姫様漫遊記 女中茶屋編アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
有天
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芸能 |
3Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
7.9万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
07/20〜07/24
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●本文
●娯楽時代劇ドラマ「姫様漫遊記」
ナレーション――
『天下太平世は情け、火の元の国を東西に分けての関ヶ原の戦いも遥か昔話になってしまった江戸の世。将軍様の末の末のそのまた末の姫に「あんず姫」という姫様がおりました。
あんず姫様は大層美しく‥‥俗に言うグレイビー(great beautiful)な少女でありました。
あんず姫様の母親「かさね」は元々は庶民の出、紀州の廻船問屋舟木屋の娘であったが、見習い奉公で大奥に上がった所、将軍様のお手付きになり、目出たく姫(あんず)を授かったのでありました。
将軍様には正室との間に若宮が何人もおり、あんず姫には全くお世継ぎ騒動は関係ないので、あんず姫はすくすくと真直ぐに優しく美しい姫に育ち‥‥‥ただし、一つだけ欠点がありました。
お忍び歩きが大好きなのです。
お忍び歩きには、生まれた時から親友で舟木屋から召し上がっている「あさぎ」が必ずお伴に着いて来る。
そんなある日、立ち寄った茶屋でふと庶民に流行っている「お伊勢参り」の話を耳にした二人。
「床に伏す母上様の為にお伊勢参りに行く」と言い出したあんず姫。
「人足集めのたか」の口利きで旅回わりの一座の踊子に入り込み、一癖も二癖もある一座の一行とお伊勢様を目指す二人。
だが、路行く街道で城や江戸では判らぬ諸処の暮らしを目にするあんず姫。
己の野望の為に民を苦しめるのを目の辺りにし、伊勢への道筋、世直し旅を決めたのであった』
●姫様漫遊記 役者募集
●あらすじ
あんず姫達、旅一座がやって来た宿場町。
城下は目の前だが、噂に高い萌え衣裳茶屋に行ってみようと言う事になった。
この萌え衣裳茶屋、客に衣装を貸してくれる所もあるが、従業員が日常と掛け離れた萌え衣装に身を包み奉仕してくれるのが特徴である。
茶屋が並んだ一角でふんわりとした提灯袖が可愛い南蛮風衣装に白い前掛け姿の娘盟努(メイド)や剣士姿の女性、南蛮渡来の宗教の指導服に身を包んだ志主咤(シスター)や神父、兄貴な僧侶に綺麗な尼さん、挙げ句は忍者、くノ一、浪人までもが壮絶な客引きをしている。
「見せ物小屋気分なのかも知れないが‥‥壮絶なり‥‥」とあんず姫。
「本物が混ざっていても判りませんね」
怪し過ぎである。
小さい良心的な店も良いだろうがどうせなら大手が良かろうと老舗の一件に入る。
「お帰りなさい、御主人様、お嬢様♪」
「‥‥‥意外と寂れているねぇ」
一行が入ったのは、大店の店を思わせる店内に女中達が抹茶やら波歩餌(パフェ)を運んでいる。
「普通の代り茶屋と変わらんのぉ」
それでも珈琲に牛乳やら砂糖を入れてもらう時「それでは、更に美味しく御主人様がいただけるように魔法を掛けさせて頂きます」と普通ではない会話が飛び交っている。
良く見れば客と簡単な遊戯をしている者もいる。
「まあ、芸者遊びの一種と変わらないか」
「安い庶民価格で飲み食い遊び、女の子は可愛いらしく、礼儀作法も整っているが‥‥‥女中衣装故に寂れているのだな」
「正しくその通りなんですよ」
あんず達の側に何時の間にか店主らしい男が立っている。
「ぎりぎりの価格で庶民の夢を、最高の萌えな持てなしを提供する‥‥それが私の夢なのに‥‥」
最近他店に押されて売り上げが落ちていると言う。
「ならば、妾達に任せるが良い。ちょうど妾達は旅の一座じゃ。人の心を捕まえる術は幾らでも教授出来よう。ただし‥‥コレ次第だが」
親指と人さし指で円を作るあんずであった。
あんずが提案したのは『大奥』風の茶屋である。
理由は簡単「どうせなら草民から縁遠いものが良かろう」
只それだけである。
果たして客が離れた萌え茶屋を救う事は、あんず姫達にできるのであろうか?
●CAST
あんず姫:主人公
一人称 妾、二人称 呼び捨て、口調:だ、だな、だろう、〜か? または〜じゃ、ナリ等、やや古い言葉
気が強く、サバサバした性格、お姫様なのでやや世間からズレた感覚を持っている。
旅一座では、踊子をしている。
「今回は悪党が出ない予定です。出るのはひたすら女中さんとメイドさんとシスターに尼さんと腰元です♪」と堂々と言うよしりん☆、一本何かが切れたらしい。
「まあ、見た通りこいつが何も考えていないのはバレバレだが、たまにはこういうのもよかろう。協力して格安な大奥っぽい店を作り上げてくれ」と鬼塚。
「ギターだったら南蛮琵琶のように外来語は、なるべく使わないで下さいね♪」
●リプレイ本文
●CAST
あんず姫‥‥‥阿野次 のもじ(fa3092)
お結‥‥‥‥‥武越ゆか(fa3306)
刹那‥‥‥‥‥神楽(fa4956)
英之介‥‥‥‥瑛椰 翼(fa5442)
アヤ‥‥‥‥‥泉 彩佳(fa1890)
ハナ‥‥‥‥‥花田 有紗(fa3584)
露‥‥‥‥‥‥椎名 硝子(fa4563)
美優‥‥‥‥‥都路帆乃香(fa1013)
白椿のセイ‥‥星辰(fa3578)
本郷岳乃新‥‥タケシ本郷(fa1790)
●妄想天国 萌☆通り
「こ、ここは‥‥?」
往来に倒れ込む英之介は頭を摩り乍ら起き上がる。
「確か刹那に殴られて‥‥はっ、俺は死んだのか?!」
目の前に広がる金襴緞子の艶やかさ。そこもかしこも見目麗しい女性ばかり。
「ここは‥‥もしや極楽では?!!」と瞳をキラキラさせて感動する英之介。
「うつけ者!」
英之介の後頭部に刹那の拳が炸裂する。
「妄想に飛び込むのもいいけど、道の真ん中でみっともないわよ」とお結。
英之介が昏倒した本当の理由は女性に見とれ『萌☆西洋給仕』と書かれた茶屋の看板に前方不注意で激突したからである。
1人何処かに行ってしまった英之介を余所にお目当ての店『女中茶屋☆白菊屋』を見つけるあんず姫。
「あ、あったのじゃ」
手に「★☆きゃぴりん☆★ *ご城下* 萌☆茶屋案内地図♪」が握られている。
朝、持っていなかったはずの地図にちょっと引き気味の刹那。
「綺麗なお姉さんがたくさんいる予感!」とわくわくの英之介。
「「「お帰りなませ♪ 御主人様☆ お嬢様♪」」」
明るい元気な女中達の声が入店と同時に掛かる。
「ハナが珈琲をオイシオイシにしちゃいまぁす☆ ハナハナハナのっピ☆」
おハナが可愛く指を空に回し、ピと英之介の前に置かれた珈琲茶碗の縁をチョンっと触る。
「はい、美味しくなりました☆ ごゆっくりどうぞ、御主人様♪」
「ここに腰を据えちゃおうかなー」と英之介。
茶菓子が食べ乍ら店内の様子を見ていたあんずがぽつりと言う。
「思ったより微妙に寂れているのじゃ‥‥」
「え? そうなの?」
「そうなり、案内図によれば休日の1刻待ちと書いてあったが、すんなり入る事が出来た。店内には遊戯ができる張り紙が張ってあるが、遊んでおる客がおらぬ。つまり常連さんしかおらんのじゃ」
その分析力は大奥の教育の賜物だからなのですか?
それとも単なる萌茶屋通いの賜物なんですか?
どちらで突っ込みをいれるか悩んでいた刹那より先にあんずに声をかけた男がいる。
「正しくその通りなんですよ」
この店の店主だと言う男、最近他店に押されて売上が落ちているのだと言う。
「どうでしょう、私にお力を貸して下さいませんか?」
「まあ、コレ次第なり」
あんずの提案で大奥風に改装されることになった店に不安を述べる店員達。
「もっとぉ綺麗なおべべが着られるなら、いいかもぉ? けれど大奥って何をするとこぉ?」とおハナ。
「お上の為だけにある歓楽場のようなものなり」とあんず。
「えー、ハナが聞いたのは恐いオバサンが政権争いとかしてぇ、ペンペン意地悪しちゃう所じゃないのぉ?」
「そういう輩もおるが、何処でも目下の者を虐める心狭い者はおるのじゃろう?」
結構、辛口のあんず。
「わたくし共に出来るのでしょうか‥‥高貴な身分でもありませんし‥‥お客様に喜んで頂けるのでしたら努力してみますが、自信が無いです‥‥」と不安げに言う露。
「大丈夫なり、大奥には町民の娘も最近では奉公に上がるなり」と笑うあんず。
「会計係のことを御右筆とか、衣装係のことを呉服之間とか、調理師は御仲居、給仕さんは御次とか‥‥‥そう言うように変わるのでしょうか?」とアヤ。
「普段の話し言葉と変わってしまうと客が面喰らうのじゃ。会計所の前に『御右筆所』と書き、『御次』程度でいいなり」
「はい、質問です。お客様はご来店の際には将軍様の服装ではないのですよね」
「客の殆どは町人じゃろうな。まあ、お忍びの方もおられようが‥‥」
「まあでは『織物問屋のご隠居』とか‥‥いいですね。ご一行が旅をしている時の仮の姿とか、庶民の人気者じゃないでしょうか」と言うアヤ。
「こちらの問屋のご隠居様は‥‥このお方をどなたと心得る? 諸国漫遊のご老公様であらせられるぞ! これでいい?」
この状況にあんぐりと開けるのは刹那と英之介。
「まあ中納言の漫遊は最早伝説なり。それに将軍様ばかりより老公様や御台様、若様も良いなり」
「大奥? 面白いじゃないの、お芝居の本職、旅芸人の本領発揮ね!」
改装にお金はかけられないのよね? とお結。
「大道具職人達の腕の見せ所なり」と呑気に茶を啜るあんず姫。
「‥‥となると建具を工夫しなきゃ。確か、廊下の襖には全部松の絵が描かれているのよね?」
「まあ、そういう所もあるなり」
「それがどんどんひとりでに開いてゆくの!」
「露が言っていた来訪を告げる鈴の紐を引くと自動的に開くようにしたら壮観じゃろうな」
羊羹を頬張るあんず。
「お庭はお白州のはずよ! 店内で刀を抜けないよう、殿中の陰には賭廉恥外套をはおってキセルをくゆらせた同心が張り込んでいて、お食事が泥水珈琲と喝丼しかでなくなるのよ!」
「‥‥‥それはお奉行様ではないなりか?」
「私は反対です。素人考えで何かをしても失敗するだけです。ましてや、大奥風茶屋だなんて‥‥‥一体何を考えているのですか?」
「大奥の現状は刹那を知っておるか? 無駄に女ばかり詰め込むから鬱憤晴らしに浪費に走るなり。それを補充する為に商人から賄賂を受取ったり、親が娘の良縁の望む純粋な気持ちを利用して一部の役人が金を吸い上げておるのじゃ」
襖に松の絵を描いているあんずが平然と言う。
妾は真の作法と言う物は何処ででも本人にその気が有れば身に着くと言うのを知らしめたいのもある。それに‥‥面白いではないか。民に妾達がどのように思われているか知る良い機会なのじゃ♪
刹那を見つめ、にんまりと笑うあんず姫であった。
「俺に手伝える事‥‥んー、サクラくらい?」
「同じ飯食いをするのであるなら他店の様子を見て来て下さい」と店主に言われる英之介。
「え? いいの♪」
綺麗なお姉さん達と楽しくお茶を堂々と後ろ指差されず飽きる迄できるである。
「勿論、自腹ですよ」
その辺はしっかりしている。さすが商人である。
そして英之介が入った萌茶屋は飢出印具怒零素(ウェディングドレス)茶屋。
「できちゃった! 責任とって!?」
店員の白椿のセイと戯れの遊戯をしたがあっさり遊戯に負けた英之介。
「『責任取って』って言われても‥‥」
「エンゲージリングの代わりにお茶をいっぱい奢って☆」
童女のような姿をしていても店の売上1位の白椿のセイである。
「駄目なら婚姻届に血判を押させるぞ!」
「それは勘弁してくれ。俺は綺麗なお姉さんが好きなんだーーーーっ!」
英之介の叫びが店内に響き渡ったのであった。
●新装回転?
「そう言えば白菊屋さん、改装したんだってね。みっちゃん」と客が言う。
「そうみたいですね♪」
にこにこ☆ しながら客の手を濡れた手拭きで拭く美優。
『西洋給仕茶屋☆盟努』の売上1位である。
「みっちゃんは、打ち掛けとか着ないの?」
「そうですねぇ‥‥私の南蛮服は見飽きちゃいました?」
「そんな事ないよ♪」
「目新しいだけの大奥茶屋なんて店も出来たみたいですけど、寄り道せずに帰ってきて下さいね☆」
にっこりと客を送りだす美優。
「行ってらっしゃいませ、ご主人様」
客がそそくさと白菊屋の方に曲って行くのが見える。
「大奥茶屋‥‥不足はありません」
メラメラとライバル意識を燃やす美優だった。
(「‥‥‥結局こうなるのね。わたしって、結構不運?」)
新装開店日は忙しいなり。と無理矢理打ち掛けを着せられた刹那。
鏡に写る中臈姿の己にびっくりする。
「‥‥‥これがわたし? ‥‥‥綺麗‥‥‥」
うっとり見つめる刹那。
「悔しいけど似合うのよね」と刹那に化粧をしてやったお結。
悪徳商人『越後屋』姿である。
「あんずの姫もまあまあ、ね」
「高貴な妾は何でも似合うであろう。それより品書きはどうなっておるのじゃ?」
『大名行列な送迎こうす』秋刀魚御膳
『本丸御殿』味噌鯖御膳
『七ツ時』蕎麦御膳
萌茶屋の殆どが即席料理と言う事なので、本格的な飯屋並の品書きを揃えたのだと言う。
「ふ‥‥妾の考えたお座敷遊びとで完璧なのじゃ!」
「頼もう! 新装開店したと噂に聞いたのだが?」
岳乃新の姿にぎょっとする店員達。
岳乃新は「★☆きゃぴりん☆★ *ご城下* 萌☆茶屋案内地図♪」の監修にも携わった萌茶屋鑑定人である。豪商故に金に物言わす遊び方に一部反発もあるようだが、名うての遊び人である。
『どうせ「お殿さま」や「将軍様」程度だろう』
高を括っていた岳乃新、最初の第一声を口の中で練習する。
『ほほう、その程度の台詞は聞き飽きてる───もっと趣向をこらさんと、厳しいな』
完璧だ。そう思った岳乃新の出鼻を挫いたのは、アヤである。
「旅のお方ですね、お疲れ様です。お食事になさいますか? お茶になさいますか?」
「‥‥食事を頼む」
「御煙草はお楽しみになられますか?」
「‥うむ」
「旅のお方がお一人様下御鈴(喫煙席)にお成り〜ぃ」
アヤが鈴を鳴らすと襖が一斉に開き、手の空いている従業員が一斉に手をつき御辞儀をする。
年寄り役の店員が向上を述べる。
「上様に置かれましては本日は御機嫌麗しく、この度の御渡りとても嬉しく存じます」
しずしずと食事の乗った台を掲げて露が岳乃新の前にやって来て、台を置くと一礼する。
箸を取る岳乃新。
「お待ち下さい! 毒が入っているやもしれません! わたくしめがお毒味を致します!」
懐から懐紙に挟んだ銀匙を取り出す露。
一口ずつ全ての食事に匙をつける。
「大丈夫、毒は入っていない様です。安心してお召し上がり下さい」
再び一礼をすると何事もなかったように去って行く。
「それでは、更に美味しく将軍様がいただけるように魔法を掛けさせて頂きます」
雛壇の一番奥には黄金の12星座と呼ばれる白菊屋売り上げ上位12人の店員が華やかな黄金の打ち掛けを纏った錦絵が飾られているのに気がついたのも食後の珈琲が出てた時だった。
食事中に特別遊戯時間になってしまったのだ。
座敷きにキラキラと輝く衣装を纏った腰元隊が現れ魔都剣賛場の踊りを披露し始める。
客の注目が一段高い舞台に集める。
「でわでわ『しょうぐん・さ・ま・ゆうぎー』なのじゃーーーー」
ドンドンと鳴り物を鳴らすあんず。
おハナが客の間を歩き、籤を配る。
「お手元に配られた籤を御覧下さいませ」
一斉に籤を開く客達。
1番と書かれた籤を引いた者が将軍様となり指定した番号を持つ者に『天下の大号令』をかけ、それに指定された番号を持つ者が従わねばならないという。
「えーっと、3番が9番に。ほっぺに接吻です♪」
「ふ‥‥まだまだ、だ」
岳乃新は内心突っ込む所があって良かったと思う。
座敷きから降り、厠を所望する岳乃新。
「ごしゅつざーーー」
その岳乃新の目の前に紫の風車がふっとんでくる。
「お怪我はありませんか?」
目を白黒させ頷くのが精一杯の岳乃新。
「特急で印篭波歩餌、御注文で入りまーす」
「おなーーーりーーー」
厠から帰って来た岳乃新。少し余裕が出て来たのか店員達と遊べる遊戯の品書きを見る。
「『帯独楽』に『夢扇遊び』?」
「『夢扇遊び』は壱から九までの的に扇を当てる遊戯です。全ての的に扇を当て見事完遂されれば豪華なご褒美を♪」
「ちゃちな景品等欲しくはないな。『帯独楽』を所望しよう」
腰元に連れられて舞台中央にやって来る岳乃新。
「本日の担当は、あんず姫になります」
もみ手をしながら越後屋姿のお結が遊び方を説明する。
頭の先から爪先迄遠慮なく品定めをする岳乃新。
先の帯解き事件を思い出し、顔を赤くするあんず。
「べ、別に貴方様が将軍さまだからってご奉仕するわけでぅえわございません」
少々声が裏返っている。
「中々だな。しかし、俺に童女趣味はない」
岳乃新の言葉にあんずの顔が『ぴきっ』と引きつる。
「止めて、帰るのは可能か?」
「 無礼者!!! 妾の何処が童じゃ! 席式明朗会計波〜黄泉比良坂に落ちるがいい!!」
伝票を片手にジタジタと暴れるあんず。
「楽しかった、また寄らせて貰おう」
「はい、お越しをお待ちしております♪」
白菊屋の暖簾を潜り、外に出る岳乃新。
(「侮りが足し‥‥大奥茶屋」)
店を出て、額の汗を拭く岳乃新。
「ふ‥‥面白い店が出来たわい」
がはははっ‥‥と笑い乍ら萌茶屋の並ぶ大通りを行く。
こうして大奥茶屋は繁昌したと言う。
「‥‥しかし、あんずは妙にお忍びやら大奥に詳しかったわね」
宿に戻り、湯上がりにかき氷を食べているお結が言う。
「妾はそのような事存じませぬ」
机に向かいそしらぬ顔で旅日記を書くあんず。
『○月○日、今日は庶民の憩いの場にて『萌え』について学ぶ。
男にとって大奥のような特殊空間は一種の幻想神話であり煌く星座であり桃源郷あるらしい。 男とは誠にノン気なものである』
‥‥‥‥‥‥‥‥現実を知らないって平和なのじゃ。
そう溜息を吐いた。
――完。