トライアングルハートM南北アメリカ

種類 シリーズEX
担当 ゆうきつかさ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 やや難
報酬 1.6万円
参加人数 6人
サポート 0人
期間 12/02〜12/08

●本文

<募集職種>
 清純派のメイド役からドジッ娘メイド役まで幅広く募集しています。

<応募資格>
 やる気のある方なら、誰でも応募する事が出来ます。
 年齢制限などはありません。

<ドラマの内容>
 このドラマは脚本家のカラーによって、未来や過去に飛ばされたり、異世界で戦ったりする場合がありますが、近所でドラ焼きを買ったりするだけのシナリオも出来ます。
 基本的には1話完結のドタバタもの。
 ただし、スポンサーの要望を第一にするため、必ずしも要望が通るわけではありません。

<基本設定>
 主人公はお坊ちゃまと、お嬢様。
 彼らの家は大金持ちで隣同士の許婚。
 ただし、屋敷の敷地が広いため、家の距離は離れている。
 ふたりとも年頃になって、相手が気になっているようが、意地っ張りな性格とプライド、気恥ずかしさのせいで、いつもトゲトゲしい態度をとってしまい、それが原因で、いつも喧嘩になってしまう。
 その結果、メイドや執事達が巻き込まれ、毎回事件が起こっている。

<お坊ちゃまの設定>
 名前:御剣・翔(みつるぎ・しょう)
 容姿:東洋系の顔立ちをしており、喋らなければ美男子。
    普段は眼鏡を掛けており、髪の色は銀色。神経質そうな雰囲気。
 性格:現実主義でナルシスト。成績優秀で運動神経抜群。エリートタイプ。
 口調:僕、君、だね、だろ?
 年齢:17歳

<決めて欲しいもの>
 自分の演じるメイドがどんな設定なのかを教えてください。
 アンドロイド型や魔物型でも構いません。
 ただし、実在する歴史上の人物や有名キャラクターなどを使用しない事ようにお願いします。
 著作権の関係上、色々と問題が出てくる場合があります。
 メイド達はタロットカードを使用する事で魔法を使う事が出来ます。
 最初に配布されるカードは一枚。
 キャラクターの性格によって、正位置か逆位置で使用する事が出来ます。
 どちらかいいか希望を書いた上で、自分が所有するカードを教えてください。

<テンプレート>
 役名:演じる役名を記入。
 性格:演じる役の性格を記入。
 特徴:演じる役の特徴を記入。
 見せ場:自分の見せ場を記入。
 所有カード:所有しているタロットを記入(表か裏のみ)。
 特殊能力:カードを使用した時に発動する能力を記入。
 (注意:内容によっては修正される場合があります)。

<今回のシーン説明>
・怒涛のお掃除タイム
 メイド達が屋敷の中を掃除しています。
 廊下にはたくさんのゴミ袋が積んであり、まるでピラミッドのようになっています。
 慌てた様子でお坊ちゃまが登場するまで、メイド達は大忙し。
 怪しげな人物がいても、気づかないかも知れません。

・カード盗難事件
 お坊ちゃまの所有しているカードが行方不明になります。
 彼の所有しているカードは特別仕様のため、特殊な訓練などをしなくても、カードを使用する事が出来ます。
 そのためカードを悪用されれば、その先に待っているのは破滅です。
 お坊ちゃまはメイド達にカードの奪還を命じます。

・悪の秘密結社
 メイド達の目撃情報を纏めた結果、悪の組織の工作員が、ゴミの清掃業者に紛れて、屋敷の中に忍び込み、お嬢様のカードを盗み出した事が判明します。
 悪の組織の工作員(4人組)は車に乗って逃走中。
 すぐに追いかければ、間に合います。

・ハッピーエンド
 戦いの末、何とかカードを回収し、物語はハッピーエンドで幕を閉じます。

●今回の参加者

 fa0204 天音(24歳・♀・鷹)
 fa1004 フィーア・レーヴェ(11歳・♀・獅子)
 fa1828 鐘下べる(20歳・♀・小鳥)
 fa2153 真紅(19歳・♀・獅子)
 fa2338 ティートディ・ハイン(18歳・♀・熊)
 fa2443 ステラ・ディスティニー(24歳・♀・パンダ)

●リプレイ本文

●キャスト
ブローディア(魔物型メイド):天音(fa0204)
ベル(ミニスカメイド):鐘下べる(fa1828)
クレア(マイペースメイド):真紅(fa2153)
イェラ・スゥ(熊耳メイド):ティートディ・ハイン(fa2338)
マグダル(クールメイド):ステラ・ディスティニー(fa2443)

●シーン1 怒涛のお掃除タイム
「‥‥A班は北側の廊下を重点的に清掃っ! その際、お父様のペットに注意しろ。ライオンだけでなく、ゾウやキリンもいるからな! 剥製や絨毯と勘違いして下手に刺激を与えるな! 続いてB班は東側の掃除をする際、壷を割らないように注意しろ! 見た目はアレだが、イイ壷だ。違いの分かる男だけにしか、その価値は分からない。あんな物でも、お父様にとっては大切なものだから、間違っても割るんじゃないぞ。最後に
C班だが西側の廊下を重点店にワックス掛けだっ! この前の掃除した時にワックスの掛け過ぎで、滑る廊下と化していたから注意しろ。一部のメイドがスケート場とカン違いしていたほどだからな」
 不機嫌な表情を浮かべながら、お坊ちゃま(御剣・翔)がインカムを使ってメイド達に指示を出す。
 普段は全ての管理をメイド長が行っているのだが、宝くじで大当たりして大金を手に入れたため、お祝いパーティを兼ねて旅行に行っているらしい。
「‥‥たくっ。何で僕がこんな事をしなくちゃならないんだ」
 不満そうな表情を浮かべて愚痴をこぼし、翔が疲れた様子で溜息をつく。
 何故かメイド長の旅行に両親まで同行してしまったため、屋敷に残っているのは翔とメイド達だけである。
 しかもメイド長がいないため、メイド達の大半は仕事をサボっていたため、両親達が帰ってくる前日になっても屋敷からゴミがなくならず、仕方なく翔がインカムを使ってメイド達に指示を出す事になった。
「今日も頑張ってお仕事するッス! アネサン達、よろしくお願いするッス!」
 元気ハツラツといわんばかりの笑みを浮かべ、イェラ・スゥが先輩メイド達に敬礼すると大量のゴミ袋を担いでいく。
 屋敷から大量のゴミが出た事もあり、清掃局に電話して回収しに来てもらう事になったのだが、ゴミ捨て場まではかなりの距離があるため、無駄に豪華なリアカーに積み上げスゥが運ぶ事になっている。
「了」
 クールな表情を浮かべながら、ブローディアがスゥに頷き、絨毯を掃除するため掃除機を使う。
 御剣家の掃除機は不思議な金属が使われているため、ハイパワーにしてもまったく音がしない。
「それじゃ、おいらはゴミを運ぶッス!」
 ブローディアに別れを告げ、スゥがゴミ袋を持ち上げる。
 御剣家の屋敷は広さが半端ではないため、ゴミ袋の山で廊下が塞がれているほどだ。
「‥‥手伝うわ」
 廊下に落ちたゴミ袋を拾い、マグダルがスゥの後をついていく。
「おっ! 手伝ってくれるんッスか? おいら、感激ッス! この恩は一生忘れないッスよぉ〜!」
 マグダルに抱きつきながら、スゥが感動した様子で涙を流す。
 それと同時にゴミ袋がボトボトと落ちる。
「‥‥」
 ゴミの山に埋もれ、沈黙するマグダル。
 あまりにゴミが多いため、マグダルだけでは身動きが取れない。
「だ、大丈夫ッスか! わ、わざとじゃないんッスよ!」
 大粒の汗を浮かべながら、スゥがゴミ袋を掻き分けた。
「困」
 ゴミ袋がポコポコ辺り、ブローディアがスゥを睨む。
「ご、こめんなさいッス!」
 ブローディアとマグダルの間に挟まれ、スゥがションボリとした表情を浮かべる。
「‥‥気にしないでください」
 何事もなかった様子で立ち上がり、マグダルがゴミ袋を運んでいく。
「忘」
 ブローディアも掃除機を止めてゴミ袋を運ぶ。
「ははははっ‥‥、それならいいんッスけどね。と、ところでアネサン。『忘』って、どういう意味ッスか? 大した事じゃないから忘れてくれって意味なのか、それとも何もかも忘れてしまうくらいブチのめしてやろうか、ワレ! ‥‥のどちらかだと思うんッスけど‥‥。ほら、アネサンって無表情じゃないッスか。分かりにくいんですよね‥‥。あっ、やっぱり何も答えなくてもいいッスよ! 何だか怖くなってきたッスから‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、スゥがブローディアの後を追う。
 色々な意味で嫌な予感はしているのだが、悪い意味で『忘』だった場合の事を考えると、怖くて聞く事が出来ないらしい。
『それよりも仕事、仕事!』
 身振り手振りを使って説明した後、クレアが他のメイド達を急かす。
 早くしないと清掃業者が来てしまうため、それまでにゴミ袋の山をゴミ捨て場に運ぶ必要がある。
「‥‥まったく。メイド達のマイペースぶりにも困ったな。もう少し早く仕事をしてくれると、僕も苦労しなくいいんが‥‥。まぁ、ここまで放っておいたのも、ある意味では僕の責任か‥‥。たくっ、面倒な事になったな。もうすぐ清掃車が来る頃なのに‥‥」
 腕時計を気にしながら、翔がブツブツと愚痴をこぼす。
 普段は朝から晩までメイドの世話になっているため、こんなにひとりで色々とやった事はない。
「ご主人様〜☆ どうかしたんですか〜☆ 何だか顔色が悪いようですよ〜☆」
 心配した表情を浮かべながら、ベルが大きなハテナマークを点滅させる。
「いや‥‥、ちょっと眩暈が‥‥。ところで、お前‥‥。何で休憩しているんだ?」
 ジト目でベルを睨みつけ、翔が鋭いツッコミを入れた。
「あっ! そうでした〜! 急いでお掃除するですよ〜。‥‥きゃあ!?」
 笑顔を浮かべて持ち場に戻ろうとした瞬間、ベルがバケツに足を引っ掛け尻餅をつく。
「だ、大丈夫か? ‥‥ってオイ! お前っ!」
 ベルに駆け寄ろうとして彼女のパンツを見てしまい、翔が鼻血を吹いて悲鳴を上げた。
「はやや〜? 何かトラブルでも遭ったんですか〜?」
 キョトンとした表情を浮かべ、ベルが不思議そうに首を傾げる。
「ち、違う! パ、パ、パ、パンティが丸見えだぞっ!」
 必要以上にあたふたとしながら、翔が恥ずかしそうにベルのパンツを指差した。
「それなら気にしなくても構いませんよ〜☆ これは見せてもOKなパンツですからね〜☆」
 満面の笑みを浮かべながら、ベルが堂々とした態度でパンツを見せる。
「パ、パ、パンティに見せていいものと、悪いものなんてあるかっ! 分かったから早くソレを隠すんだっ! ぶはああああああああああああああ!」
 とうとう限界に達したのか、翔が大量の鼻血を噴いて気絶した。
 ‥‥鼻血の海に沈む翔。
「あ、あう〜☆」
 ベルもあたふたとしているようだ。
「だ、大丈夫ッスか?」
 翔がぱたりと倒れたため、スゥが慌てて抱き起こす。
「うぐっ‥‥」
 ドクドクと鼻血を流しながら、翔がグッタリとした表情を浮かべる。
「‥‥なむ」
 汚れた床を雑巾で拭いた後、マグダルがなむなむと両手を合わす。
「拝」
 マグダルと一緒に両手を合わせ、ブローディアが彼の冥福を祈る。
「ひ、人を勝手に殺すな。僕はまだ生きているぞ」
 フラフラとしながら立ち上がり、翔がジト目でブローディア達を睨む。
『それならばトドメを‥‥』
 瞳をキュピィーンと輝かせ、クレアが果物ナイフを取り出した。
「何だか色々と恨みを買っているようッスね」
 大粒の汗を浮かべながら、スゥが翔の肩をぽふりと叩く。
「こ、心当たりがあり過ぎて否定する事が出来ないんだが‥‥」
 青ざめた表情を浮かべながら、翔がダラダラと汗を流す。
 普段からメイド達には無茶な注文ばかりしているため、色々な意味で恨まれていても仕方が無い。
「まさかえっちな事でもしたんですか〜?」
 スカートをヒラヒラさせながら、ベルがニコリと微笑んだ。
「ぼ、僕に限ってそんな事‥‥。ある訳ないだろ」
 気まずい様子で視線を逸らし、翔が気まずくコホンと咳をした。
 間違ってもメイド達に手を出した事はないのだが、別の意味で断言する事が出来ないため、翔が答えに困っている。
「何だか怪しいッスね! まさか最近、多発している下着ドロの犯人は‥‥」
 だんだん疑惑を深めていき、スゥが探りを入れていく。
「そ、そんな事より、早くゴミを捨てて来いっ! 清掃業者が来ているぞ!」
 顔を真っ赤に染めながら、翔が清掃員を指差した。
 清掃員は翔の部屋からゴミ袋を回収すると、コソコソとした様子で清掃車に戻ろうとしている。
『わ、忘れてました』
 ハッとした表情を浮かべ、クレアがゴミ袋を持っていく。
「ヤ、ヤバイ! 逃げろおおおおおお!」
 クレア達の姿に気づくと清掃員達は大声をあげ、慌てた様子で清掃車に乗り込んだ。
「‥‥妙ですね?」
 やけに清掃員達の様子がおかしかったため、マグダルが翔の服を引っ張った。
「怪」
 背中に背負った大剣を抜き、ブローディアが清掃業者を怪しいんだ。
 清掃業者を怪しみながら、ブローディアが背中に背負った大剣を抜く。
「た、確かに妙だな。い、いや、彼らもベルのパン‥‥。イ、イヤ、何でもないっ!」
 先程の事を思い出して鼻血を出しそうになったため、翔が恥ずかしそうに頬を染めて首を振る。
「そんな事よりゴミを持っていって貰うッスよ! このままじゃ、屋敷がゴミの山に埋もれてしまうッス!」
 清掃車が走り出してしまったため、スゥがゴミ袋を持って先回りをすると、そのまま両手を開いて道を塞ぐ。
「うっ、うわあああああああああ! な、な、何でしょうか?」
 急ブレーキを踏んで慌てて窓から顔を出し、運転席に座っていた清掃員が汗を流す。
 御剣家からタロットカードを盗んでいるため、スゥを見つめて心臓をバクバクと高鳴らせる。
「忘れ物ッス! 他にもたくさんあるッスよ! ガンガン持って来るッスね!」
 車から降りてきた清掃員にゴミ袋を手渡し、スゥがニコリと微笑み屋敷にむかう。
「い、いや‥‥。実は‥‥、その事なんですが‥‥」
 困った様子でスゥを呼び止め、清掃員が気まずい様子で頬を掻く。
「何ッスか? きちんと分別したッスよ?」
 キョトンとした表情を浮かべ、スゥが目を丸くさせる。
「い、いや、そうじゃないんですっ! 清掃車がゴミでいっぱいになったから、このまま会社に戻って救援を呼ぼうと思っているんですよ‥‥」
 乾いた笑いを響かせながら、清掃員が逃げるために嘘をつく。
「了解ッス! それじゃ、屋敷の中で待っているッスね!」
 納得した様子で笑みを浮かべ、スゥが清掃員達に敬礼した。
「それじゃ、我々はこれで‥‥」
 スゥにペコリと頭を下げ、清掃員が急発進で車を出す。
「お、おい! あいつらを帰してしまったのか?」
 彼らと入れ替わりで翔が現れ、疲れた様子で膝をつく。
 ここまで走ってきたのか、やけに疲れているようだ。
「‥‥何かマズイ事でもあったんッスか?」
 翔の言っている事が理解できず、スゥが首を傾げて話を聞く。
「カードが盗まれたんだ、アイツらに‥‥」
 ‥‥それが事件の幕開けであった。

●シーン2 カード盗難事件
「お、終わりだぁ‥‥。何もかも‥‥」
 清掃車の行方を掴む事が出来ないまま、翔が落ち込んだ様子で部屋に戻る。
 タロットカードの入っていた箱には封印が施されているため、専用の鍵がなければ箱を開ける事さえ出来ないのだが、鍵を管理していたメイド長が旅行に行ってしまったため、鍵の管理は翔に任されていた。
 そのため、カードを盗まれてしまったのは、明らかに翔のミスである。
「そんなに大変な事なんですか〜?」
 不思議そうに首を傾げ、ベルがボソリと呟いた。
「当たり前ッス。アニキの使用しているカードは、契約を必要としない特別仕様‥‥。悪党の手に渡ればその先に待っているのは破滅ッス!」
 事態の深刻さを理解し、スゥが頭を抱えて溜息をつく。
 メイド達の使用しているタロットカードは何らかの契約が必要となるのだが、翔の使用しているカードはオリジナルであるため、何の契約も必要とせずカードの能力を使用する事が出来る。
 その代わりカードの効果は使用者によって異なるため、基本的な能力が高くなければ意味がない。
「それは大変ですよ〜☆ さっそく手掛かりを探すです〜☆」
 ようやく事態の深刻さを飲み込め、ベルが翔の部屋をくまなく調べる。
 本棚からメイド百選。
 ベッドの下からメイド全集。
 枕の下からは官能小説『メイドの吐息』。
「ちょっと待ったあああああああああああああああああああああああああ! それ以上、僕の部屋のものに触れるなあああああああああああああああああああ!」
 驚きのあまり悲鳴を上げ、翔が慌てた様子で本を奪う。
「な、な、な、なんで本の隠し場所がピンポントで分かるんだ‥‥」
 ハァハァと息を荒くさせながら、翔が胸をドキドキさせる。
「えっへんです〜☆」
 嬉しそうに胸を張り、ベルがニコリと微笑んだ。
『とにかく早く彼らを追いかけないと‥‥』
 身振り手振りを使い、クレアが翔達を急かす。
「‥‥すまないが何を言っているのか書いてくれないか?」
 いまいちクレアの言っている事が分からず、翔が胸のポケットからボールペンとメモを取り出した。
「‥‥」
 ‥‥書けない。
 どうやらボールペンに『拒否』されてしまったらしい。
 ‥‥途方にくれるクレア。
『おいおい、落ち込むなよ相棒』
 胸元から聞こえる謎の声。
「い、いま‥‥、胸から声が‥‥!?」
 驚いた様子で目を丸くさせ、翔が胸を指差した。
「ひょっとして喋るおっぱいッスか!? ハイテクッスね」
 クレアの胸をムニムニと触り、スゥが意味もなく感動する。
「‥‥聞いた事がある。非常事態に備えて、ミサイル兵器と化している乳があると‥‥」
 ハッとした表情を浮かべながら、翔がトンデモ理論を展開した。
『そ、そんなんじゃないわ』
 激しく首を横に振り、クレアが翔の理論を否定する。
「凄」
 まったく表情を変えず、ブローディアがパチパチと手を叩く。
 ‥‥膨らむ妄想。
 ブローディアの中では胸からミサイルを飛ばして怪物達を撃退しているクレアの姿が浮かんでいる。
 もちろん、巨大化した状態で‥‥。
『だ〜か〜ら、違うのよ〜』
 小動物のような表情を浮かべ、クレアが瞳をウルウルさせる。
 一生懸命になって身振り手振りを使っているが、さらに誤解を深める結果となった。
「‥‥彼女も使い手のひとりらしい」
 クレアの言葉をまったく別の意味で理解しながら、翔が感心した様子で彼女の胸をジィーッと見る。
『も、もういいです‥‥』
 返す言葉が見つからず、クレアが疲れた様子で溜息をつく。
「‥‥ファイト」
 落ち込むクレアを励ましながら、マグダルが拳をギュッと握り締める。
「発見」
 世界のカードを使って知覚領域を街全体に展開し、ブローディアが逃亡中の清掃車を見つけ出す。
「それで奴らは一体何処に‥‥?」
 テーブルの上に地図を置き、翔が清掃車の位置を聞く。
「敵」
 清掃車の居場所を指差した後、ブローディアが漆黒の翼を広げて飛び上がる。
「さっそく追いかけるですよ〜☆」
 清掃車を追いかけるため、ベルが自転車を取りにいく。
「よしっ! いますぐ道路を封鎖しようっ! 奴らがアジトに着く前に何としてもカードを回収するんだっ!」
 そう言って翔が胸ポケットから携帯を取り出し、メイド達に道路の封鎖を命じるのであった。

●シーン3 悪の秘密組織
「きっと、あれがそうですよ〜☆」
 自転車を立ち漕ぎしながら、ベルが清掃車の後を追う。
 翔がメイド達に命じて道路の封鎖をしておいたため、清掃車がアジトに戻る事が出来ないまま、何度も回り道をさせられている。
「そこのおじさん、待つッスよ!!」
 土煙を上げて全速力で走りながら、スゥが大声を上げて清掃車の後ろにつく。
「な、なんだ、ありゃ!?」
 スゥの人並み外れた力に驚き、運転席の男が清掃車のスピードを上げる。
 これは夢だと自分自身に言い聞かせ‥‥。
「こらぁ〜、おいらは待てって言ったんッスよぉ〜! 何で逃げるんッスかぁ〜! それとも心にやましい事でもあるんッスかぁ〜! 絶対に逃がさないッスよぉ〜」
 不機嫌な表情を浮かべながら、スゥが清掃車の横に並ぶ。
「ひっ、ひぃ! 助けてぇ〜!」
 悲鳴を上げて泣き叫び、運転手の男が徐々にスピードを上げていく。
「こっ、こらああああああああああああああああああああああああああ! おいらを馬鹿にしているんッスかあああああああああああああああああ!」
 こめかみをピクピクさせながら、スゥが獣の如く勢いで清掃車を追いかける。
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 まるで化け物でも見たような表情を浮かべ、運転手の男が必死にスゥから逃げていく。
「着」
 それと同時にブローディアが清掃車の屋根に降り立ち、漆黒の羽根をしまって大剣を抜く。
「貫」
 清掃車の屋根を睨みつけながら、ブローディアが掛け声と共に大剣を突き刺す。
「ぎゃああああああああああああああああああ!」
 いきなり屋根を突き破って大剣が現れたため、清掃車に乗っていた男達がパニックに陥った。
「悪い人達に御仕置きですよ〜☆」
 清掃車のスピードが落ちたため、ベルが先回りしてカードの力を解放する。
 ベルの所有しているカードは、太陽のタロットカード。
 その力を解放する事によって、ベルは眩い光を操る事が出来る。
「こんな所で捕まってたまるかああああああああああ! このカードさえあれば世界は俺達のものだあああああ!」
 眩しさのあまり目を閉じながら、運転手の男がそのままスピードを上げていく。
「きゃあ〜☆」
 いきなり清掃車が迫ってきたため、ベルが悲鳴を上げて目を閉じる。
「危ないっ!」
 間一髪ベルに抱きつき、翔が道路を転がった。
 自転車を押し潰しながら、滅茶苦茶な運転を続ける清掃車。
 その先にはクレアがひとりで立っている。
「うわああああああああああああああ!」
 ‥‥男達の悲鳴が響く。
 ブレーキを踏んでも間に合わない。
「‥‥」
 クレアは覚悟を決めたのか、その場からまったく動こうとしない。
「うあああああああああ」
 次の瞬間、清掃車はクレアに触れる事なく分解される。
 ‥‥サムライの如き『一閃』。
 クレアの所有しているカードの力が発動したのだ。
「あっ、カードが‥‥」
 それと同時に22枚のタロットカードが舞い上がる。
 まるで意思があるかのようにユラユラと‥‥。
 新たな契約者を求めて‥‥。
「どうやらタロットの封印が解けてしまったらしい。僕が鍵を掛け忘れたために‥‥!」
 ‥‥こうして翔達は何処かに消えた22枚のタロットカードを探す事になるのであった。