ブラッディローズ南北アメリカ

種類 ショート
担当 ゆうきつかさ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 難しい
報酬 3.9万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 02/24〜02/28

●本文

<あらすじ>
 主人公は吸血鬼の王。
 薔薇の館と呼ばれる場所が彼の根城。
 ヴァンパイアの王が見る悪夢。
 数百年前に吸血鬼ハンターから受けた呪い。
 呪いは時間を掛けて身体を蝕み、精神を破壊していくもの。
 そのため吸血鬼の王は100年ごとに新しい肉体を手に入れなければならない。

 ‥‥満月の夜。
 薔薇の館に少年が迷い込んできた。
 甘い臭いに誘われて‥‥。
 穢れ無き少年の器に己の全てを注ぎ込む事で、吸血鬼の王は新たな肉体を手に入れる事が出来る。
 吸血鬼ハンターの妨害に遭わなければ‥‥。

<登場人物:募集中の役柄>
・吸血鬼の王
 不死身の肉体を持っているが、呪いのせいで100年ごとに新しい肉体を手に入れなければ滅びてしまう。
 そのため退治するためには、儀式の最中に狙うしかない。

・執事
 吸血鬼の王に仕える存在。
 主人のために自らの血を捧げる奴隷。

・メイド
 死体を繋ぎ合わせて作った存在。
 獲物を誘き寄せるための餌。

・生贄の少年
 新しい肉体の器。
 純真無垢。

・吸血鬼の王
 少年の肉体に吸血鬼の王が宿った状態。
 そのため外見などが変わっている。

・吸血鬼ハンター
 代々吸血鬼を退治する事を生業としている者。
 吸血鬼の王を倒すため、館に忍び込もうとする。

・吸血鬼ハンター(初代)
 回想シーンに登場。
 吸血鬼の王に呪いを掛けて息絶える。

・恋人
 回想シーンに登場。
 ハンターへの警告として吸血鬼の王によって命を奪われる。

●今回の参加者

 fa0043 皇・皇(21歳・♂・一角獣)
 fa0964 Laura(18歳・♀・小鳥)
 fa1359 星野・巽(23歳・♂・竜)
 fa1658 奏奇 詠斗(17歳・♀・猫)
 fa1771 由比美紀(20歳・♀・蝙蝠)
 fa2121 壬 タクト(24歳・♂・兎)
 fa2446 カイン・フォルネウス(25歳・♂・蝙蝠)
 fa2457 マリーカ・フォルケン(22歳・♀・小鳥)

●リプレイ本文

●キャスト
フェルディナント(吸血鬼の王)役:壬 タクト(fa2121)
ミルフィー・クリストファ(初代ハンター)役:由比美紀(fa1771)
ロヴ(執事)役:星野・巽(fa1359)
セフィアス(生贄の少年)役:奏奇 詠斗(fa1658)
リリス(メイド)役:Laura(fa0964)
カイン・クリストファ(吸血鬼ハンター)役:カイン・フォルネウス(fa2446)
フェルディナント(覚醒後)役:皇・皇(fa0043)
マグリット(カインの恋人)役:マリーカ・フォルケン(fa2457)

●悪夢
 ‥‥また、あの夢だ。
 忘れようとしても、何度も同じ夢を見てしまう。
 あの忌々しい過去の悪夢を繰り返し‥‥。

「‥‥はあ‥‥はあ‥‥」
 ‥‥降りしきる雨の中。
 血溜まりの中に傷だらけの女が立っていた。
 彼女の名はミルフィー・クリストファ。
 私が肉体に呪いを掛けた忌々しい元凶。
「‥‥私の警告を無視した貴様が悪いのだ」
 この時の私は気づいていなかった。
 彼女にあんな力が残されていた事を‥‥。
「‥‥勝てないのは分かっていた。だからこうするしかなかったの!」
 何やらブツブツと呟きながら、ミルフィーが奇妙な印を結ぶ。
「永劫の呪いに苦しめヴァンパイア!」
 ここで私はようやく気づいた。
 ミルフィーが最後の命を振り絞り、私に呪いを掛けた事を‥‥。

「‥‥旦那様」
 ‥‥誰かの声がする。
 聞いた事のある声だ。
「また‥‥あの夢ですか、旦那様?」
 目を覚ますと、ロヴがいた。
 私の忠実な下僕‥‥。
 ロヴは私の視線に気づくと、黙ってタイとボタンを外し、瑞々しい肉体を曝け出した。
 自らの証を刻みようにして接吻を繰り返し、私がロヴの喉元に喰らいつく。
「だ、旦那様‥‥薔薇が綺麗に咲きましたよ」
 ‥‥今日は大切な日であった。
 新たな肉体を得るために、必要な儀式を行わなくてはならないのだ。

●薔薇の館
「君は‥‥誰‥‥?」
 ようやく彼女に追いつき、セフィアスがハアハアと息を吐く。
 いつの間にか彼女を走って追いかけていたらしい
 服が汗でビッショリと濡れるほどに‥‥。
「‥‥」
 しかし、漆黒の翼を生やした少女は何も答えない。
 ただ一度だけ笑みを浮かべ、血のように赤い一輪の薔薇を差し出しただけで‥‥。
「これは‥‥?」
 そう言ってセフィアスが口を開いた瞬間、彼女の瞳がピカッと輝き、漆黒の翼を大きく広げ、黒い羽根と共に薔薇の花びらが月明かりに照らされ、はらはらと地面に落ちていく。
 そこでセフィアスの意識は途切れ、深い眠りに落ちていった‥‥。

 どれ程の時間‥‥、眠っていたのだろうか。
 気がつくとセフィアスは天蓋付きのベッドに寝かされていた。
 目の前には執事風の男性が立っており、セフィアスの髪を愛おしそうに撫でている。
「心配なさらなくても大丈夫ですよ。あなたに危害は加えません」
 その言葉で安心したのか、セフィアスは再び眠りについた。
「‥‥眠ったか」
 凍るように冷たい視線をセフィアスに送り、フェルディナントがロヴを抱き寄せる。
「はい、ご主人様」
 ロヴの代わりに返事をした後、リリスがセフィアスの服を脱がせてキスをした。
「‥‥リリス、それは大事な器だ。決して目を離さぬように‥‥」
 含みのある笑みを浮かべながら、フェルディナントが妖しく瞳を輝かせる。
「はい、ご主人様」
 そう言ってリリスがクローゼットから洋服を取り出し、フェルディナント達にむかって微笑んだ。

●吸血鬼ハンター
「あれが師匠の言ってた屋敷か。‥‥いかにも居そうだな」
 師匠の遺言に従いフェルディナントを倒すため、カイン・クリストファが薔薇の館に辿り着く。
 薔薇の館はフェルディナントの力によって結界が張られているため、彼の力が弱まる100年後しか招かれざる者には見えない。
「‥‥無用心だな。誰もいないのか?」
 入り口の扉をギィッと開け、カインがゆっくりと辺りを見回した。
 それと同時にシャンデリアの明かりが点き、カインを誘うようにして蝋燭の炎が灯る。
「‥‥気づかれていたか」
 霊験の高い大聖堂の銀十字架を溶かして鍛造した銀弾を専用のリボルバー拳銃に込め、カインが法儀式済みの銀ナイフを構えて階段を上っていく。
 階段の上で待つメイドを睨みつけ‥‥。
「あんた、人間じゃねえな」
 彼女の答えを待つ事なく、カインが銀のナイフを投げ飛ばす。
「クッ‥‥」
 しかし、リリスの方が一寸早くカインの背後に回り込み、右手に持ったナイフを振り上げた。
「ふふ‥‥」
 カインを値踏みするようにして顔を近づけ、リリスが匂いを嗅いでぺろりと顔を舐める。
「‥‥油断したな! 逝けぇ!」
 リリスの口にリボルバー拳銃を突っ込み、カインが雄叫びを上げて引き金を引く。
「あ‥‥うっ‥‥」
 何が起こったのかも分からず、リリスが床に転がり息絶える。
 信じられない様子で虚空を見つめ‥‥。

●執事
「お見事‥‥と言っておくべきでしょうか。私は人間ですので銀の弾でなくとも良いでしょう?」
 リリスを冷たく見つめながら、ロヴがカインにむかってサーベルを投げる。
「ふーん、あんたは人間か。大方、吸血鬼に血を与え続ける奴隷って奴だろうが‥‥。生憎、化け物に味方する奴には容赦はしない主義でね。手加減はしないぜ」
 床に突き刺さったサーベルを引き抜き、カインがロヴを睨んでニヤリと笑う。
 ‥‥勝負は一瞬。
 躊躇した方が負けだ。
「今頃、旦那様は生まれ変わっておいででしょう。暫し私の相手をお願いしますね、ハンター殿」
 次の瞬間、ロヴのサーベルが月明かりを浴びてキラリと光る。
「遅いっ!」
 気合を入れて雄叫びを上げ、カインが光の如く素早い動きでロヴの首を刎ね飛ばす。
「御‥‥主人‥‥様‥‥」
 消え去るような声を出し、ロヴの首が床にゴロリと転がった。
「‥‥間に合ってくれよ。頼むから‥‥」
 サーベルについた血を払い、カインが祈るような表情を浮かべて扉を開く。
 まだ儀式が終わっていない事を祈りつつ‥‥。

●覚醒
「チィッ‥‥、遅かったか!」
 吸血鬼の王が干からびていたため、カインがチィッと舌打ちした。
 既にフェルディナントの肉体は少年の身体に宿っており、カインと同じ格好になっている。
「ほう、この姿になるとはな。‥‥この衣装が不思議かね? 何、私も元は人間でハンターだっただけの話だよ」
 まったく動揺した様子もなく、フェルディナントが怪しくニィッと笑う。
「そんな事はどうでもいいっ! 忘れた訳じゃないだろうな! あの日の事をっ!」
 吐き捨てるようにして叫びながら、カインがリボルバー拳銃を構える。

 ‥‥一年前。
「その娘を放せ!」
 カインはフェルディナントに出会っていた。
「‥‥言ったはずだ。これ以上、私に関わるなと」
 恋人を人質に取られ‥‥。
「わたくしに構わず、こいつを討って!」
 祈るような表情を浮かべ、マグリットが銀の短剣を握り締める。
 カインから護身用として渡された短剣を‥‥。
「馬鹿を言うなっ! そんな事‥‥、出来る訳ないだろ!」
 リボルバー拳銃を構えたまま、カインが唇を噛み締めた。
 怒りと悔しさで唇からは血が流れ、フェルディナントに対する殺意がメラメラと湧き上がる。
「これは‥‥警告だ‥‥」
 マグリットの喉元に牙を突き立て、フェルディナントがニヤリと笑う。
「お願い‥‥。こいつを‥‥倒して‥‥」
 それと同時にマグリットが自らの胸に銀の短剣を突き立て、後顧の憂いを立つため自害する。
「マグリットォォォォォォォォォォォォ!」
 そしてカインの雄叫びが辺りに響く‥‥。

「そんな小さな事を覚えているほど、私も暇ではないのでな。さて、此れよりは闘争の時間ぞ。王たる私が相手をしようというのだ。存分に互いの血肉を感じるまで終わってくれるなよ?」
 新しく手に入れた肉体の具合を試すかのようにして、フェルディナントがカインと対峙する。
「だったら思い出させてやるよ。‥‥この一発でな」
 フェルディナントの頭を狙い、カインがリボルバー拳銃の引き金を引く。
 しかし、銃口から放たれた銀の弾丸はフェルディナントの身体に届く事なくどろりと溶けて地面に落ちた。
「成る程、畢竟、吸血鬼に近接を挑むのは確かに無謀。とはいえ物言わぬ銃弾では余りに無粋が過ぎないかね? 今代のハンターよ。貴公が行うべきなのは血で血を洗い纏う凄惨にして最美なる闘争ぞ?」
 少年の肉体が馴染み始めた事に満足しながら、フェルディナントがカインを睨む。
「黙れっ! 今度こそ仕留めるっ!」
 最後に残った一発をリボルバー拳銃に込め、カインが再びフェルディナントの頭を狙う。
「何度やっても同じ事だ。‥‥残念だったな」
 勝ち誇った様子で笑みを浮かべ、フェルディナントが両手を開く。
 それと同時にカインがリボルバー拳銃を捨て、フェルディナントめがけてタックルを放つ。
「‥‥悪いな。その身体‥‥、返してもらうぜ!」
 自らの肉体を犠牲にして少年の肉体からフェルディナントの魂を引き抜き、カインがニヤリと笑って大量の血を吐き出した。
 ‥‥身体が拒絶反応を起こして崩壊を始めたのだ。
「所詮、ハンターでありながら吸血鬼の誘惑に乗ってしまうような弱い私が負けるのは必然という訳か。先代もそうだった、命を捨てる事を厭わずこの身の呪いを成就させた。人は、そこまで強くなれるのだな」
 ボロボロと崩れる肉体を見つめ、フェルディナントがふらりと立ち上がる。
「すまないね、貴女を幾度生まれ変わっても必ず見つけると誓ったのに‥‥」
 チェストの上に飾られた一組の男女が写った写真を胸に抱き、フェルディナントが窓を突き破って飛び降りた。
 彼の愛した薔薇の花に包まれて‥‥。