どうなるスタジオ!?南北アメリカ

種類 ショート
担当 ゆうきつかさ
芸能 1Lv以上
獣人 1Lv以上
難度 普通
報酬 1.2万円
参加人数 10人
サポート 0人
期間 01/28〜02/01

●本文

<募集内容>
 アメリカドラマ制作スタジオのスタッフ募集

<参加資格>
 アメリカドラマ制作スタジオのスタッフを募集します。
 やる気のある方なら誰でも応募する事が出来ます。
 代表作はセクハラ・トライアングルハート・TUKUMOGAMIなどです。

<詳しい内容>
 脚本家が不足しているため、ドラマの製作が難航しています。
 また予算不足でTUKUMOGAMIの続編が作れません。
 その上、主要スタッフは慰安旅行で事故に遭い入院中。
 留守番をしていたスタッフは食中毒で運ばれました。
 今年に入ってから不幸続きのスタジオですが、厄払い(何)も兼ねて新規スタッフを募集しようと思います。
 それに加えて新しいスタジオ名を募集します。
 ちなみに今までのスタジオは『DAIKYOU』です。
 日本の言葉で『これ以上、下がなく、上に行くだけ』という意味だとか‥‥。
 本当の意味は分かりませんが、日本人スタッフからは不評でした。
 そこで新しいスタジオ名は、日本人スタッフからも不満が出ないものにしたいと思います。

●今回の参加者

 fa0203 ミカエラ・バラン・瀬田(35歳・♀・蝙蝠)
 fa0204 天音(24歳・♀・鷹)
 fa0571 内藤裕樹(26歳・♂・トカゲ)
 fa1099 樹神(26歳・♂・アライグマ)
 fa1714 茶臼山・権六(44歳・♂・熊)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa2029 ウィン・フレシェット(11歳・♂・一角獣)
 fa2112 酉家 悠介(35歳・♂・鷹)
 fa2315 森屋和仁(33歳・♂・トカゲ)
 fa2484 由里・東吾(21歳・♂・一角獣)

●リプレイ本文

●朝
「‥‥みんな生きているか?」
 『どうなるスタジオ!?』のスタッフを引き連れ、由里・東吾(fa2484)が『DAIKYOU』のスタジオに入ってくる。
「‥‥おい」
 蓑虫の如く毛布に包まり、椅子をベッド代わりにして寝るスタッフ達。
 床には大量の栄養ドリンクが転がっており、食べかけの弁当にはツヤのいいゴキブリ達が集っている。
「カメラ‥‥止めましょうか?」
 心配した様子でカメラマンが口を開く。
 これでは会社の存続を訴える前に、やるべき事がありそうだ。
「と、とりあえず撮っておいてくれ」
 引きつった笑みを浮かべながら、東吾がボソリと呟いた。
 適当に説明した後で退散するつもりでいたが、このままだと都合の悪い映像ばかり撮られてしまう事もあるため、彼らを置いて他にはいけない。
「‥‥随分と困っているようだな」
 含みのある笑みを浮かべながら、酉家 悠介(fa2112)が東吾にむかって声をかける。
 スタジオの一角にあるPCモニターの前に彼はいた。
「こんな時間まで仕事か。頑張っているな」
 ホッとした表情を浮かべながら、東吾が悠介のモニターを覗き込む。
 そこに映っていたのはソリティアの画面。
 一緒について来たカメラマンも悠介のモニターをアップで撮っている。
「だ、駄目だっ! これはナシ!」
 青ざめた表情を浮かべながら、東吾が慌ててモニターを隠す。
「何をそんなに慌ててるんだ。‥‥大丈夫。遊んでいたわけじゃない。‥‥ほらな」
 キーボードをカチカチと叩き、悠介が仕事途中の画面を出した。
「ふぅ〜、なんだ。驚かせないでくれ。こっちは心臓が止まるかと思ったぞ」
 苦笑いを浮かべながら、東吾が額に浮かんだ汗を拭う。
 悠介のモニターには昼からスタッフが向かう予定になっている撮影場所に関する情報が映っている。
「ふたりともご苦労じゃのう。眠気覚ましに目覚めのコーヒーはどうじゃ?」
 物凄く濃い目のコーヒーを持参し、天音(fa0204)がニコリと微笑んだ。
 それと同時にカメラマンが舐めるようにして彼女の巫女服姿を映し出し、続いてどす黒い色をしたコーヒーがカメラに映る。
「相変わらず濃いな。‥‥真っ黒じゃないか」
 天音からコーヒーを受け取り、悠介が険しい表情を浮かべて一気に飲む。
 彼女のコーヒーは特別製のため、あっという間に悠介の目が覚める。
「ふふふっ、利くじゃろ? 特製ハードブラックコーヒーじゃ」
 エッヘンと胸を張りながら、天音が再びコーヒーを注ぐ。
「うぐっ、確かにハードだな。脳味噌の芯までスカッとする」
 後味がキツイのか、悠介がゲホゲホと咳き込んだ。
「さてと‥‥、この辺の掃除が終わったら、すぐにでも厄払いをするぞ。最近、悪い事ばかり続き過ぎている。何か悪いものでも憑いているのかも知れんからな」
 風呂敷に包んだ神棚を取り出し、天音がポンポンと拍手を打つ。
 天音の仕事は電話番のため、営業開始時間が始まる前に、厄払いの儀式を行う必要があるようだ。

●昼
「これで‥‥良しっと。おーい、そろそろ昼だぞ」
 カメラマンとして撮影場所に行くため、森屋和仁(fa2315)が表に移動車を用意した後、スタッフを起こすためスタジオまで戻ってくる。
 スタジオには『どうなるスタジオ!?』のスタッフが撮影している最中で、和仁の存在に気づいてカメラを向けてきた。
「おいおい、俺なんて撮っても面白くないぜ。えーっと、悠介は‥‥。うっ、何だよ、厄払いの最中か」
 気まずい様子で視線を逸らし、和仁が頭を抱えて溜息をつく。
 一緒にいたスタッフの話では一時間ほど厄払いをしているらしい。
「朝‥‥ですか?」
 眠い目を擦りながら、内藤裕樹(fa0571)が毛布から顔を出す。
「いや、昼だ」
 目覚まし時計を手に取り、茶臼山・権六(fa1714)がアクビをする。
「ふたりとも遅刻よっ!!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、瀬戸・カトリーヌがふたりを睨む。
 ふたりともお昼から会議があったのだが、少し寝過ごしてしまったらしく、瀬戸が迎えに来たらしい。
「そ、それじゃ会議はっ!?」
 ハッとした表情を浮かべながら、裕樹が慌てた様子で起き上がる。
「ほとんど終わっているわ。私も途中で抜け出す事が出来なかったから‥‥」
 缶コーヒーをふたりに手渡し、瀬戸が疲れた様子で溜息をつく。
「‥‥おかしいな? いつもなら目覚まし時計がなる筈なのに‥‥」
 納得のいかない様子で首を傾げ、権六が目覚まし時計をジロリと睨む。
「悪いっ! それなら俺が止めておいた。ほら、他局からスタッフが来ていたからさ」
 苦笑いを浮かべながら、和仁が気まずい様子で頬を掻く。
「‥‥道理でスタジオが静かなわけだ」
 瀬戸から受け取った缶コーヒーを口に含み、権六が自嘲気味にクスリと笑う。
「‥‥隣の部屋から妙な子守唄が聞こえていましたからね。それで会議の方はどうでしたか?」
 いまさら言い訳するのも格好悪いと思ったため、裕樹が瀬戸から会議の状況を聞いた。
「とりあえず休憩時間って所ね。一応、セクハラは第1週目、トライアングルハートは3週目で本決まりになりそうだけど‥‥。他の番組との兼ね合いもあるから、確定というわけではないわ。それと‥‥、トライアングルハートをひとつに纏めるのは無理みたい。物語的にも分かりづらいし、主人公を演じる役者のプロモーションも兼ねているから‥‥」
 思い出したかのように企画書を手渡し、瀬戸が困った様子で腕を組む。
 いつもと比べて会議は順調に進んでいるが、予算の事を考えると頭が痛い。
「やれやれ、面倒な事になってますね」
 企画書の内容に目を通し、裕樹が疲れた様子で溜息をつく。
 色々とやる事が山積みになっているため、早めに準備をしないと間に合わない。
「‥‥今夜も徹夜確定だな」
 現在の予算と必要経費を見比べ、権六が栄養ドリンクを確保した。
 ここで栄養ドリンクを確保しておかないと、後になって他のスタッフと奪い合いの喧嘩になる。
「それじゃ、そろそろ撮影現場にでも行ってくるか。ようやく相方も厄払いから帰ってきたようだし、ここにいたら気が滅入る」
 苦笑いを浮かべながら、和仁が悠介を連れてスタジオを出て行った。
 会議がうまく行く事を祈りつつ‥‥。

●夜
「何だか面倒な事になっているわねぇ」
 一通りの仕事を終え、樹神(fa1099)が疲れた様子で席に座る。
 スタジオが倒産の危機に陥っているため、メイク道具にも予算が回らず、色々な場面で気を使う事が多かった。
「‥‥ぶッチャケー倒産寸前でスワ、ね‥‥」
 ようやく受付の仕事を終え、ミカエラ・バラン・瀬田(fa0203)が紅茶を渡す。
 残業手当がコッソリとカットされているため、ミカエラ達の疲労もピークに達している。
「仕方がないと思いますよ。うちの社長はスポンサーの受けが悪いようですし‥‥」
 苦笑いを浮かべながら、巻 長治(fa2021)が脚本を手直しする。
 自由に使える予算が減ってしまった事もあり、見せ場以外のシーンはほとんどカット。
 追加予算の請求をする事も出来ないため、ほとんどの場合はスタッフの自腹を切る事が多い。
「と、とりあえずご飯にしない? こんな状況じゃ、気が滅入るだけだから」
 裸エプロン姿で愛敬を振り撒き、ウィン・フレシェット(fa2029)が儚げな美少女を演じてご飯を作る。
 大半のスタッフは徹夜続きのためか、ウィンの裸エプロン姿に気づき、新しい世界に目覚めた者も少なくない。
「でも、ちょっと気になる事があるのよねぇ。昔と比べてこのスタジオも有名になってきたはずなのに、赤字が続いているなんて‥‥」
 のんびりと紅茶を飲みながら、樹神がボソリと呟いた。
「確かにそれは言えるな。スポンサーもだいぶ集まってきたはずなのに、赤字続きとはおかしな話だ」
 最近獲得してきたスポンサーのリストを見つめ、巻が険しい表情を浮かべて腕を組む。
 普通に考えれば十分に予算を確保しているはずである。
 にも関わらず赤字が続いているという事は‥‥。
「誰かが着服しているという事デスカネ?」
 改めてスポンサーの資料を読み返し、ミカエラがハッとした表情を浮かべる。
 何度も計算をし直してみたが、これで赤字になるはずがない。
 むしろスタッフ達にボーナスが出ていても、おかしな話ではないはずだ。
「ひょっとして社長さんが豪遊しているとか?」
 ウィンの言葉にスタッフ達の動きが止まる。
「ま、まさか‥‥」
 そしてスタジオに乾いた笑い声が響くのだった。

 ‥‥1時間後。
「‥‥これが最後の仕事になるのか」
 しみじみとした表情を浮かべながら、『DAIKYOU』の社長が溜息をつく。
 スタジオを存続させるため、社長は辞任する事を決意した。
 会社の金を使ってギャンブルに狂っていた事や、出張と称して女遊びに励んだ事も、今となってはいい思い出だ。
 スタッフ一致で出された答え。
 ‥‥それが社長のクビだった。
「わ、わしは自分自身で辞めるんだっ!」
 それが社長としてのプライド。
 社長が最後の書類に判子を押した。
 新しいスタジオ名は『DAIMYOU』。
 親しみやすく、分かりやすく‥‥。
 自分の思いをスタジオ名に託しつつ、社長はひとり寂しくスタジオを後にした。