−ザ・DOG−第7話アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
有天
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
7.9万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
03/21〜03/25
|
●本文
●深夜ドラマ『潜入捜査官−ザ・DOG−』第7話:「探る手」役者募集
<あらすじ>
フリージャーナリスト山崎は、追っていた公共施設建設に絡む談合に絡む贈収賄事件の県会議員が自殺したのを不信に思っていた。
その県会議員は贈収賄に関与していると思われた第2秘書が自殺しても(山崎は、その議員がなんらかの方法を用いて第2秘書殺させたと考えている)眉一つ動かさなかった非情である。
何があっても自殺しない。自分だけは最後迄そ知らぬ顔を決め込みのうのうと生き延びる‥‥‥。
そう思っていた相手である。
県会議員が自殺した当日も、山崎は議員が泊まるホテルの前を張り込んでいた。
議員の泊まる部屋に望遠レンズを向ける山崎の目の前で飛び下りる(落ちる?)県会議員の姿。
驚愕し乍らもシャッターを切る山崎。
撮影したフィルムを現像した所、県会議員の後ろに白い手が写っていることが判った。
『特ダネだ』と警察に言わないでいる山崎の周りで起こり始める不可解な事件。
彼の命を狙うのは果たして‥‥‥?
●製作ノートより −概要−
犯罪組織撲滅の為にだけ組織されている司法の犬たち。
元死刑囚や犯罪組織に肉親を殺された家族たち等で構成されている潜入捜査官。
警察機構に属さず、逮捕権、銃の携帯等一切ない『非合法』の組織。
彼等を待っているのは、偽りの名前と裏切り者という呼び名。
誰も本当の彼等を知らず、一時的に与えられた偽りの顔、偽りの中の孤独で辛い仮の生活‥‥‥。
彼等を突き動かすのはただ一つ、「悪を許してはおけない」という捜査官達の熱い思いだけ。
自らを『使い捨ての駒』と知り、
悪行を潰す為に自らも悪を行う矛盾、
仲間を見殺しにする非情さを抱えて葛藤し乍ら戦うダークヒーロー達。
●用語
「犬(DOG)」潜入官、サポーター、リーダーによって構成される実働潜入捜査チーム(部隊)。
「実働潜入捜査官(潜入官、顎(牙))」調査対象組織に直接潜入する実働潜入捜査チームの捜査官。
「サポーター」潜入捜査チームの補助役。潜入官を助け、情報収集・解析、回収・廃棄、配車等を行う。
潜入官とは異なり、戸籍を捨てていない者もおり、定職に着いている者も多々いる。
「リーダー(ドッグヘッド)」実働潜入捜査チームを指揮。1チーム1リーダー。
「犬飼(ブリーダー)」複数の犬チームを纏める人物。複数いるらしい。
「鳩」犬飼専用の連絡用員。リーダーのみと接触。
「狼」組織全体の不利益になる人物を始末する事を専門にする始末屋。銃を携帯している。
山崎の命をそれとは知られずに守り、県会議員を死の理由を白日に曝せ! 役者募集
「今回のDOGは、元に戻ってサスペンスだ」と鬼塚ディレクターが言う。
「県会議員の死についてだが、『実は犬の潜入官で突き落とした犯人が狼』でも、それ以外にも‥‥まあ『大穴で愛人と本妻さんの絡みで関係ない所で実は死んじまった』でも構わない。『山崎の見当違いの捜査というのもあり』だそうだ。犬達が動く理由は、『県会議員が関わった贈収賄事件を白日に晒す』事で、その為に山崎を利用する為に『山崎を守って動く』訳だ。愛人うんぬんは、まあ紆余曲折の方法だが県会議員の死が明白になる事によって、贈収賄事件が発覚すると言う‥‥そういうやり方もあるという例だからそれに縛られず、ユニークなアイデアを頼む」
頭をガリガリと書く鬼塚。
「尚、県会議員も山崎も性別は不問だ。但し、内容から言って20才以上であることが条件だ」
「‥‥ああ、そう言えばよしりん☆が、今回はミーティングルームに顔を出すと言っていたな。なにか質問があれば聞くように」
そういうと鬼塚は部屋を出て行った。
●登場人物解説
『山崎』フリージャーナリスト。公共事業に関わる贈収賄事件を調査中、県会議員の死を目撃する。
『県会議員』公共事業に関わる贈収賄事件の張本人と見られる。ホテルに宿泊中、転落死する。
『第2秘書』
『?』県会議員を突き落とした謎の人物。
●リプレイ本文
●CAST
山崎 進‥‥‥藤間 煉(fa5423)
赤畑宗司‥‥‥古河 甚五郎(fa3135)
篠塚弘毅‥‥‥伊達 斎(fa1414)
戸塚 栞‥‥‥斉賀伊織(fa4840)
木林 岳‥‥‥タケシ本郷(fa1790)
久方絵美‥‥‥DESPAIRER(fa2657)
ネームレス‥‥緑川メグミ(fa1718)
高田 鈴‥‥‥稲川ジュンコ(fa2989)
●尻拭い
「贈収賄の調査の為に送り込んでいた犬が、ミスして処刑されちゃったみたいなの」
世間話をするかのようにネームレスと名乗ったその女は言った。
弘毅の前に現れる鳩は、大体高飛車であるか、無機質なロボットのような喋り方をする。
否、最近のロボットの方が何倍も表情豊かである。
「そのことを調査している山崎って記者のことを任せたいの。こちらとしては、贈収賄の事が暴露できれば方法は何でもいいわ」
「事件の事はニュースで流れていたな。贈収賄に直接関与した第2秘書と代議士が死んで‥‥子守り(護衛)はいいが、俺に他のチームの尻拭いをしろと?」
珍しいケースである。
余程、大きな裏があるのだろうか?
弘毅は、過去に他のチームをそれとは知らされずに手伝わされた苦い経験がある。
事前に教えてくれるだけマシだろう。
「警戒している敵の相手は構わないが‥潜入官はどちらだ?」
「さぁ? 私の知ったところじゃないわ。詳しい事は、このDVDに焼いてあるわ。あ、ちなみに言っておくとそのディスク使う時は注意してね。開封後、48時間でデータ読み込めなくなるから」
「‥‥ずいぶんとゆっくりだな」
ぽつりと漏らした弘毅の言葉にさっと顔を赤めるネームレス。
歳若い彼女は、鳩として経験が浅いのかもしれない。
1回しか読めない、コピーガードが着いている等ざらである。
48時間後にその記者でも襲われるのだろうか?
それならそれを利用するもの手だろう。
そう結論着けた弘毅は、DVDを受け取った。
●久方絵美と言う女
第2秘書として潜入していた元詐欺師「久方絵美」は、情報がある程度集まった所で情報をマスコミに流し、自分諸共、議員を逮捕を計画していた。よくある手だが、確実な方法である。
「その白羽の矢が立ったのが‥‥山崎 進か」
情報を漏らしているのが議員側にバレ、絵美は殺されたのだろう。
「‥‥だが議員が死んだのは、誰の思惑だ?」
絵美が単独チームではない証拠に今、弘毅は情報を手にしている。
絵美のチームは、議員を守る事はあっても殺害する事は考えられない。
潜入官が議員と秘書の両名ならば、贈賄側の手とも考える事はできる。だが潜入官は第2秘書だけである。
贈賄側も使い捨て程度しか議員に価値を感じていなければ、巨額が動く公共事業の談合に絡むような贈収賄を行おうと思わないだろう。
ノーネームの情報には、第三者が関わっている痕跡はなかったし、絵美のチームも進を煽って事件暴露のきっかけにするには十分、機が熟しているように思えた。
「‥‥嫌な感じがする。何か裏があるのか?」
だがゆっくりと計画を立てている暇はない。
相手が誰であれ、2人死んで警戒しているのは確かである。
ノーネームが言わなくても弘毅も大人しく進の護衛だけをするつもりは毛頭なかった。
折角、敵が進を襲ってくれるのならば実行犯を捕まえ、それと贈賄側の関係が立証されれば捜査が中断する事はないだろう。
的確に狩人(警察)が動けるようにお膳立てをする犬(メンバー)達のピックアップもドッグヘッド(リーダー)である弘毅の仕事である。
DVDをトレイから取り出し粉砕機に掛ける弘毅。
絵美が殺された時点でこちらの持っている情報を敵が入手している可能性も否定出来ない。
最悪守り切れずに死んでしまっても進のデータをこちらが入手出来れば、贈収賄と殺人の立件はできるだろう。
「‥‥だが誰が敵でも、俺の前で誰も殺させない‥‥」
弘毅は、机に飾られた小さな写真立てを見つめた。
●山崎 進と言う男
進は、その日一人の人物を待っていた。
「山崎さん、お待たせしました」
「赤畑君、全然♪」
進が追っている贈収賄事件の議員転落死。
進の撮影した当たり障りのない転落後の死体写真は、雑誌社経由で地方紙の紙面を飾っていた。
ゴシップ紙や雑誌は、転落は自殺か? 事故か? と騒ぎ立てているが、進だけが知っている事実。
議員の背中を押した手の存在。
頼みにしていた別の情報源の男とは、最近全く会えていない。
そんな時、この宗司と知り合ったのだった。
「そういえば山崎さんの追っている贈収賄事件、山崎さん以外にも派手に動いている人がいるんですね」
飄々とした様子で話す宗司。
「なんでもその女記者さんは議員も自殺した秘書も殺された線で動いているらしいですね」
(「チっ‥‥他にも誰か、追ってるヤツがいるのかよ‥‥」)
進は、心の中で舌打ちした。
「なんでもその人は、最近周りで変な事が立続けに起っているらしいですから『命でも狙われているかしら?』とか空元気かましていましたけど、山崎さんは平気ですよね?」
「んまぁ‥‥元からヤバいネタだしね。それに俺もネタの為に命売りたくは無いもんねぇ」
進自身は身の危険を感じていないと言う。
では、ブリーダーが得た情報はどこからなのだろう?
宗司が言葉巧みに進から得た情報から推測するに「絵美」から進に渡っている情報より遥かに多い情報を進は得ている。
ジグソーパズルの完成は間近だが、手元に残っているピースの数より残りのスペースが小さすぎる違和感‥‥どこか辻褄の合わない理不尽さを覚える。
「山崎さん、最近忙しすぎるんじゃないんですか? 自分、近場に隠れ家的温泉を知っていますから1、2日行って来たらどうです? 何か動きがあったら連絡しますよ」
「そうだな。最近、動きがないし‥‥悪いねぇ、お言葉に甘えちゃおう♪」
適当に進は宿屋の仲居にでも金を渡し、監視しておけば大丈夫だろう。
囮の女性記者役は、もうすでに動き出している。襲撃者を罠に掛け捕縛すれば何か判るだろう。
●2本のナイフ
(「失敗です‥‥」)
エルと呼ばれる女、戸塚 栞は、鳥餅に引っ掛かった鼠よろしくベタベタの床に張りついていた。
会社から頼まれた殺人は、企業を嗅ぎ回っているジャーナリストの消去だった。
男は議員が転落した事故から、女は事故後から企業と事件を洗っている。
男は昨日から姿を消し、残ったのは女である。
前金を受取っていた戸塚は、鈴をターゲットに変更した。
脅されて裏帳簿の管理をしていたが、嫌気が差したのでその事を暴露したい。と鈴に連絡し、待ち合わせ場所の使われていない古い事務所で帳簿を渡し、中身を確認する鈴を後ろからナイフで刺してお終いになるはずだった。
だがどこに潜んでいた宗司に激しく突き飛ばされ、この始末である。
鈴は、とっくに帳簿を抱えて逃げてしまった。
宗司が床に巨大粘着シートを固定していたガムテープを剥がすと暴れる戸塚にシートが絡み付く。
戸塚を持ちやすいようにシートを更に一枚巻き、ガムテープで固定する宗司。
カーペットか何かのように戸塚を担ぎ上げて窓辺に運ぶ。
「ああ、意外と高さがあしますね。ここから落ちたら死んでしまいます。では、質問です。第2秘書を殺害し、記者を今、殺害しようと言うのは判りますけど、なんで議員を殺したんです?」
「私はそんなシナリオにない無闇な狙い方はしないですね。第一、あの人は転落事故で死んだのでしょう」
「本当に? 自分が入手した情報だと会社は他の人は頼んでいないんですけど」
「‥‥本当ですよ。私はしていない架空の殺しを自慢気に話す趣味はありませんから」
「潔い人ですね。でも変ですね、何か。うーん、やっぱり山崎さんのアパートを調べますか。あなたも一緒に来て下さい」
宗司は戸塚を己のワゴンの荷台に梱包した戸塚を押し込み、進のアパートに向う。
「あ、篠塚さん? 赤畑ですが。自分、これから山崎さんのアパートに向かいます。山崎さんが狙われている理由、別口かも知れませんので、ちょっと調べて来ます。ええ、大丈夫です。逃げ足は早いですから」
***
進が自分に話していない何かがまだあると踏んだ宗司は、進の部屋の鍵を難無く開けると中に入った。
パソコンの中に入っている記事やメモには特に変わった所はない。
部屋の奥に現像室として使われているらしいキッチン(カーテンレールが天井に2重に固定され、暗幕が垂れている)に入る宗司。
「‥‥‥これですか」
大きく引き延ばされた写真に写る手が議員の背中を押している。
デジタル解析をすれば押した相手の顔も判るかも知れない。
だが、何かが危険信号を発している。
これは今出るべきではないと。
ガスコンロに火を着けた宗司は、プリントされた写真とネガを放り込む。
この事が後に大きな影響を起こすかも知れない可能性は否定出来ないが、永年の牙としてのカンが宗司の背中を後押しする。
燃えカスを下水に流し込み、燃やした形跡を消した宗司は、進の部屋を後にする。
「その部屋から持ち出したモノの渡して貰おう」
後ろから掛けられた低い男の声に背中に冷たい汗が走る宗司。咄嗟にエレベータではなく脇の階段を掛け降りる宗司。
エレベーターはタイミングがあえば優秀な逃走手段だが、失敗すれば逃げ場のない密室に変わる。
後ろも振り返らず必死に走ってワゴンに飛び乗った宗司は、そのままエンジンをスタートさせ、翌朝追っ手がない事を確認するとようやく弘毅が待つ隠れ家に辿り着いた。
温泉から帰って来た進を焚き付け、犬達がでっち上げた贈収賄の泥沼人間模様が写真週刊誌のトップ記事を飾ったのは、翌日の事であった。
***
携帯のディスプレイに表示される「非通知」の文字に眉を寄せる弘毅。
『元気そうだな』
「‥‥君は」
『覚えていてくれたようだな』
電話の向こうで相手が嘲笑う様子が判る。
『山崎のデータは、役に立ったようでなによりだ』
「君は誰だ?」
男は低く笑い電話を切った。
情報を齎す者が味方だとは思わない。
それに前、このお節介焼きの男が電話を掛けて来た時とは勿論、携帯電話の番号も変更してある。
宗司から齎された報告、犬である自分達を嘲笑うような感覚‥‥、
「狼か‥」
そう呟く弘毅。
***
報告のためにブリーダー(犬飼)を訪れるノーネーム。
「これで少しは世の中、変わるといいわね」
ずくり‥‥鈍い肉に何かが突き刺さる振動をノーネームは近い所で感じるのが精一杯だった。
背中から己の心臓に深くつき刺さったナイフの痛みを感じる前に絶命した。
「お喋りな女だな‥‥よくそれで鳩が、勤まるもんだ。そう思わないか?」と呟くかつて木林 岳と呼ばれた男(狼)。
「だから君に処分を頼んだ」とブリーダー。
「山崎のネガとプリント、渡してもらおうか?」
「断ると言ったら?」
「‥‥別に」
ブリーダーの喉にノーネームの命を奪ったナイフが音もなく突きつけられる。
顔色一つ、表情を崩さないブリーダー。
「こちらの調査では、君が映った分に関しては処分済みのようだ。『触らぬ神に祟りなし』‥‥余程恐れられているようだな。抑止力として狼の役目を果たしているようでなによりだ」
「だが、本来の仕事だけをして欲しいものだな。狼が情報を流す等、前代未聞だ。それに君が手を下した議員。彼を失った事で事件は公平な結果ではなく、片寄った結果で収束を迎えるだろう」
これは非常に遺憾な事だ。きっぱりと言うブリーダー。
「‥‥こっちにはこっちの考えがあるのさ」
ナイフを懐にしまった木林は薄く笑った。
***
場内アナウンスを聞き乍ら、モルモット姉さんこと高田 鈴は口元が弛むのを押さえられなかった。
「うふふっ♪」
特別ボーナスとして事務所の社長からハワイ旅行をプレゼントされ、彼女は今空港にいる。
初め渡された台本には、贈収賄を暴く正義感の強いジャーナリストの役。
ライバルの男を出し抜き、直接敵の刺客とのやり取りを行うが誘拐され、命の危険に晒される。
場合によっては下着も露に‥‥。
ここ迄台本を読んだ時は、また痣ができる程殴られるのかとげんなりしたが、久しぶりの仕事である。
「晩飯にお刺身とビールが着けられる」
食欲を選んだ鈴は、なけなしのバイト代からおニューの下着を買ったのだった。
だが蓋を開けてみれば、脱がないで済んでしまうは、いつかのように正拳で殴られる事もなかったし、誘拐される事もなかった。
小さい事務所でナイフを突き付けて来たのは自分より小柄な女性だったので、いつものようにちゃんと怖がる演技ができたか、かえって心配だった。部屋から逃げ出すシーンは、一瞬閉まるドアの隙間から見えた犯人女性の姿は滑稽で、笑わないようにするのに苦労をしてしまった。多分、アップになったら笑いを堪えているのがバレてしまうだろう。
だが社長から貰ったのはお小言ではなく、ボーナスの旅行である。
鈴は画面に映る事なかったおニューの下着とどうせハワイならと買った大胆な真っ赤な水着を鈴は旅行鞄に詰めた。
コロコロとバックを引き乍ら受付カウンターへと向かう鈴。
不機嫌そうなサングラスを掛けた男(弘毅)とすれ違う。
人込みに紛れ、小さく遠ざかる弘毅の後ろ姿で番組は終了した。