まりと若様アジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
若月瑠乃
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1万円
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参加人数 |
8人
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サポート |
0人
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期間 |
04/25〜04/29
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●本文
「てぇ〜んてぇ〜んてぇ〜んまぁ〜り て〜んてぇ〜まりぃ〜♪」
舞台の中央で鼻歌混じりに毬をつく男が一人。
全体を見回しながら舞台見取り図を広げ、あちこちメジャーで寸法を測っている者も居る。
今回の舞台の総責任者の野田と美術主任の幡川だ。
「うーん‥‥セットは簡単に用意出来るだろうけど、問題は仕掛けだよなぁ」
「そうなんだよね」
幡川はセットの見本写真を片手にスケッチを描き出した。
「毬を手に屋敷の中を隠れ回る子供と、その子供を探し出そうとする大人達っと‥‥」
廊下に座敷に押入に箪笥。
隠れる場所の要素を持つセットの素材は幾らでもある。
「これをどうやって生かすかなんだよな‥‥」
「シナリオ自体は出来てるんだけどねぇ」
父親の殿様が土産に持ち帰った毬を気に入った若様が、毬つきで転がった毬を追いかけ広い屋敷を右往左往。若様が居なくなった為に大人達がお家騒動かと勘違い。慌てふためく様を面白がってそのまま隠れんぼし始める若様と探し回る大人達という感じの話になるらしい。
「最後は見つかった若様が殿様に怒られて終りでしょ?」
「怒られるけど、終り方はほのぼのって感じかな」
「「隠れんぼを上手く生かせる仕掛けのアイデア欲しいよなぁ‥‥」」
二人は見取り図を見ながら頭を抱え込んだ。
●リプレイ本文
「どう? アイデア集まったかい?」
舞台の仮セットを前にして書類の束を見比べ唸っている幡川に、野田が肩を叩き声を掛ける。
「‥‥ああ、野田さん。幾つかは集まりましたよ。今どれが使えるかなと思ってセット見ながら考えてます」
「へぇ、どんなのが来たんだい?」
「だったら、アイデア出した本人達に会って来ます? その方が自分が説明するより早いですし」
「もちろん! 一人ずつ順番に話を聞いてくるよ」
美角あすか(fa0155)のアイデア。
「犬小屋、重ねてある布団の隙間、飯炊き釜の中とかはどうでしょうか。コントっぽくいくのなら‥‥すぐそこに居るのに探し手には見えてないとか」
見取り図の部屋の隅にマークを付けながら、一つ一つ説明していく。
「布団の隙間ってのは結構盲点だね。それは押入から覗き見って事で良いのかな?」
「そうですね、布団が部屋に置きっ放しというのもオカシイですし」
「‥‥なるほどね。他には何かある?」
セットの手前側に当たる部分にスペースを書き込むアスカ。
「ここの廊下部分ですけど、一部鴬張りって事にするのはどうかなって思うんです。戸も大人が開け閉めすると音が鳴る感じだと、若様が次の隠れ場所に移動する合図になりません?」
ビスタ・メーベルナッハ(fa0748)のアイデア。
「私は押入が気になるわね。押入から床下なり壁の中なりに抜ける通路へ入れたら、面白いと思わない?」
「忍者屋敷っぽい仕掛けだな‥‥」
「もし作るならこの辺? 途中に覗き穴があったりとか。で、観客席から隠し通路の中の様子が見える様になっているっと」
図面の部屋と部屋の仕切り部分に小さな部屋を書き加える。
「若様役の子が入り込むまでは幕か何かで通路を隠しておいて、入り込んだら外して観客席から見える様にすればどう? 仕掛けがバレる可能性も減るんじゃないかしら」
「まさに覗き見だな」
「ある程度経ったらそこからそのまま外に出て、他の隠れ場所に移動‥‥ってのも使えると思うわ」
麻倉 千尋(fa1406)のアイデア
「武家屋敷だから、そんなに大袈裟な仕掛けは出来ないと思うのよね。忍者屋敷ならいろいろ考えつくんだけど‥‥。」
「例えば‥‥どんな感じ?」
観客席の正面になる部分を指差して、一つ一つ説明し始める。
「ここの壁なんだけど、一方向にしか回らない回転式の隠し扉ね。普段は壁なんだけど両面に同じお面が飾ってあって、お面の目の所に穴が空いてて外の様子が見えるの。」
「結構これはインパクト強いなぁ。正面からだろう?」
野田はまくらんの指差した部分にマークを書きこむ。
「えっと、他には箪笥の陰から遠眼鏡がにゅーっと出て来て、大人が気付いて捕まえた時にはハズレって紙が付いてたりなんてのもどうかなぁって」
木野菜種(fa1681)のアイデア。
「座敷とか部屋に置いてある屏風って、二曲だったり四曲だったりするでしょ? 二曲を例にして言うけど、探す大人1人が一方の裏を見てる時、若様は反対側からひょっこり顔を出して覗いてる。大きめの屏風にしたら、これって説得力でると思うのよね。大きいと1人じゃそうそう動かせないもん」
そう言って図面の部屋の端の部分に屏風の絵を書きこんだ。
「他には高そうな壷に隠れるとか。豪華な格上の家からの贈り物だったりしたら、大人はそうそう近寄らないような‥‥って、シナリオまで踏み込んだ事言ってる気がする。大丈夫ですか?」
「ああ、気にしなくて良いよ。シナリオって言っても話の流れしか決まってないからね。充分参考になったよ」
有木 孝仁(fa2615)のアイデア。
「紐を引っ張ると天井が降りてきて、それに乗ってゴンドラみたいに屋根裏に移動出来るとか、非現実的な仕掛けがあってもいいと思うのですが如何でしょう?」
「うーん‥‥結構大掛かりだなぁ。場所としてはこの辺かい?」
野田が指した部屋の中央部分を見て、タカが頷く。
「そうですね、その辺が一番分かりやすいかと思います。鎧の中に入って人をやり過ごしたり、鎧を着たままだるまさんが転んだの要領で‥‥と、これは重すぎるな。屋内から庭、またはその逆にスライダーの様な通路を作るとか、若様が観客席に逃げるとか、天上に張りつくとかも面白そうな気がします」
「観客席に逃げる‥‥ねぇ。そこまでは考えなかったな」
「まぁ、一般的には好まれない事も多いので、使わなくても良いですけどね」
サクラ・ヤヴァ(fa2791)のアイデア。
「あたしだったら子供の目線でかくれんぼする場所を考えるよ〜☆ 階段にもなる箪笥の中かな〜。昔だったら良くあるでしょ? 後はご飯を炊く釜の中とか‥‥食料庫とか」
「釜の中は他にも提案があったけど、食料庫かぁ。セットの中だとどの辺だい?」
野田は図面をサクラに見せながら、マークを付けようと準備する。
「えっとね〜、この辺? 部屋の外だから」
すかさずサクラが指差す所にマークを書き足す。
「天井裏ってのもあるんだけど、子供の力だけじゃ上がるの無理だろうし〜。危険な場所ってのはNGだろうから、やっぱり階段箪笥かな☆ まさかこの下に居るなんて思わないでしょ?」
堀川陽菜(fa3393)のアイデア。
「基本は木陰の中でしょうか。木のかたまりを持ってすすすって移動するのって、いかにもって感じで微笑ましくありません?」
「まぁ、古典的だね」
「観客の方に指摘して貰えそうですからギャグにもなりますし。後は箪笥やつづらがこの時代の家具だけど、箪笥は少ないと思うんですよ。後は最後に布団の中へ隠れて、そのまま眠ってしまって見つかっちゃうオチなんて‥‥子供時代のかくれんぼを考えるとこんな感じでしょうかね?」
ハルナは話しているうちに何かを思い出したのか、遠い目をしている。
「それは経験談と受け取って良いのかい?」
「ええ、うちは7人兄弟で良く付き合わされましたから‥‥」
春雨サラダ(fa3516)のアイデア。
「えっとですね、若様が隠れる位の大きさの衣装箱用意して、紐を引っ張ると中から小窓が開くんです。置場所は‥‥この辺かな、舞台の隅っこ」
ハルサが指差した場所は、一番舞台の端になる。
「目立たない場所だけど‥‥」
「オーソドックスな箱だから見つかりにくいかもと思って。様子を伺って見つかりそうになったら、他の人が提案した場所に即移動だぁって事ですね」
「ふぅ‥‥一通り聞いて来たよ」
「どうでした?」
野田は幡川に直接聞いてきた内容を話す。
「音が鳴る戸と廊下は結構目立たないかな」
「うん。効果音を入れながらだね」
「お面の付いた壁と隠し通路っていうのは1セットで使うと面白そうかも。こうすれば‥‥どうかな?」
図面の正面の壁と仕切り壁のスペースを繋ぐ指定を書き入れる。
「あ、良い良い。お面の所から仕切り壁に移動だね。これなら直ぐ出来そうだよ」
「布団で寝てしまうオチってのもほのぼのしてて良くない?」
「後は屏風と箪笥と衣装箱っていうのも、配置次第では面白いよなぁ」
「天井は難しいけど、観客に隠れるってのは盲点じゃないかな」
「いっそこの、木を持って隠れて移動っていう奴。観客を木に見立ててしまうか」
「台所の釜と食料庫ってのは、ちょっと難しいかな?」
「うーん、どうでしょうね。釜はともかく食料庫は蔵という事にしたら、物置の中のモノって事で釜もこっちの鎧も使える気がするけど」
難航していたセット作りも、この様子だと完成するのも時間の問題になりそうだ。