−ザ・DOG−第2話アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
10/21〜10/25
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●本文
●深夜ドラマ『潜入捜査官−ザ・DOG−』
犯罪組織撲滅の為にだけ組織されている司法の犬たち。
元死刑囚や犯罪組織に肉親を殺された家族たち等で構成されている。警察機構に属さず、逮捕権、銃の携帯等一切ない。
あるのは捜査官達の熱い思いと彼等の頭脳だけである。構成員達は自分のチーム以外との交流を行わず、時に他の捜査チーム同士で敵味方として戦う事もある。
ただ一つ捜査官たちの切たる願いは「悪を許してはおけないという」思いだけ、時には非情とも思える手段を取るダークヒーロー物である。
●放送済み第1話”闇を狩る犬”
――キッチンで夕飯の支度をする母を手伝う童女。
――インターフォンが鳴り、嬉しそうにドアを開ける童女。
――目を丸くする童女。悲鳴をあげる間もなくゴムマスクをした一団が押し入ってくる。
――黄色いテープで区切られたドア。野次馬を牽制する為に立つ警官。
――連絡を受け駆け付けて来た同僚(警官(夫))の姿を見て、顔をゆがめる。
――ダイニングキッチンの床に落ちた誕生日ケーキ、散らばる食材。血に染まった子の描いた父親の絵。
――荒らされた部屋と無惨に変わり果てた妻と娘の姿に立ちすくむ警官(夫)。
――鑑識官が現場に落ちていた犯人の遺留品と思しきものを刑事に示す。
――見覚えがある『それ』に顔色を変える警官(夫)。
警官(夫)「‥‥あいつら」
――爪が食い込む程強く握った警官(夫)の手が震える。
――廃校跡地の不良の溜り場。ドラックを吸う若者たち。制服姿の高校生らしき姿も混じる。
不良1「ババァの割に良かったよな」
不良2「やだぁ。あんた、ババコン? エロいよ。キャハハっ」
不良3「しかし『この子だけは‥』あんな台詞TVだけかと思ったけど、マジ言う?」
――下卑た笑い声が混じる。
不良3「面白かったよなぁ。やっぱ、今度『ゴミ狩り』しようぜ♪」
警官(夫)「やっぱり‥お前達が‥‥あの時ちゃんと裁判が行われていれば‥‥」
リ−ダ−格少年「ん〜? あの時の『おまわり』か。大変だったな。奥さんと子供、恨まれているねぇ」
――にやにやと笑うリーダー格の少年。
不良1「何? 俺達をこの前みたいに捕まえるの気ぃ? 学習力ないねぇ」
不良3「俺達、未成年。それにまた証拠不十分で『不起訴』だってぇの」
――ピストルの銃口を向ける警官(夫)。
不良2「え? なにぃ? 撃つの? すごーい♪ きゃはははっ」
不良1「撃ってぇ、ゴミを退治してぇ、『正義の味方』さん♪」
リ−ダ−格少年「何もしていない。俺達を撃つってのはマズいんじゃない?」
不良3「懲戒免職だ♪ かっくいーぃ!」
――ゲラゲラと笑う声を打ち消す銃声。響き渡る悲鳴。罵声を打ち消すように乾いた銃声が繰り返される。
――カメラに向かって話す記者。
記者「こちら***拘置所前です。今、***死刑囚の刑が、実施されようとしています。***死刑囚は200X年当時***で発生したひったくり事件と犯人として当時17才の少年Aを誤認逮‥‥‥」
――暗い部屋、椅子に手錠を掛けられ目隠して座らされている男が一人。男にだけ強いライトが当られている。
男A「目隠しを外しなさい‥‥今から君はここで自分の命をすら失い、死ぬ」
死刑囚「そうだ。俺の刑が今日執行される」
男A「君は無念じゃないのかね? 世間で君は『妻と子供を殺された犯人を逮捕した少年が逆恨みで殺した』という思い込みにより無関係な‥‥『品行方正』な少年3人を服務中に所持していたピストルで殺した元警官という汚名を着て、死刑にされようとしている」
死刑囚「奴等にも罪はある‥‥が、俺のした行為は罰せられなければならない」
男A「そう‥‥罪は罪だ。罰せられて当然だ。だが司法の網をくぐり抜け罰せられない事もある」
死刑囚「‥‥何が言いたい」
男A「闇に潜み隠れて裁く事が出来ない罪を消し去る手伝いをしてみないかね? 勿論、世間様に堂−と誇れる仕事じゃない‥‥どちらかといえば、罪を裁く為に罪を犯す‥‥『大事の前の小事』という表現は私は好きでないが、そういうことだ」
死刑囚「犯罪者になれと? ‥‥死刑囚の俺が言うのも変な言い方だが」
男A「潜入捜査は、現法では認められていない」
死刑囚「俺に犬になれと?」
男A「時には5年、10年‥‥『蜥蜴の尻尾切り』ではなく『頭』を叩き潰せるように組織に深く入り込み‥‥時には一般人に危害を加えるような行為もしなくてはならないだろう‥‥辛い仕事だ。誰からも誉めて貰えない。どちらかといえば『人間のクズ』と下げすまされる仕事だろう」
死刑囚「それでもあんたは俺を選んだ」
男A「そうだ。悪を憎んでいるから‥‥それを排除する為に手段を選ばない君だから選んだ」
死刑囚「‥‥『断る』と言ったら?」
男A「構わないさ。また人選を一から始めるだけだ‥‥だが君は『NO』とは言わないだろう?」
死刑囚「‥‥俺にメリットは?」
男A「ない。辛い仮の顔、仮の生活が待っているだけだ」
――長い沈黙の後、死刑囚の男は言った。
死刑囚「‥‥あんたの事は、なんて呼べばいい?」
●第2話出演者募集
あらすじ‥‥
とある輸入販売会社の乗っ取り計画。社の所有しているルートを使い、大掛かりのピストル密輸ルートを開発しようとする暴力団。
暴力団組織に潜入している 主人公の潜入捜査官(偽名、整形手術済み)は、その情報を掴む。
狙われているのは、幼馴染みの会社であった。
幼馴染みの家族を誘拐するように言われた主人公のとった行動とは‥‥‥
●リプレイ本文
●CAST
犬養遼輔‥‥伊達 斎(fa1414)
戸波・篝‥‥斉賀伊織(fa4840)
鳥飼 翼‥‥草壁 蛍(fa3072)
鳥飼 美鳥‥森里碧(fa4905)
熊倉十三‥‥マサイアス・アドゥーベ(fa3957)
山田太朗‥‥日向翔悟(fa4360)
黒猫‥‥‥‥相麻 了(fa0352)
モルモットお姉さん(高田鈴)‥‥稲川ジュンコ(fa2989)
●誘拐
白いオフィスの中、翼は顔の見えない電話相手に苛ついていた。
『真っ当な取り引きと、言っているんだがね?』
「何度も言うように、ウチは物騒な所とは仕事しないの! そっちの言いなりにはならないわ!」
叩き付けるように電話を切る翼。
「美鳥ちゃん、コーヒー頂戴! 悪魔の様に黒く地獄の様に熱いヤツでヨロシク」
「あ、私が‥‥」コーヒーサーバーの前に立つ篝が、翼のカップに手を伸ばす。
「戸波さん、いいです。私が頼まれましたから」と美鳥が篝の手からカップを慌てて奪うように取りかえす。
***
「チッ、気の強い女だな」十三は受話器を置いて苦々しく言った。
十三の経営する会社は、表向き一般企業を装っているが暴力団の舎弟企業である。十三に上層組織が与えた仕事は、密輸ルートの開発である。十三としても七光りと言われず自分の力で組織内で上位に着きたい所で、ヘマは出来ないのである。
「おい! 犬養!」
十三が30代のインテリ風の男を手招きする。
「手柄を立てる機会をやる。あの女の姪とドライブして来い」
「‥‥誘拐ですか?」つまらない仕事だと言いたげな遼輔。
「物騒な事を言うな『ドライブ』だ」
含みのある笑いを見せる十三。
「疲れたと言ったらどこかのホテルに連れて行って、優しくマッサージでもしてやれよ。ついでに記念写真も、だ。どこかに投稿してやると言えば、あの女も喜んで考えを変えるだろう」
十三は軽い口調で遼輔に言う。
「不満か?」
「別に‥」
「心配なら俺が着いて行ってやるぜ」遼輔に美鳥の写真を押し付け乍ら太朗が言う。
窓越しに十三は、2人が出て行くのを確認すると後ろに立つ少年っぽさの残る男にこう言った。
「‥‥いざとなったらあの女をバラ(殺)せ。どうせあの女が一代で作った会社だ。あの女がいなくなれば輸入ルートはこっちのもんだ」
黒猫がにやりと笑った。
●人違い
「美鳥ちゃん、ちょっと」
「はい、なんですか? 翼さん」
「今日から営業に入った高田さん。あなたの下に着くわ」
「高田鈴です。よろしくおねがいします」
「詳しい外周りの事は美鳥ちゃんに聞いてね」
「はい」
***
「出て来たぜ」
駐車場を張っていた太郎が煙草を投げ捨てる。営業車のナンバーは事前に調べてある。女がドアを開け、後部座席にバックを置こうと身をかがめた瞬間。
「『鳥飼 美鳥』だな?」
「え?」
何が自分の身に起ったか判らない女。後ろから太郎が女を押し込み、そのまま女の髪を掴み反対側のドアに頭を数発叩き付ける。脳震盪を起こした女から抵抗する力が抜ける。
「出せ!」太郎が女の持っていたキーを遼輔に投げる。急発進をするセダン。
焦ったのは遅れて駐車場に来た美鳥である。目の前で二人組の男が『高田鈴』を誘拐したのである。良く聞き取れなかったが、確かに男は自分の名前を呼んだのである。自分が狙われたと知ったショックで一瞬足が止まったが、事の事態に慌てて店に戻る。
「翼さん、大変! 高田さんが、私と間違われて誘拐されたの!」
「なんですって?!」
「あいつら、こんな‥ああ、警察に電話しなきゃ‥警察‥‥」
電話をしようとする美鳥を静止する。
「ダメダメ、こういう時公僕は役に立たないって‥‥真っ当な会社じゃないって判っていたけど、こんな方法に出るなんて‥‥」唇を噛む翼。
「向こうは取り引きを申し込んでくるはずよ。向こうの出方を待ちましょう」
●仕組まれた包囲網
「ちくしょう! 姪じゃない、違う女だ!」
太郎が気を失っている『高田鈴』をシートに叩き付ける。
『皆、上手いなぁ。それにカメラも何処にあるのか全然判らないし‥‥しかし、痛い』
こっそりと心の中で呟く『高田鈴』ことモルモットお姉さん。
***
新人役者の『モルモットお姉さん』の手元に一冊の台本が届けられたのは昨日である。
台本のタイトルは「潜入捜査官 =誘拐者を撃て=」アクションドラマである。
「『美鳥に間違われ誘拐される高田鈴』役‥‥やった、これで家賃が払える」
***
「くそ‥‥もう一度、誘拐を立て直すか。いや、向こうも警戒しているだろうし‥‥あー、面倒臭い。取りあえずこの女、バラ(殺)して捨てようぜ」
「山田君、姪では無くても取り引きの商品価値は、あるんじゃないんですか?」
「熊倉社長は『鳥飼 美鳥』を誘拐しろって言ったんだぜ。あの人がそう言ったら、そうなんだよ。こいつじゃない」
ポケットに手を入れ、折り畳みナイフを取り出す太郎。
「この女は、運が無かったって事だな」
急ブレーキを践まれ、前部座席につんのめる太郎。
「犬養、どういうつもりだ?!」
「女をバラ(殺)すのは、反対だ。それにもう充分証拠は揃った」
「‥‥ついに化けの皮が剥がれたな! どうも最初っから胡散臭い野郎だとは思っていたんだよ! やっぱり警察の犬か!」
ナイフを翳す太郎、急発進をするセダン。信号を無視し、物凄いスピードで町中をジグザグ走行する。後部座席で跳ねる鞠のように翻弄される太郎。前方の交差点を右側から直進してくる大型トラック。そのまま信号を無視して突っ込んでいくセダン。衝突直前、タイヤを軋ませ急ブレーキで止まる。フロントガラスに突っ込む太郎。
「後部座席でもシートベルトは、きちんとするべきだったな。それに美鳥に感謝すべきだぞ。新品のタイヤを履かせてなかったら揃って御陀仏だったな」
何ごとも無かったかのように洋煙草に火を着け、太郎を助手席に引きずり降ろす遼輔。後部座席を振り返り‥‥。
「寝たフリはもういい。大丈夫だ、なにも心配する事は無い」
「ありがとうございます‥なのかな?」座席と座席の間の床に挟まっていたモルモットお姉さんが恐る恐る顔をあげる。
「礼を言われる筋合いはないが」
遼輔は内ポケットから取り出したスプレーをモルモットお姉さんに向け‥‥体を震わせモルモットお姉さんは、今度こそ本当に気を失った。
***
『高田鈴』が見つかったと言う知らせを聞いて事務所を飛び出す翼と美鳥。車道近くに出て必死にタクシーを探す二人。静かに物陰から翼に近付く黒猫。
自分と翼の間に立つ黒猫の手に握られたナイフに気がつき、慌てる美鳥。握られたナイフをそのまま翼に突き出そうとした瞬間!
「大丈夫ですか? 少し酔ってるみたですね」
篝のジャケットが黒猫の腕を絡み捕り、そのまま路地に引きずり込む。
一瞬の出来事に目を丸くする美鳥。追い掛けようとするが、後ろから両肩を捕まれ身動きが出来ない。押さえる男が美鳥に囁く。
「美鳥、大丈夫だ。明日には全て丸く治まっている」
微かに漂う洋煙草の独特の香り。どこか懐かしさを感じるその香りに慌てて振り向くが、美鳥は声の主を確認する事が出来なかった。
「‥‥お姉さんこの代償、高く着くよ。代わりに俺っちを少しは楽しませてくれる?」
舌舐めずりをする黒猫の両手に握られたナイフが篝を襲う。2本のナイフに中々間を狭められない篝。
「私、こういう荒い仕事は向いてないんですけどね。見ていないで助けて下さい」
別の仲間がいるのかと黒猫の注意が一瞬外れた瞬間を逃さず、篝の一本背負いが決まる。受け身を取れずアスファルトに叩き付けられた黒猫が呻く。
「全然楽しく無い‥‥何か興ざめだよ‥‥俺っちは手を引かせてもらう」
脛に隠し持っていたナイフで押さえつける篝の手を切り裂き、闇に消える黒猫。篝、手を押さえ、電話する。
「すみません、確保できませんでした」
『‥‥仕方あるまい。ルートの方は、熊倉を押さえればなんとかなるだろう。撤収をするように』
深夜遅く最寄の警察署の前に止まった黒塗りのワゴンから簀巻きにされた太郎が十三の事務所での会話や通話等が録音されていたテープと一緒に放り出される。
●悪に喰い付く『DOG(犬)』
差出人のない手紙に空港近くのホテルに呼び出された翼と美鳥。2人の前に止まる複数のパトカー。捜査員に連行されて行く十三を見つめる翼と美鳥。野次馬に紛れ翼と美鳥を見つめる篝と遼輔。
「任務終了ですわね‥‥翼さん達に名乗らなくっていいんですか?」
「顔も名前も違うんだ‥‥そもそも死んだ人間が何を喋るというんだ」
興味を失ったように静かにその場を離れて行く遼輔。
「‥‥いや、人間ですら無い‥そう、俺達は悪に喰い付く『犬』なのだから」
***
「社長、あんな危険なシーンがあるなんて聞いていません!」
モルモットお姉さんは、病院の中庭で事務所の社長と携帯電話で話していた。「静にしろ!」という視線が集中するのを見て、慌てて小さい声で話す。
「え? なんですか?」
聞き直そうとした瞬間、落ち葉と一緒に風に煽られた古新聞が舞い上がる。一瞬、唐突に閃いたそれを彼女は苦笑しながら否定した。
『まさかね‥』
「はい、新しい仕事? します、下さい! でも危険なの『なし』です!」
モルモットお姉さんを軸にクレーンカメラが赤く色付く紅葉を写しながらパーンをし、快晴を写し出す。