ビック1アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/06〜06/10

●本文

 ――私、ロバート・スミスは、ZENZAI・CITYのネゴシエーター(交渉人)である。
 ネゴシエーターというのは、映画等では誘拐犯グループと身代金の値引き交渉から人質の安全確保など華々しいイメージを沸くのであろうが実際はそんなものばかりではなく労働者と会社側の賃金や解雇の交渉、はたまた離婚の慰謝料の交渉‥‥‥弁護士とそうやる事は変わらないのである。
 特に、そうこの閉鎖された空間であるZENZAI・CITYにおいては特に後者が主な仕事と言えよう。

 このZENZAI・CITYは月面基地のノウハウを生かし、激しい地球温暖化によって荒廃した地球において数少ない人が住める空間である。中央の行政や聖教地域が密集した地域を中心に東西南北にホワイトカラー居住区、ブルーカラー居住区、農業生産地域、リサイクル工業地域を含む工業地域が十字に広がる。
 このZENZAI・CITYの平均人口は3万人、減る事も増える事もない。出産を含めた全てがZENZAI・CITYを保つ為に管理されている人間にはとても息苦しいCITYである。
 職業もまた管理され、基本的に世襲制である。
 そう、私の父、ロジャーもネゴシエーターであった。私の母は私が気が着いた時にはこの世にはおらず老いた執事によると歌手であったと言う。
 つまり私は基本的に歌手かネゴシエーターになるのが義務づけられている。
 ただし、まれではあるがそれ以外の職業に着く人間もいる。
 才能を中央政府によって認められた子供は、それ以外の職業に着く事ができるのである。
 私の恋人メアリーのように。
 メアリーの両親は、金融ブローカーとアクチュアリーつまり、保険数理、年金数理業務のプロであった。つまりお金の数字にとても強い家系である。だが、彼女は才能を認められ、現在、私のいきつけのバーの歌手をしている。

「ロバート! このド阿呆!! 惚けてるんじゃねぇ!! さっさと『ビック1』を動かしてアレを止めろ!!」
 装甲車の上から髭面の男が吠える。

 ――装甲車の上で叫んでいるのは、私の数少ない友人でこのCITYを守る警察機構の機動隊長ジョーンズだ。彼の父親もまた機動隊長であったというが‥‥‥私に言わせればまさに適役と言えよう。彼が機動隊長でなかったらヤクザ位しか彼の職業に適するものはないだろう。
 ああ、彼の言う『ビック1』というのは、私が操作する巨大ロボットの名前である。
 何故か私の家には昔からコレ(ビック1)があった。
 私の家もまた私の父から受け継いだものであるから、このビック1もまた父のモノだったのであろう。
 特に動かしていたと言う思い出はないが、私はビック1を受け継ぎ、これを操縦する羽目になっている。
 このCITYに謎の巨大ロボットが出現し、暴れるようになってから‥‥‥。

「あの馬鹿、また韜晦してやがる。そんなに操縦するのが嫌なのか?」とジョーンズ。
「‥‥‥その‥ようです。私が‥引きずって操縦席に乗り込ませる迄‥‥‥30分も係りましたから‥‥」
 ジョーンズの隣に立つ青白い、白磁のような顏をした黒いメイド服を着た少女が立つ。
 少女はアンドロイドだった。
 ロバートが初めて倒した巨大ロボットのハッチの中で眠るようにいたのである。
 少女がアンドロイドであるというのが判っているのは、ロバートとジョーンズの前で巨大ロボットの記憶ディスクを頭部カチューシャのように見えるディスクトレイに仕舞うのを見たからである。
 ジョーンズの要望により記憶ディスクを少女は警察に提出したが解析不能ということで、再び少女の頭部に仕舞い込んでいる。遺棄物(拾得物)として引き取り手のない少女はロバートの家でメイドをしていた。
『当たり前だ。何が悲しくって30を越えた男が、狭い操縦席で叫ばなければならない!』
 外部スピーカーから不機嫌そうなロバートの声が聞こえる。

 そう、このビック1。一々リアクションをするのに叫ばなくては動かないのだ。
 走る場合や何かを握る等は何も言わないので良いのであるが、拳や蹴りを繰り出し相手を攻撃するには例えるならば『ビック1パンチ!』と叫ばなければいけないのである。
 何処かに音声認識装置が組み込まれているのかも知れない。
 知合いのDJあたりであれば楽しく自慢の巻舌で『It’s so グゥーーーーレイ、トォーーーウ! ビック1メガトン・パンチ!』と操縦してくれようものだが、このビック1は私、ロバートにしか操縦出来なかった。
 もしかしたら静脈認識か遺伝子認識装置が組み込まれているのかも知れない。
「時にティアはなんでそんなものを持っているんだ?」とジョーンズ。
「執事さんが‥ロバートを援護しろって‥‥」
 手にはロケットランチャーが握られている。
 ちなみにティアというのは、少女がロバートの所有物になった時、少女の胸元を飾るティア(涙型)のペンダントに由来してロバートが少女に与えた名前である。
「そうか、ティアは偉いな」
『そっちこそ、和んでいる場合か! 私にばかりやらせないで、自分達も自分の仕事をしろ!』


●アニメ『ビック1』
 退廃した近未来都市ZENZAI・CITYに前触れもなく現れる巨大ロボット。
 CITYを守るロバートとジョーンズ、そしてティア。

 ロバート・スミス‥‥ZENZAI・CITYのネゴシエーター。ビック1の操縦者。
  私、〜さん(ジョーンズとティアは呼び捨て)、ですます(仕事中)だ、である。
 ジョーンズ‥‥‥‥‥ロバートの友人、ZENZAI・CITYの警察官(機動隊隊長)
  俺、お前(業務中〜さん、ロバートは呼び捨て)だ、だな、だろう。
 ティア‥‥‥‥‥‥‥ロバートに拾われた少女型アンドロイド、ロバートの家のメイド。怪力。
  私、あなた、ですます。「‥‥‥」の多い言葉でゆっくり喋る。
 メアリー‥‥‥‥‥‥ロバートの恋人、ロバートの行きつけのバーの歌手。
 執事‥‥‥‥‥‥‥‥ロバートの家の寡黙な執事、ビック1のメカニック。武器通。
 DJオガサワラ‥‥‥‥ZENZAI・CITYのラジオ局のDJ。ノリノリの巻舌ボンバーヘア。
 ビック1‥‥‥‥‥‥スミス家の地下に眠る二足歩行人型巨大ロボット。
 他

●今回の参加者

 fa0588 ディノ・ストラーダ(21歳・♂・狼)
 fa2132 あずさ&お兄さん(14歳・♂・ハムスター)
 fa3800 パトリシア(14歳・♀・狼)
 fa4044 犬神 一子(39歳・♂・犬)
 fa4421 工口本屋(30歳・♂・パンダ)
 fa5367 伊藤達朗(34歳・♂・犬)
 fa5486 天羽遥(20歳・♀・鷹)
 fa5642 宇藤原イリス(13歳・♀・猫)

●リプレイ本文

●CAST
 ロバート・スミス‥ディノ・ストラーダ(fa0588)
 ビック1‥‥‥あずさ&お兄さん(fa2132)
 ティア‥‥‥‥パトリシア(fa3800)
 執事‥‥‥‥‥工口本屋(fa4421)

 ジョーンズ‥‥伊藤達朗(fa5367)
 メアリー‥‥‥天羽遥(fa5486)

 レポーター‥‥宇藤原イリス(fa5642)

 ジャック‥‥‥犬神 一子(fa4044)


●トラブルメーカー
『ハローゥ、エヴゥリ・ワン! 皆様のラジオ局ZENZAI・FMがお送りする。CITYで起りました様々な出来事を御紹介するZENZAIサテライトのお時間がやって来ました。お送りしますのは皆様のDJオガサワラ』
<番組のテーマ曲が流れる>
『さぁて早速今日の事件を報告しちゃうぞっ。まず先日逮捕され現在訴訟中のジャック被告が拘置所を脱獄、な、なんと現在逃走中との事、やるぅ♪ 凄いぞ、ジャック。1級犯罪者への道まっしぐらだな。なんでも牢獄の中でジャックは、彼の逮捕のきっかけになった我らがヒーロー、Mr.スミスを恨んでいたとの情報が入っている。うっひょう♪ 恐いねぇ。おおい、ロバート! 暗い夜道には気を着けた方が良いぞ! ちゅう所でまずは1曲目、メアリーで【螺旋の運命】』

「何が『まっしぐら』だ!」
 ジャックがラジオを地面に叩き付ける。
「おい! いたぞ!」
「クソ、しつこいポリ公め!」
 降りしきる雨の中を逃げるジャック。
 壊れたラジオは、はみ出たスピーカーから曲を流し付ける。

♪♪♪〜
 絡まる螺旋
 人は運命(さだめ)と諦め

 決められし枷を
 繋ぎ止められた時の間(はざま)で
〜♪♪♪

 ゴミの山を逃げるジャックの足下が急に崩れ、真っ暗な空洞に叫び声を上げ乍ら下に転落する。
 呻き声を上げてジャックが目を覚ます。
 強かに床に叩き付けられたようであっちこっちが痛い。
「クソ、俺ばっかり何で‥‥」
 ブツブツ文句を言い乍ら立ち上がる。
 どの位落ちたのであろうか?
「しかしこう暗くちゃ‥‥灯が欲しいぜ」

 声に応じるように何処かで発電機が回る音がして周りに灯が着く。格納庫の様な所に己が迷い込んだジャックは視線なような物を感じた気がして振り返る。
 目に飛び込んで来る巨大ロボット。
 ロボットの内部操縦席に備えられたモニタがジャックを映し出し、外部カメラが姿をトレースする。
「なんだ‥‥こいつは?」
 ジャックの口から誰に聞かせるともなく言葉が溢れる。『音声登録完了』
 大きな音を立てて操縦席の扉が開く。
 恐る恐る中を覗くジャック。
 だが、警戒心より好奇心が勝ち。操縦席に座る。
「そう言えばスミスの野郎もロボットに乗っていたな‥‥ロボット位、俺だって動かせるってぇのにあいつばかりがヒーローかよ!」
 知らぬ間にスイッチを押したのか、モニタが外部の様子を映し出す。
「こいつ‥‥動くのか?」
 恐る恐るジャックが操縦桿を握ると頭の中に不思議な事に操縦方法が浮かんで来る。
 巨大なロボットは、身体を震わせゆっくりと歩み始める。
「コイツさえあればあの野郎に一泡ふかせられる。神か悪魔か知らねえが感謝するぜ!」

 ***

 工場建設反対団体と5回目の交渉を終え帰路の途中、執事のゴーリストからロバートは恋人のメアリーがジャックに誘拐された事を知らされ、現場に直行した。
 警官隊が取り囲む廃ビルの前にロバートの愛車「ロッサ」が横付けされる。
「遅いぞ、ロバート! 『ビック1』はどうした?」と装甲車の上からジョーンズが言う。
「仕事帰りだ。それより何故、機動部隊がいる?」
「それは‥‥‥」
 ジョーンズの言葉を遮りジャックが叫ぶ。
『よく逃げずに来たな、スミス! その度胸は誉めてやるぜ!』
 ビルの壁を大きな音を立てて巨大なドリルが突き破り、巨大ロボットがその姿を現す。
「なんだ、あれは?」とロバート。
「連絡が行かなかったのか? ジャックの野郎は何処で拾ったのかデカブツを手に入れてメアリーを誘拐したんだ」
 ロッサのTV電話が鳴る。
 ティアがパネルを操作して電話に出る。
『ティア? ロバート様はどうされた? 警察から再度連絡があり、敵は巨大ロボットを所有しているとの事。直接現場に向かわれず、一度お屋敷にお戻りになられるように伝えてくれないか?』
「‥‥だ、そうです」
「もう現場に着いている。と伝えてくれ」
「判りました‥‥執事さん‥‥」
『ティア、伝えて頂かなくても十分聞こえました』
「連絡ミスだな」
「しょうがない。なんとか『交渉』で解決するか‥‥」
 残念な事にロバートはネゴシエーターにあるまじき『交渉』が苦手だった。

「ジャック、聞こえるか?! 私だ」
『充分聞こえるさ、スミス。久しぶりだな。自慢のロボットはどうした?』
「君の目的は私だろう。私がここにいると言う事はメアリーにはもう用がないだろう。速やかにメアリーを解放して欲しいものだな」
「メアリー? ああ、この女の事か?」
 ドリルになっていない片方の腕をあげる。
 そこには太いチェーンで捕われたメアリー。
『残念だがこの女は返せないな、スミス。俺は、あんたとあんたのロボットに用があるのさ。この「グレートドリラー」と共に』
「メアリー‥‥卑怯な真似を‥‥」
『卑怯で結構、お前なんぞ「ビック1」がなければなんにも出来ないのさ。そこで指をくわえて見ていろ! うらぁ!! グレーーーツッ、ドリルゥゥーー!!』
 ドリルを激しく回転させ、ビルを壊しはじめるグレートドリラー。
 破片がバラバラと飛んで来る。
「全員、一斉砲火‥‥‥イヤ待て、人質に当る!」
 右手を上げ砲火を指示しかけたジョーンズが思いとどまる。
「ロバート、なんとかならないのか!」
「こんな時ビック1があれば‥‥!」

 ***

 スミス邸の地下深くあるビック1の格納庫。
 何時出撃して良いようにゴーリストはパイルバンカーシステム(杭打ち機構)の最終チェックを行い、仕上げのワックスを塗っていた。
「ロバート様はお戻りになられぬとなればお前も用済か‥‥」
 突如、ビック1の両目が光り、エンジンがかかる。
 ゆっくりと歩き出すビック1。
「こ、これは‥‥ロバート様がビック1を求めていらっしゃるのか?」
『ウォオォ‥‥‥』
 排気孔の唸りがビック1の咆哮に聞こえる。
「ビック1! ロバート様を頼んだぞ!」

 ***

「ハーハッハッハ! むだ、ムダ、無駄だ! 誰もグレートドリラーは止められねぇぜ!」
 警察が銃口を向ける度にメアリーの小さい身体を盾にするジャック。
 ロッサのトランクからロケットランチャーを取り出し、狙いを定めるティア。
「‥‥撃ちます‥‥‥」
「止めろ、メアリーに当ったらどうする?」
「‥壊れたら‥‥修理します」
「メアリーは人間だ。簡単に直る機械とは違う。修理なんか出来ない。壊れたら死んでしまう」とロバート。
「人間は‥壊れても、修理‥‥出来ない‥‥死ぬ?」
 そんなやりとりの中、ZENZAI・FMやらZENZAI・TVと書かれたマスコミの車が止まる。
 バラバラとクルーが出て来て、勝手に取材を始める。
「CITYで起りました様々な出来事を御紹介するZENZAIサテライト。現在再開発地域からお伝えしております。お昼に突如CITYに現れた巨大なドリルを着けたロボット。なんとこれを操縦するのはかの逃亡犯、ジャック。営業準備中のバーに押し入り、歌手のメアリー嬢を人質に篭城。警官隊と睨み合いをしておりましたがネゴシエーターのMr.スミスとの交渉が決裂した模様です。現在、巨大ロボットは暴れております」
 大きなマイクを持ったレポーターが目敏くロバートを見つけ、インタビューを行うべく突撃を試みる。
「Mr.スミス、交渉が決裂したそうですが今の御心境は? 人質になったメアリー嬢の事はどう思われますか?」
「誰か、こいつらを摘み出せ! 下手にチョロチョロされて踏み潰されたら大問題だ」とジョーンズが部下に命ずる。
「只今、我々は警官隊に『安全確保』と言う名目で現場から排除されようとしております。ジョーンズ隊長! 我々、レポーターは市民に真実を伝えるべく‥‥」
「誰だ、奴らに情報を流したのは?」と苛ついたようにジョーンズが文句を言う。
「知らないのか? レポーター達は警察無線を傍受しているぞ」とロバート。
 その割には今日はゆっくり出勤だったのは単に誘拐されたメアリーの映像が中々入手出来なかったからである。この手の事件はか弱い被害者の写真が視聴率アップの重要なアイテムなのである。
「そこのお嬢さん、我々レポーターは‥‥常に政府や警察に対し‥‥」
 不思議な生き物を見たように警官達に連れて行かれるレポーターを見るティア。
「奴らは常に政府と警察機構に対し苦情を言うのが仕事なんだ」
「‥‥‥変わった仕事ですね‥‥」

 ゴゴゴ‥‥‥
 何処かで雷鳴のような音がする。
「雷か?」
 地面に落ちていた缶が転がる。
「イヤ、地面からだ!」
「今度はなんだ!」
 大量の土砂を巻き上げ、ビック1がグレートドリラーの前に出没する。
「「「「ビック1!」」」」
『やぁっとお出ましか、一気にカタを着けてやるぜ! いっけぇ、グレートドリラー!』
 重量級のグレートドリラーが音を立てて進む。
 ロバートはロッサに飛び乗り、ビック1に車を走らせる。
 ビック1の脚部が開き、ロッサを収納。
 ビック1の胸部に吸い上げられたオープンカーの座席がそのままビック1の操縦席に変わる。
 ロバートを取り巻くように外部モニタがONになり、操縦桿が座席の前に競り上がって来る。
「さて紳士淑女の諸君、そろそろ断罪の時間だ。準備は宜しいか?」
 ロバートは手袋を羽目、操縦桿を握る。

『さあジャック、ビック1も来たぞ。役者は揃った。メアリーを放して貰おうか』
『放すさ、そぅら』
「きゃああああっ!」
 握っていたメアリーの鎖を放すブレートドリラー。落下するメアリー。
 落ちるメアリーに向かって全力で走るティア。
 瓦礫を踏み台に空中でメアリーをキャッチするティア。
「ティア、助かったわ‥‥ありがとう」
「人間は‥‥壊れても、修理‥‥出来ない‥ティア‥‥メアリーの歌、好き‥です。壊れたら‥歌聞けない‥‥」
「それでもいいわ。ありがとう、ティア」

『いよいよ以って見下げた奴、許さん! ビック1パァーーンチ!』
『ケッ! そんなへなチョコが当るかよ! パンチってぇのはこういうのを言うんだよ! グレーーートッパァーーーンチ!』
 ビック1とグレートドリラーの正拳同士がぶつかり激しい衝撃を産む。
「ほぉ、珍しく気合いが入っているな。流石のロバートも恋人の一大事には本気になるんだな」
 何処か楽しそうなジョーンズ。
「全員、ビック1の可動範囲から部隊を下がらせろ! 巻き添えを食うのはバカらしいからな」
 ドリルがビック1の装甲を傷つけ、火花が散る。
「ロバート!」
 メアリーの悲鳴が響く。
 2体の足下に警戒線を越えたティアが立つ。
 静かにグレートドリラーのドリルに向かって構えたロケットランチャーのトリガーを引く。
 1直線にドリルを貫く砲弾。
 軋みを立て止まるドリル。
『おおおおっ!!』
 ロバートの雄叫びに併せグレートドリラーを押し返すビック1。
『これで終わりだ! サドンストライィィック!』
 スピードの乗ったビック1は打撃と同時にパイルバンカーシステムが杭をグレートドリラーに打込む。
 串刺しにされ軋みを上げるグレートドリラー、咆哮を上げるビック1。
 杭が引き戻されると同時に、どうっと倒れるグレートドリラー。
 ビック1の胸部ハッチが開き、姿を見せるロバート。
 胸元から深紅の薔薇を抜きさりグレートドリラーに投げる。
「私に出会った不幸を呪い給え」
 こうしてその獰猛な迄の勇姿をグレートドリラーは停止した。

 2人の警官に抱きかかえられるように連行されるジャック。
「クソッ、この気障野郎! なぁにが『私に出会った不幸』だ。これで勝ったと思うなよ!!」
「詳しい事は署の方でたっぷり聞いてやるからな。色々とお前さんには聞く事がありそうだ」とジョーンズがにやりと笑う。
「ロバート‥‥」
 警官に連れられてやって来たメアリーがロバートに抱き着く。
「メアリー、無事で良かった」
「‥‥‥」
 無言でロバートとメアリーを見つめるティア、何所となく不機嫌そうに見えたジョーンズが声を掛ける。
「どうした、ティア?」
「‥‥なんでもありません‥‥」

 真っ黒に塗られカブト虫のような印象の車がロバートとメアリーの前で止まる。
「ロバート様、お楽しみの所申し訳ございません。お時間となりましたのでお迎えに上がりました」
 ゴーリストが恭しく頭を下げる。
「お迎えみたいね」と苦笑するメアリー。
「8時より市長主催の慈善パーティに出席の予定でございます。そろそろ屋敷にお戻り頂けませんと遅刻なされるかと」
 ロバートが文句を言う前にメアリーがロバートの頬にキスをする。
「‥‥私も店に出なきゃ。ジョーンズさん、店迄送って下さる? またね、ロバート。たまには執事さんやティアも一緒に来てね♪」
 ジョーンズの運転する車がロバート達の前を通り過ぎる。
「ロバート様、そろそろ‥‥」
「‥‥‥判っている。だから嫌なんだ!」
 八つ当たりでビック1の脚を蹴るロバート。

<エンドロール>
♪♪♪〜
 囚われし 人の子
 時を刻んでも
(スローメロディ、オルゴールの乾いた響き)

『見えない意図に 操られ堕ちていく』
(スポットライトに浮かび上がる床に落ちた1輪の赤いバラ。メアリーの声が余韻を残し、エンディングアニメーションが終了した)
〜♪♪♪