「7」デパートに行こうアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
普通
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報酬 |
なし
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/08〜03/11
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●本文
古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいである。
「浩介、やっぱり俺も行かなきゃ駄目か?」
先日のバレンタインデーにスタッフだけでは無く出演者から挙げ句客迄からチョコレート菓子を貰ってしまった親父さん。浩介に言われ本日ホワイトデーの買い物に行く為「7」で待ち合わせをしていた。
「俺も貰いましたが、親父さんも貰ったでしょう。プレゼントを返すのなら自分で選ばなければ意味がありません」ときっぱり言う浩介。
「俺は死んだ女房にだって買ってやった事が無いのに‥‥」ぶつぶつと文句を言う親父さん。
「結婚指輪の他に1度だけハンカチを贈っていますよ」
「なんだ、その情報は?」
「晴海(はるみ)さんが教えてくれましたよ。お母さんの宝物で使わずに仕舞っていたって」
晴海というのは、親父さんと同居している嫁に行った娘で浩介と同じ高校に通っていた先輩である。
「まあ、1人で行くのが嫌でしたら誰かに着いて行ってもらいましょう」
●「親父さんと一緒にホワイトデーのお返しを買いに行く人」「浩介と甘味巡りする人」募集
受話器の向こうの人物に楽しそうに話す浩介。
「親父さんは、和菓子は食べるが洋菓子はからっきしだから何処の店が上手いかとか、どこそこのハンカチが流行っているとか都内を連れ回して教えてやってくれる奴が欲しい。ああ、義理で貰っているから値段の上限は1品3000円だな‥‥俺か? 俺は大体お返しの目星はつけているが‥‥それよりもバレンタインデーに予想以上デザートが出たんで少しリサーチしたいんだが、たしか甘い物は詳しかったよな?」
●リプレイ本文
(「『7』を集合場所にしておいて良かった」)
これが今回集まった面子を見て親父さんが、まず思った事だ。
「お前らの格好は何だ? デパートに何をしに行くつもりだ?」と親父さん。
特に武装している風間由姫(fa2057)やブリッツ・アスカ(fa2321)、ゼフィリア(fa2648)らの格好を上から下迄眺める。
「他の奴らもそうだが‥‥最近、近所の奴らに『おたくに出入りしている人達は、変わっている方が多いですねぇ。変な物を持って歩いていたり‥‥まあおたくはライブハウスだからしょうがないんでしょうけど』って嫌みっぽく言われるんだよ。お前らは芸能人だからいいが、俺は単なるライブハウスのオーナーなんだぜ。服で隠すとか、袋に入れるとか‥‥最低限、気を使って欲しいもんだ」と溜息を着く。
親父さんは「後で返してやる」とぶつぶつと文句を言い乍ら参加者達の私物を浩介の持つ袋に放り込む。
「移動には、各々の車やバイクを使うか?」と親父さん。
「そうですね。由姫やロビン、ユリ、ゼフィ、悠闇、ちーちゃんは、俺と親父さんの車に分乗する事にしましょう。まあ電車の方が早い気もしますが」
***
某都内デパートの駐車場。
「デパートの地下でそういうのを探すというのは、いい考えかもしれません☆」大曽根千種(fa5488)。
「俺も何か買うべきかなぁ‥‥」と言い乍らしっかり変装した嶺雅(fa1514)がコスモススポーツから降り立つ。
「お姉さんにか?」
「っていうか、貰ったファンの子に返すべき? というか返したいけど無理だよなぁ‥‥」
「ああ、顔が売れているからな。一部の子に返したとかだと不味いだろうしな」と浩介。
「そうだよね。頑張って活動するのがお返し‥‥でいいよね」とレイ。
「ファンもレイの歌を待っているだろうからな」と親父さん。
「ホワイトデー‥‥大変ですよね。日本人の気質のせいなのかな‥‥」と言うのは駒沢ロビン(fa2172)。
「私は、特にそういうお返しに期待とかする方ではないんですが‥‥」と由姫。
「あたしもあげたとしても見返りを期待する方ではないですから、正直どんな物でもかまわないんですけどね〜」とちーちゃん。
「まあ『チョコを貰うは、挨拶と同じだからお返しは必要無い』って考えるの人もいるからね」と浩介。
「ホワイトデーは高校くらいからなぜか貰うより返す方が多かったな‥‥ま、親父さんの場合は勘違いされる心配だけはないから、まだ楽そうだけど」とアスカ。
何かあったらしいアスカならではの一言は重い。
いつまでも駐車場にいる訳にも行かず、合流時間を決め「親父さん」と「浩介」グループに別れて行動を始める。
●「お返し」隊
「お返しは気持ちだからなぁ‥‥。高すぎず安すぎず‥‥‥あ、親父さんは嫌々な顔しないで『にこー』って笑うといいよ!!」とレイ。
「笑う‥‥それが一番の辛ぇぞ」と親父さん。
「プレゼントはセンスが問われるから、本当は素直に贈る人から聞いたりさりげなく誘導して聞き出すのだけど‥‥」と言う悠闇・ワルプルギス(fa5167)。
「そうですね‥‥形が残るものは相手の趣味に合わなかった場合微妙なので、やはりケーキ類の類ではないでしょうか?」と由姫。
「ケーキだと?」
「俺も義理なんだったら、あんまり残るようなものじゃなくて、お菓子とかの方がいいと思うな」とアスカ。
「まぁ、ケーキ、クッキー、マシュマロ‥‥とかでしょうかぁ?」とちーちゃん。
ケーキに詳しく無い親父さんの眉間に大きな縦皺が一本寄る。
「それも‥‥カロリー的にあまり高くない物がいいかも知れませんね」と由姫。
「ケーキって言うのはカロリーが高いもんだろう?」と親父さん。
「最近はヘルシーで美味しく、かつ見た目も良さそうな物があるんですよ」と由姫。
「ケーキ屋なんぞには入った事がねぇしな。具体的に何を買えばいいんだ?」
「そうですね。私はモンブランが大好きですね〜☆ あとはチョコケーキも大好きですよ☆」と由姫。
「最近は名古屋コーチン卵使用のプリンや、最近人気が出ているフランスの伝統的なお菓子のマカロンはどうでしょう?」と悠闇。
うーん? と唸る親父さん。
「だが、ケーキ類はあんまり保たねぇだろう? 食い物を粗末にしたくねぇ俺としては、残った場合が恐い」
「じゃあ、青いハンカチはどう?」とレイ。
「ハンカチだったら、無地や絞り柄の12枚のお任せセットや女性なら油取りハンカチを贈ってはどうかでしょうか?」と悠闇。
「油取り? そんなハンカチがあるのか?」と親父さん。
「お酒が好きそうな方でしたらワインの甘い物を渡すというのもいいかもしれませんよ。あとは、スカーフとかの装飾品‥‥でしょうか?」とちーちゃん。
「洒落が分かる方でしたら下着という選択肢もあるでしょうけど、正直おすすめできませんね〜。今はホワイトデーの専門コーナーとかがありますから、そこを見て参考になさるのが一番ですけどね〜」
「そんなコーナーがあるのか?」と驚いたように言う親父さん。
●「スイーツ」隊
「スイーツなら丁度いい店を知ってるんですよ。デパ地下なんですけどね」とロビン。
へぇ? と浩介。
「兎も角、サイズがでっかいんです! ソフトクリームにどらやき、バケツで作ったかのようなプリン、タライサイズのあんみつ‥‥そして数々のジャンボパフェ! 金魚鉢なんじゃないかと疑ってしまうサイズのグラスにアイスやフルーツやチョコやシューやクッキーやコーンフレークや生クリームやフラッペやらが色々な組み合わせでこれでもかこれでもかと鎮座し、輝いています!!」と力説をするロビン。
ハタっと気が着いて「‥‥店長さんがリサーチしたい甘味のジャンルと遠いかもしれないですが」と続ける。
「ジャンボパフェは、複数で取り分けられるからいいよな。ただあんまりデカイと飽きる。デカどら焼きは苺やみかんのフルーツやぎゅうひを入れたり、アイスクリームを飾ったり、ケ−キ風にすると飽きずに食えるがな」と浩介。
「バケツサイズプリンは中に簀が空きやすいし、焼きムラが出来やすいんだ。鉄串を刺したりとしたが、素人が焼くと失敗しやすいな。俺はプリンは蒸すと茶わん蒸しのような気がするし、最近のドリンク系は気を付けないと卵の匂いがキツくて生臭かったり、ミルクセーキの濃い版か? と言いたくなるんであんまり好きでは無いんだが‥‥」と焼きプリン派の浩介。
「作った事があるんですか?」と吃驚するロビン。
「ああ、親父さんは『プリン』は食うんでな。試した事がある」と浩介。
「うちのお勧めは、柚子と抹茶の味がホワイトチョコレートのケーキや。まろやかさに包まれて調和していてうまいんや」とゼフィ。
「簡単に言ってくれるなよ‥‥ホワイトチョコの配合は、滅茶苦茶難しいんだぞ」と浩介。
「んじゃあ、重いクリームというマイナスイメージがあるバタークリームの概念を覆したプラリネ風味のバタークリームの軽さとサクサクしたチョコレート生地の食感の心地よさがいいケーキなんやけど? 見た目も綺麗やし、どう?」とゼフィ。
「バタークリームは、素人が手を出すと重くなる。それにゼフィ、基本的な事を忘れている‥‥『7』で販売目的で教えてくれと言ったんだ。せめて俺が作れる範疇、抹茶スポンジに大納言を入れて粗い赤砂糖やザラメを敷いて焼くケーキとかスティックケーキ、キャベツのようなシューケーキを基準に紹介にしてくれ」と浩介は溜息を着いた。
「ケーキやデザートの形って、色々と参考になるんですよね。確かどこかで苺フェアをやっていたような‥‥春ですね」とデジカメをショーケースに向ける由里・東吾(fa2484)。
「ああ、そうだな」
「最近‥‥というか少し前に流行ったといえば、ロールケーキかな?」とユリ。
「ああ、流行っているからと追い掛けるとすぐになくなってしまうが、ロールケーキとマカロンはパティシエのテクニックを計れると言われる位、定番中の定番だが中に入れる物が大分変わったな。サイズも2、3人で食える小さいの物も増えて来たし」と浩介。
「浩介さんは、次はどんなデザートを出そうと考えているのかな?」とユーリ。
「考えれば考える程、出なくてな‥‥‥」
定番的だがイベント性があるものがいいんだよ。と苦笑する浩介。
「定番と言えば、俺は生クリームとカスタードの入ったシュークリームが好きです」とユーリが答える。
「ああ、単体のも上手いが2層になっているのも上手いよな。だがシュークリームはこだわって作ると採算が合わなくなるのが欠点だが‥‥」
実は、お気に入りのシュークリームをおいてある店が3件ばかりある浩介。
「なんでイベントと言った部分では、ロビンが言ったデカ系スイーツはいいんだが、客はペアが殆どだから出番が少なさそうでな‥‥」
浩介の方もまだまだ決まらないようである。
●ひと休み
色々見て回るうちに悩んでしまった親父達は結局デパート内をぐるぐる巡った挙げ句、待ち合わせ時間になってしまった。
親父さんのリクエストでひと休みする為に和風甘味喫茶に入る。
永遠に悩みのルーチンに入りかけている親父達を余所に「なんでも好きな物を頼んで良い」と言われた事をいい事にあんみつやらお汁粉やらをガンガン頼む一同。
「スイーツは‥‥こないだイタリアで食べたジェラートとパンナコッタが美味しかったー!」とレイ。
「ジェラートは少し面倒だが‥‥その点パンナコッタは楽だな。家庭でもできるし、パンナコッタか‥‥」と浩介。
「んーと、あとはここじゃないけど甘いもの好きも甘いものダメな人も飲める抹茶ジュースどうでしょー?」
「抹茶ジュース? 冷たい抹茶とか抹茶スムージーや抹茶オレではなく?」と浩介。
「ジュースだよー、甘い方がいい人はシロップかけていくの‥‥! 上にはアイス乗ってたし‥‥!」とレイ。
「抹茶フロートじゃないのか?」と親父さん。
「そういえば、京都辺りだと日本茶や抹茶をブレンドしてアイスティーとして出している所もあるって聞きますね。俺は都内ですが一度だけ緑茶にグレープフルーツジュースを混ぜて、フレーバーティ感覚で楽しむ所に入った事はありますが‥‥」
茶道楽の浩介は、レイから店の名前を教えて貰っていた。
まだ考えが纏まらない親父さんに、
「俺は、お返しはいつもマシュマロでしたよ。去年も」と助け舟を出すロビン。
「俺は食べ物じゃなくても消え物が良いと思います。ちょっと高級な入浴剤とか、アロマキャンドルとか、ちょっと使えて、でも自分ではあまり買わないようなものがいい、と、俺の妹分は抜かしていたよ。デパートなら、アメニティ用品の店にあるかな?」とユリ。
「ハンカチにマシュマロ、酒にスカーフか‥‥」と親父さん。
「ま、そんなに難しく考えなくてもいいんじゃないかな? ヘタに流行とか気にしすぎて誰にもらったものかわからなくなるより、その人らしいものをもらえた方が嬉しいってのもあるしさ。親父さんが『これなら!』って思ったものなら、きっと喜んでもらえると思うぜ?」とアスカ。
うーん? と悩んだ挙げ句に「判った。俺らしい物をやるとしたらデパートにないからな。帰るぞ!」と言う親父さん。
「ええ、待ってや! 後、春限定苺クリーム白玉ぜんざいがくるねん!」と悠闇。
「お前は一体幾つ頼んだんだ?」
机に並べられた甘味の数々を見て、親父さんは呆れたように言った。