トライアングルハートB南北アメリカ
種類 |
シリーズEX
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担当 |
ゆうきつかさ
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芸能 |
1Lv以上
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獣人 |
1Lv以上
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難度 |
普通
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報酬 |
1.3万円
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参加人数 |
6人
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サポート |
0人
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期間 |
12/02〜12/07
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●本文
<募集職種>
正統派の執事役から邪道な執事役まで幅広く募集しています。
<応募資格>
やる気のある方なら、誰でも応募する事が出来ます。
年齢制限などはありません。
<ドラマの内容>
このドラマは脚本家のカラーによって、未来や過去に飛ばされたり、異世界で戦ったりする場合がありますが、近所でドラ焼きを買ったりするだけのシナリオも出来ます。
基本的には1話完結のドタバタもの。
ただし、スポンサーの要望を第一にするため、必ずしも要望が通るわけではありません。
<基本設定>
主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
その結果、メイドや執事達が巻き込まれ、毎回事件が起こっている。
<お嬢様の設定>
名前:パトリシア・ローズ
容姿:西洋系の顔立ちをしており、金髪、碧眼、縦巻きロール。
見た目は育ちのいいお嬢様風。
性格:我侭で高飛車。好奇心旺盛で甘えん坊。
寂しがり屋で意地っ張り。自己中な性格で口が悪い。
口調:わたくし、あなた、ですわ、でしょう?
年齢:17歳
<決めて欲しいもの>
自分の演じる執事がどんな設定なのかを教えてください。
アンドロイド型や魔物型でも構いません。
ただし、実在する歴史上の人物や有名キャラクターなどを使用しない事ようにお願いします。
著作権の関係上、色々と問題が出てくる場合があります。
執事達はタロットカードを使用する事で魔法を使う事が出来ます。
最初に配布されるカードは一枚。
キャラクターの性格によって、正位置か逆位置で使用する事が出来ます。
どちらかいいか希望を書いた上で、自分が所有するカードを教えてください。
<テンプレート>
役名:演じる役名を記入。
性格:演じる役の性格を記入。
特徴:演じる役の特徴を記入。
見せ場:自分の見せ場を記入。
所有カード:所有しているタロットを記入(表か裏のみ)。
特殊能力:カードを使用した時に発動する能力を記入。
(注意:内容によっては修正される場合があります)。
<今回のシーン説明>
・昼下がりのティータイム
執事達は庭で紅茶を飲みながら、クッキーを食べてくつろいでいます。
基本的には休憩時間。
慌てた様子でお嬢様が登場するまで、執事達はのんびりとしています。
場合によっては妙なものを目撃するかも知れません。
・カード盗難事件
お嬢様の所有しているカードが行方不明になります。
彼女の所有しているカードは特別仕様のため、特殊な訓練などをしなくても、カードを使用する事が出来ます。
そのためカードを悪用されれば、その先に待っているのは破滅です。
お嬢様は執事達にカードの奪還を命じます。
・悪の秘密結社
執事達の目撃情報を纏めた結果、悪の組織の工作員が、ゴミの清掃業者に紛れて、屋敷の中に忍び込み、お嬢様のカードを盗み出した事が判明します。
悪の組織の工作員(4人組)は車に乗って逃走中。
すぐに追いかければ、間に合います。
・ハッピーエンド
戦いの末、何とかカードを回収し、物語はハッピーエンドで幕を閉じます。
●リプレイ本文
●キャスト
マコト(見習い執事):皇・皇(fa0043)
ルース(執事兼庭師):倉鈎織佳(fa0289)
ウォルト(アンドロイド執事):縁(fa0613)
九条・典巧(日本人執事):三条院真尋(fa1081)
リャン(妖狐執事):羅蓮華(fa1695)
グレイ(ウサ耳執事):壬 タクト(fa2121)
●シーン1 昼下がりのティータイム
(「ふっ‥‥、世の中こんなものだよな・・・・」)
魂の抜けた表情を浮かべ、マコトが疲れた様子で溜息をつく。
‥‥気がつくと身体を縄で縛られていた。
後頭部に痛みを感じる事から、鈍器か何かで殴られて今まで気絶していたのだろう。
‥‥未だに頭がズキズキする。
マコトは生まれつき運が悪かった。
事件が起これば必ず巻き込まれてばかりだし、マコトの行く先々では嫌というほど事件が起こり続けていた。
そのため子供の頃は『不幸の代名詞』として恐れられ、『マコトを見たら気をつけろ』と言われていたほどだ。
ある意味、ナマハゲよりもタチが悪い。
唯一、幸運だと思う事は、事件に巻き込まれても決して致命傷を負わない事である。
そのおかげで今までどんなトラブルに巻き込まれても、必ずマコトだけは生きて帰って来たからだ。
(「まぁ、死ぬほどツライ目には遭っているような気がするけどな‥‥」)
お約束のように今回も事件に巻き込まれてしまったらしく、辺りには銃を構えた清掃員が3人ほど座っている。
‥‥マコトは彼らに見覚えがあった。
お嬢様の屋敷に来ていた清掃員だ。
(「‥‥清掃員がなぜ俺を‥‥」)
ズキズキと痛む頭で、マコトが今までの出来事を思い出す。
薄っすらと涙を浮かべながら‥‥。
「ねえねえ、さっきガレージで妙な連中を見たんだけど大丈夫かな〜?」
紅茶を運んでいる途中で妙な清掃員と遭遇し、リャンが不思議そうに腕を組む。
やけに清掃員がソワソワとしていたため、気になって声を掛けてみたのだが、オドオドとしているだけで、何も答えようとしなかったらしい。
「そう言えばそんな人達もいたわね。お嬢様の部屋からゴミ袋を持って帰っていたようだけど、それ以外は特に怪しい所がなかったわ」
テーブルの上に手作りのクッキーを置き、九条・典巧が清掃員と遭遇した時の事を思い出す。
あれは典巧が台所のゴミを出すため、ゴミ捨て場に行った時である。
‥‥お嬢様の部屋からゴミ袋を持った清掃員が出てきたため、典巧が『ご苦労様』と声をかけたのだが、いきなり悲鳴を上げてその場から逃げ出してしまったらしい。
「‥‥あれ? その人達なら私もここに来る途中で見ましたよ? 随分と急いでいるようでしたけど‥‥。何かあったんですか?」
記憶の奥底に沈んでいた出来事を思い出し、ルースが紅茶を口に含む。
ルースの記憶が確かなら、清掃員は全部で4人。
みんなソワソワとしており、屋敷の中で迷子になっていたようだ。
そのため彼が道案内をしようとしたのだが、清掃員達は酷く動揺しており、自分達だけで帰るから気にしないでくれ、とルースに答えた。
「まぁ、何かあったらお嬢様が騒ぐだろ。せっかくの休憩時間なんだから、もっと楽しい話をしようよ。笑える話とかさ」
柔和な笑みを浮かべながら、グレイがクッキーをかじる。
休憩時間が終わった瞬間、グレイ達はお嬢様の命令でキリキリと働かなければならないため、休憩時間も有効的に使わなければ意味がない。
お嬢様の我侭で何をするのか分からないのだから‥‥。
「でも、ちょっと気になるわね。本当に何もないのかしら? ゴミの回収日はまだ先のはずだし、わざわざお嬢様の部屋に入っていくなんておかしいわ」
他の執事達の無理矢理お茶会に連れて来られた事もあり、ウォルトが奇妙な清掃員達の話題に食いついた。
目撃情報を纏めていくと、明らかに不審な点があるため、念のため調査をしておく必要があると思ったらしい。
「‥‥仕方ない。そっちは俺に任せてくれ。トイレに行くついでにな」
苦笑いを浮かべながら、マコトが駐車場にむかう。
その時はあんな事件に巻き込まれるとは予想も出来ず‥‥。
ただ様子を見に行こうと思っただけで‥‥。
「‥‥この車だな」
清掃車はすぐに見つかった。
既にエンジンが冷えているため、車を止めてからしばらく経っている事が分かる。
「‥‥あれ?」
清掃車に違和感を覚えたため、マコトが車を調べていく。
本物の清掃車なら後ろからゴミを潰して積んでおく事が出来るのだが、清掃員達が乗ってきた車にはそれがなく、代わりに人が乗り込めるようになっている。
「見ぃ〜たぁ〜なぁ〜」
誰かがマコトの肩を掴み、恨めしそうな声が辺りに響く。
「ま、まさか‥‥」
‥‥嫌な予感が脳裏を過ぎる。
この感覚‥‥、何か悪い事が起こる前触れだ。
これがドラマに出てくるような家政婦だったら、『あら、まぁ。‥‥見ちゃった』と驚いている事だろう。
「悪いが一緒に来てもらうっ!」
‥‥そこでマコトは意識を失った。
後頭部に痛みを感じ‥‥。
●シーン2 カード盗難事件
「わ、わたくしとした事が‥‥。信じられませんわ!」
パトリシア・ローズの所有していたタロットカードが無くなっている事が分かったのは、それからすぐの事だった。
未だにパトリシアは真実を受け入れる事が出来ず、納得のいかない様子でブツブツと愚痴をこぼしている。
パトリシアの話では、のんびりとシャワーを浴びた後、自分の部屋に戻ってきた所でタロットカードが無くなっている事に気づき、慌てて携帯電話を取り出し大広間に執事達を集めたらしい。
「とにかく出来るだけ情報を集めた方がいいんじゃないのかしら? 怪しい清掃員を目撃していた執事も多かったようだから‥‥」
パトリシアを落ち着かせるため、典巧が淹れ立ての紅茶を渡す。
「はぁ‥‥」
紅茶を受け取り、溜息をつくパトリシア。
不意に涙が溢れてきたのか、潤んだ瞳で立ち上がる。
「そ、そんな事は、わたくしにだって分かってますわ! でも‥‥、悔しいんですの! 自分のミスでタロットカードを奪われてしまった事が‥‥」
ボロボロと涙を流し、パトリシアが大声で叫ぶ。
タロットカードを奪われてしまった事に責任を感じているのか、いつもと比べてパトリシアに元気がない。
「そんなに自分を責める必要はないと思うよ。僕らにだって落ち度があったわけだから‥‥」
パトリシアが落ち込んでいたため、グレイがニコリと笑って励ました。
「‥‥そ、そうですわね。屋敷に怪しげな人物が忍び込んでいたのにも関わらず、大事なタロットカードまで盗ませてしまうなんて‥‥、あなた達に落ち度があるのに決まっていますわっ! そうっ! わたくしは全然、悪くありませんのっ! 悪いのは、あなた達、執事‥‥。あなた達の不甲斐無さが、今回の事件を起こすキッカケになったのよっ! パーフェクトレディのわたくしがミスを犯す事なんてあり得ませんわ! なぜなら、わたくしは‥‥完璧だからっ!」
ウットリとした表情を浮かべ、パトリシアが執事達に文句を言う。
「「「「「‥‥ヲイ!」」」」」
あまりの変わりようにツッコミを入れる執事達。
落ち込んでいるパトリシアを励ますつもりが、逆に相手を付け上がらせてしまう結果となってしまったらしい。
「な、何よっ! その非難めいた視線はっ! わ、わたくしだって、心の中では泣いていますのよっ! わたくしの事を思って全ての責任を負うと宣言してくれたグレイの事を考えながら‥‥」
わざとらしく涙を浮かべ、パトリシアがグレイに抱きついた。
「すべての責任って何の事‥‥?」
いまいち状況が飲み込めず、グレイがダラリと汗を流す。
ずっと一緒にいたはずなのに、話の筋が見えてこない。
「‥‥トイレ掃除一週間」
満面の笑みを浮かべながら、パトリシアがキッパリと答える。
どうやらその場の勢いに任せて、すべての責任をグレイに擦りつけようとしていたらしい。
「‥‥気のせいかな。目の前にお嬢様の顔をした悪魔がいるよ」
思いっきり皮肉を込めながら、グレイが引きつった笑みを浮かべる。
ローズ家のトイレは意味もなく多い上に、マシンガンのついた自走する便器があるため掃除するのが面倒臭い。
(「‥‥確かに」)
思わず納得してしまう執事達。
そのため非難めいた視線がパトリシアに集中する。
「うぐっ‥‥、ほんの軽い冗談よ、冗談。おーっほっほっほっほっほっほっほ!」
執事達が無言でツッコんで来たため、パトリシアが気まずく高笑いを響かせた。
「‥‥冗談に聞こえない所がポイントだよね」
大粒の汗を浮かべながら、グレイが疲れた様子で溜息をつく。
例え冗談のつもりで引き受けたとしても、パトリシアならそれを真実に変えてしまう力がある。
「‥‥何か言ったのかしら?」
グレイをジト目で睨みつけ、パトリシアがニヤリと笑う。
「い、いえ、何も‥‥」
気まずい様子で首を振り、グレイが乾いた笑いを響かせる。
(「‥‥たくっ。将来が思いやられるよ、本当に‥‥」)
心の中では別の事を考えながら‥‥。
「‥‥ん? その表情からして、何か隠し事をしているね〜。お嬢様に隠し事をするなんて、君も隅には置けないな〜」
小悪魔的な笑みを浮かべ、リャンが後ろからグレイに抱きついた。
「ば、馬鹿を言えっ! 僕は隠し事なんてしていないっ! それにワケもなく僕の身体を触って、どういうつもりだい?」
恥ずかしそうに頬を染め、グレイがひどく動揺する。
「君らしくなかったからさ〜。ちょっと元気づけようかと思って〜♪」
グレイの事をからかいながら、リャンがクスクスと笑う。
「た、確かに‥‥。うーむ、ちょっと疲れているかも‥‥」
いつもの調子が出ないため、グレイが頭を抱えて溜息をつく。
「そんな事よりも敵の居場所が分かったわ」
ノートパソコンを巧みに操り、ウォルトが敵の位置を特定した。
グレイ達がパトリシアと話している間にすべての事を終えたのか、ウォルトが次々と敵に関する情報をモニターに映し出していく。
犯行当時、ウォルト内のメインコンピュータに不自然なジャミングが発生した事があったため、報告もせずに見過ごしていた事に責任を感じていたらしい。
「‥‥えっ? 本当に!?」
瞳をランランと輝かせ、パトリシアがウォルトの傍に駆け寄った。
「‥‥こんな事もあろうかとタロットカードのケースに発信機を仕掛けておいたから。とりあえず近隣の道路を封鎖しておいたけど、このままじゃ逃げられてしまうかも知れないわ。先回りして捕まえましょう」
詳しい位置をモニターに移すため、ウォルトがキーボードを叩く。
それと同時に天井から巨大なモニターが下りてくると、タロットカードを奪った犯人の居る場所が赤くピコピコと点滅した。
「行くわよ、みんな! わたくし達のおそろしさを奴らに思い知らせてやりましょう! それじゃ、マコト! 車庫から車を出してくれる!」
首飾りにしていた車のキーを引き千切り、パトリシアがマコトにむかって鍵を投げる。
‥‥ちゃりん。
「マコト‥‥?」
虚しく転がった鍵を見つめ、パトリシアがキョトンとする。
「‥‥そう言えば居ませんね。あの時、トイレに行ったまま‥‥」
気まずい様子で汗を流し、ルースがボソリと呟いた。
「「「「「‥‥あっ‥‥」」」」」
執事達はそこでようやくマコトが行方不明になっていた事に気づくのであった。
一方、その頃‥‥。
(「今頃、お屋敷はパニックになっているんだろうな。『マコトがいなくなったっ!!!!』って‥‥」)
‥‥マコトは清掃車の中にいた。
(「それにしても腹が減ったなぁ‥‥」)
グゥ〜ッと腹を鳴らしながら、マコトが疲れた様子で溜息をつく。
まさか誘拐されるとは思ってもいなかったため、昼食を軽く済ませてしまったのが裏目に出た。
「‥‥ん? どうした? 腹でも減っているのか?」
マコトの腹がグゥ〜ッと派手に鳴ったため、清掃員がサブマシンガンを構えて近寄っていく。
「ま、まあな。とりあえず、その物騒なモノを退けてくれないか? 別に抵抗するつもりはないからさ」
ダラリと汗を流しながら、マコトが苦笑いを浮かべて呟いた。
「‥‥もう少しの辛抱だ。アジトに着けば、好きなだけ御馳走が食える。お前はオクサマの大事な客人だからなぁ‥‥」
含みのある笑みを浮かべながら、清掃員がマコトの頭をワシャワシャと撫で回す。
「オクサマ‥‥?」
‥‥嫌な予感が脳裏を過ぎる
何のワケもなく誘拐される事はないとは思っていたが、このパターンからして客人という言葉も、そのままの意味では受け取れない。
「‥‥我らがお仕えしているご主人様の名だ。あまりにも太りすぎて身動きが取れなくなっているが、昔はとても美人で我々にも優しくしてくれた。まぁ、いまでも美少年好きには変わりはないが‥‥。オクサマの胸に挟まれて昇天した者が後を絶たないのも、そのためだ」
マコトの身体を品定めした後、清掃員がゲラゲラと笑う。
「ま、ま、まさか‥‥。そういう事なのか!?」
‥‥嫌な予感は的中した。
何となく事態は飲み込めてきたのだが、マコトの心が真実を受け入れようとしない。
「そうだ。お前にコレをやろう。オクサマの客人となる者は、みんな首につけている‥‥」
いやらしい笑みを浮かべながら、清掃員がマコトの首に首輪をはめる。
「ああっ、やっぱり‥‥」
目の前が真っ暗になるような感覚に襲われ、マコトが自分自身の不幸を呪う。
色々な意味で身の危険を感じながら‥‥。
●シーン3 決死のカーチェイス
「‥‥どうやらアレのようですね」
車を運転しながらナビゲートシステムを展開し、ウォルトが最短ルートを使って清掃車に追いついた。
清掃車は何度も信号のところで止められていたため、運転手の男がイライラとした様子で窓から顔を出している。
「ちょっとスピードを上げますね。‥‥振り落とされないようにしてくださいよっ!」
後部座席にパトリシアを乗せたまま、ルースがバイクのスピードを上げていく。
パトリシアは早くタロットカードを取り戻したかった事もあり、小回りの利くバイクに乗って清掃車を追う事にしたのだが、わざわざフリルつきのスカートを穿いてきたため、ルースがとても困っている。
「‥‥分かりましたわ。ただし、タイヤにスカートを巻き込むような事があったら、確実にブッ殺して差し上げますから、注意してくださいね」
天使のような笑みを浮かべながら、パトリシアがさわやかに毒を吐く。
「なんで、私がこんな役回りを‥‥。恨むぞ、マコト君‥‥」
自分の不幸を呪いながら、ルースが全ての元凶であるマコトを恨む。
普段なら、この手の役回りはマコトが担当している事もあり、ルースがブツブツと呪いの言葉を吐いている。
「やっぱり不幸って伝染するんだなぁ‥‥」
しみじみとした表情を浮かべ、リャンがなむなむと両手を合わす。
「そう思うんだったら、早くあの清掃車を止めなさいっ! 彼の命が惜しかったらね」
鞭でルースの首を絞めながら、パトリシアが高らかに笑う。
「一体、どっちが悪党なんだか分からないわね」
同情した様子でルースを見つめ、典巧が頭を抱えて溜息をつく。
「う、恨むぞ、マコト君っ!」
恨みの力をスピードに変えてバイクを飛ばし、ルースが気合を入れて清掃車の横に並ぶ。
「ちっ‥‥、追いつきやがったか!」
チィッと舌打ちしながら、運転手が清掃車をバイクにぶつけようとした。
「うぐっ‥‥」
だが、次の瞬間‥‥。
ルースの身体から漂う殺意の波動に怯んでしまい、なかなかバイクに近づけない。
「ず、凄い‥‥。それじゃ、始めましょうかね」
苦笑いを浮かべながら、典巧がタロットカードの力を発動させる。
典巧が使用したカードは、魔術師の正位置。
タロットカードの力によって、清掃車のタイヤがお菓子に変わる。
「うっ、うわああああああああああああああああ!!!!!!」
次の瞬間、清掃車がバチバチと火花を散らし、地面を滑るようにしてゴロリと横に転がった。
「イッテェ‥‥。おい、俺が居る事を忘れてないか」
大粒の涙を浮かべながら、マコトが芋虫のようにして這い出してくる。
「ごめんなさい。‥‥すっかり忘れていたわ」
ハッとした表情を浮かべ、典巧が気まずい様子で頬を掻く。
本気で忘れていたためか、辺りには気まずい雰囲気が漂っている。
「貴様ら‥‥、ローズ家の者か! 絶対にカードは渡さんぞ!」
頭からダラダラと血を流し、男達が銃を構えて一斉に攻撃を仕掛けてきた。
「‥‥仕方ないな。あんまり暴力は振るいたくなかったんだけど‥‥。僕に要らない手間をかけさせた罪は重いよ?」
地面を転がるようにして攻撃を避けながら、グレイがタロットカードの力を解放する。
グレイの使用したカードは、悪魔の正位置。
対象者に対して『欲望の叶った場面から破滅』と言う、絶頂から地獄へ転落する幻覚を見せる力‥‥。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」
幻覚の中で心を砕かれ、男達がバタバタと倒れていく。
「わたくしを怒らせるから、こんな目に遭ったのですわ。平伏しなさいっ! 心の底から‥‥。おーほっほっほっほっ!」
倒れた男の頭を踏み、パトリシアの高らかに笑う。
まるで悪女のようにして‥‥。
「‥‥本当に俺達って正義の味方なのかな」
マコトの言葉に執事達が溜息をついた。
‥‥今日も胃薬は手放せない。