喪失者アジア・オセアニア

種類 ショート
担当 ゆうきつかさ
芸能 2Lv以上
獣人 2Lv以上
難度 普通
報酬 3.6万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 09/14〜09/18

●本文

 主人公は記憶喪失。
 自分が誰なのかも分からない。

<シーン1 病院>
 主人公が目覚めた場所は寂れた病院。
 お見舞いとして持ってこられたリンゴは腐り、ウジとハエが集っている。
 テーブルの上には財布と自分の免許証。
 これが唯一の手がかり。
 それを手に取った瞬間、部屋に入ってきた看護士が悲鳴を上げる。
 わけも分からず部屋から出て行く主人公。
 身体のあちこちがズキズキと痛む。
 それと同時に病院内に警報が鳴り響く。
 主人公を捕まえようとする医師と看護士。

<シーン2> 街
 ようやく病院から脱出した主人公が見たものは‥‥。
 廃墟と化した街だった。
 唖然とした表情を浮かべる主人公。
 油断している隙に瓦礫の中から現れた魔物に襲われてしまう。
 怪我を負いながら、逃げる主人公。
 免許証に書かれていた自宅を目指し‥‥。
 しかし、傷口から徐々に獣化が始まり、ついには理性を失ってしまう。

<シーン3> 獣
 殺人マシーンと化した主人公。
 次々と魔物達を仕留めていき、飢えた目つきで獲物を探す。
 それを見て言葉を失う担当医。
 すぐに処理班を呼び寄せ、主人公を大人しくさせる。
 主人公の後頭部を調べ、チップを抜き取る担当医。
 『‥‥やはり実験は失敗か」
 主人公が目指した場所。
 そこで待っていた医師達だった。
「すべては仕組まれていた事なのか」
  そして、主人公は再び眠りにつく。
 新たなチップが完成するまで‥‥。

・募集している役柄
 主人公、医師、看護士、魔物A、魔物B、担当医、処理班A、処理班B

●今回の参加者

 fa0352 相麻 了(17歳・♂・猫)
 fa1058 時雨(27歳・♂・鴉)
 fa1242 小野田有馬(37歳・♂・猫)
 fa2021 巻 長治(30歳・♂・トカゲ)
 fa2605 結城丈治(36歳・♂・蛇)
 fa2772 仙道 愛歌(16歳・♀・狐)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)
 fa4002 西村 哲也(25歳・♂・ハムスター)

●リプレイ本文

●キャスト
 黒木 丈(主人公:ジョーカー)役:相麻 了(fa0352)
 医師役:時雨(fa1058)
 看護士役:西村 哲也(fa4002)
 魔物A(蜥蜴型獣人:シャドウ)役:巻 長治(fa2021)
 魔物(竜型獣人:イーター)B役:十六夜 勇加理(fa3426)
 ヤマダ(担当医)役:結城丈治(fa2605)
 処理班A(前田)役:小野田有馬(fa1242)
 処理班B(仙道)役:仙道 愛歌(fa2772)

●シーン1 病院
「ここは‥‥何処だ‥‥?」
 気がつくと病院のベッドに寝かされていた。
 どうして、ここにいるのか分からない。
 何故か記憶を失っていたのだ。
「‥‥腹が減ったな」
 朦朧とする意識の中でリンゴを掴む。
 ネットリとした感触。
 手の中で蠢く何か。
「うっ、うわああああ!」
 恐怖のあまり悲鳴をあげ、手に持っていたリンゴを落とす。
 そこに纏わりついていたのは大量のウジ。
 右手にもその感触が残っている。
「俺は一体‥‥!? ‥‥ん? これは?」
 テーブルの上に置かれた財布を手に取り、自分の写真が貼られた免許証を取り出した。
「黒木 丈‥‥これが俺の名前?」
 困惑とした表情を浮かべ、丈が免許証の名前を睨む。
 まったく記憶に無い名前。
 免許証に貼られた顔写真がなければ、自分の物だと認識する事が出来なかった。
「失礼しま‥‥うわああああああああああ!? せ、先生!」
 情けない声を上げながら、看護士が派手に尻餅をつく。
 慌てた様子で病室を飛び出し、外にあった警報を鳴らす。
「ハァハァ‥‥。ようやく王子様のお目覚めかぁぁ‥‥。キミが目覚めるのをずっと待っていたんだよぉぉ」
 ギョロギョロとした瞳で丈を見つめ、医者がダラダラとヨダレを流す。
 何か薬でもやっているのか、まったく焦点が定まっていない。
「い、嫌だ‥‥来るな!」
 青ざめた表情を浮かべ、丈が医師を突き飛ばして逃げていく。
 ここが何処だか分からないが、異常な場所である事は間違いない。
「待てぇぇええエえええ!! イイコだから‥‥大人しくするんだァ‥‥!?」
 鎮静剤の入った注射器を振り回し、医師が執拗に丈の後を追いかける。
 そのため、丈は物陰に隠れ、医師達が通り過ぎるのをジッと待つ。
「ど、何処にもいない!? すぐに捕まえないと大変な事に!」
 そう言って看護士が警報を鳴らして、丈が脱走した事を他の職員に伝えるのであった。

●シーン2 街
「な、何だよ、これは‥‥」
 唖然とした表情を浮かべ、丈がガックリと膝をつく。
 命懸けで病院から脱出する事には成功したが、見渡す限り街が廃墟と化しているため、あまりのショックでその場から動けない。
「‥‥獣の鳴き声? ち、違う! あれは化け物!?」
 鳴き声が聞こえた方向に目を凝らし、丈がハッとした表情を浮かべて立ち上がる。
 ‥‥獣人の数は全部で二匹。
 そのうち一匹は蜥蜴型獣人。
 もう一匹は竜型獣人である。
「バ、バケモノ!? 一体、どうなっているんだ?」
 目の前の現実を受け入れる事が出来ず、丈が悲鳴を上げて逆方向に逃げていく。
「ウオオオオオオオン!」
 空に向かって咆哮を上げ、竜型獣人が追いかけてくる。
 しかし、蜥蜴型獣人の姿はなく、追いかけてくる様子もない。
「一匹だけなら、何とか逃げ切れるはずだ」
 折れ曲がった標識を頼りにしながら、丈が免許証に書かれた住所を目指す。
「ウガァァァァァ!!!!」
 次の瞬間、物陰から蜥蜴型獣人が現れ、丈を殴って瓦礫の山に消えていく。
「ぐはっ‥‥。う、腕が‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、丈が右腕を押さえて汗を流す。
 先程の一撃で丈の右腕は折れており、指を動かす事も出来なくなっている。
「に、逃げなきゃ‥‥」
 自分自身に言い聞かせるようにしながら、丈が駆け足で獣達から逃げていく。
 しかし、竜型獣人の吐き出した肉の塊がわき腹を直撃し、呻き声を上げて倒れ込む。
「もう少しで家なのに‥‥」
 朦朧とする意識の中、丈がふらりと立ち上がる。
 それと同時に蜥型蜴獣人が攻撃を仕掛け、手刀で丈の身体を切り裂いていく。
 そのため丈は大量の血を流し、虚ろな表情を浮かべて蜥蜴型を睨む。
「ウガァァァァァァ!」
 そして丈は咆哮を上げながら、物凄い速度で獣化を始めるのであった。

●シーン3 獣
「ハァハァ‥‥、ウガァァァァァ」
 飢えた目つきで獣達達を睨みつけ、丈がダラダラとヨダレを流す。
 神速の悪魔、黒猫獣人の『JORKER』。
 獣化した事によって理性が失われてしまったため、今の丈は目の前の獲物を倒すための殺人マシーンと化している。
「コ‥‥ロ‥‥ス‥‥」
 そして丈が最初の獲物として選んだのは、竜型獣人であった。
「グルルルルゥ‥‥」
 少しずつ間合いを取りながら、竜型獣人が何か吐き出そうとする。
 それと同時に丈が強烈な飛び蹴りを放ち、竜型獣人の首を軽々とへし折った。
「ウゴォォォォォォ!」
 竜型獣人の死体を掲げ、丈が満足した様子で咆哮を上げる。
 しかし、背後から蜥蜴型獣人の不意打ちを喰らい、バランスを崩して膝をつく。
「グルルルルゥ!」
 唸り声を上げて丈を殴り、蜥蜴型獣人が体色を変えて辺りの景色に同化した。
「ガァァァァァ!」
 不機嫌な表情を浮かべて辺りを見回し、丈がクンクンと鼻をヒクつかせる。
 その間に蜥蜴型獣人が別の場所に移動し、一気に間合いを詰めていく。
 次の瞬間、不意打ちを仕掛けてきた蜥蜴型獣人を狙い、丈が唸り声を上げて鋭い爪を振り下ろした。
「イーターに続き、シャドウまで‥‥。さすがジョーカーと言うべきか。予想外にやりよるな。・・・前田君達を呼んでくれたまえ」
 望遠鏡を使って丈達の戦いを見学しながら、ヤマダが本部に連絡を取って処理班を要請する。
 処理班は5分ほどで現場に到着し、強化外骨格を装着した仙道で暴走した丈を止めに行く。
「‥‥ケダモノの癖にしぶといね。これで理性があれば、実験は成功だったのに‥‥」
 悔しそうな表情を浮かべながら、仙道が部下達に指示を出してまわりを囲む。
 それと同時に丈が咆哮を上げて攻撃を仕掛け、強化外骨格を纏った部下達を、あっという間に倒していく。
「う、嘘‥‥。まさか、ここまで強いなんて‥‥。ますます気が抜けないな」
 嘲笑と共に対獣人用の銃を構え、仙道が筋肉弛緩系の神経ガスを放射した。
 しかし、丈にはほとんど効果がなく、唸り声を上げて仙道を思いっきりブン殴る。
「ぐはっ‥‥。今ので肋骨が折れたかも‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、仙道が救援を求めるために無線を使う。
 ようやく神経ガスが効いてきたのか、丈がフラフラと頭を揺らしているが、倒れるまではもうしばらく時間が掛かりそうだ。
「第1処理班による対象の弱化を確認。第2処理班、鎮圧に向かう」
 無線を使って仲間達と連絡を取りながら、前田が他の隊員を連れて丈の捕獲にむかう。
 しかし、丈の方が反応速度が速いため、隊員達がまわりを囲む前に次々と仕留めていった。
「‥‥予想以上の成果ね。これで失敗作なんて‥‥、勿体無いわね」
 残念そうに丈を見つめ、前田が麻酔銃を撃ち込んだ。
 それでも丈は朦朧としながら、前田の頭を掴んで一気に潰そうとする。
「ケダモノの癖に!」
 不機嫌な表情を浮かべながら、仙道が再び神経ガスを放出した。
 それと同時に丈がとろんとした表情を浮かべ、糸の切れた人形のようにしてパタリと倒れる。
「対象の活動停止まで2秒」
 丈が動かなくなった事を確認し、前田が腕時計を確認する。
「‥‥ご苦労様です」
 その結果に満足したのか、ヤマダがホッとした様子で溜息をつく。
「まさか精神的に安定せんとはな。‥‥コイツも失敗作か。‥‥やはり猫は気まぐれ」
 そう言ってヤマダが深い溜息をつくのであった。