現代のミューズを探せ!南北アメリカ
種類 |
ショート
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担当 |
若月瑠乃
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
やや易
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報酬 |
0.6万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
02/16〜02/18
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●本文
「やっばぁ・・・・。音楽のポリュヒムニア役は系列事務所の瀬尾沙耶押さえても、他のモデルが全然足りない!」
西町アキは只今修行中の、掛け出しカメラマンである。
つい先程、師匠であるタエコ・渓から言い渡された、仕事の配役に頭を悩んでいる最中だ。
「今度、新しく出来たコンサートホール宣伝ポスターのコンペが来たの。艶やかな現代のミューズのイメージで参加ヨロシク♪」
コンペと言う事は、他にも参加者が居る・・・・。ここで勝ち抜けば、かなりのステップアップが望めるのは間違いない。
しかし、被写体がなければカメラもただの箱だ。
「こうなったら、他の役は片っ端から当たって探してみよ・・・もしもしぃ?」
アキは知り合いに電話して、参加モデル兼スタッフを探し始めた。
<募集>(女性・女性に見える人も含む)
カリオペ(書板と鉄筆:叙事詩担当)役
クレイオ(巻物:歴史担当)役
エウテルペ(笛:抒情詩担当)役
タレイア(喜劇の仮面・ツタの冠・羊飼いの杖:喜劇担当)役
メルポメネ(悲劇の仮面・靴・葡萄の冠:悲劇担当)役
エラト(竪琴:恋愛詩担当)役
テルプシコラ(竪琴:舞踏担当)役
ウラニア(杖:天文・占星術担当)役
※備考
ポリュヒムニア(音楽・幾何学担当)役は、西町の所属する事務所の系列モデル事務所から、瀬尾沙耶が採用となっています。
音楽(music)の語源でもある女神ミューズですが、本来は知的活動を司る9人の女神集団の総称となります。単数ではムーサ(Musa)・複数ではムーサイ(Musai)と呼ばれ、ミューズは後世にてムーサイから変化したものです。
絵画では主に、詩人がインスピレーションを受けている様子が描かれる事が多く、専門分野の女神が特出している事が殆どです。
ロケはオリュンポス山の頂上で誕生した神話に因んで、グランドキャニオンで行います。
●リプレイ本文
撮影場所のグランドキャニオンに一番近い、エンターテイメントの殿堂ラスベガス。今回の撮影の顔合わせ兼打ち合わせは、この街のスタジオの一室で行われた。
「カメラマンの西町です、今回は引き受けて下さって有難う御座居ました。あっちでダンボール運んでるのが先に決まってた‥‥」
「瀬尾沙耶や、よろしゅうに!」
所狭しと小さなスタジオ中に運び込まれた撮影の衣装や小道具を、整理し並べているカメラマンとモデルという場面はスタッフの少なさが感じられる。他にもスタッフは数名居るが表に出て来ないだけの様だ。
「それで、今回の撮影のスタッフとしてはどれくらいお手伝いすれば宜しいですか?」
辺りの荷物を見回しながら真っ先に西町に質問をしたのは、カリオペ役のLaura(fa0964)。不安になるのも無理は無いだろう。
「野外撮影の時の軽い食事とかは俺達で出来るけどな。後は雑用か‥‥?」
「飲み物や日焼け止めに毛布も必要ですわね」
現場で必要そうな物を並べ上げているのはエラト役の沢渡 操(fa1804)とクレイオ役のベルタ・ハート(fa2662)だ。
「撮影機材は何とかなるんだけど、私1人じゃ雑用までこなせないので‥‥すいません、お世話になります!」
「とりあえず、先に衣装と小道具決めへんか? サイズ直しも必要かも知れんし、足りん小道具があるか調べんと」
瀬尾がダンボールからアクセサリーや小道具を取り出している間に他のメンバーが衣装を物色している。
「それにしても‥‥凄い量の衣装で目移りしそうな位だわ」
「ドレスだけでもかなりの数だよねぇ。あ、この黒い奴かっこいい!」
手近にあったドレスを次々と体に合わせているのはエウテルペ役のマリーカ・フォルケン(fa2457)とウラニア役の深月沙奈(fa1155)。深月は早速自分の役のイメージに合ったドレスを見つけた様だ。裾から濃紺〜黒のグラデーションが入って夜空を思わせるロングタイトのイブニングドレス。星屑を思わせる様にラインストーンが散りばめられている。
「モデルのお仕事だと大抵衣装が決まってるし、撮影自体も久々で何だか嬉しいですわ。パンツスーツと巻きスカート‥‥悩みますわね、嬉しい誤算ですけど」
鏡の前でボトム部分を決めかねているのはタレイア役の桜 美鈴(fa0807)。
「皆さんドレスや私の様なワンピースが多いですしね‥‥これだと薄着で寒いかしら?」
キャミソールデザインのAラインワンピースを手に取り、生地を不安そうにしげしげと眺めているのはテルプシコラ役のオーレリア(fa2269)。袖が無く素材がオーガンジーの様な薄地では見た目にも寒々しく感じるのだろうか。
「着ちゃえば結構しっくり来るかも知れないですよ?」
ちゃっかりと黒い膝丈のゴシックロリータワンピースの試着を済ませ、小道具を選んでいるのはメルポメネ役の百瀬 愛理(fa1266)だ。仮面はあっさり決まった様だが、服に合いそうな靴選びに難航している模様。ダンボールを彼方此方引っくり返す勢いで探している様だ。
他のメンバーも其々即席のファッションショーを楽しんだ後、各々の衣装と小道具を決めた。
ローラはボックスラインの白いノースリーブワンピースに同色のコサージュと編み上げの靴。小道具は本の様なノートと万年筆を持つ事に。机と椅子も希望したが、机は重すぎるので折りたたみ式の木製の椅子を持ち込む事に。
操はグレーのロングドレスにバラ飾りが付いたバレッタ、靴は見えないと思うがと前置きしながらもハイヒールをチョイス。手には小さなハープを持つ事となった。
ビーは白い長袖のシンプルなドレスに皮のサンダル。髪を結い上げて造花の葡萄の房と砂時計を細工して付けてみたが、今一つインパクトに欠けるという事でローラからスカルフェイスを借り、一緒に飾り付けると言う事で落ち着いた。手には羊皮紙で出来た巻物を持つ事に。
マリーカは自前でフルートを持ち込んでいた為ドレス選びのみで終了。光沢感が高いシルクとオーガンジーのドレスの重ね着を選択。色は紫紺だが、光が当たると体のラインが透けて見えそうだ。
サナは太陽と月の飾りが付いた錫杖を探したが無かったので、杖にドレスと同色の布を巻いた上から太陽と月のモチーフの大振りなブローチを飾りつける事で間に合わせる事に。黒いベールで目以外を隠してしまいミステリアスな雰囲気を演出するつもりであったが、流石に表情が見えないので口元は西町からNGが出た。
オーレリーは白のドレスが多い事から、先ほど手にしていたワンピースの赤い物を選んだ。手には操と同じラウンドハープ、それ以外は何も選択しなかった。どうやら裸足で撮影に臨む様だ。
「うーん‥‥普段スタイリストが選んだ服での撮影に慣れちゃったかしら」
他のメンバーが次々と決まっているのに中々絞り込めない美鈴。
「パンツスーツはどないやろ? 他の人はドレスやワンピースばっかりやし、動き易いイメージで考えてるんやったらええと思うけどなぁ」
「‥‥確かにそうね、喜劇って言えば軽やかな道化師が定番だし。じゃあ、こっちにするわ!」
ホワイトレザーの繋ぎにブルーのストールを纏った沙耶の提案に納得し、最終的に絞り込んだのはビタミンカラーのパンツスーツ。小道具は顔を半分覆う仮面とツタの冠を複数と金属製の杖。こちらの方は衣装と違ってすんなり決まった。
衣装と道具が決まった所で全員撮影場所へ。
「で、撮影はどんな感じで進めるんだい? 進行に拠っちゃ雑用の内容も変わるだろ」
「こけら落とし関連ですから‥‥スタートって事で夜明をイメージしてるんですよね」
「じゃあ、結構タイミング図って撮影になるのか。それまでに雰囲気作りって事になるなぁ」
「ミューズって事だから、レクリエーションで皆で歌ったり踊ったりはどうでしょう? きっと楽しいですわよ」
操が西町に進行予定を確認し、日数の予定もあるのでバスではなく飛行機での移動となった。滞在先のホテルでは役作りと称してオーレリーが踊ったり、美鈴がツタの冠でジャグリングをしたり。ローラとマリーカに至っては其々即興で歌声を披露した。
撮影時間が迫る。夜明を狙ってホテルの近所の岩場に足を運ぶ。寒いのでテント持参だ。
「ふぅ‥‥これはまた冷えるわね。待機時間の間は何枚毛布があっても足りなさそう」
「日が射してないから仕方ないさ、スープでも飲んであったまれば良いだろ」
ビーと操はメンバー全員にスープと毛布を配り、体調を崩さないように気を配る。風邪を引いて撮影に支障をきたしては大変だ。
まずは1人ずつのテスト撮影が始まった。カリオペ、クレイオ、エウテルペ、タレイア、メルポメネ、エラト、テルプシコラ、ウラニア、ポリュヒムニアの順だ。
手に小道具を持ち、其々のイメージに合わせてポーズを取る。
そんなこんなで夜明の時間が近づいてきた。地平線の向こうから太陽の光が顔を除かせる。
「んじゃ本番備えてー!」
夜明の空をバックに朝日に向かう構図で其々の立ち位置を確認する。
ウラニアは朝日に向かい道先案内をするかの様に杖を突き出す。カリオペは憂いを湛えた表情でノートにペンを走らせる。クレイオは巻物に目を通し、遥か過去の出来事を思い出しながら未来に思いを寄せる感じだろうか。エウテルペはカリオペのノートを覗き込み、彼女の詩をからかう様子が伺える。タレイアは杖を片手に悲しみの表情を浮かべるメルポメネを笑わせようとしている。エラト、テルプシコラの伴奏に合わせてポリュヒムニアが歌を奏でる‥‥。
シャッターを切る音が静かな渓谷に鳴り響く。やがて、その音も止まった。
「撮影終了! とりあえずみんな体温めて!」
全員毛布に包まり少々早めの朝食を取る事にした。
ビーが手際良くミネストローネとスペアリブを作り全員に振舞う。軽食としてオーレリーがツナサンドとコーヒーを用意していたので、そちらも摘みながらの食事となった。冷えた体にミネストローネとコーヒーの温もりが染み渡る。
「そう言えば出来上がりのイメージ確認って時間掛かります?」
「直ぐ出来ますよ。早速見てみましょうか?」
サエからの質問にカメラをその場でノートPCに繋ぎ、イメージ画像を映し出す。
「これかしら? ラストの一枚って」
「みたいですね‥‥。朝焼けが顔に当たって綺麗だわ」
感想を口々に漏らす中、アイが何かに気付いた。
「これって、明けの明星? ほら、画面の右の方」
結構ハッキリと見える。
「狙おうと思ってもこんなにくっきりは写らないよな‥‥」
「今回私達は芸術の女神ミューズを演じた訳だけど、案外ここに写ってる美の女神のご利益があったりしてね」
「どうして?」
「金星ってヴィーナスでしょ? ヴィーナスって美の女神の事だもの」
マリーカの指摘が現実となったかどうかは、また別のお話。とりあえずは応募する為のポスター撮影は無事終了した。