ホワイトデーメモリアルアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 2Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 03/14〜03/18

●本文

「さて、困ったな」
 真人は、3月のカレンダーを見て呟く。
 3月14日に大きく着けられた印、ホワイトデーである。
 バレンタインデーに現在、お友達関係の桃子から手作りチョコを貰った真人。
 ホワイトデーにお返しをあげると言ったが、桃子に渡すプレゼントが決まっていなかったりする。

「義理ならその辺で売っているチョコだよな。手作りって事は期待して良いんだろうか?」
 少しは、恋人候補になったんだろうか?
 他の子からチョコを貰わなかったけど、貰ったら焼きもちを焼いてくれたんだろうか?
 そんな事をつい考えてしまう。
「あー、俺って男らしくないぞ! ちゃんと『待つ』って言ったんじゃないか!」
「ヴォン!(真人、悩むくらいなら俺様と散歩に行って気分転換しようぜ!)」
 ふさふさの尻尾を振るラッキー。
 真人の家、ペットショップ千葉の看板犬を勤めるラッキーがリード(散歩紐)を持って来る。
「そうだよな。ウジウジしてないで、プレゼントを決めなきゃ‥‥でもこういう時って何をあげるんだ?」

 ***

「ねぇヨネちゃん。ホワイトデーにお返し、貰えると思う?」
「そんな事は、千葉に聞け」と完全にいつもと同じ幸子。
 柿崎先生に思いを伝えるだけで良かった幸子にとって、結果は初めから期待していない。
 中学生と学校の先生なのだ。期待する方が変であると思っていた。
 その分、ホワイトデーは自分とは関係ないクラブや道場で貰った分のお返しは用意してある。

 桃子は、幸子に千葉が他の女の子からチョコを貰いそうになった事は言っていない。
 何でも幸子に話して相談していた桃子もそれだけは、何となく言ったら不味いと思ったのだ。
 言えば自分の中に沸き上がったもやもやとした感情についても言わなくていけないだろう。
「これが、好きって言う事なのかな?」
「なに、桃子? ゴメン聞いていなかった」
 サクラをひっくり返てして遊んでいた幸子には、桃子のつぶやきが聞こえなかったのだ。
「何でもない。サクラのオヤツがなくなりそうだなぁ。って言ったの」
「ふーん? じゃあ、たまには千葉の所に買いに行く?」
「なんで千葉君の所なの?」
 やっぱり聞かれていたのかとドキドキする桃子。
「最近、試験とかで会っていないんだろう?」
「そうだけど‥‥」
 大体同じ時間に公園でラッキーの散歩をさせている真人に併せて、サクラを桃子は散歩させていたが、3月に入ってからはすれ違う事がとても多くなったのだ。
「病院の処方食もいいけど、たまには他のを見るのも楽しいんじゃない?」
「‥‥ヨネちゃん、実は子犬とか子猫を見るのが目的でしょう」
「あ、バレた?」


●ファミリードラマ「わふわふ わふん♪」役者及び声優募集

<主な登場人物>
 山崎 桃子 アサヒ中学の2年生。平均的な中学生。山崎家最弱生物。
  小学生の時に犬に噛まれて以来犬が恐いが、ペットのサクラだけは触れる。
 米村 幸子(ヨネちゃん) 桃子の幼馴染みで同級生、大の犬好き。
  フリルの似合う美少女だが、性格がアニキ。テコンドー黒帯保持者でファザコン。
 千葉 真人 三中の学生、桃子のBF。
  X’masから「お友達で」付き合い出し、手作りチョコを貰う。
 サクラ 山崎家の犬。雑種、メス。山崎家のアイドル。
  犬猫見知りしないフレンドリーな性格。
 スズ 山崎家の猫。赤虎、メス。山崎家最強生物。サクラの教育係。なにげに関西弁。
 ラッキー 真人の家(ペットショップ千葉)の看板犬。
  ゴールデンレトリーバー、オス。

<登場人物(参考)>
 ガーゴ 公園を根城にしているカラス。スズの子分。イタズラが趣味。
 シロ 公園を根城にしている白猫、メス。スズを姐さんと呼び、憧れている?
    犬嫌いだが、世間知らずのサクラは平気らしい。
 シャミー 山崎家の近所で飼われている黒いペルシャ猫、メス。
    好きな物は高級魚の刺身。高級派vs庶民派な為かスズと余り仲が良くない?
 山崎 葵 桃子の兄、獣医助手。顔は良いが、口が悪い。手作りチョコと鳥が嫌い。
 柿崎先生 アサヒ中学の物理教師。物理おたくっぽい外見をしている。幸子の初恋の相手。
 氷上 彰 葵の務める病院の獣医師。

 ***

「今回はバレンタインデーの続きになります」と脚本家のよしりん☆。
「千葉君が『永遠にお友達』ポジションなのか『お友達以上恋人未満』なのか『恋人』になるか決定する重要なお話になりますので、皆で良く話しあって決めてください☆」
「あ、プレゼントも決めて下さい。誰が誰に何を贈るのか。マシュマロとか飴とかクッキーなのか、はたまたラブレターや花なのか、重要になります。ただし中学生の男の子のお財布ですので高い物は駄目ですよ☆」

「1つ大事な事を忘れていました。犬や猫に人間の食べ物=オヤツと言う事を覚えさせない事が基本中の基本です。つまり食べている物を分け与えるのは駄目です。動物は上下関係が厳しく下位になる程、マトモにご飯を食べれません。つまり分け与える事により、飼い主をペットが同等と考えるようになります。これは動物には負のストレスです。言う事を聞かなくなったり、無闇に人間の食べ物を欲しがったり、机の上に置いてある食べ物を狙ったりもします。そうすると彼等が食べると危険な物を口にする機会が増えてしまいますし、場合によっては拾い食いつながりますので注意して下さいね」
 よしりん☆は、こうして出演者達にまた1つペットの飼い方知識を押し付けて行くのであった。

●今回の参加者

 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0443 鳥羽京一郎(27歳・♂・狼)
 fa1463 姫乃 唯(15歳・♀・小鳥)
 fa3262 基町・走華(14歳・♀・ハムスター)
 fa5239 岩倉実佳(10歳・♀・猫)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)
 fa5488 大曽根千種(17歳・♀・一角獣)
 fa5560 李 眠林(26歳・♂・狐)

●リプレイ本文

●放映できない部分
 ランとネムリンから、幸子と柿崎の絡み案について聞いたプロデューサーは困ったように言った。
「ラン君とネムリン君は『幸子に柿崎が好意を持っているような思わせぶりな態度をしている』と解釈したのかもしれないが、よしりん☆から事前提示されていた脚本には『柿崎先生に思いを伝えるだけで良かった幸子』と書いてあったので、こちらとしては『幸子の恋は完結』していると解釈しているんだが?」
 つまり、わざわざネムリン演じる柿崎が、幸子の恋を蒸し返す必要がないと思っていたのである。
「まあテスト撮影はしてもいいがね」

 ***

「ちょっと待っててくださいね」
 そう言うと柿崎は本や書類の散乱した机の下から黒いバッグを引っ張り出し、ごそごそと何かを探し始めた。
「バレンタインの時は手作りのチョコをどうもありがとう。私はお菓子作りなんてできないから、市販のものになっちゃったけど‥‥お返しです」
 そう言って幸子に可愛らしく巾着型に包装されたクッキーを渡す柿崎。
 幸子は別に期待していた訳ではないので、準備室に呼び出されクッキーを渡されたのは意外であった。
 校則に従えば菓子の持込は禁止されているし、教師達はホワイトデーのお返しを無視するのが普通である。
 他のクラスの子達も教師達から何か貰ったという噂は聞いていない。
 期待していいのだろうか? そんな気持ちが再び幸子の胸を占める。
 だが柿崎から自分は「特別な存在ではなく」他意がない事を知り、落胆する幸子であったが、
「先生、ありがとう。気持ち、ありがたく頂戴するね」と笑顔で準備室を後にした。
「気をつけて帰ってくださいね」という柿崎に「はーい!」と明るく幸子は返事をするのであった。


●オープニング
 山崎 桃子(姫乃 唯(fa1463))はサクラ(CV:大曽根千種(fa5488))の散歩綱を引き歩いている。
 塀の上を歩くスズ(CV:基町・走華(fa3262))を豪華なレースカーテンで飾られている出窓から見下ろす黒いペルシャ猫のシャミー(CV:大曽根千種2役)。
 レジを打っている千葉 真人(倉瀬 凛(fa5331))。
 芝生でのんびりと座って日向ぼっこ中の白い猫のシロ(CV:岩倉実佳(fa5239))が映る。
 胴着を着てテコンドーの型を決める米村幸子(基町・走華)、ケーキショップで可愛らしい巾着袋に入ったクッキーを買う柿崎先生(李 眠林(fa5560))。
 カルテを書き込む氷上 彰(篠田裕貴(fa0441))に山崎 葵(鳥羽京一郎(fa0443))がコーヒーを差し出す。

 色々なペットの写真が写し出され、タイトルが画面に写し出される。スポンサーリストの表示後、CM。
 本編がスタートする。


●わふわふ わふん♪ ホワイトデーメモリアル
 サクラを連れ、ペットショップ千葉を訪れる桃子。
「見てサクラ、ちっちゃい子がいっぱい。可愛いね〜」
 サクラを抱き上げ、ショーウィンドウの子犬と子猫をサクラを見せる桃子。
「サクラが家に来た時はこの位のサイズだったんだよ」
 両親に代わって店番をしていた真人が桃子の姿を見つけやって来る。
 久し振りに会えた嬉しさを隠さず、満面の笑みで迎える。
「桃子ちゃん、いらっしゃい。サクラちゃんも一緒か」
「あ、真人君‥‥!」
『こんにちは♪(わん!)』と一吠えするサクラ。
「今日はサクラちゃんのオモチャでも買いに来たのか?」
 真人はサクラの頭を撫でながら桃子に聞く。
「あ、あのね、今日はサクラのおやつを買いに来たの‥‥」
「バレンタインの時サクラがプレゼントに自分のおやつ持って来てくれて‥‥もうすぐホワイトデーだから、お返しをあげようと思うの‥‥真人君はどれがいいと思う?」と桃子。
 他の人が聞いたら変な話だと思うだろう。
 言ってからそう思った桃子は「真人に笑われるかな?」と心配になったが、真人は気にした様子もなく、
「サクラちゃんはいつもどんなおやつを食べてるんだ? これなんか、結構人気なんだけど、掛かりつけの獣医さんに言われている事とかもあったら教えてくれるか?」
 真剣な表情でおやつを選んぶ真人に新たな一面を見た気がしてどきどきする桃子。
「ちょっとお腹が弱いって‥‥」
「これなんかオリゴ糖が入っているけど、食べ過ぎちゃうほう?」
『あ、このジャーキー好きなの☆』
 棚を覗き込んでいたサクラ。
 大好きなジャーキーの袋を見つけたサクラは、桃子の前でちょこんとお座りして尻尾を振る。
「何? 好きなのが見つかったの?」と桃子。
『うん! これ、好きなの♪(わん♪)』

「有り難うございました」
 会計を済ませて帰ろうとする桃子を呼び止める。
「あっ、待って桃子ちゃん。14日だけど、いつもの児童公園で会えるかな。ほら、ホワイトデーにお返しするって言っただろ?」

 ***

 14日朝──
「おはよう、桃子。出勤前に顔を見れて良かった」と葵。
「何、お兄ちゃん?」
 ふふんと鼻で笑いつつ、桃子の手にリボンのついた小さな箱を置く葵。
「バレンタインデーのお返しだ。手作りのものではないから安心しろ」
「ありがとう♪ って、何よ。それ‥‥」
 バレンタインデーに渡した手作りチョコレートは、やはり不味かったのだろうか? 「3点」というあまり芳しくない評価を受けた桃子であった。
 がさごそと箱を開けると小さなクロストップが2つ着いたシルバーのネックレスが入っていた。
「幸子ちゃんくらい‥‥とは言わないが、好きな男が出来たなら少しはお洒落をするんだな」と葵。

 ***

 畜患が一段落してカルテを片付けている彰と葵。
「へえ、桃子さんに好きな人が出来たんだ。いつの間にか子供達は様々な人生経験をして‥‥大人への階段を上っていくんだね」と彰。
「‥‥ええ、バレンタインのときも何時になく張り切っていまして」と葵。
「でも‥‥お兄ちゃんとしては随分と複雑、っていう表情だよね」とくすくすと笑いながら、葵にカルテを手渡す彰。
「本当に素直じゃないんだね、葵君は。ストレートに、お兄ちゃんらしくぶつかれば良いと思うんだけど?」
「先生、余りからかわないでください。俺は別に妹のことなんて関心ありませんよ」と照れ隠しにぶっきらぼうに答える葵。
 カルテを持って立ち去ろうとする葵を呼び止める彰。
「そうだ、葵君。バレンタインのときに渡し忘れてたから‥‥何時もお世話になってます。そして‥‥今後とも宜しく」
 微笑みながら1ヶ月遅れのプレゼントを渡す彰だった。

 ***

 葵から貰ったペンダントを着け出かけようとする桃子を見て、慌てて散歩紐を持ってくるサクラ。
「サクラ、あたしは確かに公園に行くけど真人君との約束なの。ホワイトデーのだからお返しをくれるんだって。だから、サクラとのお散歩は後でね」
 そういって出かける桃子。
『ホワイトデー?(くぅん?)』と小首を傾るサクラ。
『バレンタインデーに好きなオスにメスの方から「ちょこれーと」をやるって教えたやろ? それと対になっておってメスの告白にOKなオスがメスにプレゼントをやるんや‥‥全く阿呆らしい。好きなメスん為にプレゼントを贈るんは当たり前の事やろうと思うけどな』
 いつの間にかサクラの隣にいるスズが答える。
『さて、うちとしては桃子はんが一人前のメスに成れるかの瀬戸際やと思うよって。影ながら応援(野次馬)しに行くつもりや』
『サクラも一緒に行く。桃子ちゃん、見に行くの♪』

 サクラとスズが桃子の少し後ろをとことこ着いて行くので、2匹は通行人に止められる事もない。
『あら? そこに行くのは、サクラさんに庶民派のスズさんじゃないの』とシャミー。
『なんやシャミーもおったんかい‥‥これは桃子はん‥ゲンが悪いんやないか?』とスズ。
「シャミー、シャミー!」
『飼い主が探しているんやない?』とスズ。
『ああ、あれ? 時々私は「かくれんぼ」して差し上げるのよ。だって運動不足になると可愛そうでしょう? だからって変な機械に乗って運動とか言うのは、庶民がする事ですもの。私が猫でなく人間だったらあの人を軽井沢とかそういう自然が一杯の環境で運動させて上げられるのに』
 どこか芝居がかった様子で嘆いてみせるシャミー。
「相変わらず嫌味なブルジュワやなー」と冷たい反応のスズ。
「ま、うちらは忙しいんで、頑張ってあんたは飼い主の運動をさせぇな」

 児童公園で真人を待つ桃子。
 それをこっそり茂みから見つめるサクラやスズ。
 昼寝をしていたシロが2匹を見つけ声をかける。
「あ、スズの姐さん☆ こんにちは〜☆ 何してるんですか?」
「ああ、うちの桃子はんが立派なメスに成れるかの一大事や」
「ところで、何やらカップルの姿がよく見られますねえ」とシロ。
「まあ、春っちゅうヤツやな。皆、音立てたらあかんで」とスズ。

 そこへ真人がやって来た。
「ごめん、待った?」
「ううん?」
「これ、一輪だけで悪いけど、受け取って」
 そう言って桃子にクッキーとピンクのチューリップを一輪渡す真人。
「真人君、有り難う!」と桃子。
「本当は花束に出来たら良かったんだけど、花って意外に高いんだな」と照れながらも懐事情を素直に話す真人。

 春らしいそのチューリップを見ながら、
(「考えてみたら、あたし、クリスマスからちゃんとした答えを出さずに真人君を待たせてるんだよね。ずっと曖昧なままにしてしまって、真人君に他に好きな子が出来ちゃったら‥‥そんなの嫌だ」)

 桃子の真剣な表情で躊躇う真人。
「真人君、あたしね。やっぱりまだ恋人としての好きって言うのが、よく分からないの‥‥」と素直な気持ちを話す桃子。
『何もじもじしてんですかねえ?』とシロ。
『しっ! 大事な所や。ええか? 雀を取る時みたいに「じーっと」様子を見守るんや』とスズ。
 やっぱり駄目なのかと一瞬がっかりする真人の瞳を見つめ、言葉を続ける桃子。
「でも。暫く真人君と会えなくて思ったの。このまま真人君と会えなくなっちゃったら、そんなの嫌だなって。上手く言えないけど‥‥」
 やはり恥ずかしくなって俯いてしまう桃子。
「真人君はあたしにとって『特別な人』って気がするの」
 小さな声で、
「だから、こんなあたしで良かったら、これからもずっと一緒にいて下さぃ‥‥」
「それって、俺と付き合ってくれるって事か?」と真人。
 桃子のOKに驚きと嬉しさの混ざった表情を浮かべる。

「いつか抱え切れない位の花束を渡すから、今は一輪だけで我慢してくれるかな?」と満面の笑顔を桃子に向けやや冗談ぽく言う真人。

『よっしゃ! やりおった!』
『おめでたいですね♪』
 パタパタと尻尾を振るスズ達に対して良く判っていないサクラ。
『何がおめでたいの?』
『オスとメスがええ関係になるんは、喜ばしいことやで。桃子はんもまだ、第一歩やけどな。その第一歩が大事なんよ。まあサクラには2、3ヶ月先の話やけど』と大人な話題をするスズ。
『良く判んない』
『皆、大人になれば、自然と時期が来れば判るもんやからな。早ようサクラも大人になりや』
『うん、早く大人になるね♪』

 ***

「良かったなぁ、桃子はん。これで桃子はんも一人前のメスや‥‥これはうちからのプレゼントや」
 眠る桃子の枕元に何かを置くスズ。

 ──そして翌朝。
「きやーーーーーーっ!」
 桃子は、枕元に置かれたソレ(雀)とご対面をすることになった。

<END>