●リプレイ本文
●かぼちゃだらけのトラックと
「準備はOKだ、ではよろしく頼むよ。会場まで無事に」
とある食料品店から出発する予定のトラック。
それには100個のかぼちゃが積んであった。
かぼちゃを積むときには、かぼちゃ頭のキメラが混ざっていないかもしっかりと確認。
本物のかぼちゃだけが、トラックへと積み込まれていた。
これを30分の道のりを辿りパーティー会場へと無事に送るのが、今回の依頼。
トラックの前を先行して走る車にはジロー(
ga3426)、木場・純平(
ga3277)、烏莉(
ga3160)が乗る。
その後ろのトラックの、天板には大曽根櫻(
ga0005)、小鳥遊神楽(
ga3319)、銀崎 実幸(
ga3631)が、そして荷台には相沢 仁奈(
ga0099)と朧 幸乃(
ga3078)が乗りこむ。
前から来た場合は先行車が、上からの場合は天板上のメンバーが、そしてもし荷台に乗り込んできた場合も対応は可能。
「食べ物を粗末にする者にはお仕置きが必要だな。それがキメラなら、手加減する必要もないだろう」
先行する車に乗っている純平はそう呟き、後のトラックを見る。
運転するのは烏莉。トラックとの距離をしっかり確認しながら誘導をしていく。
そしてジローは誰かのためになるなら、とこの依頼に気持ちを向けていた。
一方、トラックの天板の上でもしっかりと警戒はされていた。
安全のために、と櫻はロープをつけて命綱代わりに。もしものときはすぐにそれを切って、動けるように準備はしっかりとしていた。
受ける風にふわりと長い髪がたなびく。
「倒してしまった方が後腐れはないのだろうけれど‥‥任務はあくまで会場まで無事にカボチャを運ぶ事。そちらを優先させましょう」
「そうですね、振り落とされないように気をつけながら行きましょう」
神楽の言葉に実幸は前を見据えて冷静に言う。
一方少し薄暗い荷台では仁奈と幸乃が。
「ハロウィンパーティかー、皆で仮装してアレコレ騒いで、楽しそーやねー♪」
「せっかくのハロウィン‥‥パーティーには子どもも参加しているのでしょうか‥‥子ども達にはキメラからのトリックではなく、依頼主からのステキなトリートを、届けましょう‥‥」
「そやね‥‥せやけど、こない狭い空間で二人きり‥‥やなんて、ちょいドキドキするな」
かぼちゃで荷台はいっぱい。そこに二人のるとなれば狭くもなる。
それぞれの配置、準備は完了。
依頼主の店主に見送られて、トラックは出発する。
●キメラ来襲!!
走行を始めて十分。
今だキメラは現れない。
「このまま何事も起こらなければいいんだがな」
「そうもいかないみたいですよ」
トラック上から後をみていた神楽の視界に、かぼちゃ頭のキメラの姿が映る。
それと同時に、先行する車を運転していた烏莉の視界にも、かぼちゃ頭のキメラ。
「‥‥きたようだ」
その声は同乗者たちにしっかり聞こえていた。
と、後のトラックから前方のオレンジ・ジャックへと牽制の射撃。
ひるんだ一瞬の間にその横を車とトラックは通り抜けていく。
後のトラックから牽制の射撃をかけたのは神楽だ。
その姿は覚醒し、瞳の色は金へとかわり表情は、今までの淡々とした感じは消えて大胆不敵に。
「二体といえども侮っちゃだめなようね」
神楽の狙撃はぎりぎりのところでかわされていた。
その様子をみて櫻も覚醒状態に。なびく髪は金に、そして瞳は青へ。
通りぶけたオレンジ・ジャックと追いかけてきたブラック・ランタンは合流し、後から追ってくる。
華麗に射撃攻撃をかわしつつ、その距離は一定距離。
追い付かれそうで、そうでない距離だった。しゅたたたたたとかなり、足が速いようだ。
ある意味、かぼちゃへの執念ともいえるのだが。
と、トラックの少しかわった動きで荷台の幸乃と仁奈は何かあったかなと思う。
「でたのかな」
「そうかもしれません」
そしてもうすぐ会場近く。このままの状態ではキメラを連れて行ってしまうことになってしまう。
それは避けたい。
車を止めて、ジローと純平は降りる。
後のトラックもとまり、天板上から牽制をかけていた三人は実幸を除いて降りる。
と、そのまま勢いで走ってくるキメラ二体。
勢いのまま突っ込んでくるオレンジ・ジャックとブラック・ランタン。
ブラック・ランタンは降り立った者たちへとむかってくるが、オレンジ・ジャックはまっすぐに、荷台へと突っ込んでいく。
走り始めたばかりのトラックのスピードはそうはでていない。
天板上に残っていた実幸の狙撃も交わして、荷台の中へ。
「! 荷台!!」
だが、そこへ入るのを防ぐように、オレンジ・ジャックへと荷台から幸乃の攻撃が繰り出される。
そのあたりがよく、オレンジ・ジャックはトラックの荷台に入ることなく、叩き落された。
それと同時に仁奈は飛び降りる。
幸乃は荷台に残り、そのままトラックは前へ。
「こっちをさっさと片付けよう!」
ブラック・ランタンとオレンジ・ジャックを囲うよう向かう。
素早い動きで逃げ回られ、決定打には欠けるものの、じわじわと体力はけずっていた。
刀を構えて、踏み込む櫻。
その切っ先はブラック・ランタンの頭部を掠めていく。
オレンジ色のマントをひらりとはためかせ、振り下ろされる拳からはその姿からは想像もつかない怪力。
それはどごっと、一撃で地面にヒビが入るほどの。
と、オレンジ・ジャックはまだかぼちゃ狙いのようでトラックを追うために囲みを抜ける。
だが、しかし。
「カボチャは食わさへんでっ!」
しゅばっと瞬天速で素早く回り込んだのは仁奈。
覚醒し、その背からは漆黒のオーラが噴き出し、その羽で飛んだかのような、動き。
回り込んでそのまま、メタルナックルを纏う拳で一撃放ち、また囲みの中へと追い返す。
オレンジ・ジャックの頭のかぼちゃに、その衝撃でびしっとヒビがはいる。
そしてそれをジローは見逃さず、刀を振り下ろしてさらに傷を広げる。
そこがオレンジ・ジャックの弱点となったのはすぐにわかる。
ブラック・ランタンにも攻撃をしつつ、先にこちらを倒すことを全員考えた。
オレンジ・ジャックは神楽へと向かってくる。
神楽の攻撃を受けつつも進んでくるオレンジ・ジャックを迎えたのは純平。
神楽の攻撃の邪魔にならないようにしつつ直接攻撃範囲内に踏み込んだ瞬間に、がっとその黒い体を抑え込む。
そして傷へとファングを装備した拳で、一撃。
『!!!!!』
耳ざわりなオレンジ・ジャックの最後の声が響き、その体は動かなくなる。
一方、ブラック・ランタンを相手にしていた方もそろそろ決着が。
櫻の一撃、仁奈の一撃と交互に繰り出されるそれにブラック・ランタンは翻弄されていた。
まとっていたオレンジ色のマントも、もう見る影はなくぼろぼろに果てていた。
だが、ぎりぎりだからこそ最後の一撃にすべてをかけるようにブラック・ランタンは攻撃をかけてくる。
その勢いに櫻は一歩後ろへ下がって距離をとった。
そこへ一瞬の足止めをも含む狙撃。
ブラック・ランタンの足へと威力の大きな一弾が神楽より放たれる。
バランスを崩したそこへ、頭めがけて仁奈の拳。
粉砕されると同時に、声なくブラック・ランタンは崩れた。
そして、その頃。
烏莉の運転する車の先導のもとにトラックは無事に、会場へとたどり着いた。
「かぼちゃ‥‥すべて無事です」
とん、と荷台から降りた幸乃はハラハラと待っていた会場側スタッフへと告げた。
実幸も天板から降り、トラックの無事を伝える。
そしてしばらくして、無事にキメラを倒したと大怪我もなく、残ったメンバーも会場へ。
そこで、依頼の成功を彼らは分ちあうのだった。
●ハロウィンパーティー!
「皆さんどうもありがとう! 届けてもらったかぼちゃは今無事に料理になっている途中です。ささ、パーティーをよければ堪能してください」
かぼちゃの発注主であり、このハロウィンパーティーの主催者はかぼちゃを守ってくれたメンバーをねぎらう。
「お土産もありますから、キャンディボックスもお持ち帰りください」
「こんなご時世ですもの、楽しめる時に楽しんでおかないと」
神楽はそう言って衣装のある更衣室へ。
「ほな、ウチも折角やし参加してこっと♪ っても、ただ参加させて貰うんも悪い気がするし、ちょいとお手伝いもしてこーかなっと思うとるんやけど」
「かぼちゃを守っていただいてそのうえ‥‥ではお言葉に甘えて」
「それなら私も。お菓子やパイなども作れますから」
仁奈と櫻はパーティーの手伝いもすることに。
「料理もありますから堪能してください」
「うまいビール‥‥と言いたいところだが止められているからな。うまい蒸留酒はあるかな」
もちろん、という言葉に純平はそうかと頷いてパーティーへ。
蒸留酒と、パンプキンパイを持って見晴らしの良い場所へと移動する。
そしてしばらくして、仮装を終えたメンバーは会場へと再び戻ってくる。
実幸は頭は少し重そうな、魔法使い帽子をかぶったかぼちゃのフルフェイスのかぶり物。それに麻のローブをきて、右手にかぼちゃ提灯、そして左手にはいかにも作りもの、という包丁のおもちゃを。
「料理‥‥何があるかな」
料理をひっそりと楽しみにしていた実幸はバイキング形式で並ぶ料理のもとへ。目移りするほどある料理を少しずつ皿に取ろう、と思ったのだが小道具アイテムがそれの邪魔をする。
提灯と包丁を、一時だけ預けて、料理に舌鼓を。
魔女姿になった神楽はあたりを楽しみつつも子供たちをみればお菓子を配ったりとそっけなくありつつも周りに配慮を。
いつの間にかお菓子をくれる魔女のおねーちゃん、と子供たちに囲まれてしまっていた。
その頃、無事届けられたかぼちゃは無事スープの器となっていた。
くりぬかれたかぼちゃには、やはりかぼちゃスープが。
その料理が会場へと運ばれてくるのをみて幸乃はせっかくだし、とそれを手に取る。
賑やかなのが嫌いではないが、苦手な彼女は会場の隅っこへと移動。
温かいスープにじんわりとする。
「そんな隅っこにいないで、もっと真ん中にいこや!」
と、隅にいるのをみつけた仁奈がやってくる。
料理の手伝い終えて、仮装は黒いボンテージで胸元を大幅に露にし、黒いしっぽに角、と悪魔スタイルで。
「えへへ、どやろ? ちぃとはセクシーに見えるかな?」
少し照れつつ仁奈は言う。
そして幸乃を真ん中へと連れ出し、櫻とも合流。
「お酒はさすがに未成年ですので飲めませんが、他のものだけでも十分ですね」
「スープ‥‥おいしかったよ‥‥」
自分たちが守ってきたスープを幸乃は示す。
「嬉しいですわね、ああやってちゃんと成果が表れると」
「うん。あ、子供たちにお菓子あげなきゃね!」
と、練り歩いて行く子供たちの列をみつけてそこへ向かう。
幸乃もひっぱられるままにそこに。
その列には実幸もおり、お菓子をあげつつ貰いつつ、列は進んでいく。
最初はただ近くで見られたらいいのだけれども、と思っていたのだがやはり巻き込まれていくように。
同じ年ごろの女の子たちと仲良くなった櫻は色々な話をして楽しんでいく。
そして話は、髪の手入れや日々のことから色恋沙汰に。
「それは、ひ、秘密です‥‥」
対キメラ時の凛々しさとはまた別に赤面して、そこはやはり年頃の女の子なのだ。
「Trick,or Treat♪」
仁奈はえーい、と一人でてこてこと列になじめず歩いていた少女にむぎゅっと抱きつく。
「とりっく‥‥?」
「ウチはこー言うたんよ? 『悪戯させて、そしたらお菓子あげる』ってな♪」
いたずらは後から抱きついたこと、そしてお菓子をあげて、列の中へとひっぱりこんでいく。
やがて会場中を歩き回るその大きな列は純平の目にもとまった。
その中に一緒に依頼をやり通した仲間を見つけてふと笑みがもれる。
「やれやれ、まだ彼らは一仕事中、といったところか」
楽しい時間は大事なもので、パーティーは無事何事もなく、終わった。
余談だがかぼちゃの器スープはとても好評だったとか。