AN ギタリスト募集アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 3Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 なし
参加人数 8人
サポート 0人
期間 07/11〜07/13

●本文

【弾劾−罪と罰−】 アルカラル・ナイト
♪♪♪〜
(クラウンの澄んだアリアが静かに響く)
(声を切り裂くように唸るギターの激しいメロディとベースドラムの力強いリズムにキーボードが重なる。音を聞かせる為に作られた長い前奏)

 繋がれた鎖が己の印
 明け暮れた弾劾と憎しみの日々

 引き裂かれた闇の声
 それが罪なのか
(のびるクラウンの声に反比例するようなタイトなスネアとキーボードの音が続く)

 悲しみの楔が打込まれ
 憎しみと嘆きの嵐が己の証

 その罪を誰が裁けると言うのか
 凍り付いた心の憎しみを

 引き裂くもの達よ!
 お前は神なのか
(のびるクラウンの声に反比例するようなタイトなスネアとキーボードの音が続く)


「つっ‥‥‥」
 クラウンの引くギターの指が突然止まる。
「ゴメン」
 苦笑いをするクラウン。
 溜息を吐くナイト。
「気にするな‥‥‥」
 再びメロディが始まる。


 これが罪ならば
 お前が神ならば
 罪と罰をこの身に受けよう

 それが私の罪ならば‥‥‥
〜♪♪♪


「マネージャー?」
「ん?」
「皆と話したんだけど、あたし、ギターを暫く止めようと思っているんだ」
 クラウンからの申し出をある程度予想していたマネージャー。
 リーダーのクラウンの右手は先日の負傷以降まだ本調子ではない。
 医者からはプロのギタリストとしてはやっていけないと言われながらも辛いリハビリを繰り返し、ギターを持てる迄になったがANの持ち歌はギタリストの腕前が問われるものが多い。
「暫くあたしは曲作りやヴォーカルに専念して、今回のレコーディングやライブとかは他の人に頼もうと思うんだ」
「そうか‥‥」
「レコーディング当日に初顔合わせっていうのより先にテクを確認したいんだ」
 話題作りの為、ハードな「弾劾」とロリポップ調の「kiss me」の同時発売を計画中のAN達。
 PV撮影やら予約特典のミニ写真集など山盛りだが目先のレコーディングの為に急遽ギタリストの募集となった。


「‥‥‥で、何で来るんだ?」とライブハウス「7」の店長の浩介。
「マスコミ対策」
「ケーキが美味しいから」
「浩介ちゃんの顔が見たいから」
 無言でラメ入りドレスを差し出すクイーン。
「まあ、今回の募集ヴァニプロで行いますとそのままANの第5メンバー、ヴァニプロに入れるのじゃないかと勘違いされる方もいらっしゃると思いますので‥‥取り敢えず今回のギタリスト募集は、現在の所あくまでも一時的なものですから」
「つまりウチでやれば非公式のオーディションだと?」
「そういう事です」

●今回の参加者

 fa0142 氷咲 華唯(15歳・♂・猫)
 fa0510 狭霧 雷(25歳・♂・竜)
 fa1851 紗綾(18歳・♀・兎)
 fa3211 スモーキー巻(24歳・♂・亀)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3887 千音鈴(22歳・♀・犬)
 fa4738 MOEGI(9歳・♀・小鳥)
 fa5316 希蝶(22歳・♂・鴉)

●リプレイ本文

「今回の募集は単なる新シングル用のレコーディングメンバーではありません。短期的にアルカラルのメンバーと行動を共にし、コンサート活動に携わってくださるギタリストの募集です」
 今回の呼びかけに集まった参加者を見回してANのマネージャーの男が言う。
「7」の立見席に椅子が置かれ、ANのメンバー、マネージャーと場所を提供した「7」の店長浩介が並ぶ。
「本来、俺が立ち会うべきではないが、オブザーバーとして参加させてもらう」と言う浩介。


●氷咲 華唯(fa0142)
 ANとはシークレットライブで競演経験があるケイ。
 志望動機は「俺は最近、ドラマとと映画の仕事が多かったけど音楽もちゃんとやりたい」との事。
「あの時はベースだったけど今回どんなパフォーマンスを見せてくれるか‥‥」
 普段の曲がポップス系というのもあり、攻撃的なメタルハードなGARNETを弾くケイの姿は何処となくシークレットライブの時の精彩に欠ける。
「なんだか‥体じゃなく、頭で考えているところがあるのかな?」
「オーディションに参加したことがあんまりない。言うていたから、緊張とかやないの?」
 曲が進むにつれ、緊張が解れてきたのか曲の端々に所々アレンジが加えられていく。
「やっぱり上手いよね。ルックス、テクといい‥‥決まりかな?」
 曲を演奏し終わったケイはやれる事は全力でやったと満足気である。
 ずっと黙っていたクイーンが言う。
「‥‥ケイ‥色男‥‥スカートも‥似合いそう‥‥でも‥ナイトと‥‥ヴィジュアルが‥‥被ります」
 意外な指摘である。
 本日のケイの衣装は、普段コンサートで使用しているというゴシック系の服である。
「ANに‥‥ナイト‥2人‥‥いりません‥どうせ‥なら‥‥違う‥‥タイプ‥を‥です」
「たしかにね‥‥」
 一応これでもANはV系である。
「録音は練習すれば大丈夫だろうけど‥‥ライブは一応、本人の今後のスケジュールを聞いてからだな」


●千音鈴(fa3887)
 ステージ上のちーを見て、焦ったのはマネージャーである。
「なんでっ千音鈴さんがいらっしゃるんですかっ?」 
 五月蝿いとばかりにマネージャーを睨むちー。
「ココでオーディションという事は‥‥まぁそういう事なのでしょうから純粋に音を感じて頂戴な」
 にんまりと笑う。
 ちーはANにとって同じ事務所の先輩に当り、国民的にメジャーなアーティストである。
「うう‥‥‥知りませんよ、私は!」

【想花輪廻】
♪♪♪〜
(ゆったりとした響かせ乍も爪弾く様な軽い優しいメロディから始まる)

 四季廻り 時代(とき)廻り
 花もゆるりゆらゆら めぐり廻る

 たとえ散る宿命に咲くとしても
(アップテンポするメロディ)
 玉響の煌き 吾が胸に 君が胸に
(複雑に変化し続けるリズムに流されないように正確なリフが刻まれていく)
 確かに其処に在る息吹 二人憶えておりませう
 何時までも 果て迄も
(アーミングが歌を効果的に響かせる)

 夢と現 ゆきつ戻りつ
(流れる様な連続チョーキングが歌を盛り上げる)
 過去と未来 ゆきつ戻りつ

 想い花咲く 幾十(いくそ)の世重ね
(重音で切なくも遠く響く駆け抜ける様に響くメロディ)
 かそけき絆 小指の紅緒
 手繰り手繰って
 何時までも 果て迄も
(アーミングが歌を効果的に響かせる)

※Repeat
 人もゆるりゆらゆら めぐり廻る
(奏でられる早弾きがアクセントとなって曲を引き立たせる。
 ラストまで情熱的に艶音を紡いだ後、リズム整え「華模様」へと曲は替わっていく)
〜♪♪♪

「さすがに見せ方も上手いよね」
 感嘆の溜息を吐くクラウン。
「8月の新曲もハードだけど‥‥千音鈴さんっていいのか? ハード系とかって?」
「そやね。今日の歌、うち好きやけど‥‥」
「それより‥‥ちー‥‥マイクロ‥水着‥とか‥OK‥なんですか?」
 常識なしのANメンバーと思われているが、結構気にしいなのである。
「まあ、ちーが大物過ぎた。というのは、新人のお前らにとって最大の不幸だな」
 自分よりレベルの高いアーティストと共演する事で学べる事も多いが、ちー程のビックネームになると色々問題が出て来る場合もある。
「お前らが気になるんだったら、今回の録音はオブサーバーとして参加して貰って、早くメジャーになってステージを共にしてもらえ」
 どんな国際的ハイパーアーティストが来ても態度を変えない浩介があっさり言った。


●スモーキー巻(fa3211)
「勝算が皆無だと思っていたら、初めからここに来ていないよ」
 そんなスモーキーの言葉に感心したように目を細める浩介。
『ピンチはさらに成長するためのチャンスでもある。違うかな?』
 そう言ったスモーキーを思い出し、
「俺の印象だと『穏やか』なイメージだが、どうして中々‥‥お前らの相手にはスモーキー位の年齢がかえって良いのかも知れないな」と面白そうに笑う浩介。
 スモーキーが演奏するのは「弾劾」「kiss me」「華模様」「GARNET」の4曲と参加者の中では一番多い。技巧レベルを感じさせない洗練されたアレンジを見せつける。
「‥‥浩介ちゃんはスモーキーがお気に入り?」
「ああ‥‥編曲や作曲という点で高い評価を俺はするよ。彼が編集として関わるのだったら俺はスモーキーが言う『いい化学反応』をすると思うよ。だが、これはギタリストの募集だ。ギタリストしてANと混じって演奏となった場合、難しいだろう」
「うん、そうだね‥‥」
 クラウンはスモーキーが言った『キミの「音」とは違うけど、こういう弾き方もある、ということを見て欲しい。きっと今だからこそ見えることもあるはずだよ』と言う言葉を噛み締めた。


●狭霧 雷(fa0510)
「この場を取り繕うよりも、自分自身を見てもらいたいと思いまして」
 そう言う雷が演奏するのは以前所属していたバンドの曲だという。
「たしかロボットアニメの主題歌になった曲だよね」
 原曲は疾走があるテンポ良い曲である。
「アレンジも悪くないけど‥‥上手く言葉が見つからないけど、なんか足らない気がする」
「確かに‥‥何かが足りない気がしますね。何か? と聞かれると私も判りませんが‥‥」
 曲を演奏し終わった雷に不採用である旨を伝えるクラウン。
「結果は確かに大事ですけど‥‥『目的の場所』への道は一つではありませんから」
 不採用であることに落胆した様子もない。
「遠いか短いか、簡単か難しいか。それを決めるのは自分自身ですしね」とあっさりしたものだった。
 その言葉にカチンとくるクラウン。
 まだデビューして4ヶ月目のANだが、プロとしての自分達の音楽に対してプライドはある。
「つまりあんたは『このオーディションの合格は大切じゃない』。冷やかしで来たという事? 悪いけど、そういう気持ちならばあたしらだけじゃなく、他の参加者に凄く失礼だよ」
「何が物足りないように感じるか判ったよ。雷から感じねぇのは『必死さ』かもしれねぇ。雷自身、自分で全力を尽したつもりなのかもしれないけど、俺らには中途に感じるんだ。やっぱ、そうなると俺らは雷とはやれないよ」
 ナイトは残念そうに笑った。


●Tyrantess(fa3596)
「音楽は生き物、そして演奏だって生き物だ。思ったまま、感じたままに弾く。それだけだ」
 そういうとおもむろに弾劾を弾き出すタイ。
「最初の2曲は『今使えるか?』と言う事でチョイスしてくれたそうですよ」とマネージャーが言う。
「タイは義理堅いからね」
「‥少なく‥とも‥ナイト‥‥より‥大人‥です‥‥」
 弾劾からkiss meに曲が変わる。
「ああ‥やっぱり辛そうだな。テクニックじゃなく‥‥表情が」
 一緒に何度も演奏しているからこそ判る点である。
 続いてタイのオリジナル曲Dominatorに変わる。
 全てを支配する暴君がイメージだと言う攻撃的なメタルである。
 そしてNot So Bad。ノリがよいアップテンポなパンクである。
 ノリノリのメロディが何があっても笑い飛ばす強さと陽気さがある。
「‥‥この顔を見ちゃうとね」と苦笑する。
「でも『弾劾』の録音に付き合いいただければと思いますよ。Tyrantessさんのチャーミングさが無くなるのは私も不本意ですし、何人かの一人と言う形でオファーさせて頂きましょう」とマネージャーは言った。


●MOEGI(fa4738)
「技術が他の人より一歩も二歩も下なのは覚悟の上。テクはもち重要だけどさ、歌で一番大事なのはハートだもんね!」
 最年少のもえぎの演奏が始まった。

【START LINE】
♪♪♪〜
「Hey,Boys&Girls!
 Now,are you dreaming? Now,is it satisfactory?
 Let’s go with me, You must not smolder!
 Because destiny is changed if you hope!」

 理想と現実は違うから 失敗おそれて尻込みする
 今を変えたいなら自分から変わらなきゃね

 夢に向かって一歩踏み出す勇気が持てなくて
 背中押されてつんのめる様にライン越えた
 帰りたくても戻る道は既に閉ざされているから
 もう前を向いて歩いていくだけ

 簡単に諦めきれない夢だから
 何度くじけたって ずっとずっと 追いかけていたい

 瞳を閉じて今の素直な気持ちに耳を澄ます
 溢れる想いは未来求めうずうずしてる
 自分の足で一歩踏み出せたらもう振り返らないよ
 がむしゃらに明日に走っていくだけ
〜♪♪♪

 演奏するのはエネルギッシュなガールズロック。
「アニソンからPOPロックまで対応できる点はいいですね。ルックスも悪くないですが‥‥」とマネージャーが唸る。
「うちの娘より1つ上か‥‥お前らの歌は放送コードギリギリのがあっただろう?」と浩介。
「今はないよ。だけど彼女の年齢のこと考えると歌詞の内容が向かないのがあるよ。あたしらのターゲット層は高校生から大学生だもん」とクラウン。
「MOEGIさんをライブに同行してもらって『妹分』的に演奏してもらうのは面白い試みかもしれませんね」
 そういうとマネージャーはもえぎの連絡先をメモに書き写した。


●紗綾(fa1851)
「下手に真似したり小細工はせずに、真正面からぶつかっていくつもり、あたしの音、聴いて下さい」

【恋誓歌】 特別ver
♪♪♪〜
(七夕を意識して作ったというその曲は煌めく夜空のようなメロディラインのポップスロック)
 春告鳥
 儚く響く歌声は 物語の幕開けを告げていた

 傷ついた想い抱えて 僕達は出逢った
 君の笑顔は 世界に光を与えてくれた

 空虚な心 君は何を見つめているの?
 寂しげな瞳 僕は君の力になりたい

(夢見る歌声で語りかけるように歌うさーや。
 一つ一つ音を心に刻むように弾くギター。
 一瞬演奏を止めたと思うとその後華やかに竪琴のようにギターを歌わせる)

 刹那に揺れる宵闇の 淡き夢の物語
 雨霞の甘い香に 歌の蕾も花ひらく
 天に昇った蜜色の 細く輝く月は竪琴
 白銀の弦を爪弾いて 奏でるのは悠久の調べ

 紡ぎ出そう 君に捧げる誓いの言葉
 清き星光の中では 罪も罰も関係ない
(流星のように音を光らせ広がる光をイメージしたアルペジオを奏で‥‥
 余韻を残したまま曲は終了した)
〜♪♪♪

「上手いですよね、彼女。ルックスも可愛いし」
 ちらりとクイーンを見るマネージャー。
「黒薔薇‥のレース‥‥とても‥キュート♪」
「はいはい、男と女でいつもながら突っ込む所が違うのは判ったから」
 ナイトがクイーンを呆れる。
「でもさーやも千音鈴さんと同じで、あたしらの一緒に仕事をすることによってさーやのイメージを損ねると思う。今回の録音はKiss meだけ手伝って貰うとかコンサートで共演なら兎も角、勿体無い気がする」
「そうだね。申し訳ないけど他の人を当ろう」


●希蝶(fa5316)
「平均年齢ガガっと上げるけど――気にすんな!」
 あっけらかんと笑って演奏を始めた蝶が演奏するのは華模様。
「へぇ‥‥」
 奏者毎に休憩を入れているとはいえ多少疲れが見えていたANのメンバーが体を直す。
 軽快なパンクロックをそのままのテンポのままのロックバラードにアレンジした蝶。
 どうしても浩介にはタッパーを握り締めている印象が強い蝶だが‥‥
「自分で天邪鬼だと言っていたが‥‥いい意味でクラウンと同じ天邪鬼だな、彼も」と苦笑する。
 クラウンと一分の狂いもなく全く同じように弾くのは無理な話であるが、近い表現をする事は参加者達のレベルであれば簡単なトレーニングで出来ることであろう。だからこそ、彼等は単に併せるのではなく異邦者である事を表現するような解釈が多かった。常に個性を出す事を義務付けられているアーティストならではの特質かもしれないが。
 だが、蝶は敢えて自分の音を失くさない程度に抑えながらもクラウンの音に調和させる手法を取っているといえよう。
「面白いジャン‥‥」
 ベースを持ち、ステージ上がるナイト。
「ちょっと併せてみたい。そのまま続けてくれ」
 ステージに次々に上がっていくクイーンやエースの姿を浩介と並んで座るクラウンは羨ましそうに皆を眺める。
「これで決まりだな‥‥大丈夫だ。すぐにきっとよくなるさ」
「うん‥‥」
 くしゃりとクラウンの頭を浩介は撫でた。