「7」雛祭りアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
4Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
14.7万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/03〜03/06
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●本文
古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいである。
「3月3日は雛祭りですが、ウチでは思い切って『メイド祭り』にしてみようかと思っています」
「は?」
唐突な浩介の提案に一瞬頭がフリーズする親父さん。
「桃の節句なら判るぜ‥‥桃の花を飾って、和楽器演奏とかならな。なんでメイドなんだ」
「バレンタインデーに併せて借りたメイド服が余っているんです」と浩介。
「だったら、ホワイトデーの時に着せれば良いだろうが」
「またウェイターだらけになるかも知れません」
いつからこいつはメイドマニアになったんだろう。と怪訝そうに浩介を見る親父さん。
「実際ミュージシャンでも女装をするのが増えていますし、4月4日にやると本当に女性が来ない可能性がありますしね」
「まあな‥‥」
3月3日は雛祭り、5月5日は端午の節句、4月4日はオカマの日と言われ始めたのは何時からだろう。
とりあえず「7」の中が女装男だらけになるのを想像すると鳥肌が立つ親父さん。
「‥‥‥まあやってみろ」
●出演者募集! 但し、メイド服は必ず着用の事!
テーマ 『桃、雛祭り』
ジャンル、グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ)参加も可能
和楽器の演奏も可
インストゥルメンタルも可
ピアノ&ドラムは、貸し出し可能
ライブでの演奏は、タイトル・歌詞・曲は、オリジナル限定
『ロックアーティストの他に和楽器(三味線、琵琶、鼓、太鼓、尺八)奏者等ジャンルを問わず歓迎』
●スタッフも観客もメイド服です。例外は外見30才以上のみ。
●リプレイ本文
●很多的使喚的女人在的音楽小房
「お帰りなさい、お主人様♪」
ドアの中に一歩踏み入れ客達を出迎えるのは白いエプロンと黒いメイド服に身を包んだスタッフ達。客達には特別に配られているウェルカムティーは、桃の花びらが浮かんでいるフレーバーティである。
何も知らない客であればライブハウスではなく、メイド喫茶に来てしまったのかと勘違いしてしまうだろう。
だがメイド喫茶と違うのは、女だろうと男だろうとも、全員メイド姿である。
勿論、スタッフも全てがメイドである。
何故かと言えば、山田 浩介店長(40才)その人がメイド姿でいるからである。
着ているのは黒のロングスカートにフリフリのエプロンにヘッドドレスまできちんと着用である。
尚、浩介は絶対今日はライブハウスに来るな。と家族にキツく言ってある。
お父さんは、絶対死んでも思春期を迎える愛娘にはこの姿を見せたく無いのであった。
因に名物である親父さんの姿はこの場に無い。
実際、出演者達の親父メイド化作戦は実際かなり良い線迄言っていた。
後もう一押しすれば、恐怖のメイド爺を見る事が出来たはずである。
だが最後の詰めが不味かった。
さしずめゲームのラスト、1つだけの願いが適うというシーンで「お腹空いた。早く家に帰りたい」と誰かがうっかり呟くのにも似ていた。
――時間は少し前に戻る。
「浩介さんに親父さんっ、お久しぶりです♪」とクク・ルドゥ(fa0259)。
「ああ、久しぶりだな。今回はまた色々やってくれるので楽しみにしているぞ」と親父さん。
「メイド服も雛祭りも初めてですが、なんだか楽しみですね〜♪」とジュディス・アドゥーベ(fa4339)。
「浩介様‥‥メイドさんがお好きだったのですか?」と雛姫(fa1744)が浩介が用意した数パターンのメイド服を見て、挨拶もそこそこに質問した。
「まあ女性のエプロン姿は嫌いでは無いが‥‥滅茶苦茶好きという訳では無いぞ。バレンタインの時は着る者が‥‥着てくれそうな娘もいたが、袖とかが機材の操作の邪魔になると思って着て貰わなかったんだが、なんだか折角用意したのに勿体無い気がしたんでメイド祭りをしてみようかと思っただけだ」と浩介。
少し遅れて、
「メイド♪ メイド♪ 雛祭りー♪ おはよーございまーす♪」とスキップをしながらスタッフルームのドアを元気よく開け挨拶をする堕姫 ルキ(fa4852)。
「おはようございまーす! あれ? 店長と親父さん、お二人とも折角のメイド祭りやのにメイド服は着はらへんのですか?」
鏡に向かってネクタイと格闘中の親父さんとダークスーツに身を包んだ浩介に声を掛ける椎葉・千万里(fa1465)。
「「恐ろしい事を言うな」」
珍しくハモる親父2名。
「只でさえ今日は会う奴会う奴、皆、俺がメイド姿だと思っていやがる‥‥爺のメイド姿なんて恐ろしい事をよく思いつくもんだ」と65才の親父さん。
「全くです。個人の趣味でメイドならば俺も何にも言いませんが‥‥」
実際、「7」の男性スタッフの中には面白がって参加している者もいる。
「‥‥理解不能です」と浩介。
親父さんはネクタイを上手く結べず、結局浩介に結んでもらっている。
「他の人達は?」
「先に来た奴らは、楽屋で着替えているはずだ」と浩介。
1Fの楽屋にルキとチマちゃんが入ると他の出演者達はもう着替えを済ませていた。
蓮 圭都(fa3861)はシック乍らもミニのメイド服、ジュディーはロングのメイド服。
「あれ? ククさん達は?」
「先刻、奥に『誰も覗かないで下さい』って笙(fa4559)さんを引っ張って行きましたよ」と瑞雲 カスミ(fa5440)が答える。
「お待たせしました〜♪」とクク。
つい立ての奥からチャイナ風メイド服に桃の花の髪飾りで髪を飾った雛とククが出て来る。
「ジャーン♪」
ククの掛け声に合せて、つい立てが移動すると赤いアイラインがきりりとした姑娘風メイクの笙が立っていた。
おおっ! と歓声が上がる。
「わあ、ごっつう似合うとりますねえ」とチマちゃん。
「‥‥見事に化けたな」と何時の間にか来ていた浩介が言う。
「そんなに興味があるのでしたら浩介様も‥‥」とひな。
「やっぱりここはオーナー自ら先陣切って逝くコトで、皆の士気高揚をッ!」とルキ。
「山田さんがメイド祭りを提案、親父さんが許可。つまり言いだしっぺよね? まさか二人が無関係なんてないわよね?」と圭がにじり寄る。
「それに他の人にも強要するんですから、お二人もメイドになった方が良いと思いますよ」
うーん? と暫く悩んだ挙げ句「‥‥まあ、それも一理あるか」と浩介。
「そうと決まれば、早速!」
待っていました。とばかりに浩介を引きずって行くスタッフ達。
「宜しければお父様も‥‥」
じーっと期待を込めて見つめるひな。
一人残ってしまった為に、追い詰められる親父さん。
「親父さんがどうしても嫌なら‥‥酒飲み比べ勝負でどうだぁ! 私が勝ったらメイド服着て、私が負けたら報酬なし! 情けもかねて決闘はライブが終わってから!」とクク。
「よし、乗った!」と親父さん。
だが決闘は繰り上げ実施をされ、そして大人気なくククに勝った親父さん。
因に飲んでいたのは、ひなリクエストの白酒にストロベリーリキュール、グレナデンシロップに生クリーム、レモンで味を整えた甘くピンク色のカクテルであった。
御丁寧に金箔が浮かぶ甘いカクテルは親父さんをかなり苦しめたが、メイド姿になりたく無いというただ一心と無敵の肝臓が、クク達の思いに勝ってしまったと言えよう。
着替え終わって戻って来た浩介に親父さんは「出演者を潰してどうするんです!」と散々怒られ、本日のライブを見るという楽しみを罰として取り上げられたのである。
●桃華乙女祭
真っ暗な中、笙の音が穏やかに響いてステージがスタートする。
【寵雛春夢葬(ちょうすうしゅんむそう)】 堕姫 ルキ
♪♪♪〜
「おはようございます、お嬢様‥‥」
(台詞を言うルキの姿が照明に浮かび上がる。
メタル調でありながら、複数の和楽器を組み合わせた爽やかながらどこか哀しく虚ろなメロディ)
眠りに暁告げるように 暖かな光降り注ぐ
冷たい頬を撫でる 弥生の風
小鳥は囃し 桃花(はな)は咲き誇る 祝福の季節
参りましょう‥‥麗らかなりし日和の下へ
(歌詞に合せ腕を客席の方に誘うように伸ばす)
爛々々(らんらんらん)‥‥
夢見、春の霞の如く 揺れる未来の希亡(ノゾミ)
あの桃花のように、優しく美しく育たれる事‥‥
(微笑みを浮かべ軽やかなステップで踊るルキ)
その貌、正に雛の俑‥‥想い巡る事も無く‥‥
幾季節巡れども‥‥春は来ない‥‥
(曲調は一転し、暗く陰湿な雰囲気に変わる。
人形のような無表情でやや俯き加減で立ち尽くすように歌うルキ。
ライトは暗く絞り込まれ囁くような声と共にステージは真っ暗になった)
〜♪♪♪
ステージ上にスモークがたかれ、柔らかい薄いピンクのカラー照明が桃源郷のような不思議な雰囲気をかもし出す中、曲はスタートした。
【紅春花】 Necter Drop
Vo&G:蓮 圭都 V:椎葉・千万里 S:瑞雲 カスミ
♪♪♪〜
入り乱れ春の景色
いつから蕾だったのか 紅い紅い花が咲く
夜に冴えた空気 震える手で脱ぎすてて
(ゆっくりとしたサックスの低音からスタートした曲は、徐々にテンションと音域も上げていく)
前倒しが流行る世界
「あなたの虜」気の急いた 青い誘い文句も春
甘い香りを放つ 目を閉じても分かるほど
(バイオリンが甘い花の香りをイメージさせるようにビブラートを効かせる)
虜になるのが私なら
虜にするのも私でありたい
(サックスは、女の妖しさと少女の可憐さを引き立てるように響く。
曲は最高潮に盛り上がりをみせ、紙吹雪がまるで花吹雪のようにステージを舞う)
ここに花開く まごうことなき純情
(最初の音域に戻ったメロディは、ゆったり揺らぐ‥美しくも妖しく‥)
幼い貌に紅をひき 誇れ 乙女らよ春の歌
(演奏はふっと消え、圭の声が伸びやかにリフレインして曲は終了し‥チマちゃんは花びらを受け止めるように名残惜し気に落ちる一片の紙吹雪を手で受け止めた)
〜♪♪♪
【桃下恋歌】 ジュディス・アドゥーベ
♪♪♪〜
まだ見ぬあなたと あの場所に 並んで座る 夢を見る
(スローな前奏に合せ、両手でマイクを持ち優しくそっと歌うジュディー。
トップフレーズが終わると同時にテンポアップした曲は和風のポップロック)
桃の木の下 ため息一つ 春風の中 消えていく
恋の季節を 花は告げれど 私の隣は 空いたまま
(軽快に響くジュディーの声)
まだ見ぬあなたと あの場所に 並んで座る 夢を見る
まだ見ぬあなたよ 今いずこ 問うても答えぬ 桃の花
(サビのメロディは基調に元に戻るもテンポはテンポアップしたまま軽快に)
まだ見ぬあなたよ 今いずこ 見上げた空に 桃の花
(ゆっくりとしたテンポに戻る。
ジュディーは顔を上げ、やや斜め上に視線を向け‥曲は静かに終了した)
〜♪♪♪
曲はやや抑え目のピアノのメロディーでスタートした。
【桃幻】 香格里拉(シャングリラ)
Vo:クク・ルドゥ(★)、雛姫(☆) P&Co(●):笙 ◎:3人
♪♪♪〜
●風が1つ生まれて 曇り空を消してゆく
(落とした照明が徐々に柔らかく明るくなって行くも
雪洞の光が活かされるような淡い照明がステージを包む。
しっとりした雰囲気の歌詞と相反する、明るく煌めいた音と声が独自の桃の節句の季節を演出するアップテンポのオリエンタルロック)
青空はまだ見えないけれど 光は手に届く
暖かいと感じる心もまだ この胸に残ってる
(キラキラとした高音がゆっくりとしたテンポから徐々に上がって行く東洋的なメロディー。
和音がメロディにアクセントをつけ中盤へと盛り上がりを見せる)
★あなたはまるで木漏れ日のように
あの時私に笑ってくれたね
☆ねぇ、もう一度笑って?
そうしたらきっとまた
◎羽ばたけると思うから
(3人の声は優しく甘く解け合いステージを包み込む。
低音で重みをおいたピアノの音と、高音でキンと琴を響き転がすような和風メロディが歌詞に寄り添いメリハリを出す作り出す)
●白い雪が消えて 爛漫の春がやって来る
(薄桃色の紙吹雪が、はらはらステージを舞う。
音階を下げ、再度繰り返すような自然な流れをメロディが作る。
最初のサビより華やかさを意識した音と声が調和を作る)
雛と桃花が夢を育む 刹那色の季節
風に舞い散る花びらを抱く 想いも春に包まれてゆく
◎あなたと出逢ったあの日々は 今は遠きまほろば
(3人の声はからみ合い、そのまま伸び上がって行く。テンポそのまま、短い後奏で曲は終了した)
〜♪♪♪
【和楽器セッション 春〜なごみ〜】
神楽鈴・締太鼓:クク・ルドゥ 篠笛:雛姫 琴(花梨):笙 三味線:蓮 圭都
・花咲く春
和楽器によるインストゥルメンタルは、笙の奏でるゆったりとした花梨の音でスタートした。
軽やかな三味線のリズムが躍動感のある芽吹きを。
篠笛、締太鼓のフレーズが流れるように音の花を咲かせていく。
ククの振う神楽鈴がその花を一層明るく照らすような陽の光のように響き渡る。
・ほろ酔い
花を愛でほろ酔い気分。
ゆらゆらと揺らめく変拍子で音同士楽しげに絡み合いながら、曲は徐々に盛り上りを見せて行く。
ふらふらでほわほわ、夢やら雲の上を歩いて行くような浮かれた調子を奏でる。
・雛囃子
三味線が力強く転調を告げ、リズムがアップテンポする。
締太鼓の音も一層派手に華やかに、満開の花のように艶やかに。
軽快な掛け声が曲を広げ、祭りらしく間の手が。
賑やかに盛り上がるステージに観客席からも間の手が入る。
響く篠笛の音も高らかに華の宴は終了した。
***
ライブも無事に終わり店内清掃でメイド姿のスタッフ達が床を磨いているのはある意味『萌えな図』であるが、浩介は暗いガラスに映った己の姿を見て思った。
次回はできることなら女装はゴメン被りたい‥‥だが、うっかりノリでまた女装してしまうかも知れない。
もし自分が女装させられるのであれば親父さんを必ず巻き込もうと、そう決心するのであった。
スタッフ達はこう思った。
店長と親父さんの呑べいコンビは『蟒蛇』である。飲み勝負は、負け知らずである。
自分達では出来ないが、出演者達には他の手を考えて、次回もチャレンジして欲しい。とそう思ったのであった。