【JB】暇だからお見合いアジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 5.5万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 06/14〜06/16

●本文

 古い運河沿いの鉄工場跡地を改装して作られた作られたライブハウス
「店長、『6月の花嫁』しましょう!」とベテランアルバイトは唐突に言った。
 お気に入りの和菓子屋の練りきりで抹茶に啜っていた店長の浩介は、危うく吐き出しそうになる。
「唐突だな‥‥‥」
 普段の彼女は「結婚って何ですか?」と言った態度であるが、先日参加したという友人の披露宴に触発されたのかも知れない。
「何かアイデアは、あるのか?」
「彼氏&彼女いない人達に集まってもらって、1日目御見合いパーティっぽく、フリートークをしてもらいます。で、気に入った相手を最終日愛の曲を相手に贈り、演奏が終わった後でOKなら歌い手に赤いバラを贈る。どうです? ロマンチックじゃありませんか?」とベテランアルバイト。
「‥‥‥それは『カップル成立』であって、結婚ではないと思うが?」と浩介。
 チチ、チッと指を振るベテランアルバイト。
「後日、ハウスで『披露宴』をして貰うんですよ〜♪」
「‥‥‥カップルが出来ないかも知れないし、カップルになったとしても都合がつかないかも知れない。恋はOKだが、結婚はまだ。とか考えないのか?」と浩介。
「そういう時は人目を忍ぶホモカップルさんとか、歳の差カップルさんや性別の逆転カップルさんとか、入籍(挙式)したけど披露宴はまだなカップルさんがいると思うんですよ!」
「‥‥‥まあ、6月はイベント企画もないし、WEAからも何か来ていた気がするし、まあ許可しよう」
「それでパーティと最終日の演奏補助は、ANのメンバーに演奏して貰うかと思っています」とベテランアルバイト。
「‥‥‥仲良しだな。あいつら、謹慎中じゃなかったのか?」と浩介。
「一日中、寮に缶詰めだったら腕が腐っちゃいますよ。それにウチとは知らない間柄じゃないし、それに彼女達の『kiss me』とかの可愛い曲ってパーティのBGMに良いとか思いません?」
 斯くしてお見合いイベントが実施される事になった。


●参加者募集!
 ライブハウスにてお見合いパーティを行います。
 ロックのビートが効いた音楽に乗ってパートナーを探してみませんか?

(スケジュール)
 初日会場:ハウスのVIPルームで立食パーティ。
  気になる相手が見つかった場合は、こっそりスタッフに連絡。
         ↓
 <準備期間>愛の告白の曲を作詞、作曲
         ↓
 最終日会場:ハウスにて意中の相手に曲を披露。
 OKならば演奏者に赤いバラを渡してカップル成立。

 *「アルカラル・ナイト」データ
 G:クラブ・クラウン、B:ハート・ナイト、Key:スペード・エース、ドラム:ダイヤ・エース

●今回の参加者

 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1376 ラシア・エルミナール(17歳・♀・蝙蝠)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa4559 (24歳・♂・豹)
 fa5316 希蝶(22歳・♂・鴉)
 fa5757 ベイル・アスト(17歳・♂・蝙蝠)

●リプレイ本文

 男女比にとてつもなく偏りが発生した今回のパーティは、ANのメンバー達も急遽参加となったが「お見合い」と言うよりも親睦会の体を用している。
 元々は恋人を見つけようという呼びかけのパーティであったが、それはそれでしょうがないと参加者達は割り切って楽しんでいるようである。
 が‥‥。
(「面白い‥‥」)
 ローストビーフをVIPルームに運んでいる浩介の視線先には、
(「どうせマネージャ辺りに言われて参加したんだろうけど‥‥私にキスしてくれたのって、その程度なの?!」)と判りやすい程不機嫌そうなクラウンに必死に侘びを言ってソーマを差し出している雨堂 零慈(fa0826)の姿がある。

「親父さん、楽しんでる?」とラシア・エルミナール(fa1376)。
「まあ、頭数揃える為だけにいるようなもんだからな。ラシアはレイと一緒に参加か?」と親父さん。
「いちおーまあ‥‥嶺雅が何かロクでもないこと考えてるみたいだからさ」とコークハイを片手ににやりと笑うラシア。
 実際、奥のほうでナイトを捕まえて質問攻めにしている嶺雅(fa1514)がいる。
「ナイトくーん! 少し前振りっ! 元気だったー?」
「レ、レイさん」
 タックルのような強烈なハグに目を点にするナイト。
「今日はナイトくんに会いに来たのデス。色々お話したかったしー、聞きたいこと山ほどあるっ!!」
 その言葉にギクリとするナイト。
「渋谷の彫師サンが彼氏って本当なの?」
「か、彼氏っ? どこからそんな話が‥‥」
 だらりと見えない部分に汗を掻くナイト。
「えー? 彫師サン本人から。俺の名前聞いた時妙な反応してた彫師サンにどんな話してたのか、とか彼氏って本当なのかとか‥‥」
 それを聞いてダラダラと汗を掻くナイト。
「あいつは元から妄想癖があって‥‥気の迷いです!!」
 ホモでも両刀でもないが、本人の意思とは別に複数の男性経験もあるナイト。
 実際身一つで飛び出した際にレイが言う男に色仕掛けで協力させたのは事実であるが、それを憧れのレイ相手にホイホイ言えるほどナイトは厚顔ではなかった。
(「死んでも絶対レイさんには言えない!!」)
 猫に睨まれた鼠ではなく、コーナーに追い詰められた猫であるが、幸いにもそんな事に気が付かない様相のレイ。
「とりあえず‥‥刺青見たーい!」
「ぎゃー!! ラシアさん、笑ってないで助けて!」
 レイに服を剥かれ掛けているナイトをいつの間にかビデオを録っているラシア。
「いや、ネタになるなぁと」
「なんのネタだよ!」


【kiss me】
 クラウンの甘い歌声に乗って、キスを恋人に強請る可愛らしい歌詞が特徴のスキャット風テクノパンク。雅楽川 陽向(fa4371)がコーラスに加わり、歌を華やかに演出する。


「‥しかし笙は女装が板に着いたな」
 チャイナメイド服姿の笙(fa4559)。
 参加女性が少ないと聞くと「念の為に準備して来て良かった」と言いながら持参した紙袋からメイド服を取り出し、控え室でしっかりメイクまで仕上げる念の入れよう。
「コスプレOKって聞いたからな‥‥二度も三度も変わらん。それより盛り上がればいいと思っている」
 その視線がしっかりタッパーを握り締めている希蝶(fa5316)を追う。
「恋愛も大事だけど、まず生命維持が最優先だし。お持ち帰り用タッパー持参!! ‥‥って言う事で、店長、余った料理全部詰めて♪」と浩介にタッパーを差し出す蝶。
「料理は沢山があるが‥‥‥‥好き嫌いはあるのか?」
 受け取ったタッパーを見つめる浩介。
「特にありませ〜ん。あ、長期保存が出来るがいいなぁ」
「これからの季節、生もの持帰りは止めた方がいいぞ?」と笙。
「大丈夫、タッパーの端っこにワサビを塗っておくから♪ こうしておくとワサビの殺菌効果でカビが生えにくいんだよ。それに刺身は生姜で煮て佃煮にするから。ご飯はドライカレーにして保存すると白いご飯より長持ちするよ」と蝶。
 生活観溢れる主婦のような会話である。
「‥‥たしかパイ生地が余っていたな。一品、肉料理を変えるか」
「店長、優しい」と瞳をキラキラさせて言う蝶。


【Love fire】ラシア・エルミナール
♪♪♪〜
 数え切れないほどに呟いた あの言葉を思い出して
 胸の奥に残ったこの想い 熱く胸を焼き焦がすよ

 たとえどんなに遠く離れても この炎は消せやしない
 決して止む事の無い嵐でも 輝き続けるLove fire!
〜♪♪♪


(「まあ元々興味本位だったから仕方あるまい」)
 赤ワインを片手に会話の相手を求めて、会場をゆっくりと見回すのはベイル・アスト(fa5757)。
 ふと見ればぽつんと一人、エースが居心地悪そうに立っている。
(「‥‥いいなぁ、皆楽しそうで‥‥でもうち、何話したら判らへんし‥‥」)
 浩介から単に演奏ではなく、パーティにも参加するように言われたANの中で唯一素直に喜んだのはエースだけである。
 だが生まれてこの方、男と差し向かって話したことがないエース。
 側にはいつも羊を守る牧羊犬のようにクイーンがいたが、今は姿が見えない。
 ナイトもクラウンも(本当の所が違っていても)楽しそうに見える。
「初めまして。折角のパーティなのにそんなに寂しそうにしているものじゃあない」
 そう言って赤ワインを差し出すベイルにびっくりするエース。
「ゴメンな。うち未成年なんよ」と苦笑する。
「そうか。ならばもし良ければ私と一緒に食事など如何かな? ‥‥薔薇を関係無しにしても、貴女を壁際の華とするには惜しい」
 ベイルの言葉に顔を赤くして答えるエース。
「‥‥うちでええの?」
「勿論だ」

「暇そうにしているね?」とライジング(カクテル)を片手にクイーンに声を掛けるスモーキー巻(fa3211)。
「‥好みの人‥いませんから‥‥それより‥‥クイーンには‥大事な‥任務‥‥エースの‥害虫取り‥‥です」
 視線の先でエースがベイルの手品を楽しそうに見ている。
「でも‥‥こう言う‥機会が‥なければ‥エースも‥‥男性に‥慣れません。‥‥‥スモーキーは‥?」
「わりと本気で期待して来たんだけど‥‥‥‥お見合いという感じでもないようだね」と苦笑する。
「‥‥ですね」と頷くクイーン。

 そしてももう一人、がっかりしているのはカジュアルなワンピースに親父さんから貰ったベレー帽姿の陽向。
(「普段若く見えるんは嬉しいけど、損な時もある言う事やな‥」)
 恨めしそうにカクテルを横目に見つつ、オレンジジュースを片手に溜息を吐く。
 先ほど蝶に「未成年者はお酒は駄目」と止められたのだ。
(「まあ、いい人やし‥‥」)
「これ美味しいよ」と甲斐甲斐しく料理を陽向に取ってくれたり、手の届かないシャンペンタワー(ノンアルコール)のグラスを取ってくれたりしている。
(「しかし年相応に見えるようになるんは、何年先やろ」)
 再び溜息を吐く陽向だった。

 こうしていつのまにやら全員参加してANの花模様を演奏があったり、各々の曲を披露したり、アレンジ競演等あり、記念撮影会ありの1日目、パーティが終了した。
 帰り際、エースがベイルを呼び止める。
「今日はありがとう。うち、とても楽しかったよ」
「貴女に歌を送る資格は、まだ私には無いだろう‥だが友好を深めた証として一つ約束しよう。君が真に必要として私の名を呼ぶのなら――私は全力でそれに答えよう」
 にっこりと微笑むベイルに顔を真っ赤に染めるエースだった。


 2日目は相手を思い、思いを形(曲)に。あるものはつたない指で楽器を練習する──
 ──そしてお待ちかねの3日目。
 本日曲を披露するのは3組だった。
 他は曲の演奏補助だったり、折角だからと観客として曲を聴きに来たのだった。


「歌はナイトくんに。出来たら、ナイトくんの一番のお友達になりたいなーって。良かったら受け取って下サイ。プレゼントした歌、今度は一緒に歌いたいネ」
 脇に立つナイトにウィンクをするレイは黒ゴシック服に、ピアノを担当する笙は一昨日に続きメイド服である。

【MOON】Vo:嶺雅 P:笙
♪♪♪〜
(ピアノ和音メロの間奏から、囁くように、だが芯の強さを感じるレイの歌声が響く)
 call me  call me
(語りかけるような歌を活かす、柔らかなアルペジオ)
 ココに、ずっとココにいるから
 何時でも俺の名前呼んで欲しい
(控え目だが確り音を支えるピアノの音はロック感を損なわず響く)
 tell me  tell me
(音階上げ、力強くレイの声に負けじと響くピアノ)

 無理した笑顔はイラナイ
 ツラい時こそ俺に全てぶつけて叫べ
(更に力強く高音で伸びていくメロディ)

(和音が一旦音を落着け、ややテンポダウン)
 一人悩む夜より
 二人語り明かす日が多くありますように
(軽く優しく添えるピアノの伴奏の後)

 Dear My Friend...
(レイの優しい歌声だけが余韻を残し、静かなピアノの終奏が続き、バラードはその優しい歌のように静かに終了した)
〜♪♪♪

 胸に挿した薔薇を取り、レイに渡すナイト。
「こんな俺で良かったら、俺こそ宜しくお願いします」
「良かった〜っ♪ 取り合えず披露宴、ナイトくんのウェディング姿よろしくねっ!」
 にっこり笑うレイに「少し早まったか?」と思うナイトだった。


「歌は店長さんとオヤジさんに贈ります♪」
 陽向の言葉に顔を見合わせる親父達。
「そんな変な顔しないで。父の日近いし、結婚式言うたら、花嫁がお世話になった父に手紙読むもんでしょう?」

【未来への詩】雅楽川 陽向
♪♪♪〜
 一人では掴めない夢も
 「ZEROから始めたら良い
 限り無い可能性がある」
 それを教えてくれた
 君となら叶えられるよ
 未来への詩(うた)
〜♪♪♪

 両親に感謝を込めて作った歌だというその曲は8ビートのポップロック。
「いい曲ですね。陽向らしい、とても素直な曲だと思います」と浩介。
 隣を見ると親父さんが目頭を押さえている。
「娘が嫁に行ったときを思い出しちまった‥‥今じゃあ、影も形もねぇちっとも可愛げがねぇババアになっちまったが‥‥」
 しみじみという親父さんに浩介は1学年年上の親父さんの娘を思い出して苦笑した。


「やっぱり一目惚れ的衝撃でもない限り、イキナリ恋愛とかはないので、お友達になれればいいなぁと。笙はある意味衝撃的だったけどね。という訳で陽向にこの曲は贈ります」と蝶。
♪♪♪〜
 何事も最初の一歩が肝心
 現状維持も大事だけど
 立止まらず
 一緒に踏み出してみたい
〜♪♪♪

「返事は今出なくていいよ。勿論『ゴメンナサイ』でもいいよ。気が向いたらメールしてくれればでいいから」
 そう言って蝶はピアノの蓋を閉じた。


「レイジがギター? あたしは?」とクラウン。
「いいんじゃないか? まだ本調子じゃないんだし」とナイト。
「クイーン‥‥どちらでも‥いいです」
 コクコクと頷くエース。
 ブツブツ文句を言うクラウンを脇の椅子に座らせ、曲はスタートする。

【none titlle】雨堂 零慈
♪♪♪〜
 貴女を護りたい ずっと護りたい
 例え災いが降りかかってても 全て自分が受け止めてやる‥‥
 貴女だけは傷つけさせない(クラウンを抱いて)貴女が大好きだから‥‥
〜♪♪♪

「ちょ、ちょっと‥‥」
「マネージャーが悪戯に入れた依頼が最初の出会いだった‥‥二度三度会う度に想いは膨らみ‥‥ようやく花梨殿に一人の男性ともらえた矢先に‥‥もう決して貴女を傷つけさせない‥‥男としてここに誓う‥‥」
 レイジがクラウンを抱きしめたまま言う。
「拙者では駄目か?」
「‥‥バカね。あたしも好きよ‥‥」
 クラウンはレイジの首にしがみついた。
 花模様のピアノバージョンが流れる。

「店長‥‥とりあえず花嫁衣裳は確保したほうがいいですよね?」とベテランアルバイターのモモが言う。
「‥‥そうだな」