「7」花見で一杯アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
なし
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
03/30〜04/01
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●本文
古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物は、ネオン看板ぐらいである。
ハウス正面、道路に面した駐車場に一本の桜の樹がある。
花もほころび見頃である。
「公園だと他の客の迷惑になるか‥‥‥」
桜を見乍ら、ぽつりと言う親父さん。
「どうでしょう? 昼間や宵の口であれば演奏も近隣住宅には迷惑にはならないと思いますが?」
ホワイトデーお返しに配った桜のロールケーキと同じケーキを作っている浩介。
最早殆ど主夫と言える位腕も上がり、昼間パートに出ている嫁さんと交代で家事をこなしているらしい。
「そうだな。機材はオフライン‥‥アナログにすれば迷惑にならないか?」
「そうですね。アコースティックで弾いて貰った方がいいでしょう」
浩介の言っているのは、ギターの話である。
「キーボードはショルダーキーボードであればバッテリーがありますし‥‥サックスやらビオラ等、あまりロックと馴染みのない楽器も面白いと思いますしね」
先日買ったアルバムにフルートのアレンジが入ったのを思い出して言う浩介。
「まあ、花見をし乍ら、今後の抱負とか喋り‥‥気軽に宴会、興が乗ったら演奏という感じでいいのではないですか?」
●参加者への注意
ライブハウス「7」近くの公園で花見を行います。
食べ物・飲み物については各自持ち込み、
未成年者の飲酒は×、乗り物乗用者の飲酒は×(運転代行利用での飲酒は○)。
×行為は親父さんが男女問わず公平に、頭突きかパイルドライバー、卍固めを掛けてくれます。
運転者の飲酒は、+(プラス)ヒンズースクワット2時間です。
服装は、一般人に迷惑になるものはお断りします。(半獣・完獣化×)
同様に武器携帯・所持は、×。
●演奏時の注意
グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ)参加も可能。
歌詞のないインストゥメンタルも演奏可能。
演奏は、タイトル・歌詞・曲は、オリジナル限定。
楽器は『ALL持ち込み』、携帯していない場合は『アカペラ』と見なします。
公園なので電源がありません。
楽器種別は問いませんが、車載であってもグランドピアノ、ドラムセット×とします。
●リプレイ本文
先週迄寒の戻りで寒かったが、ここ連日の夏日までは行かないが温かい陽気で一気に満開を迎えた東京の桜。
「かぉる、オーライ、オーライ‥‥‥ストップ!」と白Tシャツに薄青色のパーカー、ジーパン姿の紗原 馨(fa3652)が運転するモービルスパイクWの駐車入れを手伝う海鈴(fa3651)。
公園の臨時駐車場は、微妙な白線が引いてあるだけの本当に簡易的なもの。
乗せて貰っているのだから。と海鈴が後ろを誘導していた。
「今晩は♪ 今日はお招き下さってありがとうございます。折角のライブハウス主催ですから、本当なら歌でも披露したい所ですけど‥‥」
そう言ってくすりと笑うのは、グリーンのカシュクールチュニックにインナーに白のキャミソールの上から白いハーフコートを羽織り、スキニージーンズとカジュアルに決めた中松百合子(fa2361)。
「誰もが歌を披露する訳じゃないし、気楽に楽しんでもらえればいいよ」と浩介。
「ゆくるは‥‥‥メロンパン‥‥持って‥きました。‥‥普通のメロンパンと‥‥桜メロンパン‥‥チョコチップも‥あります。‥‥桜の下で‥‥メロンパン‥‥美味しいですよ」と湯ノ花 ゆくる(fa0640)。
三段重に綺麗に並べられたメロンパンを見せる。
「メロンパンのお重は凄いです。私は普通にちらし寿司とかです」と天羽遥(fa5486)。
「あたしは親父さんの歳を考えて和風にしたよ」と亜真音ひろみ(fa1339)。
「俺を爺扱いするな」
「65歳になれば充分、良い歳だよ」
「あっ、ひろみさんに遥さん‥‥‥来てらっしゃったんですね♪」と馨がぺこりと頭を下げる。
「お招き、ありがとう、ございました‥‥‥‥」とDESPAIRER(fa2657)。
「おう、来たな」
「親父さん、手が空いているのならサクラを手伝ってやって下さい」
そう言い乍ら空気で膨らむクッションをせっせと膨らませている浩介。
浩介の車からえっちらおっちらと薄墨に桜の小袖姿を着込んだ最上さくら(fa0169)がビールケースやら酒を降ろしてカートに積んでいる。
本人は「本の搬入で重い荷物には慣れているから歩いて行きます」と言ったが、浩介が車を出した形になる。
「‥‥ずいぶん持って来たな」
「日本酒が6升にビール、焼酎、ウォッカ、ワイン、ブランデー、コニャック、ジン‥‥あと泡盛。部屋にあった酒類を全部持って来ました」
「‥‥‥‥‥‥‥‥そうか」
「あ、これも乗せて良いですか?」と馨。
手に提げたコンビニ袋には大きなジュース等の清涼飲料水が沢山入っていた。
「こいつは手で下げたほうがいいが、俺が持った方がいいな」
代わりにサクラの押すのを手伝ってやれ。と親父さん馨から袋を受け取る。
「わぁい♪ お花見お花見!! えへへ楽しみ♪」と海鈴。
お手製のクッキーとお茶が入ったポットが入ったバックを抱えている。
「レモンティーにミルクティーでしょ。後、折角だから緑茶も持ってきたんだよ」と海鈴。
「ホントに桜って綺麗ですよねぇ♪」と馨。
「あんまり花見はした事がないのか?」と親父さん。
「いつも食事とおしゃべりに目が行っちゃうんですよ」と苦笑する馨。
各自の持ち寄ったお重がシートの上に並べられていく。
「‥‥あまりこう言った‥‥‥‥お弁当の類は‥‥‥作り慣れていませんので‥‥」とディー。
ちなみにメニューは料理上手が揃った為か、
おにぎり(梅、鮭、五目)、炊込み御飯、ちらし寿司、お稲荷さん、巻寿司、サンドイッチ(卵サラダ、ツナマヨ、ハム、香草焼チキン)、メロンパン(ノーマル、桜、チョコチップ)、カナッペ、塩辛、鳥の唐揚げ、筑前煮、菜の花のおひたし、卵焼き、レンコンとゴボウのきんぴら、長芋の磯辺巻、豚の角煮、煮豚、ポテトサラダ、アスパラの肉巻き、春キャベツのキッシュ、揚げカツオの甘辛炒め、エビチリ、チャーシューパイ、エビチーズロールが勢ぞろい。
この他デザートに桜餅、抹茶羊羮、抹茶餅餡、桜の牛乳かん、栗蒸しようかん、一口サイズの苺のシュークリーム、チーズケーキ、シフォンケーキ、遥特製激甘ケーキ(砂糖など糖分の量を2倍にした生クリームたっぷり塗ったショートケーキ)、動物の型に抜かれたクッキー(バター、チョコ、マーブル)、馨の買ってきた菓子類に浩介のロールケーキ。
と早口言葉が出来る程の量が集まった。
「少ししょっぱい物が欲しいな」と甘い物が苦手な親父さん。
「酢昆布とカリカリ梅と煎餅、きゅうりの古漬けを用意してあります。あと桜茶と焙じ茶とコーヒーが飲めるように簡易コンロも持ってきています」と浩介。
「‥‥道理でお前は荷物が多い訳だ」
ちなみに親父さんは完全に一人手ぶらである。
コップが回り、各自が酒やらジュースやらを手にする。
「折角の花見だ。ガタガタ言わず楽しくだ。乾杯!」親父さんの掛け声で乾杯をする。
「「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」」
「えっと、頂いちゃって良いですか? ‥‥‥頂きまーす♪」
「美味しいね♪」
「これ、どうやって作ったんですか?」
各々舌鼓を打ちながら、思い思いに箸を進める。
お腹がこなれてくると各々色々話が弾む。
「美味しそう。コレ貰うね♪」
ピンク色の液体(ピーチフィズ)が入っていた紙コップを手にした海鈴に気が付いて声を掛ける。
「海鈴っ、それお酒だよ?!」
「え? 本当? 止めてくれてありがとー」
今回『うっかり飲んでもプロレス技だ!』と念押しされたのを思い出し苦笑いをする海鈴。
「あっ、そうそう‥‥‥海鈴、卒業おめでとう♪」
「えへへ、かぉるありがとー♪ んでもって、かぉる、高校卒業おめでとー!!」
「なんだ、お前ら同学年なのか?」と親父さん。
「私って同級生で中学一緒だったの! 高校は違うんだけど‥‥‥でも、演劇系の同じ短大受けたんだ」と海鈴。
「そう言えば、結果どうだった?」と馨。
「私は合格決まったけど‥‥‥」
「ホント? じゃあまた一緒に通えるんだね♪ 頑張ろうね!!」
「そうか、二人とも合格か」
「二人ともおめでとう」
「はい♪ 私、二人の合格祝いに舞を舞います♪」
サクラ、懐から扇子を取り出すと「じ〜ん〜せ〜い〜ご〜じゅ〜う〜ね〜ん〜」と歌付きで踊りだす。
「よ、待ってました! ‥‥って、こいつは結婚式とかで舞わねぇか?」と親父さん。
「今日は固い事抜きじゃなかったんですか?」と拍手をしながら浩介。
「メイクって良く解らなくて、濃くなっちゃうんですよね‥‥中松さん、メイクの仕方で気を付ける事とかありますか?」とハル。
「そうね。家庭だと太陽の下とかに比べて光量が少ないから色が薄く見えるのでお化粧が濃くなるというのはあるわね。だから家庭では薄いかな? って思うくらいの方が良いって言われるわよね。それに対してスタジオとかで自分達でメイクをしている場合はちょっと違うのよ‥‥」
ユリは自分のバックを引き寄せると簡単メイク講座をハル相手にしていたが、いつの間にやら新大学生コンビも加わって盛況となっていた。
「‥‥‥桜‥‥‥綺麗、ですね‥‥‥‥」
ひろみの持ってきたワインを片手に幸せそうに桜を見上げるディー。
いつの間にかシートの端に移動している。
「遅くなったけど、ヴァニプロ所属おめでとう」
空きかけたコップにワインを注ぐひろみ。
「ひろみさんも‥‥アイベックス所属‥‥‥おめでとうございます。‥‥そういえば‥‥思い出しますね‥‥‥」
「ああ、ディーとまた大切な場所で花見が出来るとは思わなかったよ
去年の今頃、ひろみとディーが一緒に歌ったのはディーに取って大きな転機であり、大切な思い出である。
「ショルダーキーボードを持ってきたんだ。一緒にどう?」
「いいですね‥今年も一緒に‥‥お花見が出来て‥‥そして、一緒に歌えることを‥‥嬉しく思っていますよ」とにっこり笑うディー。
【桜道】
♪♪♪〜
桜舞う季節
違うそれぞれの道を歩き始めた君にこの唄を送ろう
これから迷い
時には誰かに傷つけられるかもしれない
季節が変わり環境が変わり不安になるかもしれない
だけど弱気になんかならないで
新たな出会いが君をきっと支えてくれるさ
それでも次の一歩に迷ったらいつでも電話しておいで
俺はいつも君の側にいる
いつでもその背中を押してやるよ
今まで積み重ねてきたものがきっと君を支えてくれる
いつ会ってもあの頃に戻れるさ
俺達の絆はそんな脆いものじゃないから
追い風は君に吹いているよ
どんな時も
向かい風なら俺が追い風に変えてやる
いつかあの頃の二人に戻れたなら
またこの桜の下で笑い合おう
満開の桜にあなたの笑顔を重ねる
舞い散る桜にあなたの横顔を重ねた
いつ会ってもあの頃に戻れるさ
いつかまたあの頃の二人に戻れたなら
またこの桜の下で笑い合おう
〜♪♪♪
春の日差しの穏やかさを持った歌声が夜の公園に流れる。演奏が終わるとパチパチと周りからも拍手が起こる。
浩介の言った通りこの辺りの住民達は場所柄、首相やら国会議員から力士にプロレスラー、芸能人を多々見かける為か都会の節度を持って無関心を決め込んでいる為に気楽である。
「いい曲だったよ」
「最近は‥‥‥少し、大人しめなので‥‥。‥‥‥久々に、昔のような、曲も‥‥‥歌ってみたい、ですね‥‥‥」
「ああ、『暗黒歌手』らしいディーと言うのも久しぶりに見たいぜ」
にやりと笑う親父さん。
さてさて、宴も酣(たけなわ)。呑んべい組(浩介を除く)は、思い思いにワインやら酒やらをコップに注ぎ飲んでいる。
「あはははっ、親父さんは強いんですね」
ケタケタと笑い続けているサクラ。
笑い上戸らしく先ほどからずっと笑い続けている。
「まあ、そこそこな」
知らぬ間に親父さんへのチャレンジカップ(呑み比べ)が始まっているようだ。
余り強くないユリがマイペースで傍観している。
「親父さん、山田店長さんとジャンケンしませんか?」とハル。
「どうした?」と親父さん。
「デザートが売れ残っているんです」
元々食べ物が大目の今回宴会である。呑みながら食べ物を食う人間は少ない。
未成年者も多いが、女の子達にはちと量が多かったようである。
浩介は、皆が話しに突入したと判断した時点で通行人やら隣近所の宴会にせっせと余った料理を下町のおばちゃんよろしく「お裾分け」を開始していた。
が、デザート類は別だろうと残していたのだが‥‥さすがにハル特製の劇甘ケーキは血糖値があがっている状態では、なかなか売れない。
「親父さんが負けたら、私の特製激甘ケーキを食べて貰います。私が負けたら‥‥ヒンズースクワット1時間でどうでしょうか?」とハル。
「‥‥それは俺が負けた時、分が悪くないか?」
甘い物が苦手な親父さんには負けたくない賭けである。
「山田店長さんが負けたら‥‥山田店長さんのお勧めケーキを食べさせて貰う。私が負けたら‥‥一人でお花見の後片付けでどうですか?」
(「別に普通に食ってもらってかまわないんだが‥‥」)と浩介は思ったが、真剣なハルを見て、言い出せなかった。
「じゃあ、異論がないって事で行きますよ! じゃんけん、ぽん!」
勝敗は親父さんが負け、浩介はハルと引き分けだった。
終戦後の食糧難体験のある親父さんとしては、箸を着けた食い物を残すなんぞは許せないことであったが「駄目だ! これ以上は勘弁してくれ!」とハルのケーキを半分以上残してしまった。
「そんなに甘いですかね?」
ハルは自分で作ったケーキの生クリームをぺろりと舐める。
「普通ですよ?」と人一倍甘い特製紅茶を啜って言った。
「‥‥普通にロールケーキは食べていいぞ。それに片付けは皆でやった方が早いしな」と親父さんに高温で抽出したブラックコーヒーを出す浩介。
●終宴
飛ぶ鳥、跡を濁さず。宴会の片付けを分担して、各々帰る準備をする。
「馨、悪いがディーを送ってやってくれないか? サクラとは逆方向みたいなんだ」と浩介。
全く顔色も態度も変わらなかったので、気が付くのが遅くなったが完全に潰れているディー。
「‥‥すみません‥‥」と顔色が悪いディー、さっき浩介から仁丹を貰ったが、まだまだ気持ちが悪いようだ。
「海鈴を送って行くので大丈夫ですよ♪」
「大丈夫ですか?」
海鈴に支えられながら馨の車に乗り込むディー。
サクラは「自称:結構強い」と言いつつ、呑んだ所で舞ったのが効いたのか、はたまた漫画の締め切りに追われて睡眠不足だったのか。サクラは気が付いた時には眠っていた。
別名地獄の腎臓、ハイパーなアルコール分解酵素を分泌する肝臓を持っている親父さんも宴会を始めた時と顔色も変わっていない‥‥と言いたい所だが多少青くなっているのは、ハルの劇甘ケーキにノックダウンさせられたからだろう。
「親父さんとさしで飲みたかったけど‥‥その様子じゃしょうがないね」とひろみ。
「悪いな‥‥皆、気をつけて帰れよ」と親父さん。
「親父さん、若い連中に付き合うのもいいですが、親父さんが一番強いんですから慎んでくださいよ」と浩介は溜息を着いた。
花見の後は、ベテランスタッフが発案した「お嬢様大作戦」企画である。
どう転ぶかは、まだ誰も知らない。