暇を作って誕生日会アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 有天
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 易しい
報酬 不明
参加人数 10人
サポート 0人
期間 07/04〜07/06

●本文

 その日クラブ・クラウンことヴァニシングプロ所属ヴィジアル系メタパンクバンド「アルカラル・ナイト」のリーダー桐嶋 花梨は、カレンダーとにらめっこしていた。
「写真集の撮影迄少しだけ間がある‥‥‥」
 賭である。
 これからマネージャーに言って1日、もしくは半日オフの時間を取れるのだろうか?
 7月4日、ANのメンバーでアイドル的存在のダイヤ・エースことパトリシア・由子(ゆうこ)・北倉が20歳の誕生日を迎える。
「祝ってやりたいよなぁ‥‥‥」
 根っからお嬢様とは言え元ヤンのクラウンやナイト、クイーンとは異なり、同じチームにいたときからパティはアイドルポジションであり、容姿を除けば普通の女の子であった。
「昼はファンタジーランド辺りで騒いで、夕方か夜は誕生日パーティかな?」

「‥‥‥で、何で来るんだ?」
 最早聞くまいと思いつつも、聞いてしまうのはライブハウス「7」の店長、山田 浩介。
「なんていうか、つい居心地がいいから。それにさ、ミュージシャンの性で急に歌いたくなったら普通の店だと迷惑になるし」
「『7』の近所さん、誰が来ても騒がないジャン。それに俺は知っているぞ。先週、実はケーキが作りたかったのを!」
 ナイトの言葉にぎくりとする浩介。
「7」で行われた披露宴パーティで浩介はケーキを作る気マンマンであったが、新郎新婦の友人であるスタッフ達が作ったケーキがよろしかろうと、浩介はケーキを作らなかったのである。
「でも皆でやっぱりケーキを作った貰えばパティも嬉しいだろうから、デコレーションは残して欲しいかな?」
 誕生日ケーキのスポンジだけは焼けと言うクラウン。
「‥‥‥使用料金は取るぞ」
「勿論、親しい仲にも礼儀ありってね」
「オマケしてね♪」
「‥‥これで‥‥手付けを‥‥‥」
 キングサイズセーラー服を差し出すクイーン。
「‥‥‥‥‥‥頼むからそこから離れてくれ」


●ダイヤ・エースことパトリシア・由子・北倉のお誕生日パーティ参加者募集
 参加費:ファンタジーランド入場料込み1万円
 プレゼント:上限1万円を目安

「一応さ、パティには休みが取れたから『ファンタジーランドに皆で遊びに行く』って事しか伝えてないから‥‥‥現地集合でその後、休憩で『7』に行こうって感じになると思うから。そうそう、誕生日パーティはサプライズ(秘密)だからね」

●今回の参加者

 fa0634 姫乃 舞(15歳・♀・小鳥)
 fa0826 雨堂 零慈(20歳・♂・竜)
 fa1514 嶺雅(20歳・♂・蝙蝠)
 fa2122 月見里 神楽(12歳・♀・猫)
 fa2529 常盤 躑躅(37歳・♂・パンダ)
 fa2614 鶸・檜皮(36歳・♂・鷹)
 fa3596 Tyrantess(14歳・♀・竜)
 fa3661 EUREKA(24歳・♀・小鳥)
 fa4371 雅楽川 陽向(15歳・♀・犬)
 fa5331 倉瀬 凛(14歳・♂・猫)

●リプレイ本文

 プリンセスキャッスル前広場に集まった一同。
「エースちゅわぁんとデートだぜぇ」と気合いが入る常盤 躑躅(fa2529)に対し、
「‥駄パンダ、俺の目の黒い内はセクハラは許さん」と鶸・檜皮(fa2614)が牽制している。
 常盤を含め初めて雨堂 零慈(fa0826)とTyrantess(fa3596)、そして嶺雅(fa1514)がANと会ったのは雛祭りの時である。短いようで早い4ヶ月である。
「お誕生日おめでとうー! 彼氏のことは‥‥聞かないほうが懸命なのカナー?」とレイ。
「結局、元旦のお願いは叶わんかったー」
 明るく答える本日主役のエースは、ショルダーベルトのついた白いふんわりとした流行りのカボチャパンツ姿である。
「神楽も、もっと可愛い変装にすれば良かったかな?」と月見里 神楽(fa2122)が言う。
 誰でも顔を知っている神楽、本日の服装はボーイッシュな服にツインテール、カラコンに伊達眼鏡。頬には妖精がペイントされている。
「神楽は超有名人だからね」と苦笑するクラウン。
「俺も十分に変装したほうが良かったカナ?」とレイ。
「‥‥よかったらレイさん、これ。一応Lockの服だし」
 そういって着ていたレース・ハーフジャケットを脱いでレイに渡すナイト。
「ええ、いいよー」
「この前も、俺‥‥レイさんに貰ったし。あ、俺、ちゃんと朝風呂に入ったから臭くないですっ!」
「じゃあ、借りるねっ」
「貰って下さい!」

 **

「一緒にお祝いしたく、こちらにお手伝いに来ました」
 ぺこりと料理を担当の姫乃 舞(fa0634)が頭を下げる。
「20歳か‥‥若いわね」
 ふっと溜息を漏らし意味ありげな微笑を浮かべるEUREKA(fa3661)。
「ゆーりはまだ若いだろうが」と親父さんが花を飾る倉瀬 凛(fa5331)乗る踏み台を支え乍ら言う。
「でも20歳の誕生日って、色々な意味で特別よね」としみじみ。
「迎える本人もそうだが、家族にとってもだろうな」
 孫の1人が20歳を過ぎている爺の親父さんがしみじみと言う。
「親父さん、しみじみもいいけど、ちゃんと手を動かさんとあかんよ?」
 雅楽川 陽向(fa4371)は先程から大量の綿飴をせっせと作っている。
「‥‥しかし、そんなもの何処から持って来た」
 綿飴製造機を呆れたように眺める浩介。
「企業秘密や。でもサプライズパーティには、面白い演出やろう?」
 出来たての綿飴が色とりどりのセロファンの袋に詰め込まれて行く。

 **

 時間が勿体無いと仲良くブラックマウンテンに並び乍らアイスクリームを舐めている一向。前から鶸とクイーン、常盤とエース、レイジとクラウン、ナイトとタイ、レイと神楽の順である。
(「楽しくスキンシップが出来ねぇぜ!!」)
 恨めしそうに鶸の後頭部を横目で睨みつつ、大人しくエースがアイスクリームを食べている姿を眺めている常盤。エースと言えばコースターが少々苦手なので落ち着かない様子である。
「怖いんなら俺の手を握っててもいいんだぜ」と常盤。
「え? う、うん」
 思わぬ常盤の優しい言葉に吃驚するエース。
「怖さのあまり心臓が飛び出るといけねぇからな。俺がエースちゅわぁんの胸を押さえといてやろうか?」
 手をワキワキさせて言う。
「‥‥いまセクハラをしようとしていただろ‥」と鶸が睨む。
「こんなのは挨拶代わりだろう」
「充分、セクハラだ。次も同じことをやったら‥‥飛羽針撃で尻を突き刺すぞ‥」
(「‥‥面白すぎ‥です‥‥」)
 ハラハラしているエースに対してアリーナ席で格闘技を見るようにワクワクするクイーン。
「ねぇ、とても楽しみだよね♪」と神楽。
 ライドに乗り込み、安全バーが降りた所で一緒に並んでいたはずのレイがいない事に気が着く。
「あや、お兄さんが居ないよぉ? お、お、おぉぉー♪」
 最後の言葉を言い切る前に星空が浮かぶ真っ暗な空間に降下をするライドであった。

 **

 さて、調理担当組は作戦会議である。
「私が作るのは、ちらし寿司に、唐揚、野菜スティック、ミモザサラダ‥‥取り敢えずそんな所かしら?」
 あとは必要に応じてね。とゆーり。
「私は鴨肉ローストのバルサミコソース、サーモンステーキ、シーザーサラダ。サンドウィッチとトマトソースパスタ‥‥おにぎりもあった方が良いでしょうか?」とマイ。
「そうだな。ANのメンバーはおにぎりも好きだし、作れば喜ぶだろう」と浩介。
「あとはジュースやお茶とかの飲み物ですが‥‥」
「ああ、それなら『7』のバーを使えば良い」
 不足分の買い出しに出かけるマイに付き合ってリンは荷物持ちに出かけて行く。
「とりあえず、冷やす必要があるデザート類から作って行きましょうか?」
 ゆーりによるデザートは、季節のフルーツをふんだんに使ったフルーツポンチとクレープのアイス添えである。

 **

 プリンセスカルーセルを前にちらりとクラウンの顔を見るレイジ。
「なに?」
「いや‥‥‥この手のアトラクションは拙者には不似合いだが、花梨殿が姫で拙者が‥白馬の騎士というのも悪くない‥と‥‥‥うん‥乗る事にしよう‥‥」とクラウンの手を取るレイジ。
 クラウンをお姫さまだっこをして乗ると言われ、レイジの額を指で弾くクラウン。
「大人二人で木馬が乗ったら壊れるでしょう」とこの辺、現実主義のクラウン。
「どうせなら馬車とか‥二人で乗るんだったら色々あるでしょう‥‥‥」
 むぅっと言うクラウンの頬は少し赤かった。

 一方、
「メリーゴーランドとは好都合だぜ。よろめいて俺のほうによりかかってくるかもしれねぇしな。倒れないように胸を押さえるぞ!! ぐひひひひっ」
 常盤の後ろに鶸が何時の間にか立っている。
「‥‥破雷光撃で雷を落とす」
「常盤と‥鶸‥‥飽きません‥」
 考え深気に言うクイーン。
 斯くして一番ファンタジーを堪能したのはクイーンと言う形になったファンタジーランドを後にする一行。

 **

「ただいまー!」
 元気よく「7」の扉を開けるエースと神楽。
 昼は「7」で食べると浩介に連絡していたはずだが、ハウスの中は人気がない。
「変だなぁ、出掛けたのかな?」
「ドアを開けたまま?」
「ハイ、ちびにゃん探検隊出発です! 隊長、探検に行きたいです!」と神楽がシュタっと手をあげる。
「一人じゃ危ないから俺と見に行くか」とナイトとタイが神楽と一緒に控え室の方に消えて行く。
「あたしらは2Fに行ってみるかい?」とレイを誘って2Fに上がって行くクラウン。
「拙者も‥‥」
「レイジは駄目。もし常盤と鶸が喧嘩になったらクイーンは煽るだけだから‥‥‥それに皆でゾロゾロいなくなったら変じゃない」
 後ろ方を小声でいうクラウン。
「なぁに?」
「デートしようってレイジが、ね。もし、途中でいなくなっても心配しないように」とエースに向かってウィンクをするクラウン。
 そう言って皆が奥に消えてから5分、10分と経ち‥‥エントランスで座っていたエースが我慢し切れず立ち上がる。
「なんで皆帰って来ないん? うち、お腹が空いて限界!」
 すたすたと1F観客席のドアに向かい「ばん!」と開くエース。
 スポットライトの灯に目を眩ませるエースに向かって、
「「「「ハッピーバースデー!!」」」」の掛け声と共にクラッカーが鳴らされる。
 一斉に灯がつき『HappyBirthday』Rockバージョンが流れる。
 タイとリンがギター、ナイトがベース、神楽がドラム、ゆーりがピアノ、コーラスのマイと陽向、レイがタンバリンを鳴らす。
 一緒にコーラスをしていたクラウンが前に出て、エースを抱き締める。
「HappyBirthday、パティ。20歳おめでとう」

「スゴい大きいです」と神楽。
「なんだ、おっぱい型じゃねぇのか‥‥」とがっかりした様子の常盤。
 皆でデコレーションしたというケーキは、2段重ねの大きなケーキである。
「人形もよくできてるな‥‥美味しそうだ‥」と鶸がこの日初めてにっこりと笑う。
 1段目には16本の蝋燭、2段目に中央に大きな蝋燭が1本、取り囲むように3本の蝋燭が並んでいる。
「雨堂さん案なのよね。エースさんとANの皆ですって」とゆーり。
 マジパンで作った参加者達の顔を象った人形が並び、クリームで誕生花の捩花を淡いピンク、カノコユリを白地に濃いピンクの斑点、マーガレットが描かれているだけではなく、生花が飾ってある凝ったものだった。

 神楽の煎れてくれたアールグレイのカップを片手に、反対の手に『HappyBirthday』と掛れたケーキプレートを持ったエースをケーキをバックに撮る鶸。
「今日撮った写真は編集した後、DVDで送るが‥そうだ。これをやろう」
 ポケットの中から『愛を呼ぶリストバンド』を取り出し、手渡す鶸。
「エースにもこれからいい出会いがあるといいな‥‥」
「ありがとう、鶸さんみたいに格好いい彼氏を頑張って見つけるね」
「私からのプレゼントは、これからの季節にぴったりな『浴衣』と『扇子』です。ついでにディスプレイにも使っている綿飴‥‥まるで夏祭りみたいやけど、気にしたらあかん」と陽向。
「うち、綿飴好きやねん。でも萎む前に全部食べるのは大変やね」
 壁に飾られた綿飴を見て笑うエース。
「エースさん、お誕生日おめでとうございます。これからも良い仲間と音楽に包まれて行けますように‥‥」
 綺麗にラッピングされた薔薇の花の砂糖漬けが入ったバターケーキを手渡すマイ。
「エースさん、20歳の誕生日って、きっと人生の中でも特別なものだよね。本当におめでとう」
 色とりどりのマーガレットで彩られた花籠を渡すリン。
「では、拙者も‥‥まあ、拙者が持っているよりも可愛い女性に持ってもらった方がいいだろう‥‥」
 と、『もえるうさぎ』を手渡すレイジ。
「花言葉は上品とか、慈悲深いだよ。タロットは、恋占いとかぜひ♪」
 そう言い乍ら、神楽が『神秘のタロット』とカノコユリの籠飾りを渡す神楽。
「ほんに皆ありがとう。マイさんのご飯は美味しいし、飾りはリンさんと陽向さんがしてくれたんやってね。ほんにうち、嬉しいわ。それにレイジさん、神楽さんもありがとう」
 楽しそうに答えるエース。
「これは俺からのプレゼントだ」
 そう言い乍ら、タイがエースの首に掛けたのはトップが「A」を象り、ポイントに石が入ったシルバーのネックレスだった。
「それはそうと、これでエースも(酒が)飲める歳になったんだよな?」
 ここはやっぱり飲むしかないだろ? と側にあったカクテルグラスを取るタイ。
「うん‥‥」
 おっかなびっくり受取ったグラスを啜る。
「‥‥甘くて美味しいかも」
 グラスの残りを景気よく空けるエース。
「結構いける口だな。だが、適当にしておけよ。次の日に響いても困るからな」
 と笑うタイだった。
「由子ちゃん――エースさんだと今一ピンと来なくて、こう呼んでも大丈夫?」
 そうゆーりに言われて、エースはまっ赤になり乍ら頷く。
「大丈夫?」
「お母ちゃんしか‥‥うちの事、由子で呼ばんかったから吃驚しただけ」
「そう、貴女にとって今日が素敵な日となりますように」
 微笑み乍ら、ぎゅっと抱き締めるゆーり。
 ゆーりからのプレゼントは、手製のドラムスティックケース。
 優しい色合いの花柄生地にレースが飾られ、止め具部分には子犬のマスコット付いた凝った物である。
「ありがとう、ゆーりさん。大事にするねん」
「俺からは『花都』と『ヘパイストスの御守り』デスッ! 是非、機会があったら着てネ」とレイ。
「いいの? こんな高いもの」
 花都をみて目を丸くするエース。
「白いのがエースさんに似合うカナって」と笑うレイ。
「でも、本当にいい誕生日会で良かったネー? こんな企画してくれるなんて、エースさんがとっても大事にされてる証拠だし、そういうのって嬉しいヨネ」
「うん、ほんに‥‥うちには勿体無い、大事な友達やねん」

「ちょっと待て、パティ‥‥」
 何時の間にかかなりの数のグラスを空けているエースの側で必死に何杯飲んだか数えるクラウン。
「あまり硬い事を言うなよ」とタイ。
 数年前のクリスマスパーティ時、うっかり不良仲間が面白がって酒を飲ませた事がある。
「パティは飲むと笑い上戸から泣き上戸になって‥‥最後、脱ぐんだ」
 本人はちっとも覚えていないのが唯一の救いだが、その時の大騒ぎを思い出してだらりと汗を掻くナイト。
 一斉に常盤とエースの方を見る一同。
「飾り気が少なかったんでカップにはパンダの縫ぐるみの顔部分とフリルを縫いつけて名前も刺繍しておいたぞ!! これで何時落としても安心だ!」
 常盤のブラジャーを見つめるエースの目はどことなくとろん。としている。
「俺の眼力が衰えてなきゃサイズはぴったり合うはずだ」
「パンダ‥‥可愛い‥‥」
 カップ部分に縫い付けられたぬいぐるみをつっ突いたり引っ張ったりしているエース。
「つけてくれないか? もしサイズが合わなかったら手直ししてぇしな」
 エースがほやん。と常盤を見つめる。
「いやらしい気持ちで言ってるわけじゃねぇぞ! 職人として純粋に気になってだな‥‥」
「つければいいん?」
 ショルダーベルトに手を掛けるエース。
 マスクの下で怪しい息遣い常盤の期待がMaxになりかけた途端、
「‥The‥present‥‥on‥the‥‥birthday‥hadn’t‥been‥given‥to‥you‥‥yet‥」
 ショルダーベルトに掛かった手をそのまま引っ張りエースにキスをするクイーン。
 横目でお預けを食らった常盤をにやりと笑う。
 こうして感慨深い20歳の誕生日パーティは終了した。