●リプレイ本文
●空へ
飛び立つ機体。
松山空港から一斉に飛び立ったそれらは、大阪方面へと向かう。
目指すは、中型ワームを擁する一団。
それらを廃することは、大阪にいる仲間たちへの力となる。
「1体でも倒しておきたい所だが‥‥どうなるかな」
御山・アキラ(
ga0532)は視界にはまだ映らない、先の先にいる敵を思い浮かべ目を細める。
「無理のない安全第一‥‥」
アキラと同じブラヴォー小隊を組むのは藤川 翔(
ga0937)。
落ち着いてR‐01の操縦桿を握っていた。
同じく、R‐01を駆る小隊、チャーリー小隊。
斑鳩・眩(
ga1433)と近伊 蒔(
ga3161)がそれぞれ乗り込む。
「バグアにも撃墜王‥‥エースっているのかしら‥‥あ、ごめん。不謹慎だわね」
「いないとも限らないって思ったよ。気を抜かずいこう!」
通信に蒔は元気に返し、士気をあげる。
そしてR‐01ではなくS‐01で戦うのはデルタ小隊。
こちらは間 空海(
ga0178)、安藤 諸守(
ga1723)、ルクシーレ(
ga2830)が操縦していた。
「相手は強敵ですね。けれど、暫定首都、大阪は目と鼻の先。捨て置く訳には行きません‥‥征きましょう」
「これ以上敵さんの好きにはさせない。さて‥‥宇宙のゴミをお掃除するとしますか!」
「二人とも、よろしくな」
ルクシーレのかけた言葉にもちろんと返事が返る。
短い時間での準備だったが、同じ敵に向かっている今、気持ちの繋がりは強まる。
そして今回の要となる通称、バイパー2機。
建宮 潤信(
ga0981)は再びまみえたその機体に声をかけていた。
「こうも早くおまえと巡り会えるとはな‥‥お前の力、貸して貰うぞ!」
再び乗り込んだ機体、扱いの感覚が潤信の手に戻ってくる。
それと反対に、初バイパーの翠の肥満(
ga2348)はうっとりしていた。
「最新機種バイパー。わーい、計器に頬ずり‥‥している場合ではない! この機体に乗せていただける分、きっちり働かせて貰いますよ!」
はっとしっかり、今回のなすべきことを思い出す。
敵はもうすぐ、レーダーで捕捉の距離へと入る。
こちらが、補足できるとなると相手も同じだ。
もう戦いは始まっている。
「こちらブラヴォー1、敵を視認」
と、アキラの視界に敵軍がはいる。
それとともに、覚醒。抑揚のない声が通信機から響く。
「デルタ1『滋藤』、エンゲージ。編隊各機、Good・Luck」
「デルタ3、エンゲージ!」
デルタ小隊は先に、と敵へ向かう。
「アルファ2『FATTY』、我がバイパーに異状なし! 後で会いましょう。幸運を!」
各機体、それぞれのなすべきことのために、軌跡を描いて戦場へ。
バグア側のワームが集まる場所より、飛行型のキメラが飛んでくる。
だがそれは、四国UPC軍が主に引き受け、傭兵達はワームへと向かうのだった。
●乱戦混戦
突っ込んでいくデルタ小隊。
だが、その機体はまっすぐ、敵陣へと向かうのをやめ、さっとまるで道を開けるかのように別れる。
その瞬間、後から一閃、二閃と光線が走りゆく。
それはバイパー2機の攻撃、M−2帯電粒子加速砲だ。
「‥‥デルタ1、FOX‐1!」
その攻撃に沿うように、ホーミングミサイルも後を追う。
M−2帯電粒子加速砲の一撃は溜めが必要となる。
敵影を認め射的距離に入った瞬間に機体はバーストに入る。
数秒の充電を終えたそれは、まっすぐ敵艦へ向かうそれは敵の回避行動よりも速い。
潤信のはなった一撃は、上空高く飛んでいた機体を、バリアをぶち破り貫く。
そして翠の放った一撃は、重なりあうワームのその端を掠めてゆき、その後方にあったワームへも衝撃を与える。
それは多大なダメージでないものの、ワーム側のバランスを崩すには十分だった。
そして、追撃のホーミングミサイル。
バリアはない状態、となると攻撃力は十分ある。
一番甚大な被害をうけたのは、上空にいたワーム。
空にいることがもう難しいのか、どんどんとその高さは落ちてくる。
このまま下にいるワームも巻き込めば、戦力を存分に減らすことができる。
まずはこの一体、とアルファ小隊、そしてブラヴォー小隊、チャーリー隊は向かう。
その間、デルタ隊は他のワームを牽制。だがしっかりとどこを攻撃すればよいのか、それを見逃すことなく、動きを取り始める。
攻撃態勢を作ろうとするワーム、それは先ほど翠がダメージを与えた機体のうちの一つ。
防御が薄い場所が、ある。
「エネミータリホー! ブースト速度で敵機に接近! アプローチは一瞬! 持ってるウェポンを叩き込むぜ! ブービー、FOX3!」
ルクシーレはそう言って一気に加速。
後上方へと向かい、そこより一気に攻撃をしかける。
そしてルクシーレに続けとばかりに空海も残りのホーミングミサイルを発射。
それを撃ち終わればスナイパーライフルに換装。
攻撃は止むことはない。諸守の攻撃が続いていた。
「邪魔すんなっ!」
ガトリングを主に中距離から攻撃をかける。
再び3機一斉攻撃。
「今だ! ブースト使って十字砲火! これで止めだ!」
爆発音とともに、ワーム1機が沈んでゆく。
その響きを受けながら、上空のワームを沈め終わり、次のワームにと向かっていた3小隊の士気があがる。
ほぼ沈みかけのワームはそれほど苦もなく沈んだ。
次に向かうのはほぼ無傷のワーム。
そのワームのまわりには巨大円月輪が浮かんでいた。
それが、こちらへと向かってくる。
「アルファ2よりブラヴォー各機。うざったい虫を墜とします。これから指示する通りに敵機を牽制、追い込んでください!」
翠からの連絡、支持の通り動き、まずその円月輪を誘導する。
巨大円月輪を回避、旋回し、ブラヴォー小隊は牽制をしつつ、その円月輪をも破壊するために動く。
円月輪は機体を追う。
だが巧みに動いて2機はそれを交わし、自分たちの攻撃の射線上へと持っていく。
その攻撃はチャーリー小隊の行ったもの。
眩のレーザー砲がその円月輪の動きを止める。
また響くガトリングの音の中にもそれはあった。
「よし! 命中!」
蒔の攻撃に巻き込まれ、いくつかの円月輪は落ちてゆく。
それらを引きつけている間、アルファ小隊はワームへの距離を詰める。
「おい、バカ猫! なにか気を紛らわせることをしてみろっ!」
戦闘中、覚醒した翠の体中を仔猫の影が動きまわる。左手の甲に浮き出、仔猫は器用にポーズをとる。
「少し和んだ。ありがとうッ!」
緊張を少しほぐし、翠の狙いはワームへ。高分子レーザー砲が狙い通りに当たる。
同時に潤信の高分子レーザー砲もその装甲を破壊していた。
二門使い、破壊力をかけあわせるように。
破壊された装甲の中は弱い。
「チャーリー隊、落すぞ!」
潤信からの声に敵の周りを旋回しながら蒔は攻撃をその、無防備な場所へと行う。
振り回されるワームの鋏をかわしつつ、狙いは外さない。
「敵の数も多いね‥‥目移りしそう。だけど今はお前だね。さて、お仕事お仕事」
眩は薪の対極を飛び、時々引きつけるような動きをする。
そのワームの注意を自分に向けて、隙を作り、アルファ小隊へとチャンスをつなぐ繋ぐ。
やがてのろのろと高度を落とし始めるワーム。
敵軍と交戦時にまずほぼ1機、デルタ小隊によって落された1機、そしてこの1機。
短い時間で3機、破壊終了。
まだ1機くらいはいけそうな雰囲気が線上にあり、こちらがバグア軍を押している雰囲気だった。
●撤退の意味
最初に勢いで3機、そして次にもう1機と、それぞれの小隊が役割を果たしているときにそれは起こった。
練力や、残り弾数から考えてそろそろ撤退のタイミング、という時にだった。
後方にいて、いままで動かなかったワームから攻撃が放たれる。
「敵を牽制するぜ! ブービー、FOX2! ブレイク!」
それはちょうど、デルタ小隊のルクシーレが残っていた最後のホーミングミサイルを発射したのと同時だった。
発射と同時に回避行動にその一閃が交差しかかる。
ワームから放たれたのは収束フェザー砲。
攻撃力があげられた分命中精度は、落ちる攻撃。
「っ‥‥回避っ!」
その射線上にいた眩も回避行動。
攻撃力は低いが、その攻撃はルクシーレと眩の機体の一部をかすり、損傷させる。
すぐさま仲間から状況はと連絡。
「ダメージはそんなになくて飛ぶのに問題ないけど残弾がもうすぐ尽きるよ」
と、眩は告げる。
「こっちも飛ぶのに支障はないね」
それぞれ自分の残弾を確認する。
もうそろそろ、撤退のラインを引いた残弾へとなる。
「皆、そろそろ撤退しよう! 出来ることは全部やったんだ!」
「確かに潮時ですかね」
諸守の言葉に同意する翠の一言に誰も異存はない。
すぐさま撤退のフォーメーションを組み直す。
傷ついた機体を守るよう組み直し、少しずつ確実に離れてゆく。
まだ残数に余裕があったアキラはアグレッシブ・ファングを乗せた弾を今まで攻撃していたワームへと打ち込む。
そして離脱。
撤退するのか、と追ってくるワームの攻撃を回避。
だがある程度距離ができてくると、その攻撃も薄くなってくる。
アルファ小隊の支持に従いながら翔、アキラは撹乱をしつつ撤退。
その間も飛行型キメラを、まだ残った弾で撃ち落とす。
「少しでも減れば、のちのちの流れにきっと‥‥」
翔はまだ戦いを続ける様子の味方軍の援護をし、戦場をあとにした。
やがて戦闘空域を完全に、離脱。
機体の損傷は多少あるものの、大きな怪我などは誰もなかった。
それはある意味、敵を落とすことよりも意味のある勝利だ。
再び松山空港へと降り、大地に足をつける。
いままで飛んでいたためになんだか少し、変な感じもするが無事にまた地上に降りれるということは幸せなこと。
迎えに出た誰もがその無事を、喜んだ。
「多少操縦は慣れてきたが‥‥多少どまりだな」
アキラは自分の機体を見つめて言う。
これからまだ続く戦い、もっと腕を磨かねばと思いながら。
バイパーから降りた潤信も、機体を振り返る。お前とは縁があるのかもしれんな‥‥ありがとう、と心の中で感謝を告げて。
「撃墜するのは誰であっても、全体の作戦が成功すれば、功績でしょう。無事で良かったです」
翔は言って、まだ戦闘が続いているやもしれぬ大阪の方向を見た。
一機でも多く、一人でも多くこの場所に帰還を。
まだ戦いの先は、長い。