−ザ・DOG−第6話アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/22〜02/26
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●本文
●深夜ドラマ『潜入捜査官−ザ・DOG−』第6話:「堕天使」役者募集
<あらすじ>
とある高校の校内で一人の少女が変死した。
余りにも奇妙な死に方であったが、死亡時刻のと推測される時間の数分前、彼女に体育教師が声をかけた所、別段異常は見られなかったと言う。警察は自殺と他殺両面で動いているが、大方『自殺』と見ていた。
だが、少女が死亡した同時刻、隣接県でも同年代の少女の変死が発生していた。
やはり少女は死ぬ前、友人らと昼食を取り、普段と全く変わらなかったと言う。
そして翌日同じ時刻、1人の少女がまた死亡をした。
それに気がついたのは1人の「待機中」のサポーターであった。
情報収集が仕事である彼は、普段から新聞記事やネット上に溢れる事件を集めていた。
事件になっていない事件‥‥‥だが、形になっていない何かが彼の感を刺激する。
調べてみれば、1週間連続で同じ時刻同世代の少女が変死している。
「1週間で10人‥‥何か変だぞ‥‥」
独自で調査を始めるサポータ−。
全ての死体が環状7号線に沿って発見されている。
「自殺に見せ掛けた‥‥他殺?」
一見全く関係ない少女達の事件を追う内に一つのネット伝説が浮かび上がる。
――13人の殉教者が現れる事により天使が復活する。
子供じみた話である。
細い糸で繋がれた少女達の死。
1人で扱うには危険が生じるかも知れない。
だが、任務後同じチームにいたメンバーとの接触を固く禁じられている。
狼にバレれば殺されてしまうかも知れない‥‥。
サポータ−が取った行動とは?
●製作ノートより −概要−
犯罪組織撲滅の為にだけ組織されている司法の犬たち。
元死刑囚や犯罪組織に肉親を殺された家族たち等で構成されている潜入捜査官。
警察機構に属さず、逮捕権、銃の携帯等一切ない『非合法』の組織。
彼等を待っているのは、偽りの名前と裏切り者という呼び名。
誰も本当の彼等を知らず、一時的に与えられた偽りの顔、偽りの中の孤独で辛い仮の生活‥‥‥。
彼等を突き動かすのはただ一つ、「悪を許してはおけない」という捜査官達の熱い思いだけ。
自らを『使い捨ての駒』と知り、
悪行を潰す為に自らも悪を行う矛盾、
仲間を見殺しにする非情さを抱えて葛藤し乍ら戦うダークヒーロー達。
●用語
「犬(DOG)」潜入官、サポーター、リーダーによって構成される実働潜入捜査チーム(部隊)。
「実働潜入捜査官(潜入官、顎(牙))」調査対象組織に直接潜入する実働潜入捜査チームの捜査官。
「サポーター」潜入捜査チームの補助役。潜入官を助け、情報収集・解析、回収・廃棄、配車等を行う。
潜入官とは異なり、戸籍を捨てていない者もおり、定職に着いている者も多々いる。
「リーダー(ドッグヘッド)」実働潜入捜査チームを指揮。1チーム1リーダー。
「犬飼(ブリーダー)」複数の犬チームを纏める人物。複数いるらしい。
「鳩」犬飼専用の連絡用員。リーダーのみと接触。
「狼」組織全体の不利益になる人物を始末する事を専門にする始末屋。銃を携帯している。
「今回のDOGは『オカルト』だ」
む〜んとした表情で鬼塚ディレクターが言う。
「ラストは決まっている。犯人未検挙だ。ハッキリ言えば犯人と思しき人物、まあ少女達が天使と信じている教祖だが、こいつは既に死亡している」
頭をガリガリと書く鬼塚。
「皆に考えてもらいたいのは『死んだ少女達』と『死んでしまうかも知れない少女達がどう殺されてしまうか』、殉教者として死のうとする者もいるだろうし、それを『どう防ぐ』かがポイントになる。あとは教祖の『人格』『職業』『何時何処で死んでいるか』『少女達との共通項』だな」
「どちらかと言えば推理が中心で、話の持っていき方では潜入官も必要無いかも知れない。やっかいな内容だが、まあ頼む」
そういうと鬼塚は部屋を出て行った。
●登場人物解説
『サポーター』
『少女達 1〜3名(外見10代)』
『教祖(20代〜、見目麗しいか説得力がある外見が望ましい)』
●リプレイ本文
●CAST
篠塚 弘毅‥‥伊達 斎(fa1414)
山野 透‥‥‥加羅(fa4478)
市ヶ谷 縁‥‥武越ゆか(fa3306)
高石 円‥‥‥各務聖(fa4614)
天野・聖良‥‥キャンベル・公星(fa0914)
片桐 悠弥‥‥中善寺 浄太郎(fa5176)
柳和美‥‥‥‥新崎里穂(fa5264)
湯乃葉ゆづき‥‥湯ノ花 ゆくる(fa0640)
●墜ちたる天使、主たる蠅の王
窓ばかり広い無機質な部屋、
最低限度の家具と雑貨だけがこの部屋の主。
ピロン♪
ネットワークに繋がったままのパソコンに着信メールを知らせる。
――否、別の主がいた。
床一面に描かれた不可思議な記号の上にそれはいた。
その白鑞のような肌、
ドロリと濁った瞳は虚を見つめ‥‥主は多くの従者を従えていた。
●迷える羊の群れ *掲示板
―こんにちは(閏)―
天野・聖良先生、こんにちは♪
届いた勉強運アップのグッズを早速使いました。
テストの山もばっちりでした。
それにお呪いの言葉を唱えたら、方程式が頭の中にパッと浮かびました。
苦手な数学も初めて赤点を免れました。ありがとうございます―
―Re:こんにちは(聖良)―
閏様、こんにちは。
他の人はもう少し効果がゆっくり出るのですが、閏様は他の人より早く効果が出た様ですね。
きっと一生懸命、お守りの力を信じて、閏様がお祈りをされたからですね。
お守りに込められた力を引き出す為には、私を信じ、純粋な力が必要なのです。
これからもきっと閏様の純粋な心がお守りのパワーを一層引き出す事になると思います―
「勉強運アップかぁ」
円はこの占いサイトを以前から知っていたが、ゆっくり掲示板を見るのは今日が初めてである。
「なんか同じ位の女の子とか多いし、先生も優しそうだからここなら相談し易そう」
円は掲示板に書き込みする事にした。
「ハンドルネーム、何にしよう? うーん、バルゴでいいか‥‥『こんにちは、バルゴといいます』‥‥」
●燃えたるは罪の街
のどかな公園に突然上がる炎。
「きゃあーっ?!」
少女の服が突然発火したのである。
近くをジョギングをしていた男が慌てて手に持っていたペットボトルの水をかけると火は消えるどころか音を立てて火柱と変わる。
火柱の中心にいる少女が耳を劈くような悲鳴をあげて、地面を転げ回る。
消防車や救急車が到着した頃、少女は黒い塊と化していた。
その塊が少女であった証は、死の直前広げていた小さなポーチだけであった。
警察がそのまま検分が済む迄一帯を閉鎖する。
野次馬の中に悠弥はいた。
悠弥は焼死した少女とその公園で待ち合わせ、1週間前に妹が死んだ場所に連れていって貰う予定だった。
『‥‥は赤い服をまとう』
「なに?」
悠弥は側に立つ長い黒髪の女を見た。
白い大きな帽子を目深に被り悠弥からは赤い唇しか見えない。
人込みに紛れる女を追い掛ける悠弥は、古びたマンションの前で女を見失った。
湯乃葉は、公園で燃え上がる炎を確認した。
時計は依頼人が指定した時刻丁度を示している。
湯乃葉の受けた依頼は、指定された場所と日時に死亡する13人の少女を撮影する事。
そして13人の死が確認できた時、依頼人から指定されたサイトに写真を掲載する事。
ただ、それだけである。
「‥‥自分の‥死んだ後の事‥気にしすぎです‥死なずに‥死んだ事にすれば‥自分の目で見る事もできたのに‥宗教をする人の‥ココロ‥よくわからないデス‥」
炎に包まれた少女に向け隠しカメラのシャッターを切り続ける。
端から見ればとおやつのパンを食べようとして事件に遭遇ようにしか見えないだろう。
少女が完全に動かなくなった事を確認するとカメラ入りのメロンパンを鞄に落とし込む。
遠くからサイレンが聞こえて来る。
下手に捕まれば、事情聴取を受けなければならなくなる。
長居は無用である。
それに――
「‥‥そろそろ‥犬も‥来る頃‥デショウカ?」
野次馬に紛れて公園を後にする湯乃葉は鞄からメロンパンを取り出し、一口食べる。
「‥‥死んでしまったら‥‥こんな‥美味しいものが‥‥食べられなくなるのに‥」
ふと依頼人のサイトに「パンを分け与える」という予言があった事を思い出し苦笑いする。
「‥こんな‥美味しいもの‥‥誰にも‥‥あげません‥」
●占いサイト『Arche』
「じゃあ、柳さんは妹の和恵さんは『自殺』だと考えているんですか?」
フリーライターの透は一昨日死亡した柳和恵の姉、和美に会っていた。
「ええ、たしかにあの子は‥‥そう、変な死に方でしたけど自殺の理由はあるんです」
最近悩みを抱えていたという少女は一昨日、卒業した小学校のプールで溺死体で発見された。
「和恵は最近、占いに凝っていて‥‥事ある事に私達、家族じゃなくそのページで色々相談していたみたいなんです」
「ページ?」
「ええ、インターネットで子供だましのお呪いグッズ販売や占いとかをしているサイトです」
「そのサイトのアドレス、教えて頂けますか?」と透は尋ねた。
事件を調べていた透が、やはり占いに凝っていた自分の妹の死を聞いたのは4日前である。
自殺の原因になりそうな事情がなかった透の妹の死についての警察の見解は、自宅階段で脚を滑らせた際ネックレスが絡まり頚部を圧迫した事故死だった。
だが和恵と同時刻に死んでいる‥‥自分の中で浮かんだ唐突な考えに困惑し乍らも今はそれしか少女達を繋ぐ糸は見えなかった。
●犬と自由
『少女達には「占いが大好き」という共通項が合ったんだ。<フリーダム』
『あの位の年代は皆好きだと思うけど? <ポインター』
『確かに好きだろうけど、同じサイトにかなり頻繁に出入りしていたんだ。<フリーダム』
『突破口はその辺かな? <ポインター』
透が「ポインター」と知り合ったのは、実しやかに流れる都市伝説のチャットだった。
自分以外にも今回の事件を知っている者がいるというので透は興味を持ったのである。
弘毅はチャットで事件の共通項に気が着いた「フリーダム」と言う人物に興味を持った。
犬でもサポーターでも、ましてや狼ではなく、ジャーナリストかライターと言った所だろう。
一般人のフリをしていても同族にしか判らない独特の匂いがないのだ。
だがある意味、弘毅にとって好都合な相手かも知れない。
相手も一人の手で持て余し気味という雰囲気が伝わって来る。
顔も経歴も知らない同士で組むのも悪くないだろう。
●祝福の銀の雨を降らせよ
緑は天野に指定された公園にお呪いグッズを持ってやって来た。
昨日、掲示板にフリーダム(透)の書き込みを見る迄は不安を持っていなかった。
「馬鹿みたい! 私のお呪いは恋愛のだもの、死んじゃったら何にもならないじゃない!」
気持ちを奮い立たせるように緑は言うと、立ち入り禁止の柵を越え青々とした芝生に入ると玩具の銀貨を蒔き始めた。
サイトには私を応援してくれている友達や教祖様がいる。
教祖様が他の12人と私を選んでくれた特別な期間に行う特別に強力なお呪いなのだ。
先に実施をした子達は上手くいったのだ。
私もちゃんと行わなければ‥‥‥。
緑は大きく息を吸い込んだ。
ピロリリロリン♪
メール着信を知らせる音。
緑は携帯電話を開いた。
『貴女の想いは、きっと天へ届くでしょう』
「教祖様?」
メール配信元は天野であった。
フリーダムは、聖良様が‥‥教祖様が死んでいると言ったけど、嘘を着いたんだ‥‥こうやって私を見守ってくれている‥‥。
銃を持つ緑の手が震えた。
何の心配があるのだろう。
これは玩具の拳銃である。
本物の拳銃がいくら教祖様でも手に入れられる訳はない。
でもこの玩具の拳銃が私の弱い心を壊してくれる‥‥だが、どうしてもフリーダムの言葉が心に引っ掛かるのだ。
ピロリリロリン♪
再びメールが緑の元に届く。
「‥‥え? このメール、先輩? 『帰国を待ってろ』って‥‥お呪いが成立されたの?」
混乱する緑。
天野は力を合わせる事によりお呪いが成立すると言っていた。
でも‥‥?
ピピピピ♪ ピピピピ♪
緑の携帯が鳴った。
「はい‥‥」
電話に出る緑。
数分後、公園に乾いた1発の銃声が響いた。
***
「クソ!」
弘毅はディスクを叩いた。
警察無線から公園で緑が拳銃自殺を図った事を知ったのだった。
透から天野の死を確認した弘毅は「勝った」とそう思った。
だが命は指の間からすり落ちてしまった。
「俺は無力なのか?」
頭を抱える弘毅。
弘毅はディスプレイモニタに何か映り込んだ気がして後ろを振り向いたが誰もいない。
当たり前だ。
ここには弘毅以外、誰もいないのだから。
「データが流出している?」
弘毅は焦った。自分が操作していないのにハブのアクセスライトが点滅しているのである。
犬で関わったデータは仕事毎に完璧にデリートしている。
今入っているのは、今回一連のデータである。
内容自体は流出しても大した事はないかも知れないが、データが流出しているのと同時に元データベースもデリートされて行くのを知り、愕然とする。
「ウォールやプロテクトは完璧だったはず」
弘毅は必死にキーボードを叩いて流出を止めようとするが、その流出スピードに到底及ばない。
「クソ!」
叱咤と共にパソコンの電源ケーブルを引っこ抜く弘毅。
強制シャットダウンによりハードディスクやマザーボードが壊れたかも知れない‥‥弘毅はどこからか女のかん高い笑い声が聞こえたような気がした。
●13人目のユダ
円はその日学校の教室でショップから送られて来たナイフで自分の胸に小さな十字を刻み着けた。
ナイフと小さな小瓶と一緒に添えられたカード。
憎い相手‥‥何かと理由を着け虐めてくる憎い相手の持ち物を小瓶に張り、小瓶の中身と己の血を混ぜ、天を汚す呪いの言葉と共に一気に飲み干す。
呪殺の呪いである。
初めは勇気が出る。自分の優柔不断を直すお呪いを探していたはずだったが「憎い苛めっ子が死んでしまえばいい」いつからかそう考えるようになった円に対して「人を呪う呪殺には己の命という代価が必要である」と天野は言ってきた。
別にそれでも良いと思った。
これ程私が苦しんでいるのに原因となった苛めっ子達はのうのうと生きているのが許せなかった。
夕焼けが教室の中を赤く照らし出す。
約束の時間はもう時期である。
「馬鹿な事はヤメロ!」
何時の間にか知らない男が教室に入って来ていた。
慌てて胸を隠す円。
「もう天野はいない。死んでしまった人間が生きている人間の心を縛ったり、行動を決めて良い訳がない」
「‥‥彼女、死んだの?」
「ああ、彼女のパソコンを見た。君の名前も何処に住んでいるのか。君が何を望み、その心をどうやって天野が操ったのか‥‥何時、何処で、天野に殺されるかもだ。だから止める為に俺は来たんだ」
***
同時刻、弘毅は『Arche』を完全閉鎖する為に天野の部屋にいた。
天野の遺体は既に警察が回収しているが、部屋の中に漂う死臭に鼻をゆがめる。
昨日原因不明で暴走した弘毅のパソコンは完全にクラッシュしてしまい、天野のパソコンを使用する事にしたのだった。パソコンの電源を入れる弘毅。
ビチッ――窓に何か当る音がする。
弘毅は天野のパソコンを探り、パスワードを確認する。
FTPソフトを起動させ、サイトデータを全てデリートする為の操作を始める。
天野と契約をしているプロバイダーも外部からの不正改変であれば騒ぎ立てるだろうが、契約者が削除する分には何も言って来ないはずだ。
ビチビチと窓ガラスに当る音が強くなり、突然部屋が暗くなる。
――雨だろうか?
窓を見る弘毅が見たモノは、窓ガラス一面に張りつく蠅の大軍。
換気扇の隙間から入ったのだろうか?
気が着けば部屋の中も沢山の蠅がブンブンと飛び回っている。
ふと壁際を見ればまだ残る鑑識の白いラインの中、蠅の塊が人型を保っている。
一瞬、背中に冷たい物が走る弘毅。黒い塊の中に人間の眼を見た気がしたのだった。
「これでお終いだ‥‥」
弘毅は「Enter」キーを押した。
斯くしてこの余から忌わしい占いサイト『Arche』は消え去ったのであった。
***
自室に戻って来た弘毅は深く溜息を着いた。
「まだ‥‥屑の相手をしている方がまだ気が楽だな」
机の脇に置いてある娘の写真に視線をやる。
少なくとも1人の少女は助ける事ができた。
呪いで願いが適うなら、俺や他の者も『犬』に身を堕とさなかっただろう。
「一人でも多く救いたいからだ」
弘毅は疲れた眼をマッサージする。
気が着けば携帯に着信メールを知らせるアイコンが点滅していた。
送り主は‥‥天野だった。
送信日時は丁度10日前、イタズラにしては手が込んでいる。
誤配信と言う偶然の確立は一体何%だろう?
震える手でメールを確認する弘毅。
『罪深き者‥‥その命を捧げ、購いなさい』と本文にはそう書かれているだけであった。