姫様漫遊記 温泉編アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
05/03〜05/07
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●本文
●娯楽時代劇ドラマ「姫様漫遊記」
ナレーション――
『天下太平世は情け、火の元の国を東西に分けての関ヶ原の戦いも遥か昔話になってしまった江戸の世。将軍様の末の末のそのまた末の姫に「あんず姫」という姫様がおりました。
あんず姫様は大層美しく‥‥俗に言うグレイビー(great beautiful)な少女でありました。
あんず姫様の母親「かさね」は元々は庶民の出、紀州の廻船問屋舟木屋の娘であったが、見習い奉公で大奥に上がった所、将軍様のお手付きになり、目出たく姫(あんず)を授かったのでありました。
将軍様には正室との間に若宮が何人もおり、あんず姫には全くお世継ぎ騒動は関係ないので、あんず姫はすくすくと真直ぐに優しく美しい姫に育ち‥‥‥ただし、一つだけ欠点がありました。
お忍び歩きが大好きなのです。
お忍び歩きには、生まれた時から親友で舟木屋から召し上がっている「あさぎ」が必ずお伴に着いて来る。
そんなある日、立ち寄った茶屋でふと庶民に流行っている「お伊勢参り」の話を耳にした二人。
「床に伏す母上様の為にお伊勢参りに行く」と言い出したあんず姫。
「人足集めのたか」の口利きで旅回わりの一座の踊子に入り込み、一癖も二癖もある一座の一行とお伊勢様を目指す二人。
だが、路行く街道で城や江戸では判らぬ諸処の暮らしを目にするあんず姫。
己の野望の為に民を苦しめるのを目の辺りにし、伊勢への道筋、世直し旅を決めたのであった』
●姫様漫遊記 役者募集
「今回も姫様をこっそり守る若侍や忍者、盗賊、隠密やら旅芸人達が東海道を行き、途中でばったばったと悪人を倒す時代劇な訳です♪」とよしりん☆。
「あんず姫もあさぎも普通の娘なので刀や長刀が上手いとかありませんので、退治は周りの方ですね。あとは、集まった役者さん達で倒される悪役を決めて頂きますが、個性的なキャラクターがいいですね♪」
ここで一息入れるよしりん☆。
「今回、お色気(入浴シーン)は必ず欲しいので役者さんには頑張って脱いで欲しいと!」
前回のテスト版。
編集の際、2箇所あったサービスカットを全部放送時間枠の関係でカットされたのだった。
気合いを入れまくるよしりん☆に対し、視聴者だけではなく上の方からも放送カットを散々突っ込まれた鬼塚ディレクターは、ややげんなりとした様子で言う。
「今回は、温泉宿が舞台なので頑張って協力してやってくれ」
よしりん☆がお色気シーンの為に今回の舞台を温泉宿にしたのを知っているからなのかもしれない。
●あらすじ
あんず姫達、旅一座がやって来た温泉地。
『東海道温泉宿案内地図』によると遥か昔平家の落人によって発見されたという由緒正しい温泉街。
それを旅の疲れを取る楽しみとやって来た一行だったが、ここの所続く地震で源泉が埋まってしまい、営業している宿は一握り。
一行が泊まった宿も隣の宿から貰い湯をしている始末。
一部の血気盛んな若者は新たな源泉を掘り当てようと必死である。
そんな中、源泉を一人占めしようとする悪人の事を知ったあんず姫達一行は、悪人に対して激しく『説得』するのであった。
●CAST
あんず姫:主人公
一人称 妾、二人称 呼び捨て、口調:だ、だな、だろう、〜か? 等、やや古い男言葉
気が強く、サバサバした性格、お姫様なのでやや世間からズレた感覚を持っている。
旅一座では、踊子をしている。
あさぎ:あんず姫の側係で親友(幼馴染み)舟木屋の女中。
一人称 自分の名前、二人称 〜さん、口調:です、ます、ますよ、でしょうか?
あんず姫の事をあんず様と呼ぶ。
母よねは、あんず姫の母かさねの側係をしていた。
一座の中では良識派に見えるが、普通の娘。
旅一座では、几帳面な点を買われ、会計と衣装掛かりを勤める。
「あさぎは前回試作では大部屋だったので今回も大部屋でもいいが、あんずは主役なので今回もできれば誰かが演じてくれると助かる」と鬼塚。
「ギターだったら南蛮琵琶のように今回も外来語は、なるべく使わないで下さいね♪」
「あと注意だが、決め台詞はオリジナルにしてくれ」
●リプレイ本文
●CAST
あんず姫‥‥‥阿野次 のもじ(fa3092)
秋津桃太郎‥‥青雷(fa1889)
お結‥‥‥‥‥武越ゆか(fa3306)
刹那‥‥‥‥‥神楽(fa4956)
英之介‥‥‥‥瑛椰 翼(fa5442)
田原屋お初‥‥青田ぱとす(fa0182)
平平平平‥‥‥桐尾 人志(fa2341)
田原屋宗兵衛‥河田 柾也(fa2340)
●温泉天国
「随分寂れた‥っと、静かな宿場だな」と桃太郎。
「季節外れだからじゃないの?」とお結。
「ふむ‥‥『東海道温泉宿案内地図』によると、この宿場は500年前、平氏の落人が発見したという由緒正しい湯なのじゃな」とあんず。
「どの宿がいいかな?」
「この宿はどうじゃ? 『卵肌の湯』。効能は茹で卵のような美肌、美人湯じゃ。湯上りに湯女が行う『身体抹些亜邇(ぼでえまっさあじ)』を更に行うと女性は引っ込むところが引っ込み、でっぱる所がでっぱる効果が二重丸‥‥」とあんず。
それを聞いて溜息を着くのは男装の刹那。
(「‥‥これ以上、大きくなったら‥‥さらしを蒔くのも面倒です‥‥」)
「こ、今度こそ綺麗な『年上の』お姉さんがたくさん‥‥!」と英之助が青い空に拳を突き上げて誓っている間に、一座の大八車は今日の宿を目指してとさっさと進んで行く。
宿帳を書き、一息ついて、さて温泉に入ろうという一行。
「なに? 湯が出ない?」
「実は先の地震で名物の『星の石』が落ち、2つある源泉うちの1つが潰れてしまいまして‥‥お湯は隣の田原屋さんの風呂をご利用頂いております」と宿の主。
「つまり俺達に貰い湯、外湯をしろというのか?」
「看板ならぬ地図に偽りありなのじゃ!」
「あんずさん、相手は地震。主を困らせるモノではないでしょう」と刹那。
「誠に申し訳ありません。でもまだうちはいい方なんですよ。お湯が貰えますからね」
宿の主は、申し訳なさそうに言う。
「うむむ‥‥‥効能は卵肌の、美人の湯なのか?」とあんず。
「いえ、筋肉に効く『筋肉の湯』です」
「『筋肉』はいやなのーーーじゃぁぁぁ」とのたうつあんず。
どうやらムキムキの筋肉男が褌一丁の姿に油を塗りこみ一列に並んだ挙げ句怪しい吐息共に決め姿を晒す筋肉自慢大会を公務として見た事を思い出してしまったあんず。
「結は構わないわよ。温泉に入れば血行が良くなって『美肌』になるから」とお結。
こうして一行は隣の田原屋に貰い湯をしに行く事にした。
●固茹で卵はお好き?
一行を押し退けて、もんぺ姿も輝くがガタいの良い老女(お初)がのれんを潜る。
「はいよ。また来たよ」
それを見て番頭が飛んで来る。
「お初さん、卵でしたらどうぞ裏からお巡り下さい」
「何言うとんのや、今日は風呂に入りに来たんやで」とお初。
「それでしたら、立ち寄り湯ということで20文頂きます」と番頭。
「なんだい、このあたしから金を取るのかい? あたしは宗兵衛の叔母だよ。それに温泉卵を卸してやってるのは、このあたしだろう? 無料で風呂に入らせるのが筋じゃないのかい?」と番頭に食って掛かる。
「しかし決まりですから」
「あたしは宗ちゃんが赤ん坊の頃からの付き合いでシモの面倒迄みた身内と言うより家族だよ」
広い玄関にキンキンと響くお初の声。
「なんの騒ぎです? 他のお客さんが驚いていらっしゃるでしょう」と奥の方から田原屋が出て来る。
「宗ちゃん、いい所に。風呂に入りたいって言ったら番頭からあたしから金を取るって言うんやよ」とお初。
「お初さんは家族同然、そのまま入って頂きなさい」と穏やかに言う田原屋。
ほら見ろ。とばかりにんまりと笑うお初。
「じゃあ、遠慮なく入らせてもらうよ」とズンズンと足も拭かずに奥へと進むお初。
綺麗に磨きあげられた廊下に足跡が着いて行く。
「お恥ずかしい所をお見せして、お騒がせして申し訳ありませんでした」
客に頭を下げに回る主。
「凄いおばさんだったね」とお結。
「しかし出来た主なり。妾だったら『説得』したくなる所じゃ」とあんず。
「風呂から上がったら皆で温泉卵を食い乍ら諸悪の根源『星の石』を見に行こうぜ」と英之助。
微妙に噛み合っていない会話を交し乍ら、露天風呂迄の廊下をペタペタと歩く一行。
あんず達と一緒に女湯の暖簾をくぐろうとする刹那の腕を捕まえる桃太郎。
「ん? 刹那はそっちじゃないだろう?」
「男の分際で私に気安く触るなー!」
刹那の拳が天に届けと桃太郎の顎に炸裂する。
「結のジュラ魂を刺激するこんな立派な『裕福』があるのに。桃太郎の目って節穴?」
星になった桃太郎を置いてスタスタと露天風呂に入る一行。
「おお、広いのじゃ♪ それに見事な絶景なり!」とあんず。
「本当。宿の露天風呂の何倍あるのかしら」
庭園を思わせる露天風呂には、四季を彩る花や木が植わっている。
「すごいやろ? これがあるからあたしは最低週に一度はここに入りに来るんよ」
湯舟に入った海熊‥‥もとい、お初が声をかける。
「他にも綺麗な露天風呂がある宿もあるが、多くは休業やら井戸水を汲んで沸かしておるんやよ」
「事情通なんですね」と感心するお結。
「あたしはここらで唯一の養鶏場やからね」
「では後で食す温泉卵はお初の所の物のじゃな」
「せやけど、今のままやとその内温泉卵やなくてただの茹で卵になってしまうかもしれへんのや」とお初。
「なんでですか?」
「内緒やで‥‥実は田原屋の源泉も最近湯量が減ったんよ。あたしは温泉卵を毎日作っているから気がついたんやけどね」
広い湯舟の真ん中に集まりヒソヒソと話す一行。
「でも温泉卵が食べられんようになったら、肌も荒れる一方やわー」とお初。
「卵は肌にも良いなり?」
「あたしは今年緑寿になったけど、温泉と温泉卵のお陰で今も小町現役やね」
胸胴腰の寸法と体重が同じ目盛を示しそうなお初がと堂々と胸を張って言う。
「ない、ない」
揃って、手を振る一行。
「‥‥‥まあ、ええ。このまま湯舟に入っておったら固茹で卵にあたしの方がなるからぼちぼち出ようか」
ざぶざぶと洗い場の方に歩いてゆくお初。
かこーん!
「何覗いてるんや、こんの助べえが!」
男湯との境の竹垣にいた覗きにお初の投げた桶が当る。
「ふ‥‥このお初さんに目をつけるとあっぱれやけど、あたしはそんなにお安くはないんだよ」
「ない、ない」
揃って、手を振る一行。
●お星様に願いを
「俺達が男湯で聞いた話は、今出ている源泉は田原屋が独占しているらしい。もう一つの源泉に頼っていた宿は田原屋に高い金を払って湯を使わせて貰っているらしいぞ」と桃太郎。
「なんとも不道理な話なり。ここは一発『説得』じゃな?」とあんず。
「‥‥人には、それぞれの事情というものがありますから、余り考え無しに首を突っ込むのはどうでしょう? それに温泉を掘るというのにはとてもお金が掛かると聞きます。無制限にお湯が出る訳でもなさそうですから使用料を払うのは当然じゃありませんか?」と刹那。
「うむむ‥‥確かにそうなり」
「だが、その源泉も何故か段々湯量が少なくなって、今、新しい源泉を掘るのに田原屋がもう一方の掘削現場を狙っているらしいんだと」と英之助。
手に「あなたのお肌もつるつるぴかぴか名物温泉卵『湯上り卵肌』」の文字入った袋を握りしめたお結はそんなに貴重ならば、後でもう一度田原屋の温泉に入る事をこっそり決めたのであった。
「でもこの卵、固茹でだから口の中がパサパサになるわね」
「ひぇ〜っ、誰か助け‥‥うあっ」
「こんな所に誰が助けに来るんだよ」
件の星の石近く、山の麓に原野でL字型の探査機を手にしたまま、丸玉の鼻眼鏡の細い男(平平平平(ひらだいらへいべい))が油虫並みに何処にでもいるという『ごろつき』に襲われていた。
「止めて‥‥そ、そこは駄目ン♪」
平平、何気にぷち変態気があるのか微妙に嬉しそうで、それがごろつき供の神経を逆なでする。
「お前達、止めろ!」
駆け付けた一行が止めに入るがごろつき達は、
「この変態野郎はこのまま川に投げ捨てた方が世の為、人の為、田原屋さんの為だ!」と増々、平平を殴る蹴る。
「こいつら、田原屋に雇われているのか?」と英之助。
「だったら止めるの止めない? 結、お風呂に入れなくなるのは嫌よ」
「そういう問題ではないでしょう?」と刹那。
「皆、ぐだぐた言っていないで助けるぞ!」と桃太郎。
ごろつきに殴られ気を失った平平を宿屋に連れて帰った一行。
「助かりました。ありがとうございます」と平平。
寝かされていた煎餅布団に正座をして頭を垂れる。
「うむ。礼には及ばぬと言いたい所だが、妾は咽が乾いたなり」とあんず。
ここで何もしなかっただろう。と突っ込んではいけない。
「これは気がつきませんで」
懐から竹で出来た水筒を差し出す平平。
「水?」
「単なる水ではありしません。一口飲んでみれば判りやんす」と平平。
そう勧められて一口飲むあんず。
「これはなんとも‥‥始め、口の中に痺れるような刺激がくるが‥‥成れて来るとこのプチプチと爆ぜる刺激が心地よい。妾はこんな不思議な水は初めてなり」
「炭酸水でやんす」と平平。
「平平さん、ひょっとして‥‥」
ここで座敷きに同席していた宿屋の主が口を開く。
「そうでやんす。新しい脈を見つけたでやんす」
平平が新しい脈を見つけた報はすぐに田原屋の耳に入り、嫌がらせは増々過激になる。
刹那に諭されて我慢していたあんずだったが、平平の叔母が誘拐されたと知ってこう言った。
「もう勘弁ならぬのじゃ。駄目だと言っても『説得』ったら『説得』じゃ」とあんず。
「美‥‥温泉卵を護る為、温泉郷の平和を護る為! 悪徳商人は成敗よ☆ いいわね。あくまでも温泉卵の為なんだからねっ!?」とお結。
「‥‥結局こうなるのね」と溜息を着く刹那。
「んじゃ、懲らしめるとしますか」と肩をすくめて言う桃太郎らと田原屋に押し掛ける。
手下達がバッタバッタと倒され、追い詰められた田原屋は件の大岩「星の石」迄逃げていく。
「星の石」を背に蜥蜴のようにへばりつく田原屋。
突如、何処からともなく能の仕舞のような鼓や大鼓、能管の音が響く。
地謡の掛け声が響く中、星の石の上で一舞終わったあんず姫が仁王立ちする。
「湯のゆは、癒のゆ!
愉、そしてゆかしき、火の国の宝。
その源泉を一人占めしようとする不届きモノに一家総出の―言語道断断じて許すわけにはいかぬなり」
小気味良い拍子木の響きに『決まった』とあんずが思った瞬間足を滑らし、田原屋の上に落ちるあんず。
「美味しい所を持って行かれたな」
「これにて一件落着?」
「まあ、田原屋は『懲りた』とは思いますよ」と各々の感想を言う一行。
●新しい路
角にも田原屋という邪魔者がいなくなったのは確かである。
新たに平平の指導の元、温泉の目処が立つことになった。
だが「源泉の温度が低過ぎて、温泉卵が出来ないやないか?」とお初。
田原屋の源泉も段々と湯量が減っている現状を考えるとこのままでは名物の土産が無くなってしまうかも知れない。
こうして今度こそ何が何でも石を取り除かなくてはならなくなったが、どうせ割るならば大々的に興行してしまえという事で、
「さて夢の一座、本日の演目は天より落ちた星の石その岩斬の秘でございー!」
あんずの高らかな声が青い空に響く。
「星の石」の前に立つ桃太郎と英之介。
「見せてしんぜよう。北辰一刀流で鍛えた本物抜刀術を」と桃太郎と、
「お姉さん達との憩いへの障害となるこの石さえなければ‥‥!」と英之介。
「刹那はやらないの?」とお結。
「父上様から頂いた大事な刀を傷つけるようなことがあれば、申し訳が立たないですから」とあくまでも冷静である。
男二人が呼吸を併せ、気合いを込めて星の石に一刀を振う。
「まあ、当然の結果よね」とお結。
星の石の主資質がラジウム(モース硬度3)であっても敵は巨大隕石である。
ちんまりと傷がついた程度である。
「やはり宙(そら)のだけある」
あんずが石を誉め讃えるように軽く叩くとガラガラと一瞬で崩れ、代りに温泉が勢い良く迸る。
「熱、熱、熱!」と逃げ回る一同。
――こうして一行が去って行った後、元々の源泉2つの他、新しい1脈を加え、温泉宿場は益々の反映したという。あんずが復活させた源泉はこの後「あんずの湯」と呼ばれるようになったが、従来の「卵肌の湯」ではなく「怪力の湯」という別名を持ったとか持たないとか。
そして新しい源泉では卵が固まらないと怒っていたお初であったが、卵を捨てるのは勿体無い。と新製品開発に没頭していた。
どうせ中身がユルユルなのだから最初から中身を混ぜ、殻に戻して源泉に晒してみた所、出来上がったのは茶わん蒸しのような物体。
「あかんなあ‥‥ん、焦げ臭い?」
飯の支度中であったのを忘れ、南京を煮るつもりで砂糖を入れた鍋が焦げてしまった。
コゲを取る為に水を加えて、鍋を竈にかけると甘い香りが漂う。
「なんか甘そうな香りやね」
恐る恐る茶色い煮汁を卵に掛けて、食べてみる。
今迄に味わった事がない甘さに目をキラキラとさせるお初。
こうしてユルユル温泉卵は更に改良を加えられ新しい卵を使った土産物となったと言う。
「まさにあんず様様やな。これで養鶏所も安泰や! 本当にあの子は容姿といい、本当にあたしの若い時にそっくりや」
田原屋を従業員達に追い出され、養鶏場で働く事になった宗兵衛は「ない、ない」と呟いたとか。
――完。