竜二と虎治、危ない二人アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 05/31〜06/04

●本文

「ばっか、もーーーん!」
 ビリビリと刑事部屋の窓ガラスが、高村課長の声で振動する。
 当の怒られている奥田竜二は、そ知らぬ顔で耳をほじっている。
「聞いているのか?! 奥田!! これで何回目だと思っているんだ!!」
「あー‥‥課長の話が良く聞こえないと思っていたら、こんなにデカイ耳くそが‥‥」
 取れた耳くそを「ふぅ」と吹き飛ばす。
 いつもの事だとわかってい乍ら高村の額に血管が浮かび上がる。
「いい加減にしろ! 奥田!!」
「おー、今度は課長の怒鳴り声が良く聞こえる」
「まあまぁ、課長‥‥奥田もいい加減にしろ」と浅田係長が宥める。

「刑事課の皆さぁ〜ん、お・し・ず・か・に♪ 生活安全課もいることをお忘れずにネ☆」
 ギャルメイクをし、大幅に年齢を詐称した生活安全課(旧少年課)の大崎優子がウィンクする。
「五月蝿い、生活安全課は黙っていろよ。折角、課長の血圧が最高記録をマークする所だったのに。それに優子、なんだガキんちょども見たいなその派手な服は」と竜二。
「なによ、渋谷のマルキューで買ったのよ。『よくお似合いですよ〜』って周りの店員さん達も言ってくれたのよ」と優子。
 東京の不夜城と呼ばれる巨大繁華街の1つに中にこの山の手署は管轄を有する。
 だが増加する犯罪件数に対する拘留施設の設備不十分や建物の老朽化を含めたトラブルで現在、プレハブ運用中である。
 刑事課の隣に生活安全課が席を並べる形の仮住まいである。
「セールストークに騙されやがって。キャッチセールスとかによく引っかんないな」
「なによ。本当に似合うんだからいいじゃないの。それよりあんたこそ、万年革ジャンで暑苦しったらありゃしないわよ。たまにはお洒落をして見なさいよ」と優子。
 警察学校時代から仲が良いのか、悪いのかこの調子である。
「奥田先輩‥‥課長が睨んでいますよ」と竜二と組んでいるキャリアの高槻雅也が革ジャンの袖を引っ張る。
「あー、面倒だな‥課長、聞き込みに言って来ます! 来い、若様」と竜二。
「‥‥先輩、だからそれは止めて下さいって」
 出て行く竜二の背中を見て、引き出しから胃腸薬を取り出す高村。
 湯呑みに水をお湯を入れて持って来る浅田。
「やはり、高槻では奥田を押さえられんか」
「そうですね。やはり『おぼっちゃま』ですから‥‥それより今のままでは高槻が上に上がった時に悪影響が‥‥」
「しょうがない。人事課に頭を下げるか‥‥」
 人事課からまた嫌みを言われるのかと思うと胃が痛くなる高村であった。


●ドラマ「竜二と虎治」あらすじ
 奥田竜二と言う明るいライト系問題刑事を抱える山の手署、本店から「対竜二」として配属されたのは、やはり問題児のハードボイルドを自負する暴力男「鰐淵虎治」であった。
 管内で発生した麻薬に絡んだ障害事件を追う凸凹コンビの始動開始である。


●CAST
 奥田竜二‥‥20代〜、銃嫌いのスポーツマン。ボクシングを得意とする。
  明るい性格、生っ粋の江戸っ子だが、自称「横須賀を心から愛する男」。何時でも革ジャン。

 鰐淵虎治‥‥20代〜、銃マニアの自称「ハードボイルド」の暴力男。前の配属先のあだ名は「ゴリラ」。
  関西人。小学生の時、東京に来たが未だにうどんとソバに慣れない男。何時でもトレンチコート。

 大崎優子‥‥20代〜、竜二の同期で腐れ縁、生活安全課。ギャル服好き。
  若作りは「え〜、わたしぃ本当に若いし、それに似合うしぃ〜、補導の時、違和感ないしぃ〜」との事。

 高槻雅也‥‥20代〜、竜二の元タグ、虎治が来た事により、生活安全課の手伝いに移動。キャリア。
  警察上層部の父親を持つ為に「2代目」「若様」「おぼっちゃま」等と呼ばれる事が多い。

 高村課長‥‥40代〜、竜二と虎治、浅田の上司、課内のお父さん的ポジション。高血圧で慢性胃痛持ち。
  地道に昇進した苦労人。正しいお巡りさん故に今時の若い刑事のテンションに付いて行けない事がある。
  男性がベストだが、女性が演じる事も可能。

 浅田係長‥‥30代〜、竜二と虎治の上司、課内のお母さん的ポジション。

 その他‥‥‥刑事課や生活安全課・交通安全課等の警察関係者、犯人、補導される学生、情報屋等。

「まあ、こんなものですかね? CAST」とよしりん☆。
「まあ、こんなものだろう」と鬼塚ディレクター。
「竜二と虎治以外は、まあ皆さんの案を聞いてからと言う事で」

●今回の参加者

 fa0225 烈飛龍(38歳・♂・虎)
 fa1013 都路帆乃香(24歳・♀・亀)
 fa1206 緑川安則(25歳・♂・竜)
 fa1790 タケシ本郷(40歳・♂・虎)
 fa3134 佐渡川ススム(26歳・♂・猿)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4300 因幡 眠兎(18歳・♀・兎)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4840 斉賀伊織(25歳・♀・狼)
 fa4905 森里碧(16歳・♀・一角獣)

●リプレイ本文

●CAST
 奥田竜二‥‥‥佐渡川ススム(fa3134)
 鰐淵虎治‥‥‥緑川安則(fa1206)
 高村課長‥‥‥烈飛龍(fa0225)

 大崎優子‥‥‥都路帆乃香(fa1013)
 高槻雅也‥‥‥因幡 眠兎(fa4300)
 柊課長‥‥‥‥斉賀伊織(fa4840)

 矢加部空‥‥‥雅楽川 陽向(fa4371)

 鬼塚‥‥‥‥‥犬神 一子(fa4044)
 情報屋・大地‥タケシ本郷(fa1790)
 臼井由梨‥‥‥森里碧(fa4905)


●その男、取扱い注意?
 その日竜二はおNEWのブーツを履き、るんるん気分で山の手署の刑事部屋に出勤した。
 だが、そのるんるん気分は高村課長の一言で一気に急降下する。
「奥田、今日から鰐淵とコンビだ」
「えー? なんでですか? 『おぼっちゃま』くんは、どうするんですか?」
「だから先輩、それは止めて下さい‥‥」と雅也が言う。
「大槻は柊課長の元、生活安全課に異動だ。これ以上、お前の悪影響で『上』に上がった時こういった現場が普通だと思われたら適わん」
「そんな人をバイ菌みたいに言わなくてもいいじゃないですかぁ。それにこんな‥‥部屋の中でもサングラスを掛けている勘違い野郎とコンビですか?」
 脇に立つ虎治を指差す竜二。
「パートナーがいなかったらデスクワークだ。お前の大好きな『見回り』が出来んぞ」と高村課長。
「まあ、そんな訳であんさんと組む事になった、わしが鰐淵虎治や。よろしゅうにな。足、引っ張んなよ、竜」
「俺は竜二だ。俺を時代錯誤のヤクザに呼ぶな!」
 ブツブツと文句を言う竜二に「管轄内を案内しろ」という高村課長。
 連れ立って出て行く二人の後ろ姿に溜息を吐く高村課長。
「‥‥全く奥田だけでも頭が痛いというのに、問題児がもう一人か‥‥人事課に上手い事やられたな」

「さぁって、高槻ちゃん♪ 生活安全課によ・うこ・そ☆ みっちりしごいてあげるわよ〜ん♪」と優子。
「大崎ちゃん、高槻君と遊んでないでお仕事しましょうね☆」と柊課長がにっこり笑う。
「はぁ〜い♪ じゃあ、わたしぃ達もデート行きましょう♪」
「で、デート?」
 目を丸くする雅也。
「見回りよ。み・ま・わ・り♪ でも刑事課と違ってぇ、公園とか繁華街でもぉ若い子が集まるようなデートコースが多いけどね☆」とウィンクする優子。


●the HEVEN’s Cafe
「いらっしゃいませ〜♪」
 何処かで見たようなアニメのキャラクター衣装を着た店員が愛想よく矢加部空を出迎える。
「空さん、今日も元気に不登校? って、こっちの学校に元気に登校ですね」
 猫耳を着けた女教師(臼井)が笑い乍らカルテと書いてあるメニューを差し出す。
「あ、どうも」
「いつものケーキセット? それとも今日は『かくてるさぷり』にしてみる?」
 名前の通りビタミンやらミネラルを入れてシェイクしたカクテルである。
 このカクテル、種類が多々あり非合法の薬が混じっている物もあるという噂の代物である。
「なんだかイラっているみたいですけど、飲むと『テンションが上がる』薬ありますよ。勿論、ヤバくない合法薬だけど」
「え?」
「『かくてる』にも入れている薬なんだけど、空さんに特別に分けてあげましょうか?」
「いいの?」
「私の彼氏、ここの店長ですから私が言えば幾らでも‥‥でも他のお客様には内緒ですよ」

 ***

「なんでお前らも着いて来るんだ? 離れて歩けよ」と竜二。
 繁華街を並んで歩く竜二(革ジャン)、虎治(トレンチコート)、優子(ギャル)に雅也(ブランドスーツ)。
 ある意味とても目立つ。
「あたしは高槻ちゃんと、ちょーっとヤバ目の噂が立っているカフェでお茶しに行くだけだもの」と優子。
「ヤバい噂?」
「そうよ。最近知り合った出会い系サイトの子から教えてもらった店で‥‥‥」
「出会い系サイトに登録しているのか?」
 吃驚したように竜二が言う。
「馬鹿ねぇ、お仕事よ。お・し・ご・と。本当に頭が固いんだから」
 優子によると出会い系サイトでは従来の出会い系だけではなく、サークル勧誘を装った様々な薬物が出回っているという事である。
「未だに『痩せる薬』とか『勉強が頭に入りやすくなる薬』とかとんでもない効果を信じて薬物に手を出す子もいるのよ。信じられる?」
「麻薬と言えばヤクザモンの資金源の代表格やな。最近はヤクザモンも発砲は控えとるが、イザという時は『コイツ』は頼りになるで」と虎治がトレンチコートの上から脇に吊るした銃の膨らみを叩く。
「竜はチャカはどうや? 持っとるか?」
「テッポーなんか持つかっ!」
「なんや、殴りあい専門か。殴り合いは嫌いやないけど、やっぱチャカはええで。硝煙の香りに銃声、手に来る反動‥‥最高や」
 どこかうっとりとした口調で語る虎治。
「うわぁ、ガンマニア? 竜二、凄いのと組んだわね」と竜二の銃嫌いを知っている優子が言う。
「‥‥この巡回が終わったら他のヤツに『絶対』替えてもらう」
 不機嫌そうに言う竜二。
 そんな事を聞いちゃいない虎治は得々と雅也相手に銃講議をしている。

(「どうしよう?」)
 臼井から貰った名前も書いていない小さなカプセル。
「3錠で1000円?」
「高いと思うかも知れないけど海外では認可されている薬で、効果はばっちりですよ」
 日本では本当はまだ許可されていない薬なので、パッケージも何もないのだ。と言う。
「普通に『疲れた』とか『テンションを上げたい』って思った時、健康ドリンクと変わらない感覚で飲めばいいんですよ」
 健康ドリンクだと親父臭いけど、サプリなら人前で飲んでも格好悪くないですよ。と言う臼井の薦めで薬を買ってしまった。
 その小さなカプセルが入ったビニール袋を手の中で弄ぶ。

 どん!
 よそ見をしてた矢加部空に革ジャンを着た男がぶつかる。
 その拍子に握っていたビニール袋が手からこぼれ落ちる。
「あ、ゴメン。可愛いおじょーちゃん、大丈夫?」
「竜、ドン臭いやっちゃな。何やってるんや?」
 トレンチコートを着たサングラスの男が革ジャン男に突っ込む。
 いつもなら「なにすんのよ!」と食って掛かって行く所だが、見るからに胡散臭い。
 ついでに連れている小柄なオカマみないな男も。
 こんなのは刑事かヤクザぐらいである。
「あら、空ちゃんじゃない?」
「げっ! 大崎」
 顔見知りの生活安全課の大崎だった。
 踵を返して逃げようとする矢加部空を羽交い締めにする優子。
「放せよ! ババァ!」

 ゴッ!
 にっこり笑顔を浮かべたまま矢加部空に頭突きを食らわす優子。
「ここの安全課はすげぇな」
 あっけに取られる虎治。
「こいつは特別だ」と竜二。
「何よ、手を出していないでしょ。 それに高槻ちゃんもぼやっとして見てないで、ちゃっちゃと保護する」
「ん? コレ、なんや?」
「見るからに怪しいカプセルだな」
 矢加部空が落したビニール袋を拾う虎治と竜二。
「‥‥‥ねぇ、空ちゃん。今日の事、学校と御両親には黙っておいてあげるから、このお薬何処で手に入れたか教えてくれない?」
 雅也の腕の中でバタバタ暴れる矢加部空に言う優子の笑顔は胡散臭い程優しかった。

「いーのかよ。あの娘を返しちゃって」と竜二。
「いーのよ。あの子、常連さんだから。溜り場も家も学校もバッチリよ」と優子。
「それよりあの子が言っていたカフェなのよ。あたしが行こうと思っていたのは」
「かぁ‥‥その店は銀龍会の舎弟企業だぞ。お前、署内回覧見なかったのかよ?」と竜二。
「あたし『それ行け、お巡りさん』しか見ないもの」
「『それ行け、お巡りさん』?」と虎治。
「山の手署の署内回覧に載っている四コマ漫画です」と雅也が説明する。
「増々安全課には勿体無いネエちゃんやな」
「ありがとう♪ でも煽てても何も出ないし、褒め言葉よりプレゼントの方が嬉しいから」と優子。
「プレゼントねぇ‥‥‥銀龍会なら俺の情報屋が何か知っているかもしれへんな」と虎治。

 ***

「へぇ‥‥異動になった。とは聞いていたが、本当に山の手署の『暴れ竜』と一緒とはね。凄いコンビだな」と情報屋『大地』は感想を言う。
「俺って、そんなに有名?」と竜二。
「『高村課長の血管が切れる』のが先か『懲戒免職を食らう』のが先かってな」
「‥‥銀龍会の『ヘヴンズ・カフェ』って店、知っとるか?」
「ああ、何時も赤いアロハを着ている鬼塚って言う間抜けな下っ端が『薬』を卸している所だろう?」と大地が言う。
 大地の左手の上に煙草を1箱置く虎治。
 ゆっくりと重みを確かめた後、ポケットに煙草を仕舞う大地。
「そこの店長の勇って奴が『売り物』に手を着けた上に、かなり前から横流しをしていたんだが‥鬼塚についにバレて今日、明日中に季節外れの海水浴に連れて行かれるらしいって話だぜ」
「随分、急だな」と竜二。
「『暴れ竜』に『ぶっ壊しの虎』、お前らが組むって言う噂は派手に流れたからな。ただでさえ取締が厳しいのに、お前らは石橋を叩き壊すのが趣味だろう?」
 にやりと笑う大地だった。


●叩いて砕いてコナゴナ?
「『責任は俺が取る。やりたいようにやれ』か、課長のお墨付きも貰ったことだし派手に行きましょうか♪」
 ボキボキと指を鳴らす竜二。
「高村課長は『やりすぎるな』とも言っていましたよ」と雅也。
「んな事言っていたかぁ? って言うか‥‥なんでお前らがいるんだ!!」
 竜二の指差す先にはコンビの虎治は兎も角としても優子と雅也までいる。
「え〜? だってぇ竜二だけじゃあ心配だしぃ。ヘヴンズ・カフェに出入りしている子供達がぁ危険かもしれないし〜、それにぃ刑事課には女の子がいないしぃ〜」
「取敢えずその馬鹿っぽい喋りは何とかならんか? 気が抜ける」と虎治。
「え〜? あたしぃ、ガラ捕り(逮捕)の時はぁいつもこうなの♪ うふっ☆」と優子。
「なんでも以前『素』で行った時ヤクザのイロと間違われたそうで‥‥」
「「ああ‥‥」」
 雅也の説明に納得する竜二と虎治。
「ちょっと何でソコで納得するのよ!」
 文句を言う優子。

 ***

「いらっしゃいませ〜♪ 何名様ですか?」
 アラビアのお姫様風衣装を着た臼井が愛想よく竜二らを出迎える。
「ん〜、残念。お客さんじゃあないんだ。警察♪ 全員動かないで」
「薬事法違反や、コレ、家宅捜索の令状、こっちは逮捕状」
 裁判所からの書類を提示する虎治。
「警察? ウチは合法サプリしか‥‥きゃあ!」
 虎治に押され、転びそうになる臼井。
「虎、女の子には優しくしてやれよ」と竜二。
 ふん! と馬鹿にしたように鼻で笑う虎治。
「たっく、本当に『ゴリラ』っていう渾名がぴったりだよ。『臼井由梨』さんだよね。お嬢さんにも逮捕状出ているよ。ゆっくり取調室で夜明けのコーヒーをサービスしてあげるから安心していいよ♪」と竜二。

 店頭が騒がしい頃、ヘヴン・カフェの従業員ロッカー室。
 店長を蹴り上げる鬼塚。
 その衝撃でガラガラとバケツが床に転がっていく。
「勇、ヤクの横流しとは恐れ入ったぜ‥‥手前ぇ舐めたマネしくさった礼はたっぷりしてやるぜ」
 ボキリと靴裏に肋骨の砕ける感触を楽しむ鬼塚。

 パイソンを構え、ロッカー室に飛び込む虎治。
「動くな! おんどりゃ! 警察や!」
 銃口が鬼塚を狙う。
「はっ! チャカが怖くてヤクザが出来るか! このもやしもんが!!」
 鬼塚が踏みつけていた店長を立たせ、盾にする。
「人質なんて無駄やで! 書類にとっくにくたばってたとすればいいんや」
「はっ! 今時の警察は脳味噌がないんだな。死ぬ前に銃を撃たれたか、死んでから打ち込まれたかは、今は簡単に判るんだぜ。第一、俺は素手だぜ? もやし野郎」
 そのまま虎治に向かって店長を突き飛ばす。
 店長を避けた弾みに銃口が反れた所に鬼塚のパンチが虎治の顎に当たり吹っ飛ばされる虎治。
「なんだ。意外と体力がないんだな」と竜二。
「阿呆、あの熊みたいにデカイ男にどないしろってんだ」
 ぷるぷると頭を振りながら立ち上がる虎治。
「こういう時は俺の出番ってか?」
「選手交代って訳だ」とあからさまに馬鹿にした態度の鬼塚。
「山椒は小粒でピリリと辛いってね」
 鬼塚の拳を避け、懐にボディブローを食らわす竜二。
「俺は許せない奴をこうやって思いきり殴りたいからテッポーは持たないことにしてるんだ‥‥よっ!」
 フックから再びブローを狙う。
 だが体格差がありすぎる為か、竜二の拳はヒットするが余り効果が上がらない。
「思いっきり殴りたいか‥‥ま、一理あるな」
 いつの間にか鬼塚の後ろに回った虎治。
「知っているか? 銃にはこういう使い方もあるのを!」
 パイソンのグリップで鬼塚の頭を力一杯殴りつけた虎治であった。


●最凶コンビ
「ばっか、もーーーん! やりすぎるなと言っただろうが!」と高村課長の怒声が響く。
「えー? それは虎の野郎に銃の許可を出した課長のせいだと思います」と竜二。
「何言うとんのや、ヤクザモン相手に丸腰で行けるか、阿呆。それに銃は役に立ったやないか」と虎治。
 ぎゃあぎゃあと文句を言い合う竜二と虎治。
「うるさいわねぇ、アンタたち子供じゃないんだから静かにしなさいよ! 報告書を書き間違えたじゃない!」と優子。
「まぁまぁ、優子先輩、俺が清書しておきますよ」
 しっかりと優子の手下の座に修まってしまった雅也。
「‥‥増々、胃薬が必要だな」と高村課長が胃をさする。
「大丈夫ですよ。きっと」と柊課長。
「おたくの大崎は少し変わっているが仕事ができるからいいが、あいつらと来たら‥‥仕事ばかり増やしてくれる」
 そう言って高村課長は新しい胃薬の箱を開けた。

<END>