King qualification 歌アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 7.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/06〜06/10

●本文

 暗いTOMI−TVの試写室の中、スクリーンに映し出される草原。
 今年春に終了した子供向けアニメ「魔王子」の2ndシーズン「King qualification(王の資格)」のエンディングアニメーション(DVD用特別ロングバーション)である。

【僕らの旅−チャレンジャー−】アルカラル・ナイト『』コーラス
♪♪♪〜
<草原に座る緑の髪の少年王、風がそのやや長い髪を揺らす>
(ポコポコと風に揺れ鳴っているようなバンブーチャイムの柔らかい音とピアノの静かなメロディで始まったイントロ。キーボードとシャラシャラと鳴る風を思わせるウィンドチャイムが重なり爽やかなメロディを奏でる)

 できっこない そうあなたは言う
 馬鹿げた事だって 初めから決めつける
(静かなゆっくりとしたメロディに男女の苦悩を込めたハーモニーが重なる)

 下らない事 そうかも知れない
 無駄な事 そうかも知れない
<膝を抱え俯く少年王>

 でも僕らは それでも進んで行く
 僕らには 今、それしか出来ないから
<旅の仲間が一人、また一人と少年王の側に現れ、横に座っていく>

 見返りが欲しい訳じゃない
 僕らは英雄じゃないから
<1話目のダイジェスト1>

 欲しい物は 存在理由
 僕らが ここにいるという印し(あかし)
<顔をふとあげる少年王>

 誉めて欲しい訳じゃない 『僕らは良(い)い子じゃないから』
<少年王が見つめる先に一際輝く星>

 訳知り顔の おとな達
 あなたと離れ
 僕らは 僕らの道を行く
<周りを囲む仲間に気が着く少年王、笑う仲間達>

 無謀な賭 そうかも知れない
 失敗するかも知れない
<手を差し伸べる親友の少年>

(スネア2拍)
<手を握り、少年王を立ち上がらせる少年>
 僕らは信じているから
 失敗(リスク)なんて恐くないよ
 僕らにしか 出来ない旅だから
(”僕ら”の決心を高々と朗々と響くギターとベースの響き)
<旅の仲間達のアップ>

 僕らは行く 『高く低く 翼広げて』 飛ぶ鳥のように
 吹く風のように 『雲のように 流れて行く』 止められないよ
 この世界を 『何処迄も 遠く‥‥』 望むままに
<仲間に背中を叩かれ、苦笑する少年王>

 この世界の果て迄も‥‥‥ 風のように 望むままに‥‥
<後ろを振り返らず立ち去る少年王達>

(2拍休符)

 誰にも‥‥‥止められない‥‥よ‥‥‥
<少年王達が立ち去った後、小さな花が風に揺られている>
(爽やかな早春に吹き渡るようなピアノの響きの中クラウンの呟くような台詞が余韻を残し、ピアノのメロディ、ウィンドチャイムと共に消えて行く。バンブーチャイムのポコポコとした音だけが静かに残る)
〜♪♪♪


 1stシーズンは人間の子供とモンスター達の交流を描いたほのぼのアニメであったが、2ndシーズンは時代を500年遡ってモンスター達の王国エム・ランドを中心にした本格RPGアニメの放映を予定していた。
 予定外だったのは当初決まっていた挿入歌とEDを歌う事になっていたヴァニプロ所属の新人グループアルカラル・ナイトのスキャンダルである。
 これにスポンサーの製菓会社が彼等を採用する事に難色を示したのである。
 元々OP主題歌のみの募集を考えていたが、急遽、EDと挿入歌もオファーが流れたのだ。


●本格RPGアニメ「King qualification(王の資格)」のイメージソング募集
 募集概要:OP・ED・アクションシーンで使用する挿入歌
 参加資格:グループを問わず、ソロ(奏者、歌手のみ)参加も可能
 投稿条件:オリジナル曲のみ受付、インストゥルメンタルも
 その他:メディア(CD、DVD、スマートメディア、SD)による投稿、
     及び弊社指定URLより申し込み、指定アドレスに所定フォームに従って投稿のみ受付。
     最終審査に残った方のみスポンサーを前にプレゼンテーションを行って頂きます。

 尚、スポンサーを前に演奏は予定しておりませんが、制作発表会場にてマスコミ各社を前に演奏をして頂く場合もありますのでご了承下さい。


●「King qualification(王の資格)」あらすじ
 モンスターの王国エム・ランドに突如襲い掛かった病魔のような「悪しきもの」。
 その正体、誰にも判らず、ただ心に闇よりも暗いシミのようにその魔物の心に悪しきものが住み着く。
 捕り憑かれたもの、その心だけではなく、姿、魔力も全て変わる。
 全てを憎み、全てを恨み、全てを破壊せずにいられず‥‥‥エム・ランドは混乱を極めていた。
 その悪しきものを退ける為に北方に住む神族より天啓が下る。
 選ばれし少年達は集い、それを退ける力を得る為に旅を続ける。
 一人は「全てを与えられ、祝福されし者」少年王パンナドー、
 一人は「渾沌と闇、雪と氷の王女」ギュンタージュ、
 一人は「浄化の炎と踏み締める大地、金の王子」イフリートのグフター、
 一人は「彷徨える無垢なる者」人間のクリストファー、
 一人は「愚かなる道化」妖精マリブ。


「絵柄が3頭身やら4頭身のほのぼの。内容がハードな正統派ファンタジー‥‥だがゲーム化を想定している分、曲は軽快なPOPロックとかが良いだろうな」
「そうですね。前任も曲はスポンサーから好評でしたから‥‥まあ、なんにせよ。スポンサーを納得出来るものが来ると良いですね」
「全くだ」

●今回の参加者

 fa0034 紅 勇花(17歳・♀・兎)
 fa0877 ベス(16歳・♀・鷹)
 fa0921 笹木 詠子(29歳・♀・パンダ)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa5475 日向葵(21歳・♀・蝙蝠)
 fa5483 春野幸香(21歳・♀・狸)
 fa5541 白楽鈴(25歳・♀・狐)
 fa5703 茉莉枝(19歳・♀・竜)

●リプレイ本文

●紅 勇花(fa0034)
・挿入歌【Ray】
(「うわ、あちゃ〜っ。滅茶滅茶苦手な雰囲気だよ!」)
 ドアのノックして会議室の中に入った勇花は思わず天井を見たくなる。
 簡素な会議室の中横一列にきちんとダークスーツを着たサラリーマンがずらりと並んでいる。
 だが勇花とてプロである。
 相手が工場で量産されたようなサラリーマン軍団であろうが自分の歌をアピールしろというのならするだけである。

♪♪♪〜
(ドラムの激しい乱打からいきなりトップスピードへとなる。ぐいぐいと聞くものを引き付ける激しいメロディは臨場感溢れる)

 終わりなき闇の中 あても無く彷徨い
 明日も無き心はそれも同じ闇の中‥‥
 果てしなき絶望は とめどなき憎しみ
 「何もかも壊れてしまえ」‥‥全てを呪って‥‥

 嗚呼‥‥あの闇の向こうへと‥‥光よ届け‥‥
 嗚呼、鎖断ち切れと願い込めて 解き放つ‥‥!

 今、光を剣に変え 迫る闇を払う
 絶望と悲劇の環を繰り返さぬために
 思い出せ、始まりの刻‥‥希望と光の記憶
 闇を照らす最後の光、二度と失くさぬように‥‥!

(更に激しさは増しているメロディは叩きつけるような勢いの音でフィニッシュを迎える)
〜♪♪♪

 けっして狭くない会議室の中にスピード感溢れるメタルの曲が力強く流れる。
「アクションシーンという事で、スピードと力強さを最優先した曲にしてみました」と勇花。
「うん、臨場感もあるし曲も声もいいね。ただ‥‥」
「ただ?」
 プロデューサーの言葉に眉を顰める勇花。
「番組の内容は『勧善懲悪』だ。今流行の『悪にも言い分がある』そんなものじゃない。悪は悪、倒されるべきもの。つまり『果てしなき絶望』から『‥‥全てを呪って‥‥』の歌詞が番組としては望ましくない。とても残念だが今回、君の曲は不採用だ」とプロデューサーは勇花に伝えた。


●ベス(fa0877)
・OP曲【Destination!】
♪♪♪〜
 Destination! 伝説の地を探して

 新しい出逢い旅立ちの予感
 震える胸に火を付けたら飛び出そう道は星と風に聞いて
 Destination! どこかにある伝説の地探し

 長く暗いトンネル抜けた先に
 Destination! 求めるものがあるさ

 だけどそこで終わりじゃない
 僕たちのゴールはそこから変わる

 新しいDestinationへ!
〜♪♪♪

 会議室の中に流れる曲はノリの良いアップテンポのポップスロック。明るく躍動感のある曲である。
「アイドル兼女優のベスです! 今日はオープニング曲への応募です。よろしくお願いします!」
 ベスがぺこりと頭を下げる。
「作詞はベス君のようだが、曲は『EtR』?」
「はい、あたしの所属する『EARtoREMAIN』の皆と作った曲を持って来ました♪」
 ひそひそと相談を始める制作側に気が付かない様子で言葉を続けるベス。
「あの、差し出がましいようですが、ANさんの曲、エンディングが他の曲に決まったとしてもゲームの曲として使ったりは出来ないでしょうか?」
 ベスの言葉に顔を上げるプロデューサー。
「このままお倉入りになるのはもったいない、いい曲だと思うんです」
「‥‥その辺は君の心配するところではないと思うが、貴重な意見をありがとう。さて『君達』の曲だが残念ながら不採用だ」とプロデューサー。
「こちらも事前に言わなかったのが悪いんだが、今回の契約はあくまでも個別であって、第3者の関わるグループではないんだ。電波に乗らないライブハウスなどの限られた状況であるのならば採用されるだろうが、残念ながら番組では使用できないな」とプロデューサーは残念そうに言った。


●笹木 詠子(fa0921)
・OP曲【King qualification】
♪♪♪〜
 吹き荒ぶ風に 消える心の灯火(ともしび)
 立ち上がれ、叫べ 取り戻せその手で

 汚(けが)された魂に 必要なのは薬じゃなく
 過ち認める強さと 全てを許す優しさ

 力だけでは 行き詰まってしまうよ
 手を差し伸べる 友だって ほらすぐ傍に

 恐れるな闇を 握り締めろ勇気
 振り払え、護れ そう仲間と共に

 傷ついた魂は 簡単には癒せない
 忍び寄る魔の手に 疲れる事もあるね

 一人だけでは 辛いかもしれない
 だけど君には 仲間がいる 一人きりじゃない

 吹き荒ぶ風に 消える心の灯火(ともしび)
 立ち上がれ、叫べ 取り戻せその手で
 恐れるな闇を 握り締めろ勇気
 振り払え、護れ それが「王の証」
〜♪♪♪

「少年向けアニメ、主人公への応援歌といった感じかしら?」
 良く通る詠子の声が会議室に響く。
 バックに流れる曲はノリの良い典型的ヒーローアニメテーマソングである。
「曲のノリもいいし、君の言うように10代の元気な少年を意識した声も良いとは思う。実際、主人公のパンナドーは10歳だ」とプロデューサー。
「音はパソコンで作ったけど、採用ならバンドで録り直して欲しいわね。私よりも上手くアレンジ出来る人いるでしょうし」
 詠子の言葉を聞いたプロデューサーが残念そうに言う。
「残念ながら君の曲は不採用だ。OP曲と言い乍らも歌詞がEDアニメと被る内容である事が不味い。後、この選考会が終わったらそのままプレス発表だ。募集の際に『制作発表会場にてマスコミ各社を前に演奏をして頂く場合もある』という項目を君は見なかったのかい?」
「当方としてはプレス発表終了と同時に番組HPからOP曲の試聴ができるようにする予定だ。つまり悠長にアーティストを選考する時間はないと言うことだよ」


●スモーキー巻(fa3211)&茉莉枝(fa5703)
・OP曲【Way to go】
♪♪♪〜
 さあ立ち上がれ 勇気と知恵と 情熱をポケットに
 さあ歩き出せ 信じた仲間と ともに手を取り合って

 暗い空の下 膝を抱え 蹲っていても
 この世界は 何一つ 変わりはしないから

 手にした希望という名の剣 高く掲げて
 天を覆う黒い雲 吹き飛ばす風を起こせ!
 願えばどんな奇跡も起こせる そう信じて
 立ち止まらず突き進め 輝く未来目指して!

(間奏)

 その背の夢という名の翼 今広げて
 嵐さえも切り裂いて 力強く飛び立て!
 祈りはきっと力へと変わる そう信じて
 長い夜も越えてゆけ 強い想いを胸に!
〜♪♪♪

「OPと言えば番組の顔であり、何よりも親しみやすさが必要なはず。それを意識して、オーソドックスな感じの歌詞と軽快なポップロックの組み合わせをしてみました」とスモーキー。
「確かに申し込みの際のアピールにも『歌詞もファンタジー系をイメージ』とあるね。そしてサビの部分もメロディーが覚えやすく歌いやすいな‥‥君はコレを誰かに委託したかね?」とプロデューサー。
「いえ、今回の茉莉枝さんと組んだ2曲は僕が演奏しています」
 さすがにスポンサー(人間)の前では獣化したかとは聞けないし、言えもしない。
 実際、完獣化はスモーキーも考えた。
 だがプレス発表の際、曲を演奏すると言うのを思い出し、完獣化を思いとどまったのである。
「そうか、それならばいい。次はED曲だったね」

・ED曲『Under the shinning star』
♪♪♪〜
 瑠璃色に染め上げられた世界は
 僕の胸 埋め尽くすほど切なく
 知らぬ間にかじかんでいた指先
 道の先 示せないほど儚い

 それでもね あきらめきれない夢がある
 顔を上げ 闇に目を凝らしたら
 天にひとつ きらめいた星があったよ

 だから
 僕らは前に進んでいくと決めたんだ
 夜を振り払い 走り出せ
 まだ見ぬ景色に足跡を刻んでいく
 もう振り向かない 迷わない
 「Under the shinning star」

 どんなに挫けそうになっても負けないよ
 明けぬ夜はない いつの日も
 行き先照らす道標があるから
 決して譲らない 未来を
 「Under the shinning star」
〜♪♪♪

「本編では戦闘シーンも交えるため、あえて優しく一息つけるように『ほっ』と落ち着いて聞いてもらい、尚且つ希望を灯すような歌詞と曲調にすることで次回以降も心待ちにしてもらえるように‥‥それを目指しました」とヴォーカルを担当したマリー。
「チエンバロやチェレスタを使ったりと色々と凝ったメロディを作ったね。ロックバラードだがノスタルジックな雰囲気が出ていてとても良い曲だ。EDアニメとも良く合う。残っているユニットは挿入歌だったな‥‥OPとED曲は君達の曲を番組で使用させて貰おう。このまま残ってこの後の制作発表に参加してくれ」


●『Twilight』日向葵(fa5475)&春野幸香(fa5483)
・挿入歌【Fight!】
♪♪♪〜
 突き進め!
 切り開け!
 明日を(あ・す・を)!

 立ち止まっていて、何が得られるの?
 過ぎ去っていく、影だけ見つめて、
 目で追うだけじゃ何も変わらない。

 だから
 今は前を向いて進もう!
 俯いて、膝を抱えて、
 立ち止まっていたら、何も見付からないから。

 友と共にいざ進もう!
 今は剣に思いを込めて!

 友を信じていざ進もう!
 僕らはいつもひとりじゃないから!
〜♪♪♪

 力強くも軽快なリズムを刻むかと思えば、一転し静かな訴えかける様な響きに変わる曲が会議室の中に流れる。
「せっかくのチャンスだから、思い切りさせて貰ったよ。小難しい理屈より、のびのびとした主人公達を表現出来ていたら成功だと思うよ」とヴォーカルとエレキギターを担当した葵が話す。
「戦闘シーンだからといっても、殺伐としたものより、主人公達が前向きに進んでいく姿を描いた方が良いと思ったんです。主人公達が戦うのは未来を切り開く為ですから、こういう表現もあってもいいのではないでしょうか?」
 キーボードを担当したゆきかが、葵の言葉を受け、続ける。
「うん、その辺は僕らも考えているよ。実際、絵柄とも君らの音はとても合っている。実際前任者の作った曲も明るく希望に満ちた曲だったよ。まあ多少曲が荒削りに感じる部分があるが、その分ひたむきさが感じられて良いよ。君ら2名にもこの後開かれる制作発表会に参加して貰おう」

 ***

「準備が出来たら誰か呼びに来させるので、待機しておいてくれたまえ」
 そう言うと葵らを残し、ガタガタと席を立つスポンサーと制作サイドの面々。
「余り発表まで時間がありませんがコーヒーでもどうです?」
「いいですね。さすがに疲れましたしね‥‥」
 そう言いながら廊下を歩くプロデューサーらに声を掛ける白楽鈴(fa5541)。
「あの! 私、白楽鈴と言います。『King qualification』のプロデューサーさんですよね。ご相談があってきました」
「メイン声優のキャスティングはすでに決定して飛び込みは受け付けていないよ」とプロデューサー。
「ANの『僕らの旅』の事でお願いに来ました。こんな良い曲をこのまま埋もれさせてしまうんですか?」
「悪いが曲の選考会は終了してしまったよ。新しい曲もANの曲と同様いい曲だよ。じゃあ」
 鈴を軽く受け流し、そのまま進もうとする一行を遮る鈴。
「バレンタインデーにチョコを売る。これはただの商売ですか? そこに一片の愛を応援する気持も入ってないのでしょうか? 作り手は何の愛も持たず、売っているとしたら消費者からすれば悲しい事です」
「君はだいぶ失礼な事を言うね」と壮年の男がプロデューサーを抑えて、鈴に答える。
「愛する人にプレゼントをした事や貰った事はないですか? 愛する人にプレゼントをあげる事はいけない事ですか? 尊敬や思慕も愛ではないでしょうか? 音楽業界で曲をプレゼントする事は良くあると聞きます」
 一端、言葉を切る鈴。
「当人以外それをどんな気持であげたか知らないのです」
「正しくその通りだな。だが君も芸能人なら一般人の描くイメージというものが、どれほど恐ろしいものか判っているのではないかね?」
 深夜、録りが終わってスタッフも一緒にただ食事をしただけの話がパパラッチに撮影され『深夜の密会デート』に発展する事はある。
 交友関係の広い者は不誠実でとっかえひっかえあちらこちらでつまみ食いをしていると書かれる始末である。
「我々からして見れば、何が真実なのかは判らない。実際、ANは何も答えないでいるだろう。そうなると我々は今流れている噂を信じるしかない。時間が経てば噂も消えるだろうが、今このタイミングでANを採用する事は我々としては許可できない」
「‥‥そう言うことだ。さあ我々は忙しいんだ。これ以上手間を取らせないでくれ」とプロデューサーがエレベーターのボタンを押して中に入る。
「でもANの曲の良さは、一番最初に採用した皆さんが良く解っているはずですよね?」
 ドアが閉じるギリギリまで粘る鈴の声がエレベーターホールに響いた。

 ──その夜、遅く。
「え、ゲームで採用ですか?」
 TOMI−TVからの電話に驚くマネージャー。
『まあ、我々だけじゃなくスポンサーもあんなバカな噂に振り回されて「僕らの旅」を埋もれさせるのは惜しい。とは思っていたんだよ。だが非常にタイミングが悪かった。熱心なファンに感謝するんだな。ゲームの販売は夏だからその頃にはあんなバカな噂も消えるだろう』
「ありがとうございます!」
 こうして「僕らの旅」はゲームで使用されることが決定した。