姫様漫遊記 くるくる編アジア・オセアニア
種類 |
ショート
|
担当 |
有天
|
芸能 |
3Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
7.9万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
06/08〜06/12
|
●本文
●娯楽時代劇ドラマ「姫様漫遊記」
ナレーション――
『天下太平世は情け、火の元の国を東西に分けての関ヶ原の戦いも遥か昔話になってしまった江戸の世。将軍様の末の末のそのまた末の姫に「あんず姫」という姫様がおりました。
あんず姫様は大層美しく‥‥俗に言うグレイビー(great beautiful)な少女でありました。
あんず姫様の母親「かさね」は元々は庶民の出、紀州の廻船問屋舟木屋の娘であったが、見習い奉公で大奥に上がった所、将軍様のお手付きになり、目出たく姫(あんず)を授かったのでありました。
将軍様には正室との間に若宮が何人もおり、あんず姫には全くお世継ぎ騒動は関係ないので、あんず姫はすくすくと真直ぐに優しく美しい姫に育ち‥‥‥ただし、一つだけ欠点がありました。
お忍び歩きが大好きなのです。
お忍び歩きには、生まれた時から親友で舟木屋から召し上がっている「あさぎ」が必ずお伴に着いて来る。
そんなある日、立ち寄った茶屋でふと庶民に流行っている「お伊勢参り」の話を耳にした二人。
「床に伏す母上様の為にお伊勢参りに行く」と言い出したあんず姫。
「人足集めのたか」の口利きで旅回わりの一座の踊子に入り込み、一癖も二癖もある一座の一行とお伊勢様を目指す二人。
だが、路行く街道で城や江戸では判らぬ諸処の暮らしを目にするあんず姫。
己の野望の為に民を苦しめるのを目の辺りにし、伊勢への道筋、世直し旅を決めたのであった』
●姫様漫遊記 役者募集
「今回も姫様をこっそり守る若侍や忍者、盗賊、隠密やら旅芸人達が東海道を行き、途中でばったばったと悪人を倒す娯楽時代劇な訳です♪」とよしりん☆。
「悪人退治は周りの方の担当で、あんず姫はあおり専門ですね。今回は敵は『お代官様』と決まっていますが、どれだけ個性的に演じていただけるか期待です♪」
●あらすじ
あんず姫達、旅一座がやって来た宿場町。
噂によれば夜な夜な代官に若い女性が勾引(かどわか)され、不埒な振る舞いにあっていると言う。
尤もHな事に事及んでいないが、 ひたすらくるくると帯解きを一晩中されるのである。
「ある意味とても失礼な話かもしれないな」とあんず姫。
初めは屋敷の腰元や女中相手であったが、最近では何時しか被害者は町娘にも及んでいる。
中には娘を勾引す手引きをしたりする者も出て来ているのだと言うのだ。
だが、普通のお手つきとも違い、くるくるとされた娘にはそれ相当額のお手当が出る。
何ヵ月も係るような大金を手にする為か勾引されたい娘もいたりするようである。
「需要と供給‥‥余り実害がないようなので『説得』するには及ばない気がするが‥‥」と呑気なあんず姫だったが、事もあろうかあんず姫が勾引されたのである。
慌てた一行はあんず姫を取りかえすべく代官の屋敷に向かったのであった。
●CAST
あんず姫:主人公
一人称 妾、二人称 呼び捨て、口調:だ、だな、だろう、〜か? または〜じゃ、ナリ等、やや古い言葉
気が強く、サバサバした性格、お姫様なのでやや世間からズレた感覚を持っている。
旅一座では、踊子をしている。
あさぎ:あんず姫の側係で親友(幼馴染み)舟木屋の女中。
一人称 自分の名前、二人称 〜さん、口調:です、ます、ますよ、でしょうか?
あんず姫の事をあんず様と呼ぶ。
母よねは、あんず姫の母かさねの側係をしていた。
一座の中では良識派に見えるが、普通の娘。
旅一座では、几帳面な点を買われ、会計と衣装掛かりを務める。
お代官様:ある日突然「帯解き」にハマった権力者。
Hな事も嫌いな訳ではないらしいが、ひたすら「帯解き」にハマる。
「まあ1話完結だから毎回担当する役者が異なっても構わないんだが、あんずとお代官様は主役級なので誰かが演じてくれると助かる」と鬼塚。
「ギターだったら南蛮琵琶のように外来語は、なるべく使わないで下さいね♪」
「あと注意だが、決め台詞はオリジナルにしてくれ」
●リプレイ本文
●CAST
あんず姫‥‥‥‥阿野次 のもじ(fa3092)
秋津桃太郎‥‥‥青雷(fa1889)
刹那‥‥‥‥‥‥神楽(fa4956)
英之介‥‥‥‥‥瑛椰 翼(fa5442)
淳之助(淳)‥稲川ジュンコ(fa2989)
代官‥‥‥‥‥‥九条・運(fa0378)
京田与士郎‥‥‥雨堂 零慈(fa0826)
衣円巣 霧人‥‥緑川安則(fa1206)
●萌えよ、ひんぬー!
「諸君! この世界は厳しくつらい! 神の試練なのである! どのような厳しい状況でも。ほっとする瞬間がある。愛らしい娘に微笑まれる、可愛い子供が無邪気に遊ぶ姿‥‥それはこう言う‥‥『萌え』と! 萌えを大事にしていけば、必ず現世も来世も楽園へ導かれるであろう!」
その宿場町に着いた一行が一番最初に目にしたのは、橋の袂で怪し気な伴天連の様な法衣を着た男(衣円巣)とその教徒による萌絵瑠(モエルン)の布教であった。
「こんな所で布教活動とは‥‥大胆なり。しかし、見るからに怪し気だが何故こう人がいるなり」とあんず。
「それはこちらをお読みになれば判ります。お嬢様♪」
そんな一行ににっこりと微笑み乍ら布教の冊子を渡す南蛮風衣装に白い前掛け姿の娘。
「綺麗なお姉さん、この英之助とそこの茶屋でじっくりとお話しませんか?」と娘の両手をしっかりと握っている英之助。
「まあ、よろしいのですか?」
そう言って近くの茶屋に向かってしまう英之助と娘。
しっかりゾロゾロと護衛役らしい男達が後ろから着いて行くのは英之助の目には入っていないようだ。
「見るからに怪しい宗教勧誘に思いっきり引っ掛かるなんて珍しい奴だな」と桃太郎。
「英之助さんには良い薬です」と刹那。
と、誰も心配しない。
ぱらぱらと娘がくれた冊子をめくっていたあんずが思わず声を漏らす。
「おお、可愛いのじゃ〜」
先程の娘と同じ衣装を着た少女の絵が描いてある。
隣は白い上衣に紺色と太股が露な短い袴姿の少女。
頭には赤い鉢巻が結んである。
更に頁を捲ると──。
「‥‥‥これは?」
海岸に立つ身体の線も露な紺色の服を着た幼児体系の少女、胸には白い布が縫い付けられて「3年1組」と謎の言葉が書いてある。
「ああ、南蛮の水着と言う奴だな。南蛮では海水浴というのがあって、その際身につける専用の着物のような物だ」
「‥‥微妙なり。英之助の趣味とは違うと思うが、これに染まって帰って来たら縁切りじゃ」とあんず。
刹那は顔を引きつらせたまま頷く。
「たまにはあんずが暴れず呑気に休みたいもんだが、今の宿場でも一暴れしそうな予感だぜ」と桃太郎。
「別に妾が暴れておるのではないなり。桃太郎が好きで暴れておるのじゃ」
そんなあんず達を建物の影から見つめる怪しい影。
***
安宿を決め、宿の店先に大きく杏の絵が書いてある笠を下げると宿場町をぶらぶらと見て回る一行。
冷飴を飲み乍ら茶屋で一休憩する一行。
「この辺りの娘は皆、綺麗に着飾っているのですね」と刹那。
剣士の姿をしていてもそれはそれ、刹那も年頃の娘である。
それなりに気になる。
「うむ、あの者が持っていた巾着は1両はする名品じゃ。町娘が持つにしては高価な物なり」
「知らないんですか? ここら辺の娘らは‥‥」と茶屋の主、ちらりとあんずを見てから言葉を次ぐ。
「お代官様のお手付きなんですよ」
店の主によると最近代官に赴任した男、当初は真面目にお役目に着いていたが、ある日突然町娘を次々に勾引してお手付きにしていると言う。
「男の風上に置いては置けない奴だな」
「お手付きって言っても、噂によると貞操は守られているみたいなんですがね。なんでもこう、帯を解かれてくるくると一晩中独楽みたいに回されるって話ですよ。そのお手当てに高い駄賃をも貰うんでこの辺の娘らは景気が良いんですよ」と店主。
中には金目宛にわざと勾引される娘もいると言う。
「世も末だな」
「でも中には良縁が決まっていた破談になっちまって、それを儚んで死んじまった娘がいるとか言う噂も聞きますがね。‥‥まあ兎も角、お気を着けなさい。勾引される娘らは皆、あんたに似ているから」
そうあんずに向かって言う店主。
金を払い、席を立つ一行。
少し進んだ所であんずが先程の茶屋に団子を忘れたと言い出す。
「私も着いて来ましょうか?」と刹那。
「いいなり、すぐなのじゃ」
そう言って一人茶屋への道を戻るあんずを見送ったが、先程の店主の言葉が気になり後を追い掛ける一行。
店には戻っていないと言われ、先程通り過ぎた籠を思い出す。
桃太郎達の前で何処かの大きな屋敷の裏木戸に入って行く籠。
普段冷静な刹那もみすみす目の前であんずを勾引されて頭に来たのか、そのまま乗り込もうとするのを桃太郎が押しとどめる。
「代官屋敷に殴り込むってのは死罪だぜ」
「しかし、あんずさんは‥‥」
「あんずがお姫様だと言ってもそれが立証出来なきゃ将軍家を騙った罪で死罪にされかねん」
ぎりりと臍を噛む刹那。
「宿に帰り、陽が落ちるのを待って変装してくれば良い。その頃には英之助も戻っているだろうからな」
落ち枝を踏む音に振り返る桃太郎と刹那。
目の前に現れたのは笠を被った若い剣士(淳之助)。
「代官は私が倒す‥‥余計な手出しは止してもらおう」
「あんたは‥‥噂にあった自害した家族か? 俺の知合いも勾引されたんだ。乗り込むならば一緒に‥‥」
「手出し無用と言ったのだ。私はお前らを信用していない。みすみす知合いを勾引されるような輩等邪魔だ」と淳之助。
***
綺麗な着物に着替えされられ奥座敷に座らされたあんず、帯だけが3倍増しである。
座ぶとん代わりにしているのは、錦糸銀糸で彩られた高級布団。
「くっ、なんなること‥‥まさか妾自体が囚われてしまうとわ‥‥嗚呼、これも伝説の桃実姫もかくやという妾の可憐さが全ての原因、美しさは罪‥‥しかし帯が苦しいなり‥」
ふっと微笑むあんずはちっとも困っていない様子。
実の所、興味が優ったのだ。
「エロエロモエモエロエロモエモエ。萌えは世界を救うなり、百の乙女の束縛は解放され、その力により汝らを召喚せり。武留魔(ブルマ)、救苦美頭(スク水)よ!!」
隣では怪しい護摩壇を前に昼間貰った冊子と同じ絵が書いてある巻物を掲げる衣円巣。
後ろには白装束の代官が座る。
「見事なくらいの胡散臭さじゃの〜、そう思わんか?」と隣で簀巻きにされている淳之助もとい淳。
単身代官所に侵入したが、あっという間に代官に捕まったのである。
身包みを剥がされ、簀巻きにされている。
「私に触れてみろ! この場で舌噛み切って末代まで祟ってやる!」と淳。
「五月蝿いぞ、女。昔の俺ならば興味を示しただろうが、今の俺にはなんの意味もない。俺が用があるのはこっちの娘のような女だ」
「ならば、姉の加世は死なねばならなかった!」
「姉? ああ、どこかで見たことがあると思ったら先日誤って勾引した娘の姉妹か、あんな役立たずは、何もせずにそのまま代官所から放り出したぞ。そうか死んだのかあの娘‥‥」
暫く代官は考え深げに押し黙る。
「折角だ。妹のお前も大層回しにくそうだが、伊達や酔狂で九十九人回しておらぬ。このナインな娘を回し満願の暁には、余興代わりにお前も回してやろう」
にやりと笑う代官。
(「‥‥何故だ、この妙にこの会話に腹が立つのは?」)と一人心地のあんず。
「いよいよ百人達成である! 世界はこれで救われる!!」
衣円巣が叫ぶと同時に護摩壇が怪しい火柱を立てた。
困り果てた桃太郎と刹那は、偶然にも公金を横領し怪しい衣円巣に金をつぎ込む代官を見限り、老中に直訴しようとしていた京田与士郎と出会ったのは、神の思し召しかも知れない。
勧誘の美女から身包みを剥がさた英之助を引きつれ、代官所に戻ってきた桃太郎と刹那。
与士郎の手引きで草木も眠る丑三つ時、誰にも見つからず代官所の中に進入した。
「「「「そこまでだ(です)!」」」」
ガラリと襖を開けた一行。
見るからに怪しい奥座敷の様相を見て、ブツブツと現実逃避をする刹那。
「‥‥わたしは何も見ていない。何も聞いていない。目の前のことはすべて夢幻‥‥‥」
「いや〜あ、勧誘のお姉さんより恐ろしいものというのは存在するんだなぁ」とどこか感心したような英之助。
「お前ら、真面目にやれ! 代官、お前の悪事は明白だ。その女達を帰して貰おうか!」と桃太郎。
「代官、何故このような馬鹿な真似をなさるのです!」と与士郎。
「お前のような手付けには判るまい。この俺の苦しみなどを‥‥それをこの衣円巣が、萌絵瑠(モエルン)教が、娘の帯回しを百人廻す事に成功した暁には、南蛮渡来の絵巻物より伴天連の悪魔達『撫瑠魔』『救苦美頭』『盟努讃(メイドさん)』等萌えな装束をした娘達を授けてくれるのだ! それによってこの俺はこの殺伐とした心の乾きとおさらばして『萌え』な世界に浸るのだ」
代官の言い分にぽかんと口をあけるあんずと恐ろしいものを聞いたという刹那と淳。
一方、妙にうんうんと頷く桃太郎と英之助。
「確かに最近の女性は恐いからな」
「俺の場合は出る所が出ている綺麗なお姉さんがツボだが‥」とひそひそと話す。
「そしてどうせ回すのならば、楽しく回せる俺好みのナインでペタンな娘が更に良し。なのに最近の娘と来たら乳ばかりデカい!」と淳を指差す。
「今日は満願成就の目出たい日、男も女もくるくると回れ!」
「滅せよ、変態‥‥‥わたしの前に立ったのが己が不運と心得なさい」と刹那が代官に切り掛かる。
「俺の若さで代官になると言う事がどれ程の実力と努力を必要とするか、身体でしれい!」
刹那の刀を難無く弾くとひょいと帯に刀を刺すと結んだ箇所を器用に解く。
「俺の無刀取りは一味違うぞ。刀のみならず帯をも奪う!」
はらりと帯が解け、さらしに巻かれた刹那の豊満な胸元が覗く。
「‥‥見上げた変態技じゃ」とあんず。
「く〜るくるくる‥‥くるっぽー♪ くるっぽー!」
やったぜ、代官! とばかりに親指を立てる英之助。
「英之助さん、どっちの味方です!」と刹那が胸元を抑え乍ら怒る。
「くるくる‥‥羨ま‥‥あ、いや‥‥俺が相手だ」
あっさり刹那の二の舞に陥る英之助。
「‥‥ちっ! 今度は本当に男か」
つまらぬものを見た。と代官。
「だったら、脱がすな!」
怪しくイってしまった代官の目に殺気を感じる桃太郎。
「なんだ、その目は? 俺は男だ! ツルペタはあんずだろうが!」
「‥‥そうだったな。俺ともあろう者が女と男を取り違える等‥‥という訳で俺様の幸せの為に大人しく廻されろツルペタ娘!!」
ひくひくと顔を引きつらせたままのあんず。
「先刻から黙って聞いておれば、妾をナインだの、ペタンだの‥‥‥だぁれがーツルペタの幼児体型じゃ〜!!!!!」
「裁く立場でありながら馬鹿錬侘陰の淫望に吹き込まれ、罪なき女子の帯を捌く蒙昧代官! 回るは働き者の糸車と正義の風車で充分二分! 世迷言をほざくその口二度と聞けぬようしてくれる」
あんず姫は護摩壇の真下から床に長く延びている敷布をむんずと両手で掴むと勢いよく引き上げる。
「「「「熱、熱、熱い!」」」」
景気良く崩れた護摩壇から護摩札やら火の粉やら飛んでくる。わたわたと逃げる一同。
そんな中、衣円巣が大事そうに抱える経典の絵巻物に火の粉が点き、あっという間に燃え上がる。
「大事な経典が‥‥俺の大事な萌え娘が‥‥」
がっくりと膝をつく代官。
「これぞ正しく天罰じゃ!」とカラカラと笑うあんず姫。
「ぬぬぬぬ‥‥お〜の〜れ〜‥‥折角大金を巻き上げる大事な満願に‥‥このひんぬーが‥‥‥」
そう言って部屋から出て行く衣円巣。
「衣円巣が逃げるぞ!」
「誰が逃げるか! この恨み。南蛮魔道科学の粋を集めたこの2連大筒で晴らさずにいられるか!」
両肩に子供の胴回りほどの大きな大筒を担いだ衣円巣が戻ってくる。
肩から下がった紐を引くと「どかん!」と雷のような大きな音を立てて鉄球が飛び出す。
あんず姫の後ろの塀が壊れる。
「何をぼーっとしている! 『説得』するのじゃ!」
これにはさすがに慌てるあんず姫。
「ちょろちょろと‥‥」
再び大筒を構える衣円巣の足元を桃太郎が払い、与士郎の刀が大筒を支える紐を両断する。
大筒が衣円巣の足元に落ちる。
ころり‥‥大筒の中から鉄球が転がり落ちると同時に爆発を起こす大筒。
部屋中に黒煙が舞う。
煙が収まると‥‥そこにいた一同は顔は煤で真っ黒になり、髪はチリチリと焦げ、まさに爆発頭。
ばふり。言葉の代わりに煙を吐き出す衣円巣の頭に折れた梁が直撃する。
ひっくりかえった衣円巣は、油虫の様に両足を引くつかせたまま気を失った。
代官所炎上というこの一件、公儀記録には不審火とだけ記されている。
何故ならば代官を助けるべく奥の寝所に押しかけた用人の見たものは‥‥荒縄で駒のよう回されている褌一丁の代官と衣円巣、荒縄を握る淳であった。
誰もが揃って口を噤んだ。
出世を阻む恐ろしい事実には見ざる、言わざる、聞かざるが一番なのである。
唯一、これがあんず姫一行の行いによる世直しであった記録は、あんず自身の旅日記に、
「○月×日、本日の教訓『変態につける薬なし』気分が悪いので早く寝る」とだけ記されている。
尚、代官所の建て直しを含めた公務を引きついたのは与士郎であったのは別の話である。
――完。