お盆DEデートアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
フリー
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獣人 |
フリー
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難度 |
易しい
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報酬 |
なし
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
07/13〜07/15
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●本文
【STAR DAST】アルカラル・ナイト
Vo:ナイト「」台詞:クラウン『』コーラス:クイーン&エース
♪♪♪〜(Aメロのみ記載)
夜空に 星が 瞬く夜‥‥
(余韻なしで歌い出す声は重く悲しい。重低音で重くのしかかるベースに不調和音を奏でるギター。暗く重たく聞く者の不安を駆り立てるロックバラード)
二人 彷徨い歩く‥‥
(ズムズムと腹に響く重くのしかかるストリングス、暗く重厚な宗教音楽のようなメロディを奏でるキーボードとは反対に乾いたタイトなスネアが重なる)
明日を‥‥ 信じて
明日を‥‥ 信じて!!『明日を信じて』
(苦しみを吐き出すように重く悲しい叫びに静かなコーラスが重なる)
〜♪♪♪
「珍しいな、ナイトがメインヴォーカルか」とANの最早溜り場とかしてしまったライブハウス「7」の店長 浩介が言う。
特に事務所とTV局、駅や空港との地域利点を考えて最近引っ越した先が「7」の近くである。お陰で以前にも増して飯を食いに来る。
ANのマネージャーも「良い保護者が出来た」と放置どころか一緒に時々飯を食う始末である。
「それもあるけど‥‥キースが作詞作曲したんだよ」
ANリーダーのクラブ・クラウンこと花梨が言う。
AN達はONとOFFで芸名と本名を使い分けている。
クラウンは、本名を桐嶋 花梨と言い、ナイトはキース・ブライアント、日本名を江戸川 騎士と言う。
ちなみにクイーンはユリア・ブライアント、エースはパトリシア・由子・北倉と言う。
「‥‥おふくろの命日が近いんでね。色々あったし、俺なりにケジメをつけたいってカンジなんだよ」
微笑を浮かべるナイト。
「それに御盆ジャン、こういう『しんみり』もアリかなってさ」
いつものようににっこりと笑うナイト。
父親がイギリス人で日本人とは遠く懸け離れた顔だちをしているナイトの口から流暢な日本語で新盆の話が出るのは微妙である。
「仏教徒だったか?」
「いーや、俺は無信仰だよ。おふくろが死んでから神様は信じていない」
じゃあなんで詳しいのかと聞いた所、近所で仲良くなったお婆ちゃんの家で迎え火をしていたのだと言う。
そのお婆ちゃんから貰ったおはぎ持参で緑茶を皆で啜っている。
「今日はこの後どうするんだ?」
「前から休みを貰っているから久々に三浦半島を探索♪」
「‥‥その思いっきり地域限定したのはなんだ?」
「一応、お里帰りってことなん」
ANのホームは横須賀である。
全員、横須賀のアメリカンスクールで知り合った仲間である。
「三崎口で‥‥マグロ‥三昧‥‥計画中」とVサインを見せるクイーン。
「あたしは元町から中華街かな? たしか(中国)緑茶が届いているはずだから」とクラウン。
「珍しく別々に行動なんよ。うちはお父ちゃんと一緒にお母ちゃんのお墓参りに行って、帰りに水族館に行ってみようかと思うとるんよ」
エースは横須賀のライブハウスを中心に活動しているサックス奏者のお父さんがいるのだ。
「俺はみなとみらいの美術館や博物館でも行ってみるかなって思っているんだ」
暇なヤツらを誘って行ってみようかな? って思っているんだよ。とナイト。
「‥‥つまり『7』で待ち合わせをしているんだな」
●リプレイ本文
「なんかさ、悪いね。気を使わせたみたいで」
恋人の雨堂 零慈(fa0826)の隣に立つクラウン。
「ナイトくんと2人でデートなんて嬉しい! 俺、横浜は初めて!」と嶺雅(fa1514)。
「それじゃあもっと他の所がいいかな?」
「ううん、ナイトくんの行きたい所に行こっ!」
「カナと一緒じゃないのは淋しいが、独占と言う事で」とクイーンに同行する笙(fa4559)。
ゆーりと小型自動車とミニバンを交換して各々運転して目的地に向かう予定である。
「えっと、移動にはEUREKAさんのお車‥‥でいいのかにゃ?」
エースが大きな包みを持った神代タテハ(fa1704)を支える。
「エースさんのお父さんへのお土産、お兄ちゃん特製のアップルパイにゃ。お花はお母さんに供えるお花にゃ♪」
向日葵の花を差し出すタテハ。
「ほんに? ありがとう♪」
「遅くなっちゃったけど‥‥お誕生日おめでとう☆」
後で渡すと忘れそうになるからと七瀬紫音(fa5302)がドラム型のチョコケーキを取り出す。
「俺もお誕生日パーティに行けなくてゴメンね。エースさん、お誕生日おめでとうございました♪ ほら、カナも恥ずかしがってないで」とシン。
「別に恥ずかしがってなんていないよ。エースさん、おめでとうございます」と玖條 奏(fa4133)が小さな紙バックを渡す。
「ドレスタンクトップとダイヤモンドスターです。気に入っていただければいいんですけど‥‥」
「うちに? ありがとう♪」
「お礼に(頬に)キスでもしてやったら?」とナイト。
「駄目よ! クイーンさんがいない間はしっかり由子ちゃんを守るからね」とEUREKA(fa3661)。
「‥変な‥男‥No‥Thank’ou‥‥でも‥‥カナ‥‥気配りの‥お買得‥‥」とクイーン。
「カナは、たかり魔の小姑憑きだが本人は良い子だ。良い子過ぎてやりたくないっ!」と笙。
「たかり魔の小姑って誰の事?」と渦深 晨(fa4131)。
「お前ら、長話をしていると渋滞に引っ掛かるぞ」
浩介に促されて各々の車に乗り込む。
●クラブ・クラウン(fz1054)
レイジのマラネーロの助手席に乗り込むクラウン。
首都高から大黒PAに入り、レイジ特製おにぎりのブランチをした後、ベイブリッジを通り中華街に車を走らせるレイジ。クラウンは馴染みの小さな雑貨屋入り、緑茶を受取る。
「旨いのか? 拙者は日本茶しか飲まないんだが‥‥」
「烏龍茶が苦手な人でも緑茶は飲める人が多いけど、やっぱり苦手な人も多いよ」
クラウンがお茶の包みをレイジに渡す。
「これはクラウン殿が‥‥」
「二人の時は『花梨』よ。お茶はまだ少しウチにあるし、また頼んでおけばいいだけだから。でも買って失敗した。よりは貰った方が諦めがつくわ」とクラウンが言う。
恐縮するレイジに「じゃあ、飲茶を奢って♪」と言うクラウン。
「そうだな‥‥少し小腹も減ったし穴場的な店でゆっくり食事をするか」
点心を堪能した後、関帝廟でお参りをし、元町でショッピングとなったのだが、折角だからとクラウンがレイジの洋服を見立てる事になった。
ああ、でもないこうでもないと店員と着せ代え人形よろしく着せ変えてみるが‥‥少しはセンスに自信があったが撃沈するクラウン。
こうしてレイジとクラウンのデートは暮れていく。
帰りは行きと逆ルートで帰るが、芝浦PAで休憩している際に余程疲れている為か車の中で無防備に眠るレイジ。その無防備な寝顔に微笑むクラウン。ポシェットからごそごそと今日の御礼に作った小さなトランプのクラブ型チャームが着いたキーホルダーを取り出し、マラネーロのキーにこっそりくっ付けた。
楽しい一日だった。そう思うクラウンだった。
●スペード・クイーン
「辛かったら寝てていいぞ? 着いたら起こすから」
「大丈夫‥‥です」
元から顔色が余り良くないクイーンだが車酔いをしているのか更に顔色が白い。
後部座席をごそごそと探る笙、もえるうさぎと取り出す。
「いい歳した俺が持っててもな。枕に丁度良いぞ」
「ふわふわ‥」
もえるうさぎを抱き締め、嬉しそうに笑うクイーン。
「寝ないんだったら何か話していた方が辛くないぞ」
そう言われてポツポツと子供の頃の話をするクイーン。
たわいのない話を続け乍ら、2人を乗せた小型自動車が三崎口に着く。
「いざ、鮪づくしへ。お嬢様、お手をどうぞ?」
「うむ‥‥」
笙の手を取り車を降りるクイーン、もえるうさぎがしっかりと握られている。
余程気に入ったのだろう。
加工センターを見学した後、油壺の水族館へ行く笙とクイーン。
イワトビペンギンの赤ちゃんやらイルカショーを見た後に本命のレストランに行く。
「ここの料理は海洋深層水100%使用だそうだ。勿論、メニューは鮪も沢山ある」
メニューと睨めっこするクイーン。
「俺としてはトロより赤身なんだが、流石に‥‥圧巻だな」
和食からイタリアンに中華まで色々なものがある。
「ま、確り食べて体力つけろ。キッチリ奢るし」
「笙は‥‥大食い‥ですか?」
視線の先には『兜焼き』の文字。
「残念ながら俺の食事量は人並みだな。友人に異常な程食べるのがいるが‥‥」と笙。
「‥‥残す‥のは‥NG‥我慢‥です」
暫く鮪の姿を見たくなくなる程、鮪を堪能した2人は売店を見て回る。
(「皆への土産に海洋深層水地ビールや、とろまん、とろジャーキーでも買って帰るか‥‥」)
そんな事を考えていた笙の視線の先で固まっているクイーン。
『マグロアイス』
「‥‥美味しい‥の‥でしょうか?」
試して見る勇気はなかった。
●ダイヤ・エース(fz1048)
まずはエースのお父さんの回収をして、お墓参り。シオの作ったお弁当を食べ、その後八景島で遊ぼうと言う事で小さなアパートにやってくる一向。
ドアが開き、厳い男が出て来るが、エースの姿を見ると途端に破顔し、丸太のような腕でエースをハグをし、キス攻めにする。
「パティ、会いたかった! パパは寂しかったゾ!」
「お父ちゃん、友達の前で恥ずかしいよって止め!」
アメリカンというのがぴったりのエースのお父さんである。
「EUREKAと申します。由子ちゃんとは楽しくお仕事させて頂いてます」とゆーりが頭を下げる。
「Oh! 私、デビッド、言いマス」
デビットも深々と頭を下げる。
「エースさん‥‥じゃなくて由子さんにカナがお世話になってます♪」とシン。
「ちょっとカナ!」
「What?」
「えーっ、俺はカナの保護者代理だし。カナはエースさんと仲良くなりたいんだからそんな遠慮しなくてもいいのに」
「パティはパパの知らないウチにお嫁に行くデスカ? 許しまシェーン!!」
ホームドラマのようなちょっと笑えるシーンが続いた後、皆で連れ立ってお墓参りを済まし、八景島に向かう。
ショーの時間もあるので、まずは水族館である。
(「このカサゴ‥‥空揚げにしたら美味しそうです」)とこっそり思うシオ。
「あ、ショーをやるって見に行こう!」
場内アナウンスに慌てて走っていく。
つい一緒にお喋りしたくなる白イルカに器用に笛を拭くセイウチ、海獣達のショーを皆で楽しむ。
「白イルカさん可愛い〜!! なんだか癒されるし‥‥」とシン。
「うちはここでは白イルカが一番好き♪」
「エースさんは白イルカが好きなの?」
「頭が揺れるんが可愛い♪」
「俺個人としてはセイウチが一番いいな」
「イルカってエースさんみたいですよね? しなやかで、可愛くて。あ、でもペンギンも‥‥愛くるしい感じとか、イメージにピッタリですね」とカナ。
面と向かって男性に誉められた事が殆どないエース、見る見る茹でダコのように赤くなる。
「俺は?」
「シンは‥‥ピラニア、かな?」とカナ。
「ふーん、って‥‥カナ、何で俺がピラニアなワケ? ‥‥‥後で覚えてなよ?」とシン。
「そういう自分の思いに正直な感じが‥‥冗談だよ」と苦笑するカナ。
ニコニコと二人を楽しそうに見つめるエース。
「でも俺がピラニアだったらカナは何だろう?」
「え、俺? 俺は‥‥‥」
「はい! そこ、あんまりくっ付かない。若人、由子ちゃんの前にはゆーりおかあさんという壁があるのよ!」
ショーの後、ペンギンを見ていたはずのゆーりが何時の間にか後ろに立っていた。
スライダーボートやジェットコースターなどの遊園地部分もしっかり堪能して、楽しいお土産選びである。
「いっぱいお土産買ってくのー♪」
楽しそうに家族へのお土産と浩介、親父さんまでにもお土産を選ぶタテ。
「お土産‥‥俺も買っていこうかな〜」とカナ。
「俺も買おうっと♪ 行かなかった人にあげてもいいし」とシン。
手にはペンギンやイルカのストラップやキーホルダーが握られている。
「うちもなんか買おうかな?」
お土産売り場をうろうろするが何を買ったらいいか決まらない様子のエース。
困った様子を見て先に会計を済ませたカナが声をかける。
「エースさん、一緒にお土産選びしませんか?」
「え、いいの?」
「これなんか可愛いんじゃないんですか?」
ペンギンのストラップを指差すカナ。
「ホンマやね。うち、これにする♪」
ストラップを2つ取るカナ。
「俺とお揃いでいいですか?」
照れ笑いを浮かべるカナ。
「え‥‥うん‥」
まっかになり頷くエース。
「これもエースさんに‥」
袋に入ったペンギンのぬいぐるみを手渡すカナ。
「ありがとう。あの、うち‥‥まだ江ノ島の水族館は行った事ないん。もし良かったら、また一緒に行ってくれる?」
先に戻っていた笙とクイーンを交え、皆でメアドと電話番号の交換会をして、再び「7」の前で別れた。
●ハート・ナイト
高層ビルのパーキングに車を止め、ブラブラと美術館まで歩いていく。
レイは2人で行き先を決めようと言われたが、実際問題ナイトにとって行きたい場所というのは余りなかった。
一人でなんとなく家にいるのもイヤで、皆が出かけるのだったらと美術館を選んだ。
美術館ならばエアコンが入っているし、何か行きたい所が出来たら適当に出ればいい、時間潰しが目的だった。
でもそんな自分の為わざわざ横浜まで付き合ってくれ、デートだと喜んでくれているレイ。
「絵の難しいコトは分からないけど俺でも知ってる有名な画家のヤツ多いって凄いネ!」
美術書を開けば誰でも知ってるような絵画や芸術家の作品が並ぶ。
「う〜ん‥‥なんか言葉で表現できないけど凄い!」
素直な感嘆の言葉を言うレイを喜ばしてあげたいとナイトも素直に思う。
気がつかないうちに見つめていたのだろう。
視線に気が付いたレイが問う。
「なに?」
「やっぱ俺、レイさんが好きだなぁって、次は何処に行こうか?」
「取り敢えずご飯っ! 腹が減っては戦はできぬってね!」
美術館から程近いビルのイートモールに行く2人。
「和洋中にイタリアン、いろいろあるけどどれがいーい?」とレイ。
「ここだとイタリアンが旨いかな? でも、どうせなら船とか観覧車見えた方がいいすっよね?」
デッキのほうがいいかなぁ? とブツブツ言うナイト。
「ナイト君、微妙に訛っているっ」
「ええ?」
レイの言葉に赤くなるナイト。
「もう一回言って!」
「イヤですっ!」
昼食後は日本丸を見て回る。
「うわー! 大きい! このエンジン、ギネスに乗ってるいるんだよね。カッコイイー!」
操舵室で大興奮するレイ。
おやつにゲットしたヨーグルトスイーツを突っつきながらグランモール公園に向かう2人。
「ナイトくん、楽しんでる?」
「はい、レイさんはどうです?」
「俺も楽しい! でも良かった。最初ナイトくん、眉間に皺が寄っていたからっ。だから本当は別の所に行きかったんじゃないかって思ったんだよっ」
レイの言葉に吃驚するナイト。
「この前見せて貰った『STAR DUST』の歌詞‥‥すっごくすっごく大切な人がいたんだなーって思いマシタ! んで‥‥行きたいトコって歌詞にも沢山出てくる星がいっぱいの所? 俺馬鹿だから違ってたらごめんネ。でも、行きたい場所は思い切って行くべきだと思う。決心って迷いだすとキリがないモノだけど、突き進むってなったら自然と決まるから」
「ほんと、レイさんには隠し事ができないなぁ」
苦笑を浮かべるナイト。
「‥‥そうだな。俺1人じゃあ、きっと行く勇気がないから‥‥レイさんに一緒に来てもらえればと思うよ」
案内されたのは根岸近くの小さな洋館。
「ここ‥‥?」
「今は他の人が住んでいるから‥‥」
唇に指を当て、音を立てないように言う。
明かりの点る窓を避け、こっそり庭を歩く。
大きな椎の木の下に膝をつきガサガサと草を別けるナイト。
小さな白い石版のようなモノが表れる。
「お袋と一緒に作った親父の墓です。ここは親父が事業に失敗して自殺するまで住んでいたんですよ」
「お袋は借金のカタに俺を連れて買われる様に再婚しました。でも辛くて辛くて‥‥ある日俺が小学校から帰ってきた時、首を吊って死んでいました。何で俺を残して死んだのかって、物凄く恨んで恨んで‥‥俺にもっと力があればお袋を救えたんじゃなかったって、ずっと後悔して来ました。でも花梨の事とかあって、皆に色んな事を教えてもらって‥‥なんで俺を連れてなんでお袋が死ななかったのか‥‥俺がどんなにお袋や親父の事を愛していたのか思い出したんですよ」
『STAR DUST』はその思いを吐き出したものだという。
「だからあの歌はまだ未完成で、この後どんどん変わっていくと思います」
レイを見つめるナイト。
「レイさん、今日は本当にありがとう」
空には満点の星が輝いていた。