きるとの旅アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/24〜04/28
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●本文
──少年、きるとを襲った突然の悲劇。
山沿いのハイウェイを走る乗用車。
運転席に座る父親と助手席に座る母親、後部座席で眠る少年を抱きかかえているロボット──。
前方を走る大型トラック。
「なんだか前の車‥‥ジグザグに走っていないか?」と父親が言う。
「そんなはずはないないんじゃない? あの手のトラックにはAIの装着が義務だから走行を制御しているはずでしょう?」
後部座席を眺めていた母親が答える。
「‥‥そうなんだが、気になるな」
──一家に1台。TVならぬロボットが普及した近未来。
──新聞配達もロボット(一部人間もいる)ならば、朝配達員に声をかけるのもロボット(勿論人間もいる)。
──炊事洗濯などの家事を始めとした生活支援のために今やロボットが必要不可欠となった時代。
──勿論、家庭ではなく車のナビシステムから運転支援まで行う程にロボットが一般に浸透した時代。
スピードを上げ、運転席側に回り込む乗用車。
眠り込んだトラックの運転手が見える。
クラクションを鳴らす父親。
その音に目を覚ます少年。
「‥‥なに、もう家?」
『Pipo! ダイジョウブデス。キルト‥‥家ニ到着スルマデ、後1時間程カカリマス』
柔らかい発信音の後、少年の方に首を傾け目を点滅させるロボット。
「駄目だ、起きない! 運転支援AIを切っているんだ。このままじゃあ、下手をすると大事故になるぞ」
クラクションを鳴らし続ける父親。
「そうね。ハイウェイパトロールに電話しましょう」
母親がハンドバックから携帯電話を取り出した瞬間、グラリと進路がぶれ、大きな車体が乗用車の進路を塞ぐ。
「くそ!」
短い叱咤と共に再びクラクションを鳴らし始める父親。
「ママ?」
ロボットにしがみつく少年、不安そうな声を母親に掛ける。
「大丈夫よ、きると。キリエ、きるとをお願い。守ってあげて」
『ハイ、ママ』
何度目かのクラクション。自分が眠っていたのに驚き、目を覚ます運転手。
何かに驚いたのか大きく車線を膨らむトラック。
「‥‥もしもし? ハイウェイパトロー‥‥」
トラックの膨らんだテールが乗用車を襲う。
──墓地。
雨の中、佇む少年。傘を持ち、少年の側に寄り添うように立つロボット。
──少年の家。
「桐人君は未成年者である為に成人するまでどなたかに養育していただく必要があるのは皆さんもご周知かと思います」と弁護士。
家が狭い、受験を控えた家族がいる等と言って、桐人を引き取ることに難色を示す親戚達。
「‥‥養育する方には、勿論夫妻の資産を桐人君の代理人として運用をまかされる訳ですが‥‥」
「資産? そんなモノがあるのか?」
「それは勿論、お二人ともそれなりに‥‥大手電子機器メーカーの主任研究者さん達でしたので」
弁護士の言う金額に驚く親戚達。
「プール付の豪邸に高級車を10台買ってもおつりが来るな」
桐人を押し付けあっていた親戚達が目の色を変え、今度は引き取るといい始める。
──こうして桐人は、小さなスーツケースとロボットのキリエを持ち遠い北海道親戚の家に引き取られることになった。
──親戚達の仕打ちに「自分の居場所はここではない」と家を出る決意をするきると。
「キリエ、パパとママの‥‥僕らの家に帰ろう」
──少年とロボットの旅は、こうして始まった。
●ドラマ「きるとの旅」 あらすじ
きるとを追いかける大人たち。荷台に隠れたり、ロボットや人の助けを借りながら東京の家に向かうきるとキリエ。
途中で出会う優しくも傷ついた人たちとの交流。
少年とロボットは、家にたどり着く事が出来るのだろうか?
●CAST募集
主人公:桐人(きりと)10歳 通称:きると 両親を交通事故で亡くし、遠縁の親戚に引き取られる。
ロボット:キリエ 桐人一家の家事ロボット。旧式、脚部カタピュラ、本体左右に4本の指を持つ、合成音声で片言で喋る。
彰:30代中〜、酒好き、無精髯によれよれのシャツ。きるとに宥めすかされ、時には「誘拐犯だ」脅され乍共に行動する謎の男。きると位の子供がいるらしい。
桐人を強制保護したい方々:家出をした桐人を金の為に、自ら保護。もしくは代理保護したい方々。親戚、探偵、何でも屋やチンピラ等。
弁護士:20代〜
道路で出会うロボット、AI、人間:各々にトラウマを抱え傷つきやすい魂を持つ優しい人(AI、ロボット)
●時代背景
AI、ロボットが普及。
公道を走る車には運転支援AI搭載が義務。運転者が飲酒運転しようとすると断固、エンジンが掛からない。認可を受けた特定固定ルート運行程度なら自主的に行える。
ATMの受付ロボットは、にこり笑いながら不正引き出しに電撃を食らわせたり、公共料金の支払い遅延に苦言を自己判断で言ったりする程度。
子供を巻き込んだ凶悪犯罪が増えた為に10歳以下の子供は、保護者及び成人した保護代行者の引率なし2時間以上一人で公共の場所にいた場合、行政の指定を受けた第3者が強制的に保護できる。
●リプレイ本文
●CAST
きると‥‥‥‥アルヴィン・ロクサーヌ(fa4776)
キリエ‥‥‥‥月葉・Fuenfte(fa1234)
彰‥‥‥‥‥‥水沢 鷹弘(fa3831)
せりあ‥‥‥‥姫乃 舞(fa0634)
河原崎‥‥‥‥伊達 斎(fa1414)
瀧口カヤ乃‥‥エマ・ゴールドウィン(fa3764)
日向小太郎‥‥日向翔悟(fa4360)
AI‥‥‥‥‥‥各務聖(fa4614)
●彰
「きると、前方足下ニ注意シテ下サイ」
「え?」
「ぐぇ!」
汚れたシャツを着た男(彰)をどうやら踏んだらしい。
「畜生‥‥何しやがるんだ」
「ゴメンなさい。おじさん、何をしているの?」
「俺は楽しい夢を見ている最中だったが‥‥飲み直しに行く序でだ。坊主、家迄送って行ってやろうか?」
酒臭い息を吐きながら服に着いた泥を叩き落す彰。
「僕の家、東京だよ」
「東京か。俺も昔、東京に住んでいたよ」
大きな欠伸をする彰。
「おい、いたぞ! あんた、その子をどうする気だ?!」
「あぁん? 何だぁ?」
今一つ、状況が掴めない彰。
「おじさん、逃げて! キリエ、撃退用発煙筒!」
「了解シマシタ」
キリエの脚部付近から白い煙が勢い良く吹き出す。
「お、おい?!」
「良いから、早く!」
きるとに引っ張られるようにして路地を後にする彰。
その後をキリエが追い掛けて行く。
「『親戚の風当たりが悪い』から東京の家に帰りたいのは判った。だが親戚の家が嫌なら親に迎えに来てもらえば良いだろう?」
「二人とも死んじゃった。交通事故で」
「‥‥そうか、悪い事を聞いたな」
「別に」
「そう言う事なら‥‥まぁ、少し位なら付き合ってやってもいいさ」
「ありがとう」
こうして2人と1台の旅は始まった。
●せりあ
「しょうがない。少し休もう」
「大丈夫だよ」
「あの、大丈夫ですか‥‥?」
足のマメが破れ路肩に座り込んでいるきるとと彰に声をかける少女(せりあ)。
「こんな所でごめんなさい。知らない人を家に上げると伯母様に叱られるから‥‥」
せりあが案内したのは、小さな家の倉庫だった。
「ありがとう、悪いけど水を少しもらえるかな? きるとの足を冷やしてやりたいんだ」
「判りました」
バケツに水を入れ持って来たせりあ。
ちらっと彰の様子を伺い、おずおずと口を開く。
「あの‥‥ご家族の方、ですか?」
「名目上、一時的保護者」と彰。
「え?」
「僕の保護者は、キリエだよ」
「そうですか、きるとさんも私と同じなのですね」と寂しそうに笑うせりあ。
そんな時、キリエのセンサーが反応する。
「追い付かれた?」
「らしいな」
母屋からせりあを呼ぶ声がする。
「私が何とかしますから、今のうちに早く‥‥」
「せりあ。お前、昼間、こんな子を見たかい?」
伯母の前に立つ男(日向)が、きるとの写真を見せる。
「旧式のロボットと一緒に見なかったかな?」
「その子ならお昼前に見ましたよ。あちらの方向へ向かって行きました」
きると達が向かった先とは逆の方向を指差し乍ら、そっと口の中でせりあは呟いた。
(「無事にお家に帰れると良いですね。私はこの家を出る勇気が無いから‥‥」)
●探偵
「やっと捕まえたぞ、このガキ!」
「放してよ! 僕は東京に行きたいだけなんだ!」
日向に襟首を掴まれたきるとが足をばたつかせる。
「ガキが我が儘云って居るんじゃねえよ! 一体何様のつもりなんだ?」
「止めろ、きるとが嫌がっているじゃないか!」
「何の権限があって口出して居るんだ、おっさん? 俺はこの坊主の保護者から依頼を受けてやってんだ!」と日向が彰に噛み付く。
キリエのファンに空気が吸い込まれると同時にけたたましい警報音が鳴り、何事かと人が集まって来る。
「助けて! このおじさん、誘拐犯なんだ!」と日向を指差すきると。
「待て、俺は仕事だ!」と日向が慌てる。
「こいつは、金の為に子供を捕まえようとしているんだ!」
日向の向こう脛を景気よく蹴飛ばす彰。
「痛ーーーーぇ!」
きるとを抑えていた手が離れる。
「言うに事欠いて‥‥‥おっさんこそ、誘拐犯だろうが!」
これには困ってしまった住民達。
「こういう時はロボットだよな。嘘は言わないから‥‥誘拐犯はどっちだ?」
「きるとヲ虐メル人」
キリエのヘッドが日向の方を向く。
「よし!」
「何が『よし』だ! どう見たってそっちが怪しいだろうが!」
住民達に取り囲まれる日向を尻目にきるとと彰は、後ろを振り返らずに一目散に駆け出す。
●エル
廃棄場迄一目散に逃げて来たきるとと彰、その後をキリエがくっ付いて来る。
「‥‥クソ、酒のせいで息が切れる」と彰。
「良い機会だから禁酒したら?」ときると。
「うるせぇ‥‥咽が乾いた」
「キリエ、水が欲しいんだ」
「水ヲ探シテキマス」
キャタピュラを鳴らし、水を探しにいくキリエ。
その後ろ姿を見つめ乍ら、きるとはずっと不思議に思っていた事を彰に訪ねる。
「どうして、ここまで僕を助けてくれるの?」
「‥‥俺もきるとと同じ位の息子がいたんだよ。事故で俺を置いて母親と一緒に先立っちまった。‥‥なぁ、きると。良かったら、俺と一緒に暮らさないか?」
「え?」
彰の意外な申し出に驚くきると。
「なんだがお前といるともう一度ちゃんとまともに暮らせるような気がするんだ。親戚は俺が説得してみせる。金もいらない、ただお前とずっと一緒に居たいんだ」
「‥‥そんな、勝手だよ」
「そうだな。忘れてくれ」
暫くして戻って来たキリエ。
「飲用水、アリマセンデシタ」
「ちっ、役に立たないな」とぼやく彰。
「代リニきるとヲ東京迄連レテ行ッテクレル車ヲ見ツケマシタ」
「でかした。キリエ、お前は優秀だ」
キリエの後ろからノロノロと車が着いてくる。
「私、エル。私、飽きたから要らないって言われちゃったの。エル、走るの大好き。乗ってくれない?」
「‥‥最近の自動車は、自分の押し売り迄するのか」
「キリエを煽てたり、貶したり変な人」
「キリエ、彰サン、好キデス。きるとノ保護者ニベストダト思イマス」
「えー?」
高速道路を南下する車。
「‥‥オート走行か、落ち着かないな」
目の前のハンドルが勝手に動くのを見る彰。
「エル、とても運転上手いのよ」
「判ったから、前を見ろ」
「エル、センサーは前だけじゃなく全方向にセンサーがあるから、どんな障害物でもばっちり避けるし、ブレーキも予測して掛けれるよ」
「判ったから静かにしてくれ。後ろのきるとが寝れないだろう」
後部座席でエルと彰のやりとりを聞いて呟くきると。
「彰さんってやっぱり変な人、AIと喧嘩している」
「彰サン、きるとト同ジ。キリエヤエルヲ人間ト同ジヨウニ扱ッテクレテイマス」
「おい、スピードが上がったぞ?」
「後ろの車、着けて来ます。強盗、誘拐? ドキドキ、危険予測」
「警告、危険な運転です。ただちに事故の恐れがある危険な運転を中止して下さい」
無機質な音声が流れる。
「そんな事は百も承知だ。悔しかったら前の車を止めてみせろ」
車体が擦れあうギリギリまで接近する2台の車。
「ボディに傷が着いちゃう! あんた、嫌いよ! 絶対、負けないんだから!」
スピードあげるエル。
反対にスピードを落す、日向の車。
「クソ、何でスピードを落す?!」
「法定規制速度を越えての危険走行は禁じられています」
自動制御で安全基準スピード迄スピードを落す車。
「全く、どいつもこいつも!」
明け方、きるとの家族が住んでいた家に辿り着いたきると。
表門に大きなチェーンを掛けられ「売家」の札が掲げられている。
「‥‥‥どうせ、こうなっているってのは判っていたんだ」
ほどなく日向、そして弁護士の河原崎がやってきた。
「もう、いいよ‥‥叔父さんか伯母さんか知らないけど、好きな所に連れて行っていいよ」
「始めからそう大人しくしてれば良かったんだよ」
「お前なんかにきるとは渡せねぇぞ!」
「なんだとこの野郎?」
「彰さん‥‥もう良いって言ってるのに!」
「申し訳ありませんが、桐人君の養護権に異義を申し立てている人がいますので、どなたにも桐人君をお預けする事は出来ません」
「そいつには俺も一口乗る事は出来るのか?」と彰。
「血縁関係がなくても後見人には成れます」と河原崎。
こうして一時的に河原崎の管理下の元に保護される事が決まったきると。
「俺は、軽い気持ちで『一緒に暮そう』とか言ったつもりはないからな!」
河原崎に連れられて行くきるとに声をかける彰。
「‥‥彼は良い人ですね。と、これは内緒です。これはあくまで私的発言ですからね」
河原崎は、そう苦笑した。
●家族
翌日、きるとが泊まるホテルにて再び誰がきるとを養護するかと言う話し合いがもたれる事になった。
「若い才能を欲する事はいけない事かい?」
遠縁である瀧口は先のきるとの両親の葬式には参加してはいなかったが、今回のきるとの家出をきっかけに養護先として名乗りを上げた一人である。
瀧口は一般に安価なロボットを普及させた功労者として有名な科学者であり、きるとの両親が残した特許ときるとの才能を伸ばすのには、自分が最適であると申し出たのである。
「そりゃ金は欲しいさ。でも特許の価値が判らないバカ共の財布の肥やしにもさせないつもりだよ」
「本音が出たな。婆さん、あんたはきるとが好きで一緒にいたい訳じゃない。他の奴らと同じだ。きるとの両親が残した資産が欲しいんだよ。そんな奴にきるとは渡さねぇ」
彰の言葉に眉を潜める瀧口。
「弁護士さん、誰か大人が傍にいろと決めたんだろ、あんた等法律家がさ。例え、ゴミみたいな人間だろうとね。だがゴミより遥かにあたしの方が保護者には相応しいよ。あたしゃ遠縁と言えども血縁者だ。桐人の親権を申請しても問題ないだろう?」と瀧口。
「確かに瀧口さんが親権を裁判所に申請しても問題はないでしょうが‥‥桐人君、君は誰と暮したいですか?」と河原崎が言う。
「僕は‥‥‥‥彰さんと一緒にいたい!」
始め躊躇していたきるであったが、顔を河原崎の方に上げ、きっぱりと言う。
「彼(彰)が後見人になる事には法的には問題がないでしょう」
「そんな、馬鹿な話があるかい! 御覧、あたしゃこんな時代遅れなロボットなんかじゃなくもっと優秀なロボットを桐人に与える事だってできるんだよ!」
高圧電流が流れる護身杖を振り上げ、近くのキリエを叩く瀧口。
バチリ!
大きな火花がキリエの身体を駆け巡る。
「「キリエ!」」
きるとと彰が同時に叫ぶ。
「おい、婆ぁ! 偉い科学者かなんだか知らないが、キリエはきるとの保護者代りに、きるとをずっと守って来たんだぞ!」
「ロボットが保護者? あり得ない。奴等は『道具』であり『モノ』だ」
「なんだと、この婆ぁ?」
ずぶずぶと白煙をあげるキリエ。
「キリエ、大丈夫!?」
「きる、と‥‥パパ、ト、ママ‥‥ノ‥‥コト、忘レ、ナイ、デ‥‥‥‥」
きるとの前で機動停止するキリエ。
「キリエ、キリエ! お婆さん、キリエを返してよ!」
「そんなにこのオンボロが良ければ、いくらでも直してやるよ」と瀧口。
静かに事を見ていた河原崎が口を開く。
「瀧口さん、あなたが桐人君に対し愛情を持って保護、育成できるかと言われれば、私は顧問弁護士としての判断は『NO』です。人間は間違いを犯しても、それを悔い、繰り返さないようにする事ができる生き物です。私も先のように桐人君の為にならない後見人を再び選ぶつもりはありません」
「何だって!」
「あなたには桐人君の後見人たる資格がないと言ったのです」
怒って出て行く瀧口の後ろ姿を冷ややかな目で見つめる河原崎。
キリエのメモリチップは、バックアップと共に激しい損傷を受けていた為に修理する事は不可能であった。
──後日。
「よく一般的に勘違いされますが、法定後見人のあなた(彰)が桐人君の資産を勝手に流用できる訳ではありません。その代りにあなたが桐人君の代りに資産を運用する事は出来ます。例えば、桐人君の家を買い戻すとかです」
河原崎の言葉にきるとの顔を覗き込む彰。
「おい、きると」
「ううん、いいよ。パパとママやキリエの思い出は大事だけど、あそこにいたらきっと僕は抜けだせない気がする。それに今は彰さんが新しい僕の家族だから」
「そうですか」
「代りにロボットが1台欲しい」ときると。
「ロボット?」
「そう。彰さんはご飯を作れないし、掃除も下手だから。家事ロボットが僕らに必要だって」
「そうですか。では必要と思われる金額を指定口座に振り込むますので、手続き書類を‥‥」
「書類って‥‥‥ロボット1つ買うのも書類がいるのかよ」とげんなりする彰。
「桐人君の学費を含めた生活費は月々指定された口座に振り込みますが、それ以外、例えばロボットや入院費等、突発的な物は管財人の私を通して頂きます」
「‥‥早まったかな」と彰。
「駄目だよ。とことん彰さんには付き合ってもらうから」ときると。
「まあ言った事には責任を持つさ。大人としてな」
苦笑する彰。
河原崎の事務所を後にするきるとと彰。
「これからどんなロボットにするか見に行かない?」
「そうだな。きるとはどんなのが良い?」
「色が綺麗のが良いな」
「俺は人型がいいな。キリエは魔法瓶見たいな格好だったし」
ショーウィンドゥの中のマネキンを見て言う彰。
「えー? 僕それだったら熊がいいよ。防犯に役立つよ」
「夜、誰もいない真っ暗な家に帰って遭遇したら楽しくないぞ」
「今は一人じゃないよ」
「そうだな」
そんな二人の会話が夕暮れの街の空に消えて行った。