危険ですから2Fだけなんです。まだ今日は空きがあるはずなんで受付に確認して頂けますか?」
そうスタッフは答えた。
VIPルームの使用料は1人1000円である。
振り返ると期待に満ちた海鈴の笑顔が見える。
「しょうがないか」
そう言うとレオンは、受付に席が空いているかを確認しに行った。
「ありがとー♪」
嬉しそうに溶けたチョコに苺を絡ませる海鈴。
実際、音の返りも1Fの立ち見(スタンド)に比べれば格段に良い。中の高性能スピーカーで楽しむのも、デッキに出て会場の雰囲気と生音を楽しむのもいいだろう。
「‥‥実は良い選択をした‥と言う事になる‥かな」
レオンは明日も暇だと言う自分の子供でも可笑しくない年齢の海鈴を誘ってみる事にした。
「明日、会えたら話を‥‥聞いて貰いたいね」
●2月16日、樫尾聖子(fa4301)はウキウキしていた。
そう今日は特にお目当てのフォークシンガーが出るのである。
本当はもう1人のパートナー‥‥少なくともせーこから見れば二人はラブラブのカップルさん。
彼等をセットで見ると腐女子モードが、うっかり全開になってしまうベストパートナーに見える。
だが勿論彼等だけではなくせーこの萌えを刺激するベストカップルを探すべく、初日から4日間通しチケットはゲット済みである。
だが残念な事に14、15日は、せーこの萌えを刺激するカップルはいなかったのである。
「やっぱり彼等じゃなきゃ駄目やのね〜」
ばりばりとカクテルを片手にナッツを齧るせーこ。
チケット購入時にしっかりと出演者リストを確認し、プレゼント用「チョコ付きのティーセット」を購入した。勿論彼をイメージしたプレゼントには、カップに時計を覗くチョッキを着た兎の絵がプリントされている。
「プレゼントはいつ渡したらええんかな? 退場する時にダッシュかまして、かな?」
楽屋には関係者以外立ち入り禁止の文字が書かれ、入り口にスタッフが立っている。
乗り込む訳には行かない。
少なくとも立ち見席の何処に陣取ればステージにいち早く駆け寄れるかは前日迄にチェック済である。
「真正面からかぶりつきで見たい所やけど、端っこの方がステージには行き易いからしゃあないか‥‥」
ピアノのインストゥメンタルが流れる中、せーこはステージに向かって熱い念波と視線を送る。
(「折角の萌えなウサ尻尾とウサ耳が見えんやん‥‥でもしゃあないか、人間も多いし」)
お目当ての彼は、ウサ耳を大きなバンダナで隠していた。
演奏が終わり、礼をして立ちさろうとする出演者に猛然と奪取をかますせーこ。
「これ、安物やけど受取ってや!」
「お、お姉さん、樫尾さんでしたね‥‥」
「か、感動や。覚えてくれたんやね〜」
嬉しさにうるうると乙女モードに突入するせーこ。
ウキウキでライブから帰る所‥‥偶然にもスタッフで入っていたもう1人の彼を見つける。
「なんや、私ったら滅茶阿呆や。愛しの彼を見落とすなんて、警備員さんでおったんやないか」
見かけぬ筈である外回りの警備を担当していたのである。
「これは是非ツーショットを‥‥」
せーこは、街路樹の脇でベストショットを撮るべくデジタルカメラを構えて張り込むのであった。
2時間寒空で待った甲斐があり、渾身のベストショットを撮る事が出来たようである。
「明日も絶対来なあかんな」
***
レオンとの約束に従って、再び「7」を訪れた海鈴。人込みの中、レオンを見つけた。
「あ、煉さーんっ! 話、聞き来たよ」
ブンブンと嬉しそうに手を振る海鈴を見ると何でも上手くいきそうな気がして来る。
「海鈴ちゃんから見れば・・こんな年上がって可笑しいかも知れないが‥‥誰かに聞いて欲しいんだわ」とレオン。
「そうなの?」
「‥‥俺さ、昔バンドやってたんだよな‥‥弟とさ」
「そうなんだー‥‥昨日一緒に来る予定だった人もバンドやってるんだよ!」
「‥‥喧嘩別れしてねぇ・・それに・・俺の事、兄貴って知らなかったみたい」
そんな大事な事を聞いて良いのか? とちょっと怪訝な顔をする海鈴。
でも見知らぬ相手だからこそ言える本音があるのも海鈴は知っている。
「そっか‥‥兄弟なのに知らないって‥‥なんか複雑だねー‥‥」
「でさ‥‥海鈴ちゃんの・・知合いで‥知ってそうなヤツとかいたら・・教えて欲しいんだけど‥‥っつーのは、冗談♪」
「え、冗談なの? 信じちゃったよ−」
そう言い乍らも、ふと自分より仕事を優先した男の顔が海鈴の中に過る。
(「‥‥確かに似てるけど、まさか‥‥って、そんなわけないよね!」)
唐突に浮かんだその可能性を否定するように頭を振る海鈴。
ライブが終わり、帰り際。ふと海鈴、基本的な事を思い出してレオンに聞く。
「煉さん、私、男と女どっちだと思って声を掛けたの?」
「どっちって?」
「私、男だから」
びっくりするレオンを見て、やっぱり。と笑う海鈴だった。
●2月17日、4日から遅れる事3日。本来であれば少しは空いているはずの「7」の中はごった返していた。
「今日一日はずっと『胡都君のもの』になるって約束したんだ♪ そしてライブが終わった後も一緒に遊ぶの〜☆」と明るく言う紗綾(fa1851)に苦笑する四条総一郎(fa0181)。
少なくとも初日、友人のさーやと顔を合わしていなかったら危うく『今』さーやが腕を組んでいる豊城 胡都(fa2778)と『ピアノの弾き語りをする出演者』であるさーやの恋人と取り違える所であった。
暫く音楽を離れていた総は、感を取り戻す為に4日間の通し券を購入して「7」に通っていた。
実際に連日出演者が違う事もあって通し券は意外と売れていた。
さーやもこのバレンタインライブを楽しんでいるらしく、2日目に再び会った際、総にもチョコのプレゼントをくれた。
「総君も一緒に楽屋行こうよ」とさーや。
「俺も行って、いいのか?」
「大丈夫〜☆ 店長さんと店長パパさんもチョコあげたらいいって。『ステージの後、プレゼントを贈るのは大変だろう』って言ってくれたんだよ。なんでだろう?」とプレゼントが入った紙袋を示すさーや。
中には、白と黄色のマーガレットの花束や赤い薔薇が2本覗いている。
さーやは自覚がないようであるが、本日のもう1組の出演者「Fasciner」の1人、さーやにとって大事な家族であるV系ヴォーカリストは、総も良くTVで見かける有名人であった。
総は、好奇心が優って楽屋に着いて行く事にした。
***
「店長、これを彼に渡して貰えますか?」
小さな花束を差し出す胡都。さーやとの待ち合わせ時間よりかなり早めに「7」にやって来ていた。
「自分で渡した方が良くないか? 他の人は不味いが君は彼の身内みたいなモノだろう」
別にさーやと君からチョコを貰ったからという訳ではないぞ。という浩介。
「あんまり直接渡したりすると調子にのるので‥‥あ、でも紗綾さんと今日は一緒に楽屋には遊びに行きますから店長は知らん顔しておいて下さいね」と笑った。
***
楽屋を訪ねた後、カップルルームに入ったさーやと胡都は早速デザートを中心に10品を選んだ。初日から見た事がない物があると二人で一通り頼んで食べているが、やっぱり甘い物に目がない二人。
「後は幾らでも‥‥紗綾さんの好きなものどうぞ」
「胡都君、いつも姉さんじゃなくて『紗綾さん』って呼ぶんだよね‥‥少し寂しい‥‥」
「え?」
意外なさーやからの告白にどぎまぎする胡都。
「だから今日は、もっと仲良くなれるように一杯仲良しさんしちゃうね♪」
そういうとさーやは、胡都への紙袋からプレゼントを取り出た。
「胡都君には、トリュフチョコと香水のセット♪ 男を磨いてまたデートに誘ってね♪」
「一生懸命、男を磨かせて頂きます」苦笑し乍らさーやからのプレゼントを受取る胡都。
他のデザートに先駆けて一番先に届いたフロマージュをスプーンに掬うさーや。
「じゃあ。はい、あーんして?」
友人でもある男の顔を思い出し乍ら、自分達より大切な者が出来てしまった姉を今日1日位独占しても良いだろう。と胡都はすんなり口を開けた。