「7」聖VDライブ・音アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
6.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/14〜02/17
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●本文
古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいである。
「浩介、バレンタインライブの準備はどうなっている?」
先日のメニュー決めの時はしっかりとんずらをしていた親父さんであったが、一応「7」のオーナーだったりするので気にしていたりする。
「今回ですね。1日に1公演、演奏するグループを最大2組に絞って4日間程交代で演奏してもらおうかと思っています」と浩介。
目出たくVIPルームやカップルルームに出すメニューも決まって、一つ肩の荷が降りた為か調律にも気合いが入っているようである。
「まあ、複数日に渡って他の出演者と組んで出演する兵もいるでしょうし、恋人がお客さんで来るかも知れませんから‥‥その時はいつもより頑張って良い所を見せるでしょうし、色々と楽しみですよ」
「そうだな。まあ最近おっちょこちょいが増えて、持ち物を確認しない奴が増えて来たからそれが心配だが‥‥公演数が多い分、全員で1曲を演奏するとか最近なかったから期待したい所だな」と親父さん。
●バレンタインデーパーティ出演者募集!
テーマ 『愛また恋』
グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ)参加も可能。
歌詞のないインストゥメンタルも演奏可能。
演奏は、タイトル・歌詞・曲は、オリジナル限定。
ピアノ&ドラムは、貸し出し可能。
バックバンドはおりませんので、音源を持ち込む場合はスタッフにお申し付け下さい。
※1日1公演、出演者 2組迄
「まあ尤も出演者は『営業時間』中仕事に徹してもらいますので、楽屋や通路でいちゃついているのを発見したら、レインボーアフロを被って居残り掃除、勿論屋外をしてもらいますがね」と浩介はハロウィンの時に使用したアフロを手ににやりと言う。
逆の言い方をすれば仕事が終われば恋人と待ち合わせをしようが、何しようが戸締まりと火の元をしっかりしてくれれば構わないのである。
「全員でされると困りますが、まあそれなりに顔が売れている連中も出入りするようになりましたから、スキャンダルになると事務所も困りまるでしょうしね」と苦笑した。
●リプレイ本文
●2月14日 ジェンド(fa0971)、雅楽川 陽向(fa4371)
「おはようございま〜す‥‥ジェンド君、何をしてはるの?」
元気な声で楽屋入りをした陽向。
今日の服装は淡いピンクのワンピースにGジャンとスニーカーで、甘くなり過ぎないカジュアル。
鏡に向かって帽子と格闘しているジェンドを見てこう言った。
「俺は歌にゃあんま自信もないから半獣化しようと思ってさ。上手く耳が隠れないかと‥‥」
「ニット帽とはどうだ? あとはアフロとか」と浩介。
「アフロは『絶対』嫌だ」とジェンド。
「なんだ、つまらん‥‥」
大量のアフロを用意したが出番がないのが不満そうである。
「そうや、皆に配るもんがあるんや。バレンタインと言えばチョコレート♪ そう言いつつも溶けると困るよってチョコクッキーやけど。はい、ジェンド君もどうぞ♪」
可愛らしいラッピングを全員に配りはじめる陽向。
「お菓子の品評会ちゅう名の味見大会、何時でも参加OKやで♪」
実は甘い物に目が無いらしい陽向。
「じゃあホワイトデーは大量のキャンディかマシュマロを買わないといけないな」と浩介が笑った。
***
「俺は、音楽が恋人だ! が、デート予定の奴ら『がんばれー』と応援しておこう」
微妙なジェンドのMCからバレンタインデーライブはスタートした。
【sweet days】
♪♪♪〜
星が瞬く夜 息は白くなって
少女は悴む 指を摩る
時計の秒針 ゆっくり回って
跳ねる心臓 ぎゅっと押し込めた
(女の子目線で作ったと言う緩やかなメロディの曲は、優しい声で丁寧に歌い上げるバラード)
切れる息 明らむ貴方の顔
頬に触れる指 微笑みを浮かべて
浮かぶ月を 見上げたなら 少女は甘い夢を見る
せめて共に 祈らせて 二人の幸せを
濡れた瞳 そっと拭い もう、離したくないの
こんな日々が 続けば良い ――sweet sweet days
弾む心臓 揺れる貴方の顔
零れる涙頬濡らし ただ 嬉しいの
(駆け出すようなフレーズを指で爪弾いてから、一旦伴奏を止め‥‥)
しずかな夜 祈り捧げ 少女は甘い夢を見る(静かに伴奏再開)
せめて共に 眠らせて 空が白むまで
触れた手と手 ぎゅっと握り もう、離れたくないの
今日も明日も そのずっと先も ――sweet sweet days
――sweet sweet days
(アコースティックの優しい余韻がステージを包み込んだ)
〜♪♪♪
***
ステージ上をピンクと赤のハート型の風船が飾る。
その中を赤い風船を抱いて陽向がステージに登場する。
【Jack in the box】
♪♪♪〜
赤い色したリボンをかけて
小さなHeartを添えるの
ふっと零れ落ちた期待のほほ笑み
準備はいいよ 1・2・3!
(曲は跳ねるような心を現したポップ調。アクセントに跳ねるようなマリンバの音が軽快に入る)
青空の下で 飛び出した思い
鞄の中で 心が騒ぐ
あなたのもとに 届けるBox
びっくりさせたい
Sweet Chocolate!
(マリンバの音がステージを盛り上げ、陽向の歌は終了した)
〜♪♪♪
●2月15日 林檎(fa0484)
「ソロでやることに意味がありますから‥‥」というクロの表情はやや硬い。単独でのステージ故の緊張なのか、それとも‥‥どちらにしてもクロに取って今日は重要な日である。
先程友人の美術担当のスタッフに薄い若葉を思わせる紙にペンで若葉が描かれた紙飛行機をリクエストして来た。
「あたし、今日歌うんだ‥‥」
「うん、頑張ってね」
短い言葉のやり取り。
「ライブが上がったら‥‥」
「あ、ゴメン、呼んでいるみたいだ。また後でね」
他のスタッフに呼ばれ、席を立つ彼。
出しっ放しの彼の工具の上に芽吹きが描かれた白い紙飛行機をそっと置く。
小さな勇気を込めて‥‥。
【芽吹きの報】
♪♪♪〜
話の合う相手
あたしを認める相手
文句のない友人
仲の良い友人から 変わるまで
長い時間は要らなかった
身近な貴方の 良さを見つける度
大きくなる‥‥
(想いを抑えていた冬を越え、相手に伝える歌だという静かだが激しい想いが込められたピアノによるバラード)
この場所が
私の場所だと思ってた
同時に 叶わない夢だとも
一歩進むだけの勇気が なかったから
おどけた口ぶり
からかうそぶり
そんな貴方が‥‥
(声にならないクロの唇が『好き』と形作る)
気づかぬふりを していたけど
これ以上は無理と知ったから
身近な貴方に 言葉を贈ろう
たった一言「好き」と
貴方の隣が
私の居場所だと信じたい
夢を 変えるための一歩
気持ちを育むだけでは 足りなくなったから
貴方に言葉を贈ろう
(ピアノを止め、切々と歌い上げるクロ‥‥クロは歌い終わると客席に紙飛行機を一つとばした‥‥スポットライトが紙飛行機を追う。客席に落ちると同時に全ての照明が消えた‥‥)
〜♪♪♪
「これだけの事を言われたら男冥利に尽きるだろうが‥‥」
「クロの恋が成就する事を静かに俺達は願いましょう」と浩介は言った。
(「彼はあたしの曲を聞いてくれただろうか?」)
疲れ切った表情で舞台袖に戻って来るクロ、椅子に座り目頭を揉むクロ。
「お疲れさま。とても良い歌だったよ」と肩を叩かれた。
優しい声に目を開くが、声の主はもう姿が見えなかった。
●2月16日 四菱ベンジャミン(fa5286)、鈴木悠司(fa5189)
「メリーバレンタイン! 今日はよろしく。はい、これチョコレート!」
一緒にステージを行うユウがベニーにチョコを手渡す。
「あ、変な意味であげる訳じゃないから」と明るく言うユウ。
「因に『チョコカレー』って言うのもあるんだけど、どう?」
「どうって‥‥なんだか凄く甘そうだね」とベニー。
「カレーの隠し味にチョコは聞くが‥‥微妙だな」と浩介。
***
半獣化したベニーが奏でるのは、ゆったりとしたインストゥルメンタル。
ピアノのバラードである。
兎耳は大きめのバンダナで隠してある。
しっとりとした空間に馴染む曲は、静かなピアニッシモ。
ベニーは演奏し終わると客席に一礼をした。
観客の拍手の中、ステージに向かって突進して来る見なれた女性。
「四菱君! 安物なんやけど受取って!」
あまりの迫力にプレゼントを受取るベニー。
恐る恐る楽屋に戻りプレゼントを開けるベニ−。
可愛らしいチョッキを着た兎が時計を覗き込んでいるカップが入ったティーセットであった。
「あ‥‥可愛い‥‥」
マトモな贈り物でよかったとベニーは胸を撫で下ろした。
***
【Sweet Magic】
♪♪♪〜
「From Your Valentine!」
(明るい呼掛けから曲はスタートした。ノリのよい軽い前奏)
君が僕にかけた素敵な魔法が解けない
君に会えない
なんて想うだけでほら世界は色褪せてしまうよ
(明るく一気にエレキギターの音が響く。ユウはコードを必死に押さえながら歌う)
ああ 今すぐあの素敵な魔法で彩って!
“I’m no match for your sweet magic!”
(力強くユウは声をあげて歌い上げる)
君の指先 想うそれだけで
君の囁き 想うそれだけで
その甘い甘い全てで僕を包んで
決して離れず抱きしめあうのさ
そう 素敵な この甘い魔法は
決してとけることなど無いのさ
(明るく照らす照明の中にユウの汗が輝く)
(間奏)
It’s so sweet sweet sweet magic!
(力強く歌い、切れ良くユウの曲は終了した)
〜♪♪♪
「少し気持ちにテクが追い付いていない感じだったね。思い切って他の出演者のように半獣化するのも一つの手だったが、チャレンジしたユウの気持ちは良かったと思う」
袖に戻って着たユウにこう声をかける浩介。
●2月17日慧(fa4790)、『Fasciner』嶺雅(fa1514)&美日郷 司(fa3461)
今日が一番バレンタインデーっぽく楽屋では数多くのプレゼントやらチョコが飛び交っている。
「差し入れで小さいチョコ持って来たよ。嶺雅さんには特別にこれー」
そう白シャツにの胸元から兎モチーフがついたシルバーネックレスを揺らしながら楽屋入りしたケイが、レイに薔薇の造花が着いた黒い箱を手渡す。
レイは姉から一口チョコと一輪の赤薔薇を、一緒にユニットを組むツカサも彼女から同じ品を受取っていた。
だが更にレイは差出人不明の小さな花束を1つ多く受取っていた。
少なくとも「ファンからの差し入れは舞台で受取るように」と言われているので知り合いからなのだろうが「誰だろう?」とさかんに首を捻っていた。
***
恋人から貰った白と黄色のマーガレットの花束がピアノの上蓋に置かれている。
楽屋を訪ねてくれた際、貰った物だ。
恋人とは血の繋がらない弟だがよく知っている友人と腕を組んでいたり、この後もデートをすると聞いて、「反対するほど野暮じゃない」と思い乍らも嫉妬心が湧いて来る。それに輪を掛けたのは別の恋人の友人だという男に頭を嬉しそうに撫でられている恋人の姿である。
「平常心、平常心‥‥ここで妬くなんて僕もまだまだだなぁ」
「そんなこともあるさー。気分転換に超プレミアムスポーツカーに乗せてあげる!」と彼女の弟であるレイは笑って言ったが、ちょっと複雑な気分である。
(「でも僕の気持ちはカップルルームで見ていてくれる彼女にステージから伝えれば良いよね」)
そう気持ちを切り替える。
ステージ全体を淡く青い照明が照らしあげる中、ステージ中央に立つ半獣化姿のケイ。
「今日は大好きな人に宛てた曲を歌います。心を込めて歌うから、ちゃんと聞いててね?」
花束を手に微笑み花に軽くキスを落とすケイ。
【百年の翼】
♪♪♪〜
儚く小さい僕の翼では
あまりに広く高い空だった
けれども君と手をつないで見る
空は鮮やかで澄んだ青
(優しく囁くように歌い始めた歌は、甘い中性的なケイの声を引き立たせる柔らかいミドルテンポの和音が特徴のバラード)
君と出逢えた奇跡が 何より僕には大切で
百年経っても一緒にいられますように
(すっと伸びやかにケイの声が響く)
切なさも哀しみも僕が包み込んであげる
きっとそのためにある翼だから
裸足で立つ地面から伝わる温かさ胸に
ずっと君と歩んでいこう
(感情を込めて切々と歌い上げる)
ふたりで‥‥
(優しく囁くケイの声が観客を包み込む‥‥曲の余韻に併せて照明がフェードアウトし曲は終了した)
〜♪♪♪
***
白と灰色で構成されたシンプルだが気品あるサンドリヨンに身を包みストールを纏うツカ。
お洒落に着崩したミスタースミスのレイが喜々とし乍らツカの髪を結い上げている。
しっかりと化粧迄したその姿を唖然とした顔をして見ている親父さんに「深く追求しないでくれ‥‥演出上の問題だ‥‥」とむっつりと言うツカ。
それに対して「なんだ、ローヒールなのか」と残念そうなのは浩介である。
「ここ迄完璧に女装をしたのなら7cmとは言わないが、5cmヒールは履いて欲しい所だな」
「ステージ上でヒールだと転ぶだろうからな‥‥ローヒールだ」
【失楽園】『Fasciner』
♪♪♪〜
アンティックドールのような瞳に映る
(真っ暗なステージの中、レイのアカペラから始まる曲はジャズ調のバラード。同時にピンスポットが舞台やや中央よりに置かれている赤い薔薇の花束を映し出す)
残酷な笑みが俺を酔わせていく‥‥
(歌い乍ら舞台に登場したレイは花束を拾い、花束を抱えたままスタンドマイクで歌い出す。声の余韻に併せ薄く照明が舞台を照らし、ツカのピアノがゆったりとスタート。スポットライトに浮かび上がるレイとツカ)
気高く 気怠く 真っさらな仮面を貼り付け踊り狂う夜に
強かで 優雅な 魂に魅了され蝕まれる
(テンポは中盤からややスピードを上げ、再び後半、元のテンポに復調する。真っ暗になったステージに二人の姿だけが浮かび上がり‥‥)
輪郭をなぞる白い指先
愛でるように 憎むように
モノクロの鍵盤を赤で染めて
歪な旋律を描く協奏曲
(複雑に絡まり怪しく変調するメロディが観客を魅了する。レイの指がツカの頬を怪しく撫で、項に腕を絡ませる‥‥その度に観客席から黄色い悲鳴が上がる)
永久(とわ)の楽園 狂おしく
落ちても気づかぬ 甘美な誘惑
泡沫の恋の末路(さいご) 知るよしもなく
一夜の邂逅 ただ君を見つめる
(曲が終わりが近付くに従い、絞り込まれていくスポットライトの中、レイから花束受け取るツカ。激レアものと言われるツカの微笑に一層大きな黄色い声援が飛び交う‥‥そんな中、二人はステージを後にした)
〜♪♪♪
***
「出待ち」をしているファンの間をかき分け、レイとケイがコスモススポーツに乗り込む。
警備スタッフがファン達が飛び出さないように押さえている脇を高い排気音を立ててスポーツカーが大通りを駆け抜けていく。
それを見て、残念そうにファンがバラバラと散って行く。
「箱崎から都心環状線に乗るそうですよ」と浩介。
「まあレイもケイも隣がお互いの恋人が座っていないのは微妙だな」と親父さん。
「たまには俺も流して来るかな?」
後を浩介に任すと古いバイクに跨がると夜の街に親父さんは消えて行った。