女王様と哀恋話アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
3Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/05〜07/09
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●本文
リビングにうずくまるように座っている男は、薄闇の中何かを貪る。
「‥‥‥ねぇ、美味しい? 一雄君」
側に立つ女が質問する。
男は女の声等聞こえないように、かつて人であったソレを食らう。
月明かりが人のそれとは違う大きな複眼が迫り出した男の顔を映し出す。
「ねぇ‥‥今度の人は大変だったんだよ。どうやったら一緒に来てくれるかって‥‥私と違って女優さんの卵なんだって‥‥顔も本当に私と違って綺麗な人だよね」
骨を砕く音とぴちゃぴちゃと血を啜る音だけだリビングに響く。
女が男と会ったのは丁度一週間前になる。
「いやだなぁ‥‥ここ、変質者が出るんだよね」
暗い夜道を急ぐ女の目に注意を促す看板が目に入る。
女は収録が長引き深夜になってしまった。
「恐いけど、まだ変質者よりヤンキーの方がマシ」
女はアパートへの近道をする為に公園を横切る。
いつもならば深夜不良の溜り場になっている公園だが、今日は誰もいない。
虫の音だけが響く公園を急ぐ女。
――コツン。
女のスニーカーにハイヒールがぶつかる。
「なに? こんな所に‥‥」
視線を動かすと植え込みの側にもう片方が転がっている。
恐る恐る近付く女の目に蹲る男と女の白い足が目に飛び込んで来る。
女の息を飲む音にゆっくりと振り返るどこかうつろな目をした男。
男の口にべっとりとついた赤い血‥‥‥男は女を食らっていた。
ゆっくりと手を伸ばす男、蛇に睨まれた蛙のように恐怖で身体が動かない女。
女は男の顔に見覚えがあった。
カラカラに乾いた口でソレの名を呼ぶ。
「‥‥‥山田一雄君?」
男の手が止まる。
「がぁーーーーー! なんで来ないんだ!!」
現場で鬼塚ディレクターが吠えているのはいつもの事であるが、今日は一段と声が大きい。
喫茶店の中で主人公の後ろに座るはずの女優が来ないのである。
「お前、背格好が似ているから代りに座れ!」
現場を見に来ていたよしりん☆を指差す鬼塚。
「えー、よしりん☆困っちゃう♪」
相変わらずリボンとヒラヒラをだらけの服を着ているよしりん☆だったが、どうせ後頭部だけという御指名らしい。
「折角、2時間も掛けて髪をセットしたのにぃ」と文句を言い乍らもメイク室に行く。
「よしりん☆さん、すみません」
メイク助手の女がよしりん☆に声をかける。
「いーのよ。カナちゃんのせいじゃないもの。でも変よね、彼女。全国ネットに初めて映るから『頑張る』って帰って行ったのよね?」
かけ出しの女優の笑顔を思い出すよしりん☆。
「どたキャンするような子に見えなかったのよね‥‥‥昨日カナちゃんと一緒に帰ったわよね。何か、聞いている?」
「特に聞いていませんよ。一緒っていっても駅迄ですけど」
「どうだった?」
「やっぱり、アパートにもいないわねよ。事務所の方も携帯とかいそうな場所をあたっているらしいけど」
「ちっ‥‥‥これで3人目かよ」
鬼塚が悪態をつく。
ドラマの収録が始まって1ヵ月余りの間にモブの女優ばかり3人行方不明になっている。
「お前も気をつけろよ」と鬼塚。
「あら、珍しい。心配してくれるの?」
「阿呆、お前がいなくなったら誰が台本を直す」
行方不明になった女優らは、よしりん☆同様長いストレートの黒髪であった。
「NWか、それとも変質者か‥‥仲間内を疑いたくないが‥‥」
「‥‥‥そうね。黒髪と獣人だってだけじゃね。今回の現場は人間のスタッフも多いし‥‥」
よしりん☆の視線の先にはカナがいる。
獣人が殆どを占める芸能界だが、カナのようにまれに才能がある人間も混じる事がある。
特にTOMIの凶悪コンビのよしりん☆と鬼塚を使いこなしているプロデューサーは、才能のみを評価する人物で現場にはカナのように人間がいる。
「カナちゃんは彼氏が出来たみたいでまっすぐ家に帰るけど別に性格が暗くなっている訳じゃないし、他の子も別に普段と変わりないから‥‥人間のスタッフにNWが憑いている感じじゃないのよね」
「姑くは黒髪の女が使えないか‥‥犯人もお前でも狙ってくれると助かるんだが」
鬼塚がよしりん☆の横顔を眺め乍ら言う。
「‥‥‥泣かすわよ」
●リプレイ本文
「業者かスタッフか大部屋役者に善意か悪意の協力者がいますね?」
古河 甚五郎(fa3135)の方をちらりと見ただけで視線を外す鬼塚ディレクター。
「ああ、だから手前ぇらが大部屋迄CCD仕込むのも、所内や近所を完獣化でうろつくのもここの所長や警備に掛け合って許可貰ったんだ」
ギシリとディレクターチェアーの背もたれに寄り掛かる鬼塚。
「全く‥‥気が重いぜ。うちの現場を狩り場にしやがって役者が逃げちまう」
実際、撮影スタジオ内では鬼塚の目を気にして噂話をする者はいないが、女優失踪事件は撮影所内でかなりの噂になっていた。鬼塚の言う女優以外にも恐れをなして辞めて行くスタッフが多数出たので、今回の件で呼ばれた面子がスタッフで入り込むのが容易であったとも言えるのだが‥‥‥。
『よしりん☆への借りを返す』と「ただ働きAD宣言」で入り込んだ九条・運(fa0378)が火爆担当として入り込んだ緑川安則(fa1206)が主役の女の掌に火の玉を出現させるべく仕込みをしている。
「まあ、聞き込みをしている連中が何か掴んでくれるといいんだが‥‥」
富士川・千春(fa0847)の聞き込みは困難を極めていた。
世界的に有名な歌手でありアイドルと言う知名度が災いしていたとしかいいようがない。
実際の所、見学者に取り囲まれた時間に比べ、得られた情報は少なかった。
3人の被害者は各々別々な時間に撮影が終了した事もあり、撮影所を出た時間まちまちであった。
住まいもまちまちで家族と同居している者は帰宅、出勤時間の裏が取れたが、一人暮らしの者は裏が取れなかった。モブをする程度の女優にどのプロダクションも専任のマネージャーをつける程の余裕はないのだ。
「私は各駅ですから、彼女とはホームで別れましたよ。あ、ひょっとして私が疑われているんですか?」
目を丸くしてカナが言う。
たしかに3人目の被害者の住所を考えれば快速電車を利用するのだろう。
「ううん、そういう訳じゃないけど。噂になっているから黒髪の女の子ばかりって。今どき真っ黒な子って少ないでしょう?」
「最近は地味に流行っているんですよ。清純派や個性派、アジアンスターが増えましたから‥‥富士川さんも本当に綺麗な髪ですよね」
カナは最後にこう言って自分の名刺を渡した。
「富士川さん。できれば今度、どこのシャンプーを使っているか教えて下さい。よく友達に聞かれるんですよね。有名な女優さんやアイドルさんがどこのメーカーやサロンのを使っているかって」
大型の屋外撮影所と違う屋内スタジオが多数点在する撮影所であるが撮影所付近は雑木林が多く隠れる場所がある。しょうがないので尾鷲由香(fa1449)は最近他に行方不明になった人がいないか、奇妙な話を聞いたことがないか等、駅前商店街で聞き込みをしていた。
「うーん、難しいなぁ」と喫茶店の店主が答える。
「噂話は色々聞こえて来るよ。ここ1、2ヶ月。鬼塚さんの所だけじゃなく、他でも女優志望の子やタレント志望の子が行方不明になったとか‥‥中には単なるファンの子とか」
「それって全員長い黒髪の娘?」
「そんな特徴があればとっくにゴシップ記事になっているよ。『今に蘇る切り裂き魔』ってね」
ホラー好きの店主がロンドンで起った黒髪の売春婦を狙った連続殺人事件を楽しそうにイーグルに教えてくれた。
DarkUnicorn(fa3622)はニコニコと気をつけなければ緩みっぱなし頬を抑えていた。理由は簡単、悪質な変質者かNWの可能性がある失踪事件の聞き込みとは言え、大好きな御鏡 炬魄(fa4468)と初めて一緒の仕事なのだ。
「三人の最後の目撃情報や共通する友人関係‥‥相手が変質者なら、近くで出没すると言われる場所が無いかも聞き込んでみるか‥‥ヒメ、聞いているか?」
「勿論じゃ、でも暑いので気分転換にアイスを買っていいかの?」
「しょうがないな」
ヒノトがアイスを買っている間に調べたメモを見直す炬魄。
3人目の被害者と最後に会ったカナに彼氏が出来たのは、ほぼ間違いなさそうである。実際に一緒に住む為に最近引っ越しをしたと複数の証言が取れている。
(「どうも気になるな‥‥‥芸能界に於いて数少ない人間だから気になるのかも知れないが」)
「御鏡、お待たせなのじゃ。一緒に食べるかの♪」
差し出されたアイスクリームを受取る為にメモをしまう炬魄。
「‥‥‥なんじゃ?」
炬魄に見つめられ、妄想が顔にはみ出てしまったのではないかと焦るヒノト。
「ヒメ、何にせよ、お前が黒髪でなくて良かった。襲われても困るが、囮を買って出られても困るのでな」
炬魄の言葉に頬を染めるヒノトだった。
「手数をかけてすまない‥‥普段、化粧などは殆どしないからな‥‥髪も特に弄っちゃいないし‥‥」
脇としてナース役でドラマに出演する事になった囮役の霞 燐(fa0918)がカナに謝っている。
「えー、そんな事ないですよ? 枝毛とか切れ毛とか、霞さん位長くなっちゃうと普通は出るのに全然、綺麗ですよ」
話乍ら霞の髪を器用に纏めて行く。
「でもこれからの季節暑くないですか?」
「いや‥‥慣れている」
「そうですか。はい、出来上がりです」
にっこり笑ってカナが、化粧避けを外す。
「あ、もし良ければ今度髪を弄らせて下さい。ヘアメイクって数をこなさないと上手くならないんです」
そういってカナは霞に自分の名刺を渡した。
――翌日。
「やられたわ‥‥ADの子よ」
忌々しそうに言うよしりん☆。
「人間のスタッフですか?」
「ええ‥‥でも気になる事があるわ」
「なんだ?」
「サイクルが短いの。イーグルさんが調べてくれた噂になっている行方不明の子やモブの子は約1週間前後空いていたのよ。でも、中1日よ‥‥‥やはり変質者じゃなくってNWなのかもしれないわね」とよしりん☆。
「組織崩壊を起こして焦っている? 再情報化する前に栄養をつけようって言うのかな?」
「でも3回狩りに成功しているのにわざわざ人間を選ぶのか?」
「NWに憑かれた人間に利用されている人間がいるのか‥‥‥」
「‥‥‥行方不明になったADの写真はあるか?」
写真を見た炬魄が言った。
「‥‥この女性はカナが彼と同居する為に引っ越したと証言してくれた女性だ」
「賭に出てみますか?」
撮影所を出る燐は後ろに仲間が距離を取り乍らついて来るのを確認した。
「‥‥‥でなんですよ」
「あ、ごめん。聞いていなかった」
カナはくすりと笑う。
「駅、2つ目ですから。でも驚かないで下さいね、古いって」
私のお給料だと精一杯なんです。そう笑うカナ。
表情豊かな彼女はNWとは程遠い存在に感じる。
確かに駅からは近いのかも知れない。
小さな駅の改札口を通り抜けると近くの駐車場から雑木林を抜けて行く。
「すごい道だな」
「ええ‥‥でもこの道が一番近くて。ぐるってまわると20分掛かるんです」
暗い畑と墓地の間にぽつんとカナの借りた家が建っている。
鍵を開け、燐に中に入るように薦める。
カビと埃と何かが腐ったような臭いが鼻をつく。
「床下で何かが死んだみたいなんだけど‥‥恐くて開けられないんです」
だからお香を焚いているんです。でもすぐ慣れますから。と苦笑する。
「これだけ人通りが少ないとかえって目立つな」とワゴンの中でやーくんが苦笑する。
「しょうがないわよね」
ヒノトや運もライトを消してバイクで近くに待機しているはずだ。
半獣化し、知友心話で燐と会話したはるちーが言う。
「とりあえずカナさんの家に着いたって。酷い臭いだって‥‥」
「全く、たいした役者だぜ。メイクにしておくのが勿体無いよ」とイーグル。
「NWがいると思って間違いないだろうな‥‥カナからNWを引き離さないといけないだろう」
「自分の出番ですね」
ワゴン後部から通行止めの標識を担いでコガが出て行く。
使って下さい。と置き土産に睡眠スプレーを置いて行くのも忘れない。
呼び鈴が鳴り、カナが居間を出て行く。
姿が見えなくなるのを確認して燐が臭いの元と思われる奥座敷に向かう。
(「NWなら別の所におびき出さなければ‥‥‥」)
素手で倒せる程NWが甘い者ではない事を燐も重々承知している。
臭いの一番キツい部屋の襖を思い切って開ける燐。
「くっ‥‥‥」
悪い悪夢を見ているようだった。
畳を覆う夥しい腐乱死体の中、1体だけ綺麗な服を着て藤の椅子に座る死体がある。
だが、それを人である。
否、他の死体が人である原形をギリギリ留めていたが、それは遥かに人の形状を逸脱していた。
目眩がする程の悪臭と嫌悪感の中、それがNWの擬態ではなく情報化した後の抜け殻だと知る。
(「どこに?」)
部屋を見渡す燐の背中にカナが抱き着く。
「駄目ですよ。そんなに騒いだら一雄君が起きてしまいます。でも‥‥‥まだ動けるんですね」
何処か狂った目をしたカナが言う。
「一雄君は病気なんです。彼、体が腐って行く病気で‥‥人を食べると直るんですよ。普通の人より女優さんを食べると一雄君、体の調子が良くなるんです」
両腕でギュウギュウと燐の体を締め付ける。
「でも先週女優さんの後、2、3日してからなんだが調子が悪くなっちゃって‥‥昨日の子は食べてくれなかったんです。‥‥でも、霞さんは女優さんだから‥‥きっと一雄君、霞さんを食べて元気になってくれると思うんです」
両腕を万歳をするようにあげると同時に体を下に滑らせる、するりとカナの腕からすり抜ける燐。
「‥‥‥冗談じゃない。誰がNWに大人しく食べられるものか!」
「NW? なんです、それ?」
目眩を感じ、がくりと膝を憑く燐。
「ああ‥‥やっと効いて来たんですね。あの人もそう‥‥昨日の彼女はすぐに‥ううん、薬が効き過ぎて心臓が止まってしまったけど‥‥霞さんとか他の女優さん達って普通の人と違いますよね‥‥だからきっと一雄君が食べてくれるんでしょうけど‥‥」
どこか寂しそうに笑うカナ。
「他の女優もこうやって連れ込んでやつに食べさせたのか!」
「ええ‥‥女の子同士ですからすぐに信用してくれました。それにプロデューサーとかを紹介してやるって言ったら他の子も簡単に着いて来ましたよ。でも、ちゃんと食べられる時に痛かったり、苦しくないように‥‥始めは薬も買っていましたが、段々どの配合が一番効くって判ったんで、今は私が調合しているんですけど‥ね‥‥もう手足に力が入らないですよね」
大丈夫ですよ。一瞬で恐いのは終わります。痛くないうちに全てが終わりますから‥‥。
そう言ってカナは燐の髪を撫でる。
「一雄君‥‥今度は女優さんですからきっと一雄君の口にもあいますよ。早く彼女を食べて元気になって下さいね」
愛おしそうに腐った肉の塊を抱くカナ。
その体がびくりと揺れ、大きく見開いた目が焦点を失って行く。
「か‥ず‥‥‥」
カナの唇は言葉を失い‥‥‥その体にNWが憑依、実体化した。
「呼び鈴に何故でない? 中で切ってあるのか?」
やーくんがイライラとインターフォンを押し続ける。
「俺は庭の方に回ろう」
運はKDDX250を庭に乗り入れ、イザとなったら雨戸ごとバイクで突入すると言う。
「こうして待っているのは落ち着かない。やっぱ体動かしてる方が性に合ってるな」と言うのは、みどりのずのうはを着たままの半獣化しているイーグル。
バイクで待機をしていたヒノトも玄関にやって来ていた。
「ちょっと待って、なんだか混乱している!」
再度、燐に知友心話を試みていたはるちーが悲鳴に近い声をあげる。
「NWがカナさんの体で実体化した?!」
「わしが昨日、読心水鏡で調べた時はカナは人間だったのじゃ」とヒノト。
「兎も角、霞さんを助けないと」
はるちーの言葉を受け、やーくんがアウトドアナイフを玄関の引違いの隙間にねじ込み蝶番を力任せに引きちぎる。
運がスロットルを全開にし、座敷きに突っ込む。
燐を引き裂こうとしていたNWの直前で翼とブレーキングを利用して急停止。フロントタイヤがロックし、後輪が浮かび上がったのを利用して、そのまま後輪をNWに叩き込む。
「ナイス、ヒット! 行くぞ、緑川安則、参る!」
やーくんがライトバスターを居合いの要領で抜き放ち、切り込む。
隙が出来たその背中にヒノトが俊敏脚足を使い、仕込み日傘、特殊警棒を次々に打込む。
怒ったNWの腕がヒノトを狙う。
NWの踏み込みに回避が間に合わないと思ったヒノトの腕を炬魄が引っ張る。
爪がヒノトの髪を持って行く。
「コアはあったか?!」
「額にはないぞ!」
服に隠れ、コアが見えないのである。
「皆さん、『尻尾きり』を使います!」と注意が反れる10秒の隙に探してください。とコガが言う。
イーグルのバトルガントレットが服を引き裂き、胸に隠れたコアを晒す。
「御鏡!」
ヒノトの掛け声に合せライトダガーを振う炬魄。
タガーを避ける為出来た隙に狙いを定め日傘、警棒、角の三刀同時突きを放つヒノトの首にNWのエルボーが容赦なく決まる。
「ヒメ!」
そのままヒノトの上にNWの足が振り下ろされる。
「させるか!」
イーグルが渾身の力で突き出した朱槍「紅」がコアを突き砕いた――。
「哀れ‥‥恋に狂った花鬼一つ‥‥最後は自分が恋人と思っていたNWに魂を食われたのだから彼女には幸せだったのかも知れないが、食われた者こそが哀れか‥‥‥」
静かに燃え上がる家に手を合せる燐だった。
――事件は火災跡から複数の男女の死体が発見された事により、家を借りていたカナが連続殺人犯と言う形で幕を閉じた。