ウォーカーと伯爵南北アメリカ

種類 ショート
担当 ゆうきつかさ
芸能 3Lv以上
獣人 3Lv以上
難度 難しい
報酬 10.4万円
参加人数 8人
サポート 0人
期間 10/29〜11/02

●本文

 舞台は霧のロンドン。
 切り裂きジャックの事件が起こっている最中。
 伯爵と名乗る吸血鬼を追い続けるハンターの話。

・シーン1 ウォーカー
 富豪夫婦から行方不明になった娘を捜して欲しいと依頼を受ける。
 もちろん、富豪夫婦も娘が生きている可能性が低いと思っているため、例え娘が死体であっても報酬を支払うと言っている。
 ただし、生きたまま連れて帰れば報酬は倍。
 ウォーカーはこの犯行が吸血鬼のものだと直感で分かり、助手を囮にして誘き寄せようと考える。

・シーン2 ジャック
 真夜中のロンドン。
 暗闇の中を歩く助手。
 背後から忍び寄るジャック。
 悲鳴をあげて逃げる助手。
 そして、銃声。
 ジャックは何が起こったのかも分からず、風穴の開いたオデコを撫でる。
 再び銃声。
 しかし、ジャックは助手を連れて屋敷に逃げる。

・シーン3 伯爵
 ジャックがウォーカーと遭遇した事を知り、伯爵が笑顔を浮かべて拷問の準備をし始める。
 そのため、命乞いをするジャック。
 伯爵夫人はジャックより、助手に興味がある様子。
 そして助手の悲鳴が響く。
 その悲鳴を聞きつけ、ウォーカーが窓を突き破って登場する。
 再び銃をぶっ放し、ジャックを倒すウォーカー。
 続いて襲い掛かってくる伯爵夫人。
 ‥‥こちらも瞬殺。
 残るは伯爵だけとなる。

・シーン4 取引
 富豪の娘を人質にして、伯爵が形勢逆転を図ろうとする。
 しかし、ウォーカーは躊躇せず、伯爵めがけて銃を撃つ。
 顔に傷がついた事で、伯爵が怒り狂う。
 それと同時に攻撃を仕掛けるウォーカー。
 突然、富豪の娘に噛みつかれ、右腕を負傷してしまう。
 このままでは自分も吸血鬼化すると思いながら、富豪の娘にトドメをさし、ウォーカーが伯爵と対峙する。
 勝負は一瞬。
 ウォーカーは見事、伯爵を倒し、最後の始末を助手に任せる。
 それはウォーカー自身の命を奪う事だった‥‥。

・ウォーカー
 吸血鬼ハンター。
 40代の渋いオヤジ。
 吸血鬼にされた娘を倒すため、吸血鬼ハンターになった。
 そのため、伯爵を恨んでいる。
 得物は銀色に輝く銃。

・ウォーカーの助手
 生娘のため吸血鬼に狙われている。
 ウォーカーは彼女を使って吸血鬼を誘き寄せているのだが、本人はその事にまったく気づいておらず、不幸体質だと思い込んでいる。

・富豪
 娘のためなら金に糸目はつけない金持ち。

・富豪夫人
 娘の事が心配でゲッソリと疲れている。

・富豪の娘
 生娘のため伯爵に狙われてしまったらしい。

・伯爵
 片眼鏡にシルクハットがトレードマーク。
 常に笑みを絶やさず、毒を吐いても悪気か無い。

・伯爵夫人
 ウォーカーの娘で、伯爵の妻。
 人間であった頃の記憶を失っているため、ウォーカーが父親だとは思っていない。
 常に伯爵の事を考え、彼のためなら命さえ惜しくない。

・使用人
 モヒカン頭で、いつもヘラヘラとしている。
 レッサーバンパイアのため、伯爵の命令には逆らえない。
 いつもつまみ食いをしようとして、伯爵に見つかり半殺しの刑にされている。
 本能の赴くままに行動するド変態。

●今回の参加者

 fa2378 佳奈歌・ソーヴィニオン(17歳・♀・猫)
 fa2446 カイン・フォルネウス(25歳・♂・蝙蝠)
 fa2573 結城ハニー(16歳・♀・虎)
 fa2903 鬼道 幻妖斎(28歳・♂・亀)
 fa3014 ジョニー・マッスルマン(26歳・♂・一角獣)
 fa3341 マリエッテ・ジーノ(13歳・♀・小鳥)
 fa3426 十六夜 勇加理(13歳・♀・竜)
 fa3776 コーネリアス・O(32歳・♂・猿)

●リプレイ本文

●キャスト
 ウォーカー(吸血鬼ハンター)役:コーネリアス・O(fa3776)
 レーゼ(ウォーカーの助手)役:マリエッテ・ジーノ(fa3341)
 ジークフリート・フォン・アイゼナッハ(富豪)役:鬼道 幻妖斎(fa2903)
 カーテローゼ(富豪夫人)役:結城ハニー(fa2573)
 ジャック(使用人)役:ジョニー・マッスルマン(fa3014)
 カイン(伯爵)役:カイン・フォルネウス(fa2446)
 ジェーン(伯爵夫人)役:佳奈歌・ソーヴィニオン(fa2378)
 エヴァンゼリン(富豪の娘)役:十六夜 勇加理(fa3426)

●シーン1 ウォーカー
 霧の街ロンドン。
 ウォーカーはここで吸血鬼ハンターとした仕事の依頼を引き受けていた。
 今回の依頼人は、とある富豪。
 数日ほど前から、この屋敷に住む一人娘が行方不明になっているらしい。
 世間では切り裂きジャックによる連続殺人事件が起こっている最中。
 ‥‥この娘が生きている保障はない。
「金はいくらでも払う。例え死体になっていたとしても構わない。娘を捜し出してくれ!」
 それが相手の条件だった。
 今回の依頼主である富豪、ジークフリートは医薬品工場の主だが、それは表向きの仕事で実は怪しげな薬物を売って巨万の富を得た悪党だ。
 そのため、街での評判は最悪で、色々と悪い噂が流れている。
「死体でも構わない‥‥か。妙な事を言うじゃないか。まるで別の使い道でもあるかのように‥‥」
 険しい表情を浮かべながら、ウォーカーがジークフリートを睨む。
 彼の娘は『ロンドンの宝石』と呼ばれており、見るものすべてを魅了するほどの美貌を持つ才女。
 その外見とは裏腹に性格は両親譲りで、サディスティックな性格らしい。
「あなたにそこまで教える権利は無いわ! それとも報酬を減らされたいのかしら?」
 不機嫌な表情を浮かべながら、カーテローゼが鼻を鳴らす。
 ジークフリートの妻、カーテローゼ。
 彼女は薬物中毒のためか顔色が悪く、身体が痩せ細っている。
「‥‥解った、引き受けよう」
 必要以上の事は口にせず、ウォーカーが前金を受け取った。
「何だか怪しくありませんか? ‥‥破格ですよ、このギャラ自体」
 警戒した様子で富豪夫婦を睨みつけ、レーゼがウォーカーのトレンチコートを掴む。
「ひょっとして‥‥、怖いのか? まぁ、お前みたいなンでも、一応オンナだからな」
 含みのある笑みを浮かべながら、ウォーカーがレーゼの耳元で囁いた。
「先生、それはヒドイですよぉっ!!」
 恥ずかしそうに頬を染め、レーゼが大きく頬を膨らませる。
 そのやり取りを見て、カーテローゼが一言。
「あなた‥‥、可愛いわね。うちでメイドをしてみない。報酬は‥‥弾むわよ」
 レーゼの身体を舐めるようにして見つめた後、カーテローゼが小悪魔のような笑みを浮かべて呟いた。
 それと同時にレーゼの背筋に悪寒が走る。
 うまく説明する事は出来ないが、彼女を信用するのは危険なようだ。
「気が変わったら何時でも声を掛けてくれ。ここにいるメイド達も仲間が多い方が喜ぶしな」
 サディスティックな笑みを浮かべ、ジークフリートがレーゼの肩を叩く。
 まるで悪魔が手招きしているように‥‥。

●ジャック
 真夜中のロンドン。
 辺りには深い霧が立ち込めており、人の気配はほとんどない。
「う〜、やっぱり先生は私の事を女だとは思っちゃいない! 真夜中にいたいけな少女を歩かせるなんて‥‥。これで死んだら化けて出てやるんだから‥‥」
 呪いの言葉を呟きながら、レーゼが路地裏を選んで歩いていく。
 切り裂きジャックによる事件は、霧の深い真夜中にしか起こっていない。
 そのため、ウォーカーはレーゼを囮にして、ジャックを誘き寄せようとしているようだ。
「ひっ! 誰かいる!?」
 思わず声をあげそうになった。
 背後から忍び寄る気配。
「頂きマンモスuuuuuuuuuuuuuuu!」
 次の瞬間、筋骨隆々のモヒカン頭(ジャック)が、雄叫びを上げてリーゼに襲い掛かってきた。
「きゃあ!?」
 目をパチクリさせながら、レーゼが悲鳴を上げて逃げていく。
 それと同時にウォーカーが姿を現し、葉巻を踏み消した後、銀色に輝く銃を構えて引き金を引いた。
「‥‥貴様がジャックか。さぁ、伯爵の元に案内してくれ」
 ジャックの首元にあるマーク。
 それが伯爵と契約を交わしたモノの証。
「WHY?? 何かありましたか???」
 風穴を開いたオデコを撫でながら、ジャックが不思議そうに首を傾げる。
「チィッ‥‥、しまった!」
 銀の弾丸をケチッたせいで、浄化作用が薄れたらしい。
「きゃあぁ〜、放して下さい〜!!」
 気がついた時にはレーゼが連れ去られた後だった。
 だが、まだ望みは残っている。
 地面に転々と落ちたジャックの腐汁。
 この後を追っていけば、必ず伯爵の屋敷に着くはずだ。

●シーン3 伯爵
「‥‥ウォーカーに顔を見られただと? それなのに屋敷まで帰ってきたわけか。私は常々言っていたはずだ。物事はスマートに運べ、とね」
 爽やかな笑みを浮かべたまま、カインがジャックの首根っこを掴む。
「WHY?? こうして手土産まで持ってきたのに、何がご不満でMOOOO‥‥ガフ!」
 カインに首の骨をへし折られ、ジャックがブクブクと泡を吐く。
 その後もカインの拷問は終わらず、蝋燭をポタポタと垂らされている。
「あらあら、わたくしの楽しみを取らないでください。それとも、こちらの娘を貰っても宜しいのかしら?」
 妖艶な笑みを浮かべながら、ジェーンが気絶しているレーゼにキスをした。
「悪いが男に興味は無い。さっそく戴くとするか」
 ジェーンからレーゼを奪い取り、カインがベッドまで歩いていく。
 そのため、レーゼはパチッと目を覚まし、カインを見つめて悲鳴を上げる。
「おやおや、これは心外だなぁ。それとも感激のあまり声が出てしまったのかな?」
 レーゼの顔に唇を近づけ、カインが口説くようにして囁いた。
「‥‥そこまでだ!」
 次の瞬間、派手な音を立てて窓ガラスが割れ、ウォーカーが屋敷の中に転がり込む。
「君は相変わらず無粋極まるね、ウォーカー君」
 表情ひとつ変えずにウォーカーを見つめ、カインがハンカチを使って埃を払う。
「ダレかと思えばYOUデスKAAAA。先程のお礼をシマSHOUUUUU!」
 全身の筋肉を隆起させて蝋燭の塊を落とし、ジャックが物凄いスピードで攻撃を仕掛けてくる。
 しかし、ウォーカーは怯む事無く、ジャックの頭に銀の弾丸を撃ち込んだ。
「無駄よ! 無駄無駄ァ!! 心臓を撃ち抜かない限り私は不死身〜〜〜!」
 そして、ジャックの心臓にもう一発。
 そのため、ジャックは一瞬にして砂と化した。
「さすが吸血鬼ハンター。貧乏以外に敵なしね」
 砂の上を堂々と歩きながら、ジェーンがウォーカーを見つめてニヤリと笑う。
 それと同時にシェーンが牙を剥き出し、ウォーカーに飛び掛ってきた。
「‥‥マリア」
 レーゼにサッと銃を向けて眉を寄せ、ウォーカーが苦渋に満ちた表情で奥歯を噛みしめる。
 マリアはウォーカーの娘。
 そして、ジェーンの本当の名前がマリア‥‥。
「うおおおおお!」
 雄叫びと共に銃の引き金を引くウォーカー。
 心臓に銃弾を喰らい、マリアが悲鳴を上げる。
「おとう‥‥さん‥‥」
 死ぬ間際に本当の記憶を取り戻し、マリアがボロボロと涙を流して崩れていく。
 ウォーカーは砂となったマリアを拾い上げ、昔の事を思い出しながら号泣するのであった。

●シーン4 取引
「相変わらずしぶといね。しかも実の娘を手に掛けるとは‥‥」
 ウォーカーの気持ちを逆撫でするような言葉を吐きながら、カインが爽やかな笑みを浮かべて口を開く。
 レーゼは再び気絶させられベッドの上に寝かされており、エヴァンゼリンがカインの腕に抱かれている。
「ロンドンはお前みたいな変態ばっかりで困るよ」
 憎しみを込めた笑みを浮かべ、ウォーカーがカインに銃口をむけた。
「おっと‥‥、いいのかい? 人質に当たっても‥‥」
 エヴァンゼリンを盾にしながら、カインが勝ち誇った様子で笑みを浮かべる。
「‥‥構わん。絶対に外さんからな」
 迷う事なく銃の引き金を引き、ウォーカーがカインのモノクルを破壊した。
「き、き、貴様ァ‥‥よくも私の顔に傷をぉ!!」
 殺気に満ちた表情を浮かべ、カインがエヴァンゼリンを突き飛ばす。
「それで任務完了か」
 そのため、ウォーカーはエヴァンゼリンを抱きとめ、ホッとした様子で溜息をつく。
「ひとつ言い忘れていたが‥‥、私は女性を攫ったらすぐに血を吸う性質でね。残念だったねぇ、ウォーカー君。もうその娘は手遅れだ‥‥アハハッ!」
 エヴァンゼリンがウォーカーの手に渡った事を確認した後、カインが先程とは表情を一転させてニヤリと笑う。
 次の瞬間、エヴァンゼリンの目の色が変わり、ウォーカーの首元にガブリと噛みついた。
「‥‥マズイわ、この血」
 不機嫌な表情を浮かべながら、エヴァンゼリンがペッと唾を吐き捨てる。
「ジェーンは死んだんでしょ? だったら私が伯爵夫人ね。ジャックが死んだから、私の玩具が無くなっちゃったけど、彼でもいいわ」
 ウォーカーの顔を見つめ、エヴァンゼリンがニヤリと笑う。
 それと同時にウォーカーが銃を撃ち、エヴァンゼリンの動きを封じ込めた。
「すぐには殺さない。報酬がもらえなくなるからな」
 荒く息を吐きながら、ウォーカーが首元を押さえて立ち上がる。
 質の悪い銀を使ったせいか、彼女の肉体がゆっくりと崩壊し始めた。
「‥‥君は生かしておいたら厄介そうだ。‥‥ここで確実に息の根を止めてあげよう。この私自身の手でね」
 両手の爪を伸ばして暫し向き合い、カインが唸り声を上げて攻撃を仕掛ける。
 そして、銃声。
 カインの体が爆発するようにして消え去った。
「やっぱり純度の高い銀は違うな。レーゼ、頼みがある。娘さんを返してやってくれ。多分、朝までは持つはずだ。それとこれで俺を撃て。このままじゃ、あいつみたいになっちまうからな」
 銀色に輝く銃をリーゼに手渡し、ウォーカーが目を閉じる
「先生‥‥、requiescat in pace(安らかに眠ってください)」
 ボロボロと涙を流しながら、リーゼが大声を上げて引き金を引く。
 しばらく呆然とするリーゼ。
 しかし、このままではエヴァンゼリンが消滅してしまうため、ぐしゅぐしゅと涙を拭って伯爵邸を後にした。