巨乳戦隊パインポインアジア・オセアニア
種類 |
ショート
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担当 |
やなぎきいち
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
2Lv以上
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難度 |
やや難
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報酬 |
3.7万円
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参加人数 |
10人
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サポート |
0人
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期間 |
12/01〜12/05
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●本文
パインポインはコスチュームの名前だと、心無い視聴者は言う。
なぜなら、子供向けの戦隊モノで言えばレッドの位置にくる紫ラメを中心に、ピンク・ゴールド・シルバー・ブラック・ブルーなど様々な色のコスチュームが用意されているのだ。
デザインは二種類。胸の谷間を強調するタイプと、下乳チラリが売り物のタイプ。
時折り羽があったりするが、基本的にはついていないようだ。
それから、顔の中心にハートが来るありきたりなデザインのフルフェイスヘルメット。獣耳がついていたりすることもあるが、こちらも基本的にはまぁるいフォルムの安っぽい被り物だ。
──顔が見えないじゃないかって?
巨乳戦隊パインポインに必要なのは顔ではない!! 巨乳のみ!!
垂れた巨乳であってはならない、しっかりと形を保った美しき巨乳だ!!
そして、決して美しさを捨てた爆乳であってはならない!!!
ネット上などでは『毎回紫ラメ以外の中身のメンバーが違う』という批判も多いが、コアなファンは谷間や下乳でその日のメンバーを見分ける楽しみがあって良い、と言う。
そして何より、乳しか見ていない大部分の視聴者にとっては、中に誰が入っていようと、美しき巨乳が愛でられれば構わないのだ。
「‥‥なんか、あたしってば貧乏くじっぽくない?」
まぁ、社長の命令じゃ仕方ないけどさぁ‥‥
ぶつぶつと呟くとそのたわわな胸がぷるるんと揺れる。きつめの顔立ちは印象的で愛らしいが、残念ながら顔立ちはパインポインには関係ない。顔が売れないテレビ番組など、貧乏くじそのものだろう。
彼女は水端リューネ、もも☆きゃぶで売り出し中の小悪魔系アイドルである。
もちろん! 当然!! もも☆きゃぶの売りである巨乳は健在‥‥つんと上を向いた美しき巨乳の持ち主だ!!
リューネはぐるりと周りを見回した。セットにお金をかけないため、撮影はロケ。窮屈なスタジオよりは良いと思ったけれど──プロデューサーの話を聞けば、どこかの商店街とか、デパートの屋上とか、ゴルフ場とか、パッとしない場所ばかり。今日はゴルフ場を借り切っての撮影になる。
しかし、そんな身近なロケーションが人気の一端なのだそうだ。
もちろん、一番の売りは美しい巨乳!!
その他に、時折り展開される派手なアクションも人気の秘訣のようだ。
これが初めての代替わり──手渡された紫ラメのコスチュームは、リューネが二代目の『顔の無い主役』であることを示している。
「こんなシケた仕事で危険が伴うんだもんね‥‥ほんと、やってらんない〜」
リューネの前任者は度重なる怪我で戦線離脱──文字通りの戦線離脱である。
‥‥そう、人気の秘訣である『派手なアクション』は出演者やスタッフにとっては命をかけた戦いなのだ。
顔が見えないのを良いことに羽や耳を生やしていることの多いパインポインは度々ナイトウォーカーの標的となってきた。不意打ちの襲撃であるから、その時のメンバーで対応するしかない‥‥故にスタッフまで全て獣人で固められた番組なのである。
「要するに、囮ってことだもんねぇ? まったく、物好きだよね〜、皆‥‥」
リューネは呆れたように溜息を吐いた。
●リプレイ本文
●キョニューンのアジト
その日は唯一のスタジオロケとなる秘密結社キョニューンのアジトの撮影が行われていた。洞窟を模した薄暗いセットの中には女を収めた試験管状のカプセルがいくつも横たわり、その傍らには狐の獣人と狐の半獣が佇んでいた。
「ふふふ、瑞々しい肉果が五組十個‥‥」
来たるべき宿敵との対決を思い、じゅるりと垂れた涎を拭うビスタ・メーベルナッハ(fa0748)扮する妖狐怪人グレイフォックス。獣そのものの外見だが、浮かんだ恍惚とした表情も狩人の眼差しもとても演技とは思えず茶臼山・権六(fa1714)は良い仕事であるな、と満足げに目を細めた。
「品が無くてよ、グレイフォックス」
冷徹な声は百獣将軍グラマラスこと稲森・梢(fa1435)のもの。獣の骨を思わせるコスチュームに身を包んだ梢、巨大な試験管のようなカプセルに近付き、そっと触れた。
「我がキョニューンの科学力にかかればパイポイスーツをコピーするなど造作もないこと‥‥さあ目覚めなさい、龍剣士ダークパイン・ブラックデビル!」
スモークが溢れ、ダークパイン役の龍 美星(fa2426)がゆっくりと姿を現した。そして恭しく、梢の前に跪いた。
「パインポインの乳、必ずや百獣将軍様の御前に並べて見せマショウ」
ちょっと訛ってしまったのはご愛嬌☆
「──カット!」
巻 長治(fa2021)のハスキーな声が響くと、残りのカプセルから次々に女性陣が姿を現した。
「動かないでいるっていうのも疲れるものね。しかも狭いなんて」
大きく伸びをするとたわわな胸が軽快に弾む。形は整っているのだが凛華(fa1528)の爆乳にはパインポインの衣装が似合わないため、自前の谷間強調型リングコスチュームをそのまま着用。プロレスラーのリングコスなんて顔同然よとリューネの機嫌は非常に、非っっ常ーーーに、悪い。
「代役の覚悟はしてましたけど‥‥こんな所で加わるなんて」
真っ赤な顔の日向 美羽(fa1690)はADとして加わっていたのだ。谷間タイプではなく下乳チラリタイプを選んだのだが、胸元が見られるのとはまた違う恥ずかしさがあるようだ。
落ち着いたワインレッドもエナメル質の艶やかな素材が光沢で巨乳を彩り、エロティックで恥ずかしい。
「何ていうか‥‥皆さん、すごいですよね」
堂々たるパインポインたちを見渡し感嘆の息を吐く。その割り切りは流石プロ、美羽に真似するのは難しそうだ。
「堪能するのも良いですけれど仕事ですよ美羽さん。次のシーンです、レフ版を用意してください」
「すみません、監督! 今すぐ!」
分厚い眼鏡をふたたび身につけ、美羽はADというよりは雑用の領分へと戻った。
●幕間〜我侭姫リューネ〜
「リ、リューネさん、あの‥‥!」
途切れがちの涼やかな声がどこか憮然としたリューネを呼ぶ。勇気を出して夏姫・シュトラウス(fa0761)が声を掛けたのだ。
「‥‥何?」
振り絞った勇気は不機嫌なリューネの視線で敢無く散った。
「‥‥か、乾燥していますし、喉が荒れるといけないと思って‥‥すみません‥‥」
しょんぼりと肩を落とす夏姫の手にポットがあることに気付き、リューネはツンと顎を上げた。
「紅茶以外飲まないわよ。ミルクはたっぷりよ」
「‥‥はいっ!」
湯気の立つ紅茶を注いだ夏姫の手からカップを受け取──らず、そのまま胸を揉みしだくリューネ。
「‥‥なっ、何するんですか!」
「ふっくらとした御椀型‥‥弾力も上々ね。合格よ」
「何がだよ!?」
上機嫌にカップを受け取ったリューネに、我慢できずブリッツ・アスカ(fa2321)が勢い良く突っ込んだ!
そんな反応を思い切り無視し、強調された胸の峡谷を検分するように眺めて視線を顔へと上げる。強調された金のコスチュームに負けぬ意志を思わせる面立ち、引き締まった身体に弾む胸──リューネは破顔した。
「これは‥‥ひょっとするとひょっとするのであるかな?」
権六は頭を撫で上げた。どうもリューネから自分と同じ臭いを感じるような‥‥
●巨乳戦隊パインポイン
毎度派手派手しいコスチュームのパインポイン。
パープルラメのリーダー、パイン・パープルを筆頭に、どこか照れが抜けないパイン・ホワイト、今までのパイポイとは異なるコスチュームを纏うパイン・ブラック、ちょっと天然気味のパイン・ブルーに血気盛んなパイン・ゴールドと今回も個性豊かなパイポイが勢揃い☆
けれど派手派手な彼女たちの活動は様式美とサービスカットという名の地味な行動から始まる。
「皆、今日こそケリをつけましょう! 先ずはキョニューンを見つけるのよ!」
「ええ!!」
パープルの言葉に力強く頷くパイポイ。その反動だけでたわわな果実が振動するのだから素晴らしい。
「いないわねぇ‥‥」
明らかにありえない茂みを覗くブラックとゴールド。獣のように這う二人の谷間は胸の自重で更に強調され、コスチュームから自慢の巨乳が溢れんばかり。
「居ませんわ」
一方、生い茂った木の枝をチェックするパイン・ブルーことリスフィア・マーセナル(fa1879)。
「‥‥あら、今何か動いたような」
何か動いた気がして目を凝らそうと、眩しい木漏れ日を遮るように手を翳すとコスチュームが腕に引かれ下乳どころか砲弾型の巨乳が大きく露出☆
「ブ、ブルー! きゃあっ!」
我が事のように慌てブルーの胸を隠そうとしたホワイト、大きく開いた胸元の布地が茂みの枝に引っかかり‥‥ポロリ♪
「き、きゃああ!」
胸を隠ししゃがみ込んだ夏姫、そこに潜んでいた百獣将軍グラマラスとバッチリ目が合った!
「出たわね、グラマラス!!」
「オーホホホホ!! さすがパインポイン! けれど‥‥今日こそお前たちの巨乳を喰らってやるわ、行け狐娘怪人グレイフォックス!」
名を呼ばれグレイがブルーの見上げていた木の上部からバク宙をしながら飛び降りた! トサッと小さな音を立てて着地すると、地を蹴り側転バク転ひねり宙返り!!
「コォォォォォォォォン!!」
「やるな! だが俺たちだって負けねぇぜ! 喰らえ、パイン・トルネード!!」
手近な木の幹を蹴りハイジャンプをしたゴールド、きりもみ回転ドロップキック!!
「ブラック、サポートを!」
「ええ!」
ブルーが攻撃の体勢に入る! その背へブラックが刀を振るった!
「きゃああ!」
「偽者!? ブラックを選ぶなんてその良い趣味を後悔することねっ!」
ブラックのハイキックがダークパインへと立て続けに炸裂、しかしダメージが通らない!!
「お前達の力はそんなものか。私の名は龍剣士ダークパイン・ブラックデビル! 貴様等の力を分析して作られた私がお前達を倒す!」
腰に下げた剣へ手を添えるダークパイン。二人のブラックに挟まれた空気が張り詰める。
「ブラック!! 喰らえ、ホワイト・アウト!」
ダークパインの背後からホワイトが助走なしのドロップキック!
「ぐあ!!」
「これでどうかしら、ブラック・ステルスシューティング!」
バランスを崩した隙を逃さず、ブラックのブラジリアンキック!
「くはっ!!」
「この二人は逆の方が良かったかもしれませんねえ」
自前のリングコスを纏う凛華とパイポイスーツを纏う美星の方を見比べ、長治が呟いた。
●囚われたパイン・パープル
押されるキョニューンはパープルへ狙いを定めた!
ダークパインの放った足元を狙った痛烈な一撃にパープルが深いバンカーへと転落!
「美味しそうな肉果‥‥」
隙を逃さず目の前の獲物を組み敷いて、垣間見える倒れてもなお形を失わない下乳を滑やかな腹部を獣毛に覆われた右手でそっと撫でる。粟立つ肌に目を細め紅い舌を覗かせるグレイ、その左手はフレーム外なので何処に触れているのか視聴者の妄想任せ。徐々に上気するパープルの頬にグレイ──いやビスタの忍耐力が限界に達したとき、ダークパインが叫んだ!
「押さえろグレイ! あれをやるぞ!」
「ちっ‥‥あら、逃がさないわよ」
力の緩んだ瞬間に立ち上がろうとしたパープルへ足を絡め捕らえると、すっと背後に回りこみ巨乳を擦り付けるように羽交い絞めにするグレイ。ついでとばかりにうなじに舌を這わせたのはビスタの趣味全開なアドリブ。
「──ッ!!」
身を跳ねさせ表情を歪め、逃れようと足掻くパープルの顔へと空を切り飛来したダークパインのフライングバストアタック!
「ヘルズ・バスト・クラーッッシュ!」
「きゃあああ!!」
「パープルッッ!!」
「──カット!」
長治の声で長治がカメラを止める。忙しいのは手が足りていないから。けれど‥‥
「何というか、カメラマンは役得だったかもしれませんねえ。我ながら素晴らしいサービスシーンを撮影した気がしますよ」
爬虫類の瞳で女性陣を眺め薄い唇を舐め上げた長治──その一瞬だけ、確かに一視聴者と化していた、ような気がした。
●幕間〜問題児の思考と嗜好〜
何故か再び機嫌を損ねたリューネ。彼女が機嫌を直さねば撮影が再開できず、長治にまで不機嫌が伝播したようだ。
「例え経緯がどうであれ、一度引き受けた仕事に全力で取り組めない人間はプロではない」
「それなら代役でやったらどう?」
もも☆きゃぶの一押しアイドル、リューネ。この気の強さと我侭っぷりが売りなのだから手が着けられない。そもそも、つい先ほどまでは機嫌良く仕事をしていたではないか。
「なあ、何がそんなに気に入らないんだよ?」
ずばりと核心を突いたアスカを視線で捕らえ、視線を逸らして溜息を吐いた。
「あの‥‥どうぞ、リューネさん」
攻撃技を炸裂させているときとは打って変わったおどおどした態度の夏姫が心を落ち着かせようと甘いミルクティーを差し出した。その意図を知ってか知らずかカップを受け取ったリューネに歩み寄ったビスタ、その耳元で何かを囁いた。返すように何かを呟くリューネ、二言三言交わしていくうちに機嫌が直ったようだ。
約束を交わすように小指を絡ませ離れたビスタへ、スタッフたちが駆け寄った。
「結局、リューネさんはなんで機嫌を損ねていたんですか?」
「ああ、大したことじゃなかったわよ。押し倒されるより押し倒す方が好みなんだって」
「‥‥些事であるな。機嫌が直ったのならば、とりあえず問題はないのだが」
「個人の趣味に口を挟むつもりはありませんが‥‥その程度で撮影を中断させなくてはならないなんて」
何とか堪えた権六とは対照的に、溜息を吐いた長治。小言を投げるために目を細め問題児へと足を向けるのを必死に美羽が押し留める。
「押さえてください、押さえてください監督っ。これ以上撮影が遅れると取り返しがつきません〜〜っ」
突きつけられた現実に屈したか、はたまた抱きついた美羽の柔らかさに中てられたか、ポンとADの肩を叩いた監督は自分にもミルクティーをと夏姫に所望した。
振舞われたミルクティーで不本意なティータイムを過ごしつつ、美羽がぽつりと呟いた。
「それにしても‥‥ビスタさん、何を約束したんでしょうね?」
──いやそれはバレバレだろう。
説明するのを嫌って男性陣は心の内で突っ込んだ。
●甲虫将軍ヤナギングの使者
それはパープル救出というクライマックスシーンに起きた。
「パープルが欠けていてもやるしかありません、それしか救う手立てはないのですから!」
「ブラックの知性を!」
「ホワイトの純心をっ!」
「ブルーの慈‥‥ととっ‥慈愛を!」
「ゴールドの勇気と共に!! くらいやがれ、パイポイ・ストライクゥゥッ!!」
ブルーが一瞬落としそうになったがなんとか全員の手を介すバレーボール。着地するタイミングにあわせ、権六が爆薬のスイッチを入れる!
──ドォン!
「きゃあああ!!」
吹き飛ぶキョニューンたち、そして吹き上がる砂塵!!
バンカーから立ち上る砂煙の中心に、巨大な甲虫が実体化していた。
「おのれ、甲虫将軍ヤナギングの手先め! 私までパインポインと共に始末する気か!?」
「く、放せナイトウォーカー! や、やめるアルよ、脱げちゃうぅっ!」
美星の声から演技が薄れ素の悲鳴に変わる。時期外れの巨大甲虫は獣人たちを喰らうため、鉤状の足で邪魔な布を剥ぎ取り始めたのだ! たちまち美星と夏姫が戦線離脱!
「アテレコが大変そうですが、番組的に美味しいカットが撮れそうですよ」
どこか余裕でカメラを回し続ける長治。しかしその余裕も足が下半身を覆う布地へ掛かると消え失せた。
「や、やめろ! 駄目、下は駄目!! ってリューネ、どこ触ってるんだぁぁっああん!!」
アスカの声が揺らぐ。
「死守してください、皆さん。放映できなくなってしまいますよ! 権六さん、美羽さん!」
撮影を数台の定点カメラに任せ、権六と美羽も獣の姿へと戻りバンカーへダイブ!
「美星さん!」
半獣化し翼でブルーはあられもない美星をカメラから庇う。そして獣化した美羽が背中の斑点を晒し甲虫の牙から美星を守る。一方ビスタは敵を引きつけ身軽な動きで弄ぶ!
「好きにはさせないのである!!」
熊と化した権六の、金剛力増で更に一回り大きくなった腕が巨大甲虫を捕らえた! 文字通りのベアハッグで締め上げる!!
「リューネさん! 仕事よ!」
放られた龍剣士の剣を受け取ったリューネは蝙蝠の翼を生やし滑空した!
──パリィン‥‥
獣人たちはコアの砕ける音を聞いた、気がした。徐々に変死体と化していく蟲の死骸を、専門のスタッフが手馴れた様子で始末していく。
「決めポーズはアテレコの日に撮影、でしょうか」
「そのようですねぇ‥‥コスチュームの補修、お願いいたしますよ」
ADの言葉に監督が頷いた。 長治が気軽に引き受けた編集は、どうやら意外な重労働のようである。