ビギナー南北アメリカ
種類 |
ショートEX
|
担当 |
ゆうきつかさ
|
芸能 |
1Lv以上
|
獣人 |
1Lv以上
|
難度 |
普通
|
報酬 |
1万円
|
参加人数 |
8人
|
サポート |
0人
|
期間 |
11/18〜11/22
|
●本文
<募集>
プロレスの分かる人
<応募資格>
プロレスの知識がある方
プロレスを教える事が出来る方
<詳しい内容>
女子プロレスラーになる事を夢見ている少女にプロレスを教えてあげてください。
彼女はプロレスに関する知識がまったくないため、相手が動かなくなるまで殴れば勝ちだと思い込んでいます。
その上、彼女は血の気が多く、いつも喧嘩ばかりしています。
彼女にとってプロレスは喧嘩の延長上でしかないため、まずは基本から叩き込む必要があるでしょう。
関わる事の出来るトレーニングは3種類あるため、どれかひとつ選んで参加してください。
複数のトレーニングを選択した場合は、こちら側で適当に振り分ける事になります。
<トレーニング一覧>
・朝の部
プロレスの基礎知識を叩き込みます。
彼女はルールをまったく知らないため、分かり易く教える必要があるでしょう。
ここできちんと基礎知識を覚えておかないと、他のトレーニングに悪影響が出てしまいます。
・昼の部
基本的なトレーニングをします。
どんな食事をするのが理想的なのかも、彼女に教えてあげましょう。
彼女は朝昼抜きでファーストフードばかり食べています。
また不足している栄養はサプリメントで補っています。
・夜の部
リングを使って練習試合をしてみます。
彼女は相手を殴り倒す事しか考えておらず、凶器攻撃も当たり前のようにしてきます。
どうやらヒール選手を希望しているようですが……。
●リプレイ本文
●朝の練習風景
女子プロレスラーに憧れている女の子にプロレスを教えるため、レスラー達が彼女の指定されたプロレスジムに集まった。
「オッス! オレ、飛鳥・雅(アスカ・ミヤビ)! 女子プロレスラーを目指す美少女って所かな? この格好‥‥、似合うだろ?」
思いっきり場違いな格好をしてレスラー達の前に顔を出し、飛鳥・雅が満面の笑みを浮かべて自己紹介をし始める。
雅は両親の都合で最近アメリカに来たらしく、テレビで放送していた女子プロレスの中継を見たのが、プロレスに興味を持ったキッカケで、早くレスラーになりたくてウズウズしているようだ。
しかも彼女の見ていたプロレスは、アメリカのショープロレスで、技の素晴らしさより、派手さをメインにしたものだったため、間違った意味でプロレスを理解している可能性が高い。
「‥‥何だ、このガールは! まるでストリートギャングそのままではないか!」
唖然とした表情を浮かべ、ザビエール神父(fa2268)が雅を睨む。
雅の格好はプロレスに対して間違った認識があるため、顔にはカブキのようなメイクを施し、身体に無数の鎖を巻いている。
ハッキリ言って動きづらそうな上、対戦相手からも溜息が漏れそうな格好だ。
「‥‥この様子では物事の本質を全く理解していないようね。まぁ、基本的に『現代っ子』だからかも知れないけど‥‥。我慢と言う事を知らず、苦労とかハングリー精神とか、そう言うのが全くないんでしょうから‥‥。血気盛んなのはいいけど、それによって他人様に迷惑を掛けるような行為ばかり起こすのは危険だから、今のうちに『修正』しておかないとね☆」
含みのある笑みを浮かべ、カリン・マーブル(fa2266)が雅の肩を叩く。
「お、おう! 宜しくな! オレ‥‥、可愛い子。好きだから‥‥」
カリンの胸をマジマジと見つめ、雅が恥ずかしそうに頬を染める。
「あ、あの‥‥覚える気はあるよね?」
妙な視線を感じたため、カリンが気まずく胸を隠す。
「も、もちろんさ! 身体とか密着させてドキドキする気満々だぞ!」
必要以上に動揺しながら、雅がコホンと咳をした。
「ここまで欲望丸出しだと逆に笑いがこぼれるわね。えーっと、頑張りましょう」
身の危険を感じて雅と距離を置き、カリンが乾いた笑いを響かせる。
「どうやらプロレスのルール等を教える前に、プロレスとは何たるかを、倫理的な部分から話す必要がありそうですね‥‥」
呆れた様子で溜息をつきながら、リネット・ハウンド(fa1385)がホワイトボードの前に立つ。
雅が借りたジムではレスラー達が練習試合をしており、辺りにはピリピリとした空気が漂っている。
「リングの貸し出し許可が出たのが夜だけだから、とりあえず基本的な事でも教えるか」
本屋で購入してきた本を手渡し、青雷(fa1889)が雅を席に座らせた。
「ちょっ、ちょっと待てよ。何でプロレスやるのに、勉強しなくちゃなんねえんだよっ! オレは聞いてないぞ! 責任者を呼べ、コンチクショウ!」
よほど勉強するのが嫌なのか、雅が文句を言って立ち上がる。
「いいから座った、座った。プロレスをやりたいんだったら大人しく話を聞くんだな。ルールも知らずにプロレスをしたって怪我をするだけだしな」
面倒臭そうな表情を浮かべ、青雷が強引に雅を座らせた。
「‥‥プロレスはエンターテイメント性の強い格闘技だから、お客さんを楽しませる事が第一で、勝ち負けは二の次、常に観客を意識したファイトをするべきです。給料にしても、お客さんが払ってくれるチケット代などのおかげでファイトマネーがもらえるわけだから、絶対にお客さんに嫌な思いをさせてはいけません。特に日本と違ってアメリカでは人気と収入が直結関係にあるからなおさらです。対戦相手にも敬意を払うべき。自分勝手なマイペースファイトは慎まなければならなりません。例えヒールでも最低限してはいけないモラルは守らなければ、嫌われてファイト相手がいなくなってしまいます」
ホワイトボードを使用しながら、リネットが分かりやすく説明する。
雅は実戦以外に興味がないため、つまらなそうな表情を浮かべ、まったく話を聞いていない。
「その様子じゃ、ほとんど理解していないようね。必要最低限の『マナー』だけでも分からなきゃ、試合に出る事は出来ないわよ。試合に勝てれば何をやっても良いという短絡的な思考は改めなさい」
不機嫌な表情を浮かべ、カリンが雅の前に立つ。
「何でだよ! 勝てば問題ないだろ! 勉強なんてオレには全く必要ねぇ! リングに上がったら、オレの必殺パンチで相手を伸しちまうからな! それなら技だってかける必要はないだろ? 試合開始のゴングと共に、勝負は決まったようなものだから‥‥。それともヤルか? この場所でっ!」
納得のいかない様子でカリンを睨み、雅が今にも飛び掛りそうな勢いで立ち上がる。
「お前のやり方じゃ、プロレスで頂点に立つ事なんて不可能だ。その様子じゃ、本当のプロレスだって観た事がないようだしな」
クールな表情を浮かべながら、青雷が彼女をガツンと怒鳴りつけた。
「なっ、なっ、なんだとぉ!? オレと戦った事もない癖に、そんなにデカイ口を叩きやがって! リングに上がれ! いますぐにっ!」
リングの上で他のレスラー達の練習試合が行われているのも気にせず、雅がまわりの制止を振り切って無理矢理リングに上がろうとする。
「‥‥いいだろう。それであんたが納得するのなら‥‥」
大きな溜息をついた後、青雷がリングに上がろうとした。
「そこまでだっ! これ以上の争いは無意味である! ‥‥納得のいかない事があるなら、リングで決着をつけるのだな。きちんと『ルール』を守った上で‥‥」
ふたりに間に割って入り、ザビエールがジロリと睨む。
これ以上、大声を出して喧嘩をすれば、ジムから追い出されても文句を言う事は出来ないだろう。
「‥‥分かったよ。ルールを覚えりゃいいんだろ。たくっ‥‥」
面倒臭そうな表情を浮かべ、雅が席に座って溜息をつく。
雅は頭を使う事が苦手なため、つまらなそうな表情を浮かべて参考書をめくる。
「それじゃ、参考にプロレスのビデオでも見ましょうか? これなら頭を使う必要がないでしょ?」
気まずい空気が漂う中、リネットがプロレスのビデオを再生した。
彼女の持ってきたビデオは、雅の好きなショープロレスとは異なるが、有名レスラーの白熱した試合が録画されている。
「おっ! こりゃあ、面白そうだな。本を読むより楽しいや」
瞳をランランと輝かせ、雅がテレビにへばりつく。
彼女はショープロレス以外のプロレスは観た事がなかったため、他のレスラー達を押しのけるようにしてプロレスの試合を鑑賞する。
『ゴルァ! 見えねぇだろうがっ!』
そのせいでまわりのレスラーがテレビを見る事が出来なかったため、一斉にツッコミを食らってズルズルと席まで戻された。
「れ、練習試合は終わっていたのね」
テレビに群がるレスラー達を見つめながら、リネットが乾いた笑いを響かせる。
リネットの持ってきたビデオは、このジムのレスラー達にとって神であり、尊敬する人物のものだったらしい。
「んにゃろ! 負けてタマるか!」
怒りに満ちた表情を浮かべ、雅がレスラー達にむかって飛び込んだ。
途端にレスラー達が輪を作り、グシャリと嫌な音がした。
「は、謀ったな。ハナペチャになったら、一生恨むぞ、コンチクショウ!」
大粒の涙を浮かべながら、雅が真っ赤に腫れた鼻を撫でる。
「こ、これだけプロレスに興味があるなら、ルールを知っていてもおかしくないと思うのだが‥‥」
雅がプロレスを楽しんでいたため、ザビエールが納得のいかない様子で腕を組む。
最初の印象では彼女がショープロレスにしか興味がなく、普通のプロレスには全く興味がないと思っていたため、彼女の対応には驚いている。
「それとこれとは別だろ。車に乗るのが好きなヤツが、車の構造を理解していないのと同じ事だよ」
夢中になってビデオを見ながら、雅が訳の分からない事を呟いた。
彼女なりには分かりやすく説明したつもりだが、その言葉の意味を理解している者は誰もいない。
それどころか、余計にワケが分からなくなった者までいるようだ。
「本当は自分でも、気付いているはずだ。‥‥何かが違うって」
ビデオが終わるのを待ってから、青雷が真剣な表情を浮かべて口を開く。
「んーーーーーーーーーーーーー、コホン」
しばらくしてから、雅がコホンと咳をした。
「うまく言葉に出来ないけど、オレのプロレスは違うって分かったよ。だから教えてくれるかな。本当のプロレスってヤツを‥‥」
恥ずかしそうに頬を染め、雅が上目遣いでレスラー達の顔を見る。
身の纏っていた鎖を外し‥‥。
真剣な表情を浮かべながら‥‥。
「そうと決まれば特訓ねっ! ‥‥覚悟しなさいっ!」
ホッとした様子で笑みを浮かべ、カリンが雅の背中をぽふりと叩く。
特訓はまだ始まったばかりである。
‥‥後は彼女の頑張り次第。
●昼の練習風景
「良いか! よく聞け! プロレスってのは相手を倒す為の物じゃない! 観客に自分は強いんだとピーアールする物だ! だから凶器なんてかりそめの力を手に入れるんじゃなく、敵を圧倒するパワーとスタミナを身につけるんだ! 敵の技を受け止め、同じ技で相手を倒す!! そのタフネスとパワーこそが、アメリカンヒーローのパフォーマンスだ!! 憶えておくんだな。レディ♪」
昼食を取るため雅を食堂に招き入れ、ボンバー雛ちゃん♪(fa0373)がハンバークを御馳走した。
テーブルの上にはアメリカンサイズのハンバーグが置かれており、その横には栄養バランスを整えるために必要なサプリメントが置かれている。
「これ‥‥、食べていいのか?」
瞳をランランと輝かせ、雅がじゅるりと涎を拭う。
普段から彼女はファーストフードしか食べておらず、その中でもハンバーガーが好きなため、特大境゛にハンバーグに心を奪われている。
「本当は生肉を食べるのが良いんだけど、慣れないと最初は辛いだろうからハンバーグでね。足りないビタミンとミネラルはサプリメントで補充。これアメリカンライフ♪」
ガツガツとハンバーグをパクつく雅を見つめ、ボンバー雛ちゃん♪がクスリと笑う。
よほど腹が空いていたのか、あっという間に平らげ、ハンバーグのおかわりをする。
「そんなに食ってトレーニングなんて出来るのか? ‥‥後で後悔しても知らんぞ」
不敵な笑みを浮かべながら、氷川玲(fa0347)がトレーニング表を突きつけた。
トレーニング表には、ビッシリと埋め尽くすほどのトレーニング内容が書かれており、時間を掛けてこなした場合、明日になっても終わりそうにない。
「楽勝、楽勝♪ こんなの一日ありゃ、すぐ終わる」
満面の笑みを浮かべながら、雅が親指をビシィッと立てる。
普段から簡単なトレーニング(ストリートファイト?)をしているため、玲が突きつけてきたトレーニング表を見ても全く動揺していない。
「何か‥‥勘違いをしてないか。一日じゃない。‥‥一時間だ!」
呆れた様子で溜息をつきながら、玲がビシィッと言い放つ。
「い、一時間!? 死ぬって、マジで!」
驚いた様子で目を丸くさせ、雅が飲んでいた水を吹く。
‥‥予想外の出来事である。
普段なら何とかなるかも知れないが、満腹になるまで食事をした後だ。
一時間で終わらせる事など無理に近い。
「こんなにパンパンのお腹で、トレーニングが出来るのかな? ちょっと食べ過ぎちゃったみたいだね」
パンパンに膨らんだ腹を見つめ、ボンバー雛ちゃん♪がニコリと笑う。
別に罠にハメたつもりはないのだが、雅は青ざめた表情を浮かべて、テーブルの上に突っ伏している。
「で、でもさ。ご飯を食べた後に走ったら、お腹が痛くなっちゃうジャン!」
苦笑いを浮かべながら、雅がボソリと呟いた。
こんな状態でトレーニングをしても、マトモにこなせるわけがない。
「好きなだけ時間をやろう。それまでに準備を整えろ! その後は柔軟、ランニング、筋トレ、腕立て伏せ、スクワット、腹筋、ウェイトトレーニングの順番だ。基礎体力がついていれば、それほど苦労はしないはず。‥‥覚悟しておくんだな」
雅の肩をぽふりと叩き、玲が食堂を出て行った。
「ど、どうしよう!!!!!!!!!! ハンバーグ、食べ過ぎちゃったよ!!!!!!!!!!」
‥‥そして雅の悲鳴が響くのだった。
●夜の練習風景
「いいか、プロレスとは最も華麗な格闘技ダ」
雅にプロレスの基本を教えるため、WTITE FANG(fa2244)がリングに上がって雅を睨む。
あれから雅は玲の用意していた地獄の特訓をこなし、フラフラになりながらもリングに上がってFANGからトレーニングを受けていた。
「ちょっ、ちょっと待って! ま、まだ‥‥、心の準備がぁ‥‥」
ヘッドギアを頭に被り、雅が消え去りそうな声を出す。
玲の特訓が終わってから1時間ほど休憩時間があったのだが、疲れていたためウッカリ眠ってしまったため、彼女の身体が戦う事よりも眠る事を望んでいる。
「ただ勝てばいいというのでなく、他人様に見せる事が大切だから、戦っている間もその事だけは忘れないようにね」
心配そうな表情を浮かべ、飛鳥 夕夜(fa1179)が彼女に簡単なアドバイスをした。
「了解、アネキ♪」
同じ苗字である事に親近感を持ったため、雅が飛鳥の事を『アネキ』と呼ぶ。
実際には姉妹でもなければ、親戚でもないのだが、雅が勝手に飛鳥の事を尊敬し、気軽に『アネキ』と呼んでいる。
「あ、あの‥‥、アネキはカンベンね」
苦笑いを浮かべながら、飛鳥が気まずくツッコミを入れた。
飛鳥と同じ苗字である事が分かった瞬間、雅から『お姉様』と呼ばれて抱きつかれたらしく、色々な意味で彼女に警戒しているらしい。
「そんな細かい事は気にするなって! オレ‥‥、決めたから!」
やけに爽やかな表情を浮かべ、雅がニコリと微笑んだ。
彼女の返事も聞く事なく‥‥。
「き、決めたって‥‥、あたしに拒否権はないわけ‥‥?」
雅の強引さに驚きながら、飛鳥が大粒の汗を流す。
どうせここで拒否したとしても、『姐さん』やら『姉タマ』やら『姉タン』と呼ばれるような気がするため、拒否する事自体が無意味なのかも知れないが、雅の視線が妙に熱いため身の危険を感じている。
「雑談はそこまでダ。まずは、プロレスというものを身体で感じてもらウ」
次の瞬間、FANGが雅の攻撃を受け止め、側面に回り込みながら喉に軽い手刀を放つ。
「あ、あれ‥‥?」
予想外の出来事に驚きながら、雅がゴロリと倒れこむ。
‥‥一瞬だった。
雅は反撃する暇もなく、マットに身体を沈めている。
「た、たったの一撃‥‥? それで終わりなの?」
唖然とした表情を浮かべ、飛鳥がボソリと呟いた。
‥‥弱い。
‥‥弱すぎるっ!
これではプロレスどころの話ではない。
「ひょっとして喧嘩の相手は近所の子供か? この程度の事で倒れるとは情けないヤツだナ。それとも、おまえが勇ましいのは口だけカ? 今までハッタリと凶器を使って喧嘩に勝っていただけカ?」
冷たい視線を雅に送り、FANGが呆れた様子で溜息をつく。
「す、すげぇ‥‥、やっぱ喧嘩とは違うんだな。‥‥プロレスって‥‥。だが、これで目が覚めたぜ! 夢の国からコンニチワって所だな。‥‥いいか。これからが本番だぜ! 今までの雅ちゃんだと思ったら大間違いさ! オレの実力を見せてやるっ!」
フラフラとしながら立ち上がり、雅がFANGを見つめてニヤリと笑う。
ようやく目を覚ましたのか、やけに気合いが入っている。
「どうやら打ちどころが悪かったようだナ。‥‥いいだろウ。かかってこイ!」
勝ち誇った様子で腕を組み、FANGがジロリと雅を睨む。
残念ながら雅の攻撃はプロレスとは程遠く、一撃必殺を狙っているためか隙がある。
そのためFANGが本気を出す必要はない。
「チャンスだよ、雅! 今まで教わった事を思い出して!」
ロープをギュッと握り締め、飛鳥が雅にむかってアドバイスする。
「‥‥教わった事。そ、そうか!」
それと同時に雅がFANGの後ろに回り込み、すぐさまバックドロップの体勢に持ち込んだ。
「‥‥んな? ば、馬鹿ナ!」
全く身動きが取れないため、FANGがダラリと汗を流す。
油断していたせいもあるのだが、ここまで素早く動けるとは予想もしていなかったため、技から抜け出すタイミングを失ってしまったらしい。
「だ、駄目だ。‥‥持ち上がらない」
何度も力を入れた後、雅が恥ずかしそうにてへっと笑う。
本当ならこのままFANGにバックドロップを仕掛けて、脳天を叩き割るつもりでいたのだが、初めて使った技のためか、うまくタイミングが掴めない。
「‥‥まぐれだったのね」
キョトンとした表情を浮かべ、飛鳥が疲れた様子で溜息をつく。
期待していた事もあり、どっと疲れたが出たようだ。
「どうやら鍛える価値はありそうだナ。かかって来いっ! 夜明けまで特訓だっ!」
雅に光るものを感じたため、FANGが雅を挑発する。
確かにまぐれだったのかも知れない。
しかし‥‥、確かめてみる価値はありそうだ。
彼女の中で眠り続ける、何かを目覚めさせるため‥‥。