−ザ・DOG−第8話アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
06/26〜06/30
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●本文
●深夜ドラマ『潜入捜査官−ザ・DOG−』最終話 第8話:「狩られる者」役者募集
<あらすじ>
潜入捜査官を纏める「犬飼(ブリーダー)」橘 正三が襲われた。
幸いにも一命を取り留める橘だったが、動揺する潜入捜査官達。
犬達の最上層部達は動きを見せない。
橘を守ろうとするもの。
「潜入捜査官を誘き寄せる罠」だとそれを反対するもの。
潜入捜査官達は、警察からも追われる非合法組織である。
周りは敵だらけで警察に保護してもらう事はできない。
見えかくれする「狼」の影‥‥‥。
調査により浮かび上がって来たのは「狼」達の組織への反逆。
「狼」は「犬飼以上」の組織上層部でなくては把握していない。
見えない敵に翻弄される犬達。
今、犬と狼の死闘が始まる。
●製作ノートより −概要−
犯罪組織撲滅の為にだけ組織されている司法の犬たち。
元死刑囚や犯罪組織に肉親を殺された家族たち等で構成されている潜入捜査官。
警察機構に属さず、逮捕権、銃の携帯等一切ない『非合法』の組織。
彼等を待っているのは、偽りの名前と裏切り者という呼び名。
誰も本当の彼等を知らず、一時的に与えられた偽りの顔、偽りの中の孤独で辛い仮の生活‥‥‥。
彼等を突き動かすのはただ一つ、「悪を許してはおけない」という捜査官達の熱い思いだけ。
自らを『使い捨ての駒』と知り、
悪行を潰す為に自らも悪を行う矛盾、
仲間を見殺しにする非情さを抱えて葛藤し乍ら戦うダークヒーロー達。
●用語
「犬(DOG)」潜入官、サポーター、リーダーによって構成される実働潜入捜査チーム(部隊)。
「実働潜入捜査官(潜入官、顎(牙))」調査対象組織に直接潜入する実働潜入捜査チームの捜査官。
「サポーター」潜入捜査チームの補助役。潜入官を助け、情報収集・解析、回収・廃棄、配車等を行う。
潜入官とは異なり、戸籍を捨てていない者もおり、定職に着いている者も多々いる。
「リーダー(ドッグヘッド)」実働潜入捜査チームを指揮。1チーム1リーダー。
「犬飼(ブリーダー)」複数の犬チームを纏める人物。複数いるらしい。
「鳩」犬飼専用の連絡用員。リーダーのみと接触。
「狼」組織全体の不利益になる人物を始末する事を専門にする始末屋。銃を携帯している。独自の支援組織を構成している。
「総纏(そうまとめ)」非合法な組織「犬」の最上層部、公安や警察、閣僚経験者や経済界等良識者全12人(円卓)で構成される。
●人物解説
『橘 正三(たちばな しょうぞう)56歳』
立場:犬飼(ブリーダー)B
弁護士。杖または車椅子を使用。
一人称:私、二人称:〜さん
口調 : です、ます、でしょう、〜ですか?
『橘公子(たちばな きみこ) 27歳』
立場:鳩A
橘の娘。正三の秘書兼ボディーガード。
クール系。 ファザコン。
一人称:私、二人称:あなた
口調 : です、ます、でしょう、〜ですか?
Aチーム
『実働潜入官(顎、複数)――\
サポーター(手足耳目、複数)―リーダー(頭)』―\
Bチーム―――――――――――――――――――――犬飼A(鳩A)―――\
Cチーム―――――――――――――――――――――/ |
: 犬飼B(鳩B1、2‥)―+――総纏
: 犬飼C(鳩C1、2‥)―+
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狼――――――――――/
●リプレイ本文
●CAST
篠塚弘毅‥‥‥伊達 斎(fa1414)
戸波・篝‥‥‥斉賀伊織(fa4840)
孝太‥‥‥‥‥Celestia(fa5851)
高尾 絢‥‥‥森里碧(fa4905)
橘 公子‥‥‥小日向 環生(fa3028)
狼‥‥‥‥‥‥片倉 神無(fa3678)
京 八橋‥‥‥ノエル・ロシナン(fa4584)
大礒志朗‥‥‥ドワーフ太田(fa4878)
鴎木憲正‥‥‥バッカス和木田(fa5256)
高田 鈴‥‥‥稲川ジュンコ(fa2989)
●誰(た)が為に戦うか?
橘 正三は今だ集中治療室の中で目を覚まさないでいた。
母を失い、父と共に自分が切り刻まれた昔の恐怖が蘇えり、公子はぶるりと身を震わせる。
医師に見せて貰ったカルテに書かれた刺傷痕は確実に敵を倒す為の技量を示している。
正三は今は弁護士だが、裁判官時代の恨みとも考えられる。
――だが。
『犬飼』として父は襲われたのだ。
犬飼に恨みを持つ『犬』や『狼』もいる。
正三を目障りだと思っている『総纏』もいるだろう。
それを確認する事は公子には出来なかった。
正三の側を離れている間に再び正三が襲われる事になったら‥‥‥公子は再び身を震わせた。
そんな公子の脳裏に一つの顔が浮かぶ。
「ゴメンね、パパ。暫く一人にしちゃうけど、きっと彼ならパパを守ってくれるから‥‥」
公子は病室を出るとバックからサングラスを取り出し、かける。
『鳩』として培ってきた感だけが潜伏中の男を探し出す頼りであった。
***
白昼道々都内で弁護士が刺された事件の速報を流す電光掲示板を眺める男は一瞬眉を潜める。
「あの橘が、ね‥‥‥いや、ついにって事か」
狼である男は、かつて正三で下で働いた事があった。
男に会った際、自分が掲げる揺るぎない正義の正当性、自信に溢れていた。
「犬は『人の為にある』ね‥‥狼である俺はもう人間じゃないが」
「犬飼もまた人に在らずだ。犬は人に在らず、国を守る為の闇に潜む司法の飼い犬なり‥‥人を闇に堕とす。余り好きじゃない行為だ」
「犬飼らしくない台詞だな。急進派の総纏に知れたら狩られるぜ?」
「‥‥その時は君が狩ってくれ」
そんな会話を交したのは何時だったか?
現在の司法にもまた犬達にも限界があることは狼の立場である男が一番よく判っていた。
「まあ、何でもかんでも殺しちまえばいいって単純な考え方は俺も好きじゃないがな‥‥俺らしくもない。これも橘の影響か?」
男に与えられた仕事は、急進派の処分である。
「円卓(総纏)連中も相変わらず仲が悪いこった。だが、どうするかな?」
頭の中のリストには政界に通じる大物‥‥つまり総纏の名前も上がっている。
「‥‥‥橘の飼犬共に頑張ってもらうか」
誰に見せるでもなく薄く笑った男。
***
サングラス越しに眺める『鳩』は感情を必死に抑えているのが、弘毅には判った。
「‥‥‥父を、橘 正三を守って欲しいの」
震える声で公子は弘毅に懇願する。
『鳩』という立場で言えば、越権行為である。
「このままだったら‥‥今迄‥父がして来た行為が‥父の理想が‥‥全て無駄になってしまう」
正三自身も狩るべき相手を殺害してしまった犬達を処分してきた立場にある。
『狼』同様『犬飼』も『犬』達にとって恐怖の対象であるのは間違いない。
他の犬飼ならば壊れた道具を捨てるように簡単に記憶からその人物がいたことすら忘れてしまうだろう。
だが公子は知っていた。
様々な事件のスクラップの間に処分された犬達のファイルが残っている事を。
『最近の若い顎達が「人の命を軽んじて、銃を持ちたがる傾向がある」と言う事をどう思うか?』
(「犬の守る『正義』は‥‥『人』の為にある‥‥少なくとも私はそう思っています」)
弘毅は正三にそう答えた事を思い出す。
表情を変えず淡々と話していた正三の口元に初めて薄い笑みが浮かんだのが印象的であった。
「俺は何をすればいい?」
***
「‥‥ってぇ」
「孝太!」
看護婦姿の篝が駆け付けた時、孝太は刺された腹を、取り留めなく溢れてくる血を必死に手で抑えていた。
「畜生‥‥折角、橘さんや公子姉さんの役に立つって‥‥あのガキ‥‥」
止める篝を振り切って孝太は不審者(京)を追い掛けて来たのであった。
捕まえたと思った瞬間、孝太は京の幼さに躊躇した一瞬を突かれたのだった。
「あの子が『狼』なの?」
「判らない‥‥でも『狼』の仲間なのは確かだ。あいつ、橘さんの部屋を探って‥‥畜生‥‥血が止まらない。俺、死ぬのかな?」
篝が傷を確認すると腹の大動脈を正確に抉っている。
「馬鹿な事を言わないで下さい。病院の庭で死んでどうします。今、人を呼んで来ます。待っていて下さい」
篝がストレッチャーを持って戻って来た時、孝太は既に事切れていた。
「どうした、坊主?」
大礒は病院の脇に止めていたトラックの助手席に飛び込んで来た京が腕を抑えているのを見て質問した。
「止めを刺そうとしたら引っ掻かれました」
忌々しそうにパーカーの袖を捲る京。
左腕に生々しいミミズ腫れが長く走る。
「でも止めを刺したんじゃろ?」
「刺せなかったから腹が立つんでしょう。手応えはありましたけど、こんな事なら大人しく医療ネットワークから警備システムに入り込んでモニタリングすれば良かったですよ」
京はハッカーである。
狼が痕跡を残さずに侵入出来るようにルートを確認したかっただけである。
「でも死角があったからわざわざ来たんじゃろう?」
「そうですよ」
同じ狼のサポーターを務めるこの大礒を京は好きになれないでいた。
自分の親を殺した狼であったが、京は狼の正当性を信じ行動を共にしている。
だが、大磯はどこか含みがあるように感じるのだ。
「僕らの仕事は、組織が生まれ変わる為の大掃除と言うべき大事な仕事の手伝いなんですよ」
「‥‥判っておるよ。『死は或は泰山より重く或は鴻毛より軽し』。必要だったらこのままトラックで突っ込んでやるがの? どうする、坊主?」
大磯は京の方を振り返らず笑った。
***
「社長、私ストーカーに狙われているんです」
高田鈴は目の前の席に座る所属事務所の社長に食って掛かっていた。
数日前から誰につけられている気配がしたり、植木鉢が上から落ちて来たりと狙われているのだと言う。
「恐くて仕事ができません!」
文句を言う鈴に対し、鈴の安アパートでは事務所の人間が張り込むにしても張り込む場所がないので「ホテルに泊まってみたらどうだ」と薦める社長。
「そんなお金ありませんよ」
鈴は犬のハンティングに何度か知らずに囮役を演じさせられている事があった。
その事は以前接触した狼から鈴を処分する事を薦められたがサポーターである社長は頑なに拒否していた。
自分の上である橘が襲われた事は知っている。
そして橘が一部の総纏に快く思われていない事も。
鈴が見せしめの為に命を狙われている可能性は否定出来なかった。
「しょうがない‥‥うちで費用を出すから姑く泊まりなさい。ちゃんと領収書を貰うんですよ」
「外に出るのが恐いから、ルームサービスは頼んじゃってもいいですよね」
「しょうがない‥‥余り高い物は止めて下さいね」
事務所持ちでホテルに泊れると喜々として洋服を取りにアパートに帰る鈴は、見えない誰かに押され駅のホームから転落する。
警笛を鳴らし線路に侵入する電車。軋みをあげて急ブレーキをかける。
待避壕の中、鈴は目の前でバックを挽き裂いた電車の車輪を見つめ震えていた。
***
「‥‥2人目か、流石に被害が多いな」
サングラスを外して目を揉む弘毅。
先程、正三警護の為病院に潜入している篝から警察の外核団体に潜入していた絢が大型トラックに轢かれて緊急搬送された旨報告を受けたばかりである。
弘毅の携帯電話が鳴る。
相手は非通知である。
ある種の期待を持って電話に出る弘毅。
『‥‥よう、苦戦しているな』
弘毅には男の声に覚えがあった。
何度か弘毅に電話を掛けてきたことがある狼である。
「さて、一応言わせて貰おうか‥‥‥君は誰だ?」
答えない男が電話口の向こうで笑っているのを感じる。
『俺の名前が意味をなさないのは、そっちも知っての通りだろう?』
戸籍を失った者‥‥潜入官または狼ということである。
『お前らの為に俺が『牙』になってやろう』
「協力? 何の気紛れだ」
『さてな、これは気紛れ‥‥そう気紛れだな。お前らは「牙」を2本失った。そちらには悪くない話の筈だろう。身動きが取れまい?』
「何故、味方する? それに潜入官達を襲ったのが君ではないと、どうして言える」
「‥‥味方になるつもりはないが俺には俺の仕事がある。別に橘やお前の牙を折る必要は今の俺にはないからな。それに俺はお前の「牙」の為にちゃんと救急車迄呼んでやっただろうが?」
男は絢が外核団体から持ち出した書類と銃を確認し乍ら言う。
「頑張って書類を持ち逃げしようとした所でアシが着いたんだな。一切合切書類を纏めて持ち出すのが精一杯、そこを襲われたらしい。まあ、お前の所の『牙』も良くやった方だが潜入した先が悪かったな」
『なに?』
「あそこは『鴎木憲正』っていう男の直接息が掛かった団体だ」
電話越しに弘毅が息を飲むのが聞こえる。
弘毅が公子から犬上層部の特殊ネットワークに入り込んで調べた正三襲撃の指示を出したと思われる急進派総纏の名前である。
『‥‥俺たちは「犬」だ‥‥だから『犬』としてケリをつける』
押し殺したような弘毅の声が受話器を通して聞こえる。
「OKいいだろう‥‥『犬』の手際見せて貰おうか。但し、しくじった時には『狼』としてこの一件は片を付けさせて貰う」
そしてそれは犬達の敗北を示す。男に笑みが浮かぶ。
何度かちょっかいを出した事のあるこの篠塚というドッグヘッドは非常面白い相手だと思う。
(「橘の飼い犬らしい事だ‥‥橘が後継者に選ぶだけある」)
「お前の『牙』が持ち出した資料によると『犯罪シンジケートとの癒着』『資産隠し』『押収品の横領』パッと見ただけでそんな所だな。詳しい資料をやろう。場所は‥‥」
男は弘毅に受け渡し場所を指示した後、電話を切った。
「見せて貰うぜ‥‥『犬』のやり方ってもんを、な」
***
早朝、家人の騒ぐ物音で鴎木は目を覚ました。
「朝からなんですか? 騒々しい」
裁判所からの家宅捜索と逮捕状を指示す刑事達をつまらなそうに見つめる鴎木。
「君達は、僕が誰だか知っているでしょうね」
「勿論です、鴎木先生。誠に申し訳ございませんが、大至急お着替え頂き御同行願います。今回の件、マスコミ共が嗅ぎ付け、ハイエナのように集まり出しておりますので何とぞ宜しくお願いします」
幹部らしい男が頭を深く下げる。
「マスコミですか‥‥仕方ありませんね」
刑事達と鴎木の間に割り込もうとした秘書を制する鴎木。
「総監の顔を潰す訳にもいかないでしょう。後で医師の『診断書』を出しますが、それで宜しいですね」
「はい。それで結構です」
着替えた鴎木は刑事達に守られ高級セダン並みの覆面パトカーに乗り込む。
「私共が先に伺う事が出来ましたが、本日この後『国税局』がこちら伺う予定になっています」
刑事が書類を全て押収する事により鴎木の資産隠しの証拠が渡らなくなる事を暗に示す。
「彼等を出し抜くとは良く頑張ったものですね。君、名前は?」
暫くの間は病院の特別室で大人しくしている他はないだろう。
(「適当な所で政界か警察のスキャンダルでもマスコミに流せば関心が薄れるでしょう‥‥全く誰だか知りませんが、僕に刃向かうとは良い度胸です」)
拘留と同時に裁判所に提出された鴎木の健康診断書により、その日の内に鴎木は彼の息が掛かった病院へと移送されたが翌朝未明、巡回の看護婦が心停止している鴎木を発見した。
――ぐしゃり。
病院のソファーに座った弘毅は鴎木の死亡記事が載った新聞を握り潰す。
(「これが『犬』の限界なのだろうか?」)
視線の先に花瓶を抱えた公子が見える。
その脇を壮年の男と退院らしい女(鈴)が通り過ぎる。
「社長、だから絶対ストーカーなんですよ」
「でもね、鈴ちゃん。入院している間に変な事はなかったんでしょう? 一応、警察に届けたけど該当する人が鈴ちゃんの家とか探してもらったけど、いないらしいんだよね。僕としてはストーカーはいなくなったって思うから今迄通り仕事をして貰いたいんだけど?」
今度の役はグルメ紀行のレポーターだという。
「ちょっとお色気が必要な深夜のドラマなんだけど、どう?」
「やります、やります! ここの支払いだってありますから!」
社長と呼ばれた男はちらりと弘毅を見たが何食わぬ顔をして通り過ぎる。
それに鈴は気が着いた様子はない。
(「自分の信念は間違ってない‥‥自分の生き方が間違っているのなら自分の生きている意味は多分ない」)
犬のネットワークに侵入した際、総纏の情報を始め、必要と思われたデータを全てバックアップを取ったし、仲間達のデータは改竄も済んでいる。
後は必要とされる迄、地下に潜れば良い。
弘毅は手近にいた看護婦に公子に渡して欲しいと小さな袋を預け、そのまま病院を後にする。
公子は看護婦から受取った袋の中に入っていたDVDを不思議そうに見つめる。
「‥‥‥」
誰かに呼ばれたような気がして振り向く公子の目にうっすらと目を開けた正三が写る。
――この後の事は、誰も知らない。
「ちっ‥‥仕事がなくなっちまったな。どうするか?」
嘗て狼と呼ばれた男はくわえ煙草を投げ捨てる。
梅雨間の青い晴れ空が写し出され番組は終了した。
<−ザ・DOG−1stシーズン完>