暇潰し3アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 1Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/01〜06/03

●本文

 古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス「7(セブン)」。その店長室の椅子に座り、TVモニタに流れるワイドショー番組を見つめるのは、店長の浩介。
 放送されているのは、先日「7」で行われたヴァニシングプロの新人グループ「アルカラル・ナイト」のシークレットライブの様子‥‥ではなく、そのリーダーであるクラブ・クラウンが打ち上げの席ではしゃぎすぎ、怪我、挙げ句1週間の入院をした。と報道している。
 ――そう、ここまでは表向きの話である。

 病院に運び込まれたに冗談まじりに深酒を嗜めるマネージャーにクラウンは、
「違う‥‥‥顔は見えなかったけど、誰かに背中を押された」
 大手プロダクションの歌手やグループに嫌がらせやストーカー紛いのファンが着くの事は良くある。
 だが、それに縛られて活動制限される事は、セールス的には非常に不味いのだ。
 深酒で転倒ならば笑い話で済むが、背中を押されて怪我をしたのだ。
 立派な刑事事件である。
 ただでさえクラウンは先日不倫疑惑報道でお茶の間を賑わせ、そしてそれを払拭する意味も込めたシークレットライブであった。
 そのシークレットライブ自体は関係者の想像以上の出来で大変高い評価を得たのであった。
 それがクラウンを誹謗中傷する内容と「7」へ対しても有り難い警告の数々を綴ったFAX送信者の反感を買ったのかどうかは判らないが、クラウンが軽傷を負ったのは確かである。

「‥‥いいのか、これで?」と浩介。
「うん、とりあえずこの報道がされてからこっちに『嫌がらせ』っぽいのはないよ。あたしは『嫌がらせ』には慣れているからいいけど、エースは‥パティは、そういうのはマジ凹むから」と顔の半分を覆うサングラスと深く帽子を被ったクラブ・クラウンこと桐嶋 花梨は、包帯が巻かれた右手を軽く振って苦笑した。
「病院の方はどうしている?」
「ユリア‥‥クイーンが今ベットに入っているよ。お気に入りの研修医がいるので今日中に押し倒すんだって」
「‥‥ああ」
(「こいつら何処迄が本気か今一つ判らない‥‥否、全部ウソなのかも知れない」)
 そんな事を考え乍ら天井を見上げる浩介。

「‥‥で、態々病室を抜け出して俺になんの用だ?」と浩介。
 サングラスで隠してはいるが、クラウンの顔の右半分は大きく紫色に晴れ上がっている。
 獣人でなければ、芸能界を引退する原因にもなりかねない。
 暫く躊躇した後、
「‥‥‥キースの事なんだ。あいつ、あたしが怪我をしてから変なんだ」

 ハート・ナイトことキース・ブライアント、日本名:江戸川 騎士(ないと)はクラウンの第一発見者である。
 クラウンが落ちた場所は「7」の監視カメラの視野を大きく外れた関係者しか入らないような場所である。表を通らずそこまで辿り着くには、子供一人がようやく通れる狭い堤の上を通らなければならないのだった。
 尤もクラウンを襲った相手も獣人であれば地壁走動や瞬速縮地等を完獣化して行えば簡単である。
 もし完獣化姿を監視カメラに映ったとしても「7」のオーナー獅子頭や浩介は獣人である。
 それを証拠に警察に訴える事は出来ない。
 かえって逆にテープを処分しなくてはならない立場である。
 それを見越して揺動、犯行であればかなり用意周到の計画犯である。

「あたしの背中を押したのなんて誰でもいい。だけど‥‥それでキースが早まった事をするんじゃないかって心配なんだ」
 大きく溜息を着くクラウン。
 3日前から寮のマンションにか帰って来ないナイトの姿は何処か思いつめたように‥‥かつてチームを組んでいた時にも見せた事がない強い光が目の底に光っていた。
 少女のような外見をしているが秘めたその本質の気性の荒さはクラウンが良く知っている。
「渋谷のファッションアートに行った迄は判っているんだ」
 センター街の一角で若者相手にタトゥの彫師をしている友人を尋ねた事は判っているが、その後の足取りが杳として掴めないのであった。
「来週にはあたしも退院予定だし、そうなれば新しく出るCDの初回特典用のミニアルバムの撮影が早々に始まる。なんとか捕まえて馬鹿な事をしないように説得して欲しい」
「俺一人じゃあ限界があるな。暇を持て余している協力してくれそうな奴らを募るか‥‥」

●今回の参加者

 fa1339 亜真音ひろみ(24歳・♀・狼)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa1851 紗綾(18歳・♀・兎)
 fa2475 神代アゲハ(20歳・♂・猫)
 fa2830 七枷・伏姫(18歳・♀・狼)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3608 黒羽 上総(23歳・♂・蝙蝠)
 fa4823 榛原絢香(16歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●TheCat
「あたしはANをずっと応援してたんだ。こんなとこで挫けさせたりしないんだから!」とファン代表を自負する榛原絢香(fa4823)。
「『7』に集う者はあたしにとって家族みたいなもの、放っておけないよ」と亜真音ひろみ(fa1339)。
 浩呼び掛けに集まった一同は「7」に集合した。
「俺は関係者に話しを聞きに行こうと思っているんだが‥‥俺はANに顔を覚えて貰っているか心配なんだが」と神代アゲハ(fa2475)。
「それならアゲハさんに協力して関係者にお話を聞くね」と紗綾(fa1851)。
「俺は風間 香を張り込みたいから二人の写真はあるか?」と黒羽 上総(fa3608)。
「ナイトくんのあるよ! 前、一緒に撮ったんだよっ♪」
 シュタっ! とと嶺雅(fa1514)。が手をあげる。
 フルメイクに黒ロリゴス服姿のナイトとの2ショット写真を見せるレイ。
「ナイトが変装していた時参考になるように聞いたんだが‥‥」とクロ。
「俺はクイーンの所に行くよ。もしナイトが連絡してくるとしたら、事情や性格を考えてもクイーン以外にないだろうしな」とTyrantess(fa3596)。
「拙者はナイト殿の部屋を調べたいでござる。メモやらなにやらで行き先を推測できるものがある可能性もござろう」と七枷・伏姫(fa2830)。
「じゃあ、俺は皆が腹を減らして帰って来ていいように『7』で待機しておくか‥‥」と浩介。
 初夏のスイーツをパイと決めた浩介は、何パターンか試作品を作るのだと言う。
「店長のパイか‥‥ちょっとつまみ食いしていいかい?」とひろみ。
「あたしも参加♪」とさーや。
「ケーキプリーズっ!」とレイ。
「普通に茶をしに来た訳じゃないだろう? 先に一仕事してからだ」とクロ。

 ***

「堤と敷地の間にはフェンスがあるし『地壁走動』じゃあカメラに映らないって事は無理だよ」
 そう言って紅茶を啜るひろみ。
 用水路の堤に出入りできそうな所にはカメラを設置してある。
 VTRには出入り口を抜けるクラウンが映っていた。
「カメラの無いとこをわざわざ選んだなら『7』を良く知る人ってコトだけど?」とパイを頬張るレイ。
「スタッフからは収穫なしだ」とアゲハ。
「堤にいた野良猫から聞いた話によるとクラウンさんが落ちた側で『大きな猫が笑っていた』って。ナイトさんにもこの話をしたみたい。店長、もう一切れ頂戴」
 そう言って皿を出すアヤ。
「その猫は急に現れたって言うし‥‥『瞬速縮地』を使ったのかもよ?」
 聞き込みや調べて判った事の情報交換をしながらのティータイムである。
「‥‥パイ、美味しいね‥‥‥ナイト君、お腹空いていないかな? ナイト君にも食べさせてあげたいな‥‥」
 ぽつりとさーやが言った。

 ***

 ANの4人はマンションの一室を寮として共同生活をしていた。
 マネージャーに連れられてタイと伏姫がマンションにやってくる。
「家族同然って言っても血の繋がらない男女が一緒‥‥そっちの方が不倫よりも話題になりそうじゃねーの?」とタイ。

 きちんと整頓された部屋に一つぽつんとある机の上に写真立てが並ぶ。
 メンバーやライブで一緒になったメンバーとの写真が並ぶ中、一つだけ伏せた写真。
 表に返すと3、4歳位の少年と黒髪の女性が笑っている。
「これは‥‥」
「ナイトと‥‥ナイトのお母さん‥です‥‥」
 様子を見に来たクイーンがそう答える。
「なくなっているものは、あるのでござろうか?」と伏姫。
「携帯とか‥‥いつも‥持ち歩いている‥‥物以外‥‥ないです」
 もう少し調べると言ってナイトの部屋に残る伏姫を残して部屋を出る。
「クイーン、ナイトから本当に連絡はないのか?」
 静かに首を振るクイーン。
「ありません。定期的に‥‥携帯に‥‥電話やメールを‥入れ‥ますが‥‥着拒否‥‥している‥ようです」


●TATTO
「クロちゃんからの連絡では特に動きはないみたい」とさーや。
「じゃあ、あたしは今日は彫師さんの所に行くよ」とアヤ。
「あ、俺も変装して着いてくっ」
「タイ殿がクイーン殿から聞いた話によると彫師は『人間』との事、序に『余り人として褒められる人物ではない』との事、気をつけられよ」
 メールは収穫なしでござった。と伏姫。
「あたしも渋谷に行こうかな? 昔取った杵柄で知っている奴がまだいるといいんだけど」とひろみ。

「そうだ。今夜帰ってこなくても心配しないでね」
 出掛けにさーやがレイの頭を撫で撫でし乍言う。
「アゲハさんと聞き込みに行った後、そのまま張り込み刑事さんと化しているクロちゃんの交代をしに行くの。アンパンと珈琲牛乳を持って!」
 夜はずっと張り込みをするのだと言う。
「俺はさーやが疲れないか心配だよっ」
「ANの為だもん、徹夜ぐらい平気っ。それにクロちゃんだって疲れているはずだよ」
「安心しろ、嶺雅。俺が責任持って無理をさせないから」とアゲハ。

 ***

 アゲハとさーやがクラウンの病室を訪ねるとクラウンは包帯が巻かれた右手でお手玉のような物を握ったり開いたりしていた。
「ああ、これ? リハビリ、一日でも早く復帰したいからね」
 そう良い乍らも時々痺れるのかお手玉を落す。
「まだ始めたばっかりだから‥‥‥大丈夫だから、ね?」
 顔を歪めるさーやの頭を左手で撫でるクラウン。
「クラウンさんは‥‥怪我させられた上にナイト君いなくて心細いと思うの‥‥怖かったね、良く頑張ったねって、あたしが抱きしめてあげなきゃいけないのに‥‥」
 自分が演奏が出来なくなったらどんなに苦しいだろう‥‥思わず涙が溢れてしまったさーや。
「あたしは平気だから‥‥」
 そう言ってもう一度さーやの頭を撫でるクラウン。

「クラウン、背中を押された時気が付いたことはあるか?」とアゲハ。
「‥‥あたしを押したのは女だと思う。香水の香りがした‥‥」
 暫く悩んだ挙句、クラウンはこう言った。
「ライブに来た関係者風間さんの奥さんが同じ香水を使っていた‥‥」
「その事ナイト君に言ったの?」
「言わないよ。もしあたしを押したのが風間さんの奥さんだとしたら、あたしの軽はずみな行動が彼女を傷つけたんだ。その責任は取らなきゃならない」
「やっぱりナイト君‥‥奥さんの所に行ったのかな?」

 ***

「キース、来ないよ?」と男(彫師)が答える。
「あたし、花梨さんからこの店にキースが来たって聞いたんです」とアヤが尋ねる。
「花梨が? あんた、あいつの何?」
「彼女です。行方捜しているんです」
 それを聞いて笑い出す男。
「それはあんたの勘違いだ。もし『した』からとか言うんだったら、そいつはお遊びだぜ。『彼氏』の俺が謝るよ」
 男は、にやにや笑いながらアヤに言う。
「キースがホモな訳ないでしょう! あんたこそ勘違いよ」
 プンプンと怒るアヤを横目に男がレイの方に向き直る。
「あんた、どっかで見たことあるんだよね‥‥どっかで会った?」
「初めてだと思いますけど?」
「ふーん? あんたもタトゥ入れて見ないか? 俺の仕事は綺麗で速いぜ?」
「ドサクサに紛れて嶺雅さんにまでちょっかいを出す気?」
 うっかり口を滑らすアヤ。
「嶺雅? ああ、なるほどね! へぇ〜、信用していなかったけどあいつの言うこと本当だったんだなぁ」
「やっぱりここに来たんだね。ナイトくんに刺青したの? どんな話した? どこか行くとか言ってなかった?」
 矢継ぎ早に質問をするレイの迫力に面食らう男。
「おいおい、何怒ってんだよ? タトゥをするなんてミュージシャン志望‥‥特にロックとかやっている奴なら普通だろう?」
「やっぱり刺青をしたんだね! 詳しく話して貰うよっ!」
 レイに詰め寄られて、あっさりナイトが来た事やタトゥを彫った事を白状する男。
 そして多分近所のネットカフェにいるだろうと言う。
「嘘をついたら許さないよ」
「嘘じゃねぇよ‥‥どうしても許せない奴らがいるから、そいつらを徹底的に潰すんだって言っていたよ‥‥あいつ、ギターケース以外に持ってなかったしな」

「タトゥか‥‥タトゥは俺達獣人には入れられないのになんでだ?」
「良く勘違いされるけどタトゥを入れるのは入れられるさ。ただし皮膚代謝を考えれば長くて1ヶ月が限界だろう。超回復なんかを使えば1日で跡形なく消えるだろうからね」
 だから日焼けも出来るのは、出来るんだぞ。皆、すぐ元に戻るから気が付かないんだろうがな。と浩介が説明する。
「‥‥仲間を守れなかった自分が許せなかった。それで苦痛を伴う刺青を入れたんだと思うよ。ナイトの名をふさわしくないと恥じてさ」とひろみが言う。
「彫師の男、人間にバレるリスクがあるのにでござるか?」と伏姫。
「考えたくないけど、奥さんに近づく為‥‥人間のフリをする為とか‥‥なのかな?」


●DearMy‥‥
 印刷したネットカフェの地図の束を纏めるひろみ。
「兎に角時間が勿体無い、渋谷に行こう」とひろみ。
 風間 香は昨日アヤが訪問したことにより警戒しているのか、本日は自宅から動いていない。
「俺も渋谷に向かう」
 そう言って電話を切るとワゴンを発進させるクロ。

 待ち合わせのタワーパーキングで只クロを待つのも時間のロスだろうと、先に到着したタイはひろみと協力してサーチペンデュラムでさーやの車でカフェの絞込みを作業をする。
 待っている間に出来る事、駄目元でナイトの携帯電話に電話を掛けるさーや。
 10コールの後──、
『‥‥ハイ』
「うぇ? ナイト君! あたし、さーやだよ!」
『さーや? ‥‥ああ、さーや、お久しぶり。どうしたの?』
 どこか疲れたようなナイトの声が聞こえる。
 慌ててさーやの携帯に群がる一同。
「さーや、そのまま電話を引き伸ばして‥‥」
「『どうしたの?』じゃないよっ。急にいなくなっちゃって‥‥皆、物凄い心配しているよ。今、何処にいるの?」
 丁度クロのワゴンが到着する。
『‥‥今、渋谷。人と待ち合わせしてんだ‥‥』
「風間さんの奥さんと?」
 カマを掛けるさーや。
『‥‥そうか、さーやも風間 香に辿り着いたんだ。あの女が花梨を突き落としたんだ。そのせいで‥‥花梨はギターが弾けなくなっちまった』
「クラウンさんは一生懸命リハビリしていたよ。ギターを弾くんだって」
『そうか‥‥あいつ、そう思っているんだ。でも医者が言うには一生痺れが残るだろうって‥‥‥今、風間が付き合っている女と花梨を間違えやがって‥‥そのせいで花梨は‥‥』
「でもクラウンさんは復讐とか考えていないよ。逆にそんな事したら悲しむよ」
「さーや、替われ」
 タイが携帯を奪い取る。
「俺だ。元ヤンの癖におまえ、喧嘩の仕方って知らないのか? 殴られて殴り返すのはガキの喧嘩だ。オトナの喧嘩はそうじゃねえ。相手と同じレベルでつきあわねーで、そのまま自分たちの道を行けばいい。『どんなに邪魔したってムダだ』って行動で教えてやりゃいいんだ。相手の心を折ってやれ――その方がカッコいいと思わねーか? それに何故、手の事を諦めるんだ。クイーンだってちゃんと弾ける様になったじゃないか」とタイ。
『タイ‥‥そうか‥傷の事をクイーンが喋ったのか‥‥』
「あたしも絶対イヤ! ナイトさんが誰かを傷つけるなんて! クラウンさんを始めメンバーや皆も哀しむし‥‥何よりあたしがヤなの、そんなの!」
 アヤがタイから携帯を奪い取る。
『君‥‥』
「あたし、ANファン代表、榛原絢香! 絶対、駄目だよ! 他のファンの子だってANが戻ってくるのを待っているんだから! 4人全員揃わなきゃ、ANじゃないもん!」
「場所が判った‥‥向かうぞ。皆、そのまま話しかけろ」
「仲間を思う強い絆‥‥俺には羨ましい話だが、その想いの矛先を間違えてはいけないな」とクロが言う。
「ナイト、お前の悔しさは分かる。でもそれじゃ何も守れない、お前の行動は同じ想いを仲間にさせているんだぞ?」とひろみ。
『‥‥駄目だよ。ひろみ‥‥俺じゃあ、もう守ってやれない‥‥』

「イヤ、俺が守ってやる必要がもうないんだ‥‥」
 こつりとエレベータの壁に頭をぶつけるナイト。
「俺じゃなくって‥‥あいつらにはもう、皆がいる‥‥」
『馬鹿野郎! お前の力になれなかったっていう悲しくて悔しい想いを、皆にさせていいのか?』
『替わって、嶺雅だよっ。ナイトくんは俺にとって大事な人というか大好きな人だから無茶して欲しくないデス。ナイトくんが捕まったら嫌だし!』
「‥‥レイさん‥‥ゴメン、でも俺は‥‥」
 1Fに到着しエレベータのドアが開く。
 外に出ようとするナイトにレイが勢い良く抱き付き、そのままエレベータの床に倒れこむ。
「レイさん‥‥」
「難しいことは他の人が色々言うだろうけど、一人で何でもかんでも突っ走ちゃっダメッ! 皆心配してたんだよー?」
「ズルい、嶺雅さん。あたしも言いたい事一杯あるの!」とアヤが床に座り込むナイトに抱きつく。
「皆、心配してるよ。だから‥‥一緒に帰ろ?」とナイトに向かって手を差し出すさーや。

 ***

 パチン!
 クラウンの平手がナイトの左頬を張る。
「──キースのバカ‥‥あんた、一人じゃない。‥‥あたしらは家族だろう?」
「‥‥ゴメン、花梨‥‥」
「あんたがしっかりしなきゃ、あたしは忙しいんだよ。これ以上心配事を増やさないでよね‥‥キースのバカ‥‥‥お帰り‥‥」
 そう言って叩いた以上に強く抱きしめる。
「‥‥ゴメン、花梨、ゴメン、皆‥‥‥‥ただいま‥‥俺の家族‥‥」