暇潰し 花模様アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 1Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 8.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 04/13〜04/17

●本文

【華模様】 アルカラル・ナイト 〜ピアノバージョン〜
 Vo&P:クラブ・クラウン、V:ハート・ナイト、G&Co:スペード・クイーン、Dr&Co:ダイヤ・エース
()コーラス

♪♪♪〜
 桜舞散る夜に 貴方を想う (涙がこぼれる)
 叶わない恋なら 心なんて砕けてしまえ (好きになった事を 後悔したく無い‥‥)
 諦めてしまう恋なら 初めから貴方を好きにならなかった

 乱れ飛ぶ花吹雪 何処迄も狂おしく (I request like the beast your mind.)
 乱れ飛ぶ花吹雪 何処迄も愛おしく (I want to tear up you like the beast.)

 目まぐるしくも 咲き乱れる貴方への想い  (舞い上がるよ)
 狂おしくも 乱れ咲く花模様のように‥‥

 あなたを 愛して‥‥

 あなたを 愛してる‥‥‥
〜♪♪♪
(思いを吐き出すようなクラウンの声にピアノの優しいメロディにヴァイオリンの音が重なる。余韻を残したまま、曲は終了した)


「‥‥‥困ったな」とマネージャー。
 裏ネットで出回っているアルカラル・ナイトの「花模様」ピアノバーションである。

 このピアノバーション、過去にクラウンがとある妻子持ちの男に贈った曲である。
 勿論、マネージャーとして誰に贈ったのかも知っている。
 恋をするならもっと相応しい相手がいるだろう。そう注意するマネージャーに、
「無理だよ。あたしにはあの人達(両親)と同じ、人のモノにしか興味が無い汚らわしい血が流れているんだから」
 当時クラウンは、そう鼻でせせら笑った。

 クラブ・クラウンを始め、アルカラルのメンバー達は心に大きなトラウマを抱える。
 その傷を舐めあうように、実の姉兄妹以上に強い絆で結ばれているアルカラルのメンバー達。
 実際、彼女らとマネージャーが出会ったのも売春の美人局を兼ねた親父狩りを彼女らがしている時にだった。警察に補導されるか町のギャング共にショバを荒らしたと抗争ギリギリのいわゆる不良グループ。
 それを思えば良く更生したものだ。と感心するが、今の問題点はそこではない。

 花模様のピアノバージョンは、アルカラルがマーケットセールス(パンクロック)の方向性とは全く正反対のジャンルのメロウなスローバラードになる。
 実際、クラウンがデビュー用に書き下ろした曲もロックバラード1曲、テクノスキャット1曲、ハード系1曲、メタル系1曲(デビューCD裏A面『GARNET』)とPOPロックに近い曲1曲だった。
「流石にネタが無い‥‥」
 そう言ったクラウンに、
「春で桜の時期だろう。そんな曲ができないのか?」と言った所、思い出したのが「花模様」だった。
 歌詞をアレンジし、曲を殆ど新しく編曲してパンクロックにしたのが、CDデビュー曲「花模様」である。
 アルバムの中の一曲であれば、ピアノバージョンは大した問題ではないだろう。
 問題はこれが何時録音されたものか。というのが事務所側としては問題であるのだ。
 この歌自身が存在する事を知っているのは、アルカメンバーと贈られた男性、マネージャーとメンバーらの共通の友人夫婦、親しい者だけである。


「‥‥で、なんで俺の所に来るんだ?」
 都内某所のコーヒーショップにアルカラル担当マネージャーに呼び出されたライブハウス「7」の店長、山田浩介。
「クラウンに好かれた仲と言う事で‥‥」
「‥‥あいつが俺にちょっかいを出して来たのは10年も前、あいつは12、3の子供だぞ」
「中学生でも恋は出来ますよ。自分の友達でも中学校の担任と出来た娘もいますし」とマネージャー。
 こいつ喧嘩を売りに来たのか? と一回り以上年下の男の顔を睨め付ける浩介。
「ネット流失した分の回収が不可能なのは判っています。自分が知っているこの曲が演奏されたのは2回、3年前相手の男に渡す為にセルフでCDを焼いた時、もう1回は彼女らの元チームメイトの女性が結婚した1年前、披露宴開場になったレストランです。自分は何時のモノかが知りたいんです」
 ここで一息つくマネージャー。
「友人の女性やその周辺ならまだ良いんです。これがセルスプレスの分‥‥男から流れたとなれば‥‥」
「まあ、芸能記者の耳に入れば『不倫』とか騒ぎ立てられるだろうな」と浩介。
「そうなんです! 彼女らは外見が外見だけに只でさえ物凄く遊んでいるとか、オープンセックスとか思われていますが、そんな事は無いんです! あの時だって‥‥」
 どん! と卓を叩くマネージャー。店内の視線が集まると再びこそこそと話し出す。
「あの時も最終的には、そういう関係にならなかったと、聞いています」

 どうも最近のイメージが強いのでクラウンを偏見で見てしまう部分がある浩介だが、浩介が楽器の営業マンをしていた頃、再びクラウンの家の担当になった際、再び繰り替えされるセクハラに一度だけ浩介がクラウンに声を荒げて怒った事がある。
「‥‥お願い‥嫌いにならないで‥‥‥」
 身体を震わせ大粒の涙をポロポロと流すその姿は、年より遥かに幼い子供のようだったのを覚えている。
 思えばあの後から少し離れた所から作業を見つめる事はあっても浩介へのセクハラ攻撃は無くなったように思える。
 力説して唱えるマネージャーと言うより役者だと言った方が良い、顔の整った男を暫く見つめた後、浩介はこう言った。
「‥‥‥俺は探偵じゃないんだ。ただのハウスの親父だ。結果が出ないかも知れないぞ」


●アルカラル・ナイト情報
 ヴァニシングプロから2007年3月30日CDデビューしたヴィジアル系メタパンクバンド。

●クラブ・クラウン: バンドリーダー(22)鳥
 B85c70W62H83。
 ギターとメインボーカル、ピアノも演奏できる。
 正統派日本美少女(外見17)。長い黒髪黒瞳白肌。

●ダイヤ・エース:ドラーマー(19)犬
 B125f75W65H98。
 バンドのアイドル。
 マニッシュ系美少女(外見18)。短くした金髪碧眼黒肌。

●スペード・クイーン:キーボード(19)蝙蝠
 B75a65W54H70。
 ナイトの従兄妹、裏リーダー。ギター演奏もできる。
 小悪魔系ロリ美少女(外見16)。赤髪青瞳白肌。

●ハート・ナイト:ベースとサブボーカル、男性メンバー(21)猫
 クイーンの従兄妹。ヴァイオリンとギターも演奏出来る。
 ベビーフェイス系美少年(外見16)。黒髪碧眼白肌。

●今回の参加者

 fa0510 狭霧 雷(25歳・♂・竜)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1533 Syana(20歳・♂・小鳥)
 fa2584 遠坂 唯澄(18歳・♀・竜)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa4135 高遠・聖(28歳・♂・鷹)
 fa4768 新井久万莉(25歳・♀・アライグマ)
 fa5486 天羽遥(20歳・♀・鷹)

●リプレイ本文

●1日目
「遅くなりましたか?」
 アルカラルのメンバー達は対外的に今月末にあるシークレットライブの打ち合わせという事で「7」を訪れていた。
 マネージャーはスタッフルームに、メンバー達はステージの方に行っている。
「初めまして。今回の件で手伝いをさせて頂いている新井といいます」と新井久万莉(fa4768)。
「新井さん、存じていますよ。先日もおにぎりを貰ったとメンバー達がよろこんでいいました。あの子らは家庭の味に飢えていますから」と苦笑するマネージャー。
「あの子らの様子は? 前と変りましたか?」
「表面的は大人しくしていますよ」
「恋歌ですか‥‥思い入れの深い曲でしょうね」とは狭霧 雷(fa0510)が感想を漏らす。
「こういうのは大抵、本人が一番よく知っていると思う‥‥」と神妙な面持ちで言う雨堂 零慈(fa0826)。
「『男から流れたものだとまずい』ということは、元チームメイトから流れたという情報が確定すれば問題ない、と思っていいだろうか?」と遠坂 唯澄(fa2584)がマネージャーに質問する。
「いいえ。我々が知りたいのは、流出させた人物の目的が一番知りたいのです。この大事な時期にスキャンダルが出るのは非常に困りますから」
「これ以上『望ましくない人に望ましくない情報が渡ることがないように』注意が必要だよね」とスモーキー巻(fa3211)。
「スキャンダルを表に出さないようにと考えれば考えるほど動くのが難しくなりますね‥‥」とSyana(fa1533)
「まあ、マスコミ関係は任せておけ。編集部回りをしてどれだけ噂が広まっているかを確認しておくよ。山田氏の許可が下りるなら変わった趣向のライブを記事タネとして持ち込みたいが」と高遠・聖(fa4135)。
「‥‥たまたま続いただけだ」
 むーんとして言う浩介。
「時間が惜しいので単刀直入に尋ねるけど、あの子達が抱えるトラウマってなんですか?」と久万莉。
「答えにくいのは重々知っているわ。でもあの子達の為にならない事はしないつもりだから答えて欲しいの」
 こう切り出した久万莉に躊躇するマネージャー。
「‥‥私の口からはなんとも‥‥あの子らのプライベートの事ですし‥‥その辺は察してください」
 そう言ったきりマネージャーは口をつぐんでしまった。

「エースさん、クイーンさん、ナイトさん、クラウンさん、こんにちは」と天羽遥(fa5486)。
「なんであたしが一番最後かなぁ?」とハルの頭をグチャグチャにするクラウン。
「始めまして、狭霧 雷と申します。これでもサブギターを担当しているんですよ」よかったら一緒にどうです? とメンバー達に声を掛ける雷。
「いいねぇ、どうせ今日はあたしらマネージャーの付き添いだし」
 勝手知ったる「7」だと楽器を倉庫から漁ってくるメンバー達をやや唖然と見つめる雷。
「いつもこんな感じなんですか?」と遥に聞く。
「いつもマイペースですね」

「今度TOMIでスタートするアニメの主題歌なんだよ♪」
 花模様とは別のポップロックを演奏してみせるメンバー達。
「華模様・ピアノバージョンがネットに流出した事について、皆はどう思っているんですか?」と雷。
「えー、うーん? なるべくしてなった?」
「よく入手したなぁ。と、あれ練習を含めて20回ぐらいしか演奏してないし、人前じゃあ2回だったよね?」
「‥‥そう‥です‥‥‥確か‥‥披露宴の時は‥エースが‥‥7小節目のスネアをタムと取り違えて‥‥‥懐かしい‥です」
「うちはあんなに人が多い所での演奏は初めてやったから」
「プレスしたって聞いたんですが、やっぱりどこかのプロに頼んだんですか?」と雷。
 途端に友好的だった雰囲気が冷たいものに変る。
「あ、最近ADの仕事ばかりしているとは言え、私もギタリストですから安くて良いスタジオは押さえていたと。それだけですよ?」と慌てて取り繕う雷。
「‥‥あれは自分達で録音したんだよ。いつも使っている貸し練習場にパソコンを持ち込んで自分達で焼いたんだ」とクラウンは答えた。


●2日目
 ネット上で発信元捜索は、困難を極めた。
 元々ネット上で活動していたアルカラル・ナイト。
 ヴァニプロの公式ホームページとアルカラル専用のホームページ、メンバー毎のファンサイト‥‥ありとあらゆる所で今回のピアノバージョンの話で持ちきりである。
 中には何処から入手したのか、音源を貼り付けてサイトまでもあったりする。
 検索サイトのヒット数も「アルカラル・ナイト 花模様」で4桁を越える。
「検索方法を変えてみますね‥‥同人向けの音楽サイトを中心に絞り込んでみます」とハル。
 花模様がアップロードされている投稿サイトを片っ端から洗い、アップロード時期を整理していくと一番早い物は今年の2月26日‥‥ファンイベント告知日からである。
 つまりメジャーデビューが決まってからの行為である。
「掲示板の方も披露宴の出席者っぽい人の書き込みも見つけましたが、アップロードされた日以降しかないですね」とシャナっち。
「アップロードされている曲はやっぱり1種類っぽいな‥‥」とスモーキー。

 因にアウトドアグループのイズミはマネージャーから紹介を受け元チームメイト夫婦に会いに行っていた。久万莉は芸能関係者に男の噂を聞いて歩き、聖はもう少し本職の芸能記者という立場を生かして踏み込んだ調査を開始していた。


●3日目
 今日はメンバー達の以前から決まっていたオフ日である。
 ナイトとクイーンは病院に、エースは買い物に‥‥そしてクラウンはマネージャーから一連の騒動が収束するまでメンバー達の寮兼マンションから出ることを禁じられていた。

 エースの買い物に付き合い、荷物持ちを勝手出る雷。
「‥‥ここで立ち止まるような事があってほしくないんですよね‥‥私は一度、挫折した方ですので」と雷。
「うちには、よう判らん‥‥元々、皆から誘われてバンドを始めたんよ。自分でも前に比べたら上手くなったし、少しは楽しいとか思うけど‥‥うち、一人やったら‥‥他の人とはバンドなん組みたいとは思わへん」
 少し寂しそうに笑うエースだった。

 マネージャーから教えて貰った総合病院に向かうレイジと久万莉。
 入院患者のリハビリを手助けするタンクトップからクイーンの左腕に走る大きな裂傷。
 よく見れば、右肩やら背中にも大きな傷が見える。
「ねえ、定期健診って‥‥」と久万莉。
 そんな二人の後ろから声が掛かる。
「‥‥珍しいジャン、俺らに何か用?」
 振り返るとレイジより頭一つ小さい少年が立つ。
「ナイトなのか?」
 ナイトもジーパンにタンクトップというラフな格好で、いつもと異なり化粧もしていない。
「ちょっといいかな?」と久万莉。
「いいぜ。クイーンには聞かせたくねぇし」
 中庭に出る3人。
 人気がなくなるのを確認して久万莉が口を切る。
「ネットに花模様を流したのはナイト、‥‥あなたじゃない?」
 一瞬目を丸くしたナイトは、ゲラゲラと笑い出す。
「すげーっ、最高ジャン! 久万莉、何でそう思うかな?」
(「外したのか?」)と誤魔化す久万莉。
「‥‥なーんてね。迫真の演技だったでしよ?」
「ナイト殿に同じ男として聞きたいことがある‥‥クラウン殿が意固地になっている理由、マンションの場所、拙者の事をクラウン殿はどう思っているのか、そして彼女の過去を‥‥」
 黙って久万莉とナイトのやり取りを聞いていたレイジが口を開く。
「ナイト殿から聞いたとは公言しない」
 真剣な表情のレイジをしばらく見つめ、考える表情を見せるナイト。
「そうだな。俺もあんたが何処までクラウンを‥‥花梨に本気か知りたい」
「花梨?」
「桐嶋 花梨、惚れた女の本名ぐらい知っていろ。久万莉も今から俺が喋る事は公言無用だ」

 ナイトから出た話はこうだった。
 クラウンが生まれて間もなく元々不仲だったクラウンの両親は益々仲が悪くなり、クラウンが小学生になることにはお互いに愛人を抱えるようになっており、家に帰ることがなかった言う。
「あいつが11歳の時、母親の愛人にレイプされたんだ。その後も度々慰み者にされて‥‥ある時母親がその現場に居合わせたんだが、母親は花梨を助けるんじゃなく花梨を激しく罵ったんだよ。簡単に言うとそれ以来、花梨は両親を恨んでいるのさ」
「でも、なんでこんな事をナイトが知っているのよ。こんな内容、年子頃の女の子がほいほい口にする訳ないでしょう」と久万莉。
「こっちにはこっちの事情がある。幾らあんたらにでも言えねぇ事はあるんだよ」とナイト。
「‥‥彼女の過去は判ったわ。でも意固地になっているのは?」
「あいつが意固地になっているのは‥‥レイジ、あんたのせいだよ。花梨は『遊び』で誰かと付き合うって事が出来ない。本気になるとガキのようにどうしたらいいか判んなくなるのさ」
「悟っているわね」
「任せてくれ、見た目より苦労しているからな。一つ言えるのは俺達はヴァニプロの仕事が、やっと面白くなって来たばかりだ。だから今回の件、俺らは仕掛けていねぇ。ただ俺らだって自分の音だ。何処から出たのか知っているよ」
「それは誰?」
「花梨が惚れていた男、風間 康明。音楽プロデューサーをしている男だ。奴がどういうつもりで今回流したかは知らねぇ。確かに風間の事務所は今大きな話題性がないから、話題づくりなのかもしれないが‥‥ただ花梨は自分の蒔いた種だから、自分で責任を取るって言っている。
 俺は花梨が望めばアルカラルは解散させてもいいと思っているが、本心を言えば今アルカラルを解散させるのはあいつの為にならねぇし、それに‥‥‥花梨がレイジ、あんたを好きになっている事を良い事だと俺は思う。だから俺からもお願いする花梨を助けてやってくれ、頼む」
 そう言って深く頭を下げるナイトだった。
「任せておきなさい! それにあんたもしっかりね!」
 レイジの背中をバン! と叩く久万莉。

 ドアフォンを鳴らすとすんなりとクラウンはレイジを招き入れた。
「最近、少し元気が無いみたいなので‥‥食事でもして元気を取り戻してもらおう‥‥と思ってな」
 スーパーの袋を上げて見せるレイジ。
「拙者の作る料理だからご飯に味噌汁、肉じゃがに焼き魚ぐらいだが‥‥」
「ありがとう、あたしらは殆ど料理しないけど‥‥たしか鍋ぐらいはあったはず」
 料理をしないと言っていたが、やらせてばかりというのが気まずいのか炊飯器の準備をするクラウン。
 ぽつぽつと下らない世間話をしていたが、何時の間にかお互いの昔話を始めていた。
「そっか、レイジも苦労しているんだね‥‥‥‥‥ねえ、なんでレイジは皆みたいに曲の事を聞かないの?」
「拙者は貴殿が自ら話してくれる事を信じている‥‥拙者は幾らでも貴殿の力になるし守ってやる‥‥」
「‥‥‥ありがとう」


●4日目
 レイジがクラウンから受取ったオリジナルとイズミが元チームメイト夫婦から借りた披露宴のDVD、そしてネット上に公開されている音源を比較していた。
「確かに流出曲は披露宴の時の演奏じゃないですね。元々アクセント的にドラムを使っているから目立ちませんけど7小節目は確かに『スネア』ですね」とシャナっち。
「‥‥うう、判りません」とハル。
 なにげに聖を待つ間、間違い探しゲームになりかけている。
「私が調べた限り風間は、評判が良かったのよね」と久万莉。
「まあ見た目と本質が違う人もいますから」とスモーキー。

 そんな中、聖が取材を終えて戻って来る。
「大当たりだ。風間の家族でクラウンに恨んでいる奴がいた」
「誰?」
「風間の奥さんだよ。3年前、風間は独立して今の事務所を開いたばかりだったんだがアルカラルの初期プロデュースに関わってたんだ。風間は元々仕事はそこそこ出来るが女遊びが激しい男なんだが、奥さんは同じ頃流産しかけて帝王切開で子供を産んでいる。一番辛い時期に旦那は若い女、クラウンと浮気と思ったんじゃないか?」
「だが3年も前の話だろう?」
「恨みに時間が関係ないって言いたいが、遡って少し調べたら2月の初旬に知合いの音響関係者にCDの修復を依頼している。旦那が仕舞い込んでいたクラウンが渡したCDを偶然見つけたんじゃないのかな? 風間にアルカラルの特集を組むと言って取材をしたが、花模様のピアノバージョンは覚えていなかったよ」と聖。
「となると奥さんが確定だな‥‥マネージャーに取り敢えず連絡しよう」とイズミ。


●5日目
 スポーツ紙面を飾る「アルカラル・ナイト リーダー、クラブ・クラウン(22)の不倫疑惑」の文字。
 先程からは鳴りやまないインターフォンと電話のコールの中、カーテン越しに見える報道陣の数に女は満足そうな笑みを浮かべた。

「ファンの反応は?」
「大旨、好意的です。中には『格好良い』という書き込み迄ある位で‥‥今回はイメージに助けられそうです」
「風間、様様か‥‥」
「ですが、折角決まったアニメの仕事はキャンセルになる可能性が‥‥」
「仕方ありませんね、子供向けのアニメですから。意に反する注目のされ方ですが、これに乗らない手はないでしょう。とりあえずシークレットライブを成功させるのが先決ですね。前回のような失敗は出来ませんよ」
「はい!」

 薄暗いカーテンが引かれた部屋の中、床に広げられた新聞の一点を見つめるクラウン。
 自分の事は幾ら書かれても良い。だが‥‥
 望遠レンズで取られた写真に写る人物の姿をゆっくりと指でなぞった