「7」端午の節句 裏アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 不明
参加人数 8人
サポート 1人
期間 05/05〜05/08

●本文

 古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。
 厳ついコンクリートの外壁と大きな赤錆が浮いた鉄の扉が印象的で、来る人を拒むように聳え立つ。唯一ライブハウスである証拠と言える物はネオン看板ぐらいであるが、今玄関先には親父さんのコレクションである西洋甲冑と日本の鎧兜が並んでいる。
 西洋甲冑はカップルルームに飾ってある物だが、日本の鎧兜は普段親父さんの家にある物だった。
 店長の浩介としては菖蒲と小さい鯉のぼり程度を考えていたが、親父さんの甲冑である。
「まだ、着たいと言わないだけマシか‥‥‥」と空を仰ぐ。

●観客募集!
●料金表
『ライブチケット価格 3000円』
『VIPルーム+ワンドリンク +席料1000円』
『カップルルーム+フリードリンク +席料3000円』
 *1Fは立ち見席のみ、飲食物の持ち込みをお断りしてい折ります。
  エントランスにあるスタンドバーにて飲食はお願い致します。

 *カップルルーム御利用者はライブ当日来店時お部屋にメッセージカードを置く事ができます。
 御利用になる場合は事前にスタッフにお申し付け下さい。


●料理一律 1000円
 フォーチュン・カップケーキ
 バラのフロマージュ
 メロン粥(バニラアイス付)
 ミニパフェコンビ(苺、メロン、バナナ、チョコ、宇治茶から2種類をチョイス)
 抹茶(アイスorホット)と柏餅
 抹茶(アイスorホット)と抹茶ロールケーキ


●スタッフ募集
 スタッフジャンパーまたはスタッフTシャツを着用の事。
 但し、受付及び配膳担当者のみ和服可能(店より貸出が出来ませんので、必ず持参の事)。
 報酬:一律3万円。

●今回の参加者

 fa0441 篠田裕貴(29歳・♂・竜)
 fa0443 鳥羽京一郎(27歳・♂・狼)
 fa1704 神代タテハ(13歳・♀・猫)
 fa1816 館林 隼人(28歳・♂・トカゲ)
 fa4768 新井久万莉(25歳・♀・アライグマ)
 fa4942 ラマンドラ・アッシュ(45歳・♂・獅子)
 fa5486 天羽遥(20歳・♀・鷹)
 fa5642 宇藤原イリス(13歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●無敵少女
「スモークマシンを持って行くので半獣化でお店まで行こうと思います。‥‥半獣化しないと動けないので」と言う宇藤原イリス(fa5642)にやや呆れる浩介。
「ウチにないのは、変った楽器や衣装ぐらいなもんだぞ。それにウチのスタッフは特別な場合を除いて、半獣化は基本的に不許可だ」
「7」の設備関係はライブハウスにしてはかなり充実している。
 歌詞や映像を壁や幕に映すコンピューター制御のプロジェクター、バブルマシーン、スモークマシーン、大型扇風機、そういったものは「7」の倉庫に保管されている。
 それに半獣化しても子供の体のイリスには、スモークマシーンはかなり重い代物である。
 ライブがスタートする前に疲れきって動けないのは、目に見えている。
「じゃあ、接客と調理やります。食器や料理をひっくり返してしまいそうになったらとっさに半獣化してしまうかも」とイリス。
「‥‥止めてくれ、2Fで使っているコーヒーカップは1客3万円するヨーロッパのメジャーブランドだったりするんだ」
「うーん‥‥じゃあ、アイデアだけでも。料理、菖蒲を香り付けに使って何か出来ないでしょうか? おこわとか?」
「‥‥難しいな。水饅頭にミニ菖蒲の花を添えるとかは出来るだろうが‥‥たしか直接の食用には菖蒲は向かないはずだぞ」とする浩介。
 自分の娘と大して変らない年齢だからなのかもしれないが、発想がユニークで刺激的である。
 だが、浩介から悉く提案を却下されてしまったイリス。
 しばらく悩んだ挙句こう言った。
「メイクができます。歌い手さん達からメイクの要望ありましたらしっかりとつとめさせて頂きます。店長さん達もいかがですか? 眉をキリッとさせたり爪をピカピカに磨いたりなら十分くらいでできますよ」
「一応、これでも営業だったから見場が悪くない程度は整えているつもりだ‥‥頼む、メイクで呼ばれるまで座っていてくれ」

「さあ、今回も張り切ってこー!」と新井久万莉(fa4768)。
 ぼちぼち「7」での裏方仕事もベテランの域に入り始めた久万莉、本日は厨房メインに動くと言うがそちらは仕込みを先にやってしまえば、客が入場してくるまで大した用がないので、衣装の手配などもしている。
「今日は子供の日だし、紙ナプキンで兜を織って料理のトレイに飾りとして乗せとこうかな?」
「そうだな‥‥飾りにもなるし、ナプキンとしての実用もあるからな。折る量が多いようなら、イリスにやらせてくれ」と浩介。

「端午の節句、ねぇ。今更そんな祝いをするような歳じゃないけどな‥‥ああ、これ差し入れ」と柏餅をスタッフルームの机に置く館林 隼人(fa1816)。
「ああ‥‥」
 隼人から柏餅を受け取る浩介。
(「‥‥どうも、今日は何かが違う気がする」)
 浩介はそう思った。


●無敵王
「VIPルームを貸しきりたい、客だと?」と浩介は、開場と同時に吹っ飛んできた受付スタッフ、天羽遥(fa5486)に思わず聞き直した。
「はい、あの中年男性です」と店長室にある監視モニタの一つを指し示す。
 モニターには背の高い筋肉質の中年(ラマンドラ・アッシュ(fa4942))が映っている。
 VIPルームの物理的定員は70人、そこをテーブル席40席、カウンター席10席定員50席としてゆったりスペースを提供しているのが、単純計算でも4千円×50席=20万円の席料が掛かるのだが客は理解しているのだろうか?
 ちなみに「7」をステージだけを1日貸切ると約80万、照明・音響設備を使用すると約20万、ライブのない日にVIPルームのみを貸切ると諸費用を含め30万、ライブ日ならば出演アーティストに更に料金が加算されるシステムである。
「遥、客は何時、貸し切りたいと言っているんだ?」
「何時っておっしゃらなかったんですけど‥‥たぶん、今日じゃないかと‥‥」と語尾が小さくなるハル。
 溜息を着く浩介。今日からのスタートする「端午の節句」の出演者達は、業界で名前が知られているだけではなく、一般人にもそこそこ名前が売れている出演者もいる。
 実際立見席は予約分は売り切れているし、VIPルームにもそれなりに客が入っている。いきなり来て当日貸し切れる程、集客数は少なくないのだ。
「カップルルームにして貰えないか聞いてみよう。あそこなら男性客のみでもよく利用するしな」
「え? あの部屋って恋人同士じゃなきゃ利用できないんじゃないんですか?」とハル。
「よく言われるが、専用客室係付きの単なる個室だ。家族や友人なんか仲間内で騒ぎたい人用だな」
 専用客室係は利用している恋人達がそう言う雰囲気になった場合、音もなくさっさと部屋から退場するのでそう思われているのかもしれないが、スイーツが充実している「7」故に甘味を人目を気にせず堪能したい男性客集団が押しかけ、ライブそっちのけで巨大パフェ等を堪能している事が多々あるのだ。
 そんな訳でラムはVIPルームを貸し切る事は出来なかったが、デザートメニューを端から端まで食べつくすと言うある意味大人買いを堪能するのであった。
「ここからここまで全部持ってきて」
 ちなみにフード用ニュー(40品目)は、客室係の機転でラムが目にすることはなかった。
 だれもが大食いを見るのが好きではないのだ。

「やあ、今日はタテはお客さんなのかな?」
 浩介は過去に出演者としてステージを踏んだ神代タテハ(fa1704)を1Fのスタンドバーで見つけ声を掛けた。
「そうなのにゃ。今回はタテはお歌の観客なのにゃ。またお歌のお仕事に出るために歌詞を作ったり、お歌を上手に歌うためにお勉強するのにゃ」
 縞のカットソーに茶色のキュロットスカートを纏ったタテは引率のダンディ・レオンと共に抹茶ロールケーキを突っついている所だった。
「人のパフォーマンスを見ることも、とても大事なことだからな。だが、勉強も程ほどに楽しんでいってくれ」
 そう言って浩介はエントランスへと向かった。

「カップルルームは空いているか?」と鳥羽京一郎(fa0443)が受付スタッフに聞く。
「カップルルームなんて絶ッッッ対に! 厭だからな!!」と顔を真っ赤にして言う篠田裕貴(fa0441)。
「別に疚しい事があるわけじゃなくて‥‥男ふたりなんだから、カップルじゃないだろ!」
 エントランスに響く声に注目が集まる。
「裕貴がアコースティックとエレキギターの奏法の差を見たいと言ったんだろう。俺はじっくり見れるようにと‥‥まあ、Ventusのふたりがカップルルームに居たとかで、あのふたりはゲイだとか噂されると、何かと面倒だしな」
「正直サービス内容とかもVIPルームで充分なので、そこでいいよ!」
 エントランスで繰り広げられる痴話喧嘩‥‥もとい、戯れにやや呆れるスタッフ達。
 実際、二人が思っている以上、業界として裕貴、京一郎の二人は有名なゲイカップルとして見られている。
 逆に言えば今時の田舎の生娘でもしないような裕貴の反応に一般客も興味深々で見ている。
 浩介は壁に向かって韜晦していた。
(「ホモカップルでもホモカップルでなくてもいい‥‥ライブ中は静かにしてくれれば!!」)


●ライブ中
 ハルはステージに向かう出演者に声を掛ける。
「今回も素敵な歌、楽しみにしてます♪」
「どんなステージになるか、わくわしてくださいね〜」と楽器を手に移動しながらにっこりと笑った。

「ドライマティーニでも貰おうか。勿論、オリーブを付けて出してくれ」と京一郎。
「俺は烏龍茶と後‥‥薔薇のフロマージュを」と裕貴。
「大丈夫なのか? ‥‥菓子を作る割には甘いものが余り得意ではなかったりするのに?」
「半分は京一郎が食べるんだよ。‥‥昔から甘いもの食べ過ぎると気持ち悪くなるんだから、仕様が無いだろ」と拗ねた様に言う裕貴。
「しょうがないな。意外と偏食症なんだな、お前は。末っ子だから、甘やかされてたのか?」と京一郎、笑顔を見せる。
 後ろにいたスタッフたちは一斉に心の中で呟いた。
(「あんたが甘やかしてんだろう!!」)
 頼んだ品が届いた頃に丁度ステージが始まる。
 折角頼んだ食べ物に手をつけるのも忘れ、ステージを熱心に見つめる裕貴を楽しそうに見詰める京一郎。
「やっぱり1Fにすればよかったかな? ステージが遠いかも」と1曲終わったところでソファーに座り直す。
「デッキから1Fに降りられるようだがどうする? 後はモニタがあるが‥‥」と京一郎が指差す先に、VIPルームの4隅に設置されたモニタに1Fの様子が映っている。
「えー、うーん? いいよ。モニタがあるんなら」
 上演されたばかりの曲がダイジェストで流れている。
 ギタリストの手がアップになる度に裕貴の手がそれを追う。
「熱心だな」
「うん、やっぱり歌手の技術も気になるけど、今回女性ヴォーカルユニットが多いしね。エレキを弾く時の参考になれば良いな。と‥京一郎は?」
「俺は裕貴と違って歌手だけだからな。あんまり参考にならないからお前の顔を見ていた。曲をBGMに百面相をしているお前の顔を見ているほうが面白い」と京一郎。
「それって嬉しくないぞ。出演者にも失礼だし」
 頬を少し染めて文句を言う裕貴。
「聞くのは聞いているさ。1曲目は声と琴は良かったが、ショルダーキーボードはそれに追いついていなかった。だから時々歌が熱心になると手が止まる。2曲目は歌手は見せ方が上手いが、俺や裕貴の歌い方とは違う」
「‥‥なんだ、ちゃんと聞いていいるんだ」
「俺は、裕貴と歌に関してはちゃんと真面目に見ているつもりだぞ」
「判ったよ‥‥もう!」
「じゃあ、判ったところで。フローマージュが食べる前に溶けたぞ。残念だったな」
「あー! それだったら、教えくれればいいのに!」
「お前の百面相を見ていたから気が付いたのは今だ」と嘘をつく京一郎。
 薔薇のフロマージュは裕貴の口に入っては可愛いかもしれないが、ちょっと自分では食べたくないピンクの代物だったのであった。


●夢の後
 全てのステージが終わり、観客達が店を後にする。
 裕貴に遠慮してか、飲み足らない感がある京一郎は裕貴を誘ってみることにした。
「この後、行き付けのバーに行かないか?」と京一郎。
「あの店?」
 人の良いマスターがあり、ノンアルコールもあるのも知っている。
「そう長居はするつもりは無いので、付き合ってくれ」と京一郎。
 先刻、甘えん坊だの散々言った癖にどちらが我が儘で甘やかされていたのだろう。と、こういう時、裕貴は思う。
「‥‥良いよ、何時も仕事ばっかりだから。折角の機会だし」と裕貴。
「でもさ」
「なんだ?」
「飲むんだったら車を置いてこいよ。俺、飲酒運転の片棒担ぐの嫌だからな。飲むんだったら俺が恭一郎を家に迎えに行くし、ちゃんと送るからな」と裕貴。
「じゃあ、送られ狼していいか?」と京一郎。
「断る。事故るの嫌だからな」

 機材を指定位置に戻した隼人は、換気用の窓を開けるとジャケットからタバコを取り出して上手そうに一服する。
「‥‥ま、この忙しさこそが仕事。と思ってるんだけどな」と隼人。
「7」での仕事は初めてだったが、他所に比べて別段忙しすぎるとは思わなかったが、中々だったと思う。
「うっし! もう一踏ん張りだな」
 自分の仕事は終わったが、まだ他のスタッフは動いている。
 仕事を手伝う為に隼人は、スタッフ専用路に戻っていった。