獣人求む! in夢の王国アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/23〜02/27
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●本文
【手をつないで】
♪♪♪ちゃらら、らんらんらんらんら〜♪
(サビ)
ほら、光の中 みんな 手を広げ歩いて行く
悲しいことがあっても ひとりじゃない
みんなで 手を繋いで歩こう
♪♪♪
♪(テンポ)=120という軽快なキーボードのメロディがカセットデッキから流れる。
大きなネズミ耳のヘアバンド、薄いタイツ素材の着ぐるみに吊りズボン、白い手袋に大きな靴。
リズムにあわせてタンバリンを振り踊る度に『猫獣人』コータのベルトに着いたネズミの尻尾がゆらゆらと揺れる。そう、芸能人なら一度は耳にした事があるシークレットシリーズ。
圧縮空気で一瞬でコスプレが出来てしまう便利品である。
コータの主催するパフォーマンス集団、本来ならば軽快なロックに併せて派手で華麗なるダンスを踊るはずが‥‥今だTVの仕事を含め、お子さま主体の仕事しか来ない。
「情けない‥‥」
そう本音を漏らすのはギター担当のカズキ、コータが主催であるのに対し、副主催を務めている。
「仕事に貴卑はないぞ。仕事の依頼があるのは良い事だし、今度の仕事は天下の『ファンタジーランド』様なんだぞ。VTRを持ち込んで慣れない英語でプロモートまでして取ったんだからな」大体お前だってガキん時はよくファンタジーランドに遊びに行ったじゃないか。と文句を言うコータ。
ファンタジーランド、日本人なら一度は耳にした事がある東京湾に面した巨大テーマパークである。
コータは学生時代、ファンタジーランドでキャストのアルバイト経験があるのだ。
なのでミュージシャンやダンサーが出演するのが、どれだけ大変なのを知っている。
「今迄はテーマソングを歌っている大物ミュージシャン位しかパフォーマンスを見せる事が出来なかったんだぜ。門の外でも俺達みたいに名前が売れていない所がホイホイと取れる仕事じゃないんだ」
えへん! と胸を反らすコータの胸には顔よりデカイ蝶ネクタイが揺れている。
「気合いを入れるのはいいぜ。俺もファンタジーランドは嫌いじゃねぇし、な」
だが、ヴォーカルはどうすんだよ。とカズキ。
「俺も他の歌は良いですよ。こんな見た目ですしね。でも『あの曲』はちょっと‥‥歌って違和感がないのは可愛い10代の男女か20歳前後の女性でしょう」
コータがダンス練習していた曲『手をつないで』を思い出し、ヴィジュアル系ロックバンド経験があるウグイス系獣人(サブヴォーカル&キーボード担当、男26歳)は首を竦めた。
頼りにしていた兎獣人(メインヴォーカル、女21歳)は、急に決まった仕事より卒業旅行(オーストラリア)を取り、今は機上の人である。
「オリジナル曲の披露とセンター(舞台中央位置でダンス披露)やれば多少集まってくれるかもな」とカズキ。
「う〜ん、しょうがないか。それで募集してみよう。入場券つけたら多少集まりが増えるかな?」とコータ。
「知るか‥‥まあ、いざとなれば『手をつないで』は演奏を止めればいい」
きっぱりと言うカズキ。
「俺が一生懸命考えたんだぞ。そう言う事、言うか?」とコータ。
「お前は才能がないからな。まあミュージシャンの方は、楽器はダブっても良いだろうし、何個かグループに別れて演奏してもらっても良いだろうしな。ベースが欲しいと言われれば俺が弾いてもいい」とカズキ。
「歌だけの持ち込みでもウチは最低限のバンドマンいますしね。練習に4日間、本番は5日目の午前中と午後2回‥‥なんとかなるでしょう」とウグイス。
「曲と曲の間にジャグラーとかマジシャンとかも来てもいいよな♪」とコータ。
「‥‥‥募集項目に加えておくよ」
*メンバー構成
ダンサー:コータ(猫)、ジャンガリアンハムスター、シジュウカラ、他数名
ミュージシャン:カズキ(ギターorベース、狼)、キーボード(サブVo、ウグイス)、ドラム
●ミュージシャン&ダンサー、パフォーマー求む! <<要、コスプレ>>
テーマ:友達(友情)
演奏は、歌詞・曲・タイトル、オリジナル限定。
子供にも乗り易い♪=100〜120、4〜8拍子(変調無しの曲)
インストゥメンタルでもOK
完獣化、半獣化:可
人間形態コスプレなし:不可
※必ずファンタジーランドの住民に相応しいコスプレ(オリジナル)が必要になります。
人間形態にシークレットシリーズ、れっどいえてぃ等着用はOK。
あかいりーだー等戦闘物きぐるみは、不可。
「‥‥自前でコスプレが用意出来ない場合は、こっちで用意するか」
シークレット鼠耳を手に溜息を着くカズキ。
●リプレイ本文
●顔合せ
「ファンタジーランドはやっぱりすごイネ‥‥‥」とマリアーノ・ファリアス(fa2539)。
広大な敷地の端に目立たぬように立てられた管理棟。
同じファンタジーランド関係者であっても公開前のイベントは、直接関係者以外は見る事が出来ない鬼のセキュリティーを誇る面倒なゲートチェックを受けてやっとコータ達のいる控え室にやって来た今回の出演者達。ゲートを通り抜けるとぐったりする者も少なくないが、テンションの落ちない者もいるようだ。
「こんにちはー! テンション上がりまくってるハルサです。よろしくお願いします」と元気よく挨拶をする春雨サラダ(fa3516)。
「夢の国、ファンタジーランド! すごく楽しみ〜♪」と鈴木悠司(fa5189)。
実はテーマパーク来た事がないユウは別な意味でも今回の仕事が凄く楽しみであった。
「他の人達のバックで踊って良いならバックでダンスも、コーラスもして良いならコーラスもやりたいな」と積極的である。
「ファンタジーランドの出演‥‥それは1つの舞台に立つと言う事、ゴミ掃除だって唯の掃除じゃない。そういう演技なのだ。そう、常に観客に観られている事を意識して演じる巨大舞台! それがファンタジーランド!!」と熱く語るクク・ルドゥ(fa0259)。
「そーなんだよね。もしかしてククさんも『キャスト』経験あり?」とコータ。
「単なるファンだよ♪」
なーんだ。とちょっと寂しそうなコータ。
「でも『歌のおねぃさん』としては、頑張って楽しむよ♪」とクク。
「そうだよね。仕事は楽しいのが一番だよ」
「ええっと、私はコータさん主催のパフォーマンス集団に加わりたいんだけど‥‥いいかな?」とクク。
「あたしも完獣化してダンスするよ」と麻倉 千尋(fa1406)。
「ありがとう♪ カズキが『止めろ〜、止めろ〜』って呪文のように言うから自信が無くなりかけていたんだよ」
「そんな事ないですよ。『手をつないで』凄く良い曲っ、仲良し仲良しっ! 私もダンスするよ」とハルサ。
3人に誉められて満更じゃない様子のコータを見て「こいつは図に乗ると良い面より悪い面が出てくるからあんまり誉めなくて良い」とカズキ。
「いつか‥‥アタシもコータさんの劇団に入れて貰えると嬉しいな」
はにかみ笑顔で時期外れの手作りチョコをプレゼントをコータに手渡す大道寺イザベラ(fa0330)。
「ありがとう♪」と満面の笑みを浮かべるコータに対して、
「別に劇団じゃねえ。ダンス&ミュージックが基本の複合的なパフォーマンスを見せる団体だ」
むすっと言うカズキ。
「あはははっ、最近よく間違われるんだよね。元々ライブとかでぷちロックオペラっぽい事はしていたんだけどね」と笑うコータ。
「りりんちゃんは『ハートシール』でイザベラさんと時雨さん(fa1058)一緒に参加しますぅ。それでりりんちゃんはキーボードなんですけどぉ、ギターとドラムの演奏をお願いできれば嬉しいのですぅ」とリリン(fa4550)。
「別に良いぜ。あとで俺かドラムに楽譜を渡してくれ」とカズキ。
「あたしも一応シンセで音は作って来たけど出来れば生音の方がいいなぁ。楽譜も持ってきたよ、見てみてくださーい♪」とまくらん。
どうやら一番最初に音合わせ必要なようである。
その後ゆっくり‥‥とはいかないが、ダンスの特訓をすることになるのであった。
●本番
入学試験等で学校が休みだったり、修学旅行の関係で平日でもこの時期は意外と混んでいたりする。
そして余り地元以外では知られていないファンタジーランドの利用方法。
年間パスポートを所有している近隣住民が近所の公園で遊ばせる感覚で利用していたりするのである。
さらに隣国中国は丁度、旧正月。日本への旅行者が多かったりするので、やっぱりそこそこ混んでいたりするのである。
正面ゲート脇に作られた特設ステージの袖からチケット売り場を覗く出演者達。
「あそこにいる人たち全員の脚を止めるつもりで頑張ろうぜ!」
そんな掛け声でステージは開始した。
軽快なキーボードとドラムのリズムに乗って【手をつないで】が演奏される。
半獣化したククの良く通る声が、チケット売り場から少し離れたステージに人々の目を引き付ける。
ふんわりとしたクリーム色のアームウォーマーと美しい翼が、朝の優しい陽に映える。
コーラスを兼ねたダンサーたちが大きな身ぶりと手ぶりで踊る度にゆらゆらと尻尾や大きな耳が揺れる。
ハルサはセンターでボリュームのあるペチコートがたっぷり入ったふんわり感があるスカートを履いて踊っていた。
サビになるとダンサー達は手を繋ぎ、ラインダンスのような揃いのステップを踏んでみたり、馬跳びのようにお互いの身体の上を飛び越してみたり、くるくるとペアを組んでワルツのように回ってみたりと複雑なパフォーマンスを見せる。
イタズラ小猿のマリスがちょこちょことステージの上を走り回る。
曲が終わると同時にスゥっと深呼吸をしたククは、マイクを握り直した。
「こんにちはー! 今日は寒いですねー!」
ククの司会でステージは進行する。
まくらんの曲が準備出来る迄の間、マリスがククにちょっかいを出す。
後ろからこっそり近付いて右肩を軽く叩く。ククが振り向くタイミングに合わせて左に隠れる。
マイクをバナナに摺り替えてみたり、バナナの皮で滑ったフリをするコータを助けるようなフリをして一緒に転んでみたり、掃除を手伝うような顔をして紙吹雪が入ったバケツを観客に向かって捲いてみたりする。
頭に大きな葉っぱを着け、半獣化したまくらんが舞台に再登場する。
見ている子供達からゆらゆらと揺れる尻尾を「可愛い♪」と指摘されると「あれ、あれれっ? 隠れてない?」とおどけてみせるまくらん。
まくらんの準備が出来たのを確認したククは、マリスに「バケツを持って立っていなさい」と怒って、間を区切る。
【ボクと キミと】 麻倉 千尋
♪♪♪〜
ぼくのぱぱとままがうまれて いまのぼくがいて
きみのぱぱとままがうまれて いまのきみがいる
いまのぼくときみがいまここで となりどうしなのは
ぐうぜんなんかじゃなくて きっとうんめい きっときっと
昨日見てたテレビの話 全部一緒だったのは
きっと僕と君が とてもよく似ているから
今日のファンタジーランドも きっと全部一緒だね
一番目当てのアトラクションまで 走っていこう
ぼくのぱぱとままがうまれて いまのぼくがいて
きみのぱぱとままがうまれて いまのきみがいる
きみとぼくとだれかさんと いつかきっととなりどうし
そしてまたひろがってくんだ ぼくときみとともだちのせかい
〜♪♪♪
まくらんの曲が終わると再びちょこちょことステージ上を駆け回るマリス。
「よしよし、今度は悪戯ではなくお手伝いだね」とクク。
シグも手伝って、キーボードをステージの奥に設置し直す。
ざーっと鳩の大軍がステージに降り立ち、一斉に飛び立つ。
ステージ上にはポツンと青紫色ベースのロングコートに海賊のハット、鴉の羽根が生えた海賊のシグだけが取り残されている。
(これはマリスが予め近所の鳩にポップコーン大袋5袋で交渉した目くらましの演出である。午後には別バージョンとして鳩達がステージ出演者を突っ突き回して何時の間にかシグ以外誰もいなくなるという演出に変えられる)
ククのアナウンス:『あわて者ですぐに騙されるお人好しのシグ、悪戯好きなトラブルメイカーのベラ、そしてリリンは、いつも仲良し。今日、三人はお友達と一緒にファンタジーランドに遊びに来たんだけど‥‥‥あれれ? 何時の間にか周りにいたお友達がいなくなっちゃったよ』
「みんな、何処行っちゃったの?」と言うシグの台詞に併せて、左右の袖から髑髏マーク入りの眼帯に金色のロングコートの間からゆらゆらと豹の尻尾が揺れる女海賊リリンとショッキングピンク色の海賊ハーフコートにスカート、ピカピカの赤いエナメル靴を履き、兎の耳を揺らし乍らベラが登場する。
「どうしたんですぅ?」とリリンがシグに話し掛けている間に舞台の端でタケノコを発見するベラ。
「うふふ、これは使えるわね。シグを脅かしちゃえ♪」
そう言うとタケノコを持ち、シグの方に歩いて行くベラ。
シグとリリンはステージ上で「どこにいるの?」と人を探している演技をしている。
「大変よ、シグ! これを見て」とタケノコをシグに見せるベラ。
「タケノコに見えるけど?」
「違うわ! 地底人の侵略兵器よ。見て、先っ穂が緑色よ!」
「本当だ!」とシグ。
「ど、どうするシグ!? これのせいで皆、いなくなっちゃったのよ」と大袈裟に驚いてみせるベラ。
「必殺ギャラクシー切り!」
掛け声よろしくタケノコにチョップを食らわせるリリン、ぽっきりとタケノコが割れる。
「これで悪いタケノコはなくなりましたですぅ」
えへんと胸を張るリリン。
「でもいなくなった人は戻ってこないよ?」とシグ。
「私達は何時も貴方の側に居るよ。さあ、みんなで歌おうよ」
シグに寄り添い肩を抱くベラの台詞に併せて曲のイントロがスタートする。
ククのアナウンス:『こうしてシグは騙されたまま、三人は仲良く暮したとさ』
【フロウウインド】 ラブシール Vo:時雨 K:リリン ダンス:大道寺イザベラ
♪♪♪〜
風に乗り今はもう空も飛べる君が手を差し伸べてくれるから
子供の頃に夢見た冒険の旅に君と一緒にさあ出発だ!
限り無い希望の道をその翼で羽ばたいて突き進め
振り向かずに未来の為に
〜♪♪♪
曲が終わると三人は一礼をして袖に下がって行く。
代りにとんぼを切って小猿のマリスが登場する。
パチパチと登場を待ち構えていた拍手も上がる。
どうやら短い時間だがファンが着いたようである。
袖から投げられるクラブを器用に受取り、ジャグリングを始める。
ぽーんと一際高くクラブを放りあげ、くるりと宙返りをしてキャッチするとパチパチと拍手が起る。
登場した時と同じように袖に向かってクラブを投げると大袈裟なふりで胸元に手を当てると一礼し、連続側転をし乍ら退場した。
キーボードが再び中央に設置され、燕尾服の合間からふさふさの茶色の尻尾を揺らしながらユウが登場する。
「今日は皆にたくさんの素敵な夢をあげるね。この夢はね、魔法の夢だから、ずっと覚めないんだよ」
にっこりと観客達に笑いかけるユウ。
♪(テンポ)=120という軽快で4拍子という乗り易いキーボードのリズム乗って曲がスタートする。
【both hands】 鈴木悠司
♪♪♪〜
さあ手と手をあわせる
青い空に広げた
僕らの両手は翼の様さ
たとえ遠く離れた場所も
この両手翼に飛んでゆくよ
さあ手と手あわせ 何時までも
さあ手と手あわせ 両手広げ僕ら
心は何時も一緒さ
このwing of both hands
どんな時も 飛んでゆくから
〜♪♪♪
演奏が終わると再び全員がステージ登場した。
全員で手を繋ぎ、頭の上に腕を伸ばし「「「「「引き続き、ファンタジーランドをお楽しみ下さい」」」」」
声を併せ一礼をする。
パチパチと大きな拍手が起る。
思い出したようにゲートに走って行く客や「パレードも楽しみだけど、今のも面白かったね」と話す声が聞こえる。
客達にはどうやら満足して貰えたようである。
実際、午後の公演は午前は最後迄見る事が出来なかった。と再入場用出入り口を抜けてわざわざ見に来てくれた客もいたようである。
「なんかさぁ、ファンタジーランドの担当者にもウケが良かったみたいで『GWまでやってみないか?』って言われちゃったよ。どうする?」とコータ。
「どう? って、決めて来たんだろう」とカズキ。
「あ、バレた?」えへへっ。と笑う。
「門の前になるか、中になるか、はたまたプリンセス・キャッスル正面広場になるかは判らないけどね」とコータ。
「メインステージになる訳ないだろうが、この唐変木」
そういってカズキは少し嬉しそうにコータを小突いた。