タイトル:演――JAPANマスター:青井えう

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/15 17:46

●オープニング本文


「恐ろしい敵だった‥‥。俺は一目散に逃げてきたよ」
 金髪の兵士は回想する。突如、競合地帯からやってきた、あるキメラ集団の事を。
 あの異様なキメラの姿を、金髪兵士は説明しようとして‥‥しかし口を閉ざした。代わりに「バカらしい」と呟き、自嘲めいた笑みを浮かべて沈黙する。
「あれを、俺は映画で見た事があるぜ‥‥」
 金髪兵士の様子に業を煮やしたもう一人、同じ部隊の赤毛の兵士が話に割り込んだ。
 しかしふと、その男は辺りを見回す。
 そのキメラが現われた戦場は遥か彼方。それでも、そのキメラの影に怯えるようにして。
 そうやって首を巡らし辺りには誰も居ないのを確認すると、赤毛の兵士はまた向き直り、真剣な顔で口を開いた。

「二刀を振り回す姿‥‥。あれはジャパンのナイト、SAMURAIだよ」



 ――――そのキメラ、黒い鎧を身に纏い――――。



「突然、仲間の首が取れて血の花が咲いた。狙撃、とかそんなレベルじゃない。フリスビーぐらいの、巨大な十字架が頭を跳ね飛ばしやがった」
 ショック症状から震える手を動かして、その兵士は口にタバコを咥える。タバコの先を見つめる青い目、そこにはほの暗い怯えが宿っていた。
 心を砕かれたこの兵士がもう一度戦場に立つには、多大な努力が必要だろう。
「全身真っ黒な影‥‥、目だけが異様に光っている。その目に見つめられた時――俺は生きるのを諦めた」
 吐き出した紫煙が部屋の中を漂う。その揺らめく煙を追いながら、兵士の心はここには無い。

「捉えきれない速さ‥‥。あれはジャパンのスパイ、NINJAだ」



 ――――そのキメラ、神風のような身のこなし――――。



「この世のものとは思えない、黒いバラだな。美しいが‥‥トゲはあまりにも強烈だったぜ」
 恐怖と憎悪、嫌悪と恍惚が入り混じった表情で語るのは、ドレッドヘアの兵士。
「ジャパン風の黒い着物がよ、妙に良いんだ。ソイツの顔なんかは真っ黒の影みたいに見えやしねぇ。だがあの動きが、柔らかく滑るような動きが、あまりにも蟲惑的で思わず見とれちまう」
 そう言って何やらドレッドヘアの兵士は、やたらと腕を振り上げたり腰を動かしてマネようと試みる。お世辞にも上手いとは言えなかったが、言いたい事は何となく伝わってきた。
「ソイツは掴み所が無い。踊っていたと思ったら、いきなり手元の扇が飛んできて、ズドンだ。トムの体に当たったと思ったら、骨の折れる嫌な音がしてトムは自分のかかとにキスしやがった」
 有り得ない方向に体を曲げて、ドレッドヘアの兵士はカカトにキスをしようとする。扇に当たったトムはそれが出来たのだろう。
「もう一人、銃剣でそのキメラに突っ込んだヤツが居たが、‥‥扇でカウンターノックアウトさ。扇を器用にくるくる回しながら、何の事も無く首の骨をへし折りやがった」
 肩をすくめて溜め息を吐くドレッドヘア。

「着物を着て踊る影‥‥。あれはジャパンのダンサー、GEISYAに違い無かったぜ」



 ――――そのキメラ、優雅に舞い踊り――――。



「手からビーム出た。ビックリした」
「マゲ取ったら、ビームっぽいサーベルになった」

「「あれはジャパンのレスラー、RIKISHIに間違いねぇ!」」



 ――――そのキメラ、巨体を咆哮させる――――。




「くそっ、援軍はどうしたぁっ!!」

 ――――その四体、彼方の森より姿を現し。

「第十四小隊壊滅!! SAMURAIです!」

 ――――目に付く『獲物』に襲い掛かる。

「あ、あ、当たらねぇっ!! くそぉ、何がNINJAだ‥‥ゴバァッ!?」

 ――――人を超えた力。

「GEISYAッ!? 見とれるな、走れ走れ走れ走れ!!! 止まったら死ぬぞぉっ!!!」

 ――――人を超えた技。

「待て、無茶だ! 銃剣でRIKISHIに勝てるもんか!! やめろ、行くなぁぁぁぁぁっ!!」

 ――――人を狩る凶暴なジャパンキメラ達。

 銃弾を避け、切り裂き、弾き、跳ね返しながら死を振りまく。
 嗚呼――それはまるで終わりの無い狂騒曲のようで。
 世界の終焉を凝縮して詰め込んだように、赤錆びた死の匂いが漂っていた。
 たった一振りが空のキャンバスを真っ赤に染め上げ、
 風に舞い飛ぶ複数の十字架は幾十もの魂を連れ去っていき、
 この世のモノとは思えない流麗で優美な動きは魅入った者を天国へ誘い、
 大地を踏むと同時に突き出した片手からビームが閃き、もう二度と塞がらない深い穴を地に穿つ。

 ――そうして戦場は朱に染まっていく。
 ――兵士達の怒声は次第に勢いを失い始める。
 ――四体の黒いキメラ達は幾多もの命を狩っていく。


 ――――――しかしその絶望的な状況に、たった数個の影が差した――――――。


 ――――人間の命は紙くずのように散る。
 ――――侵略者に膝を折りそうになる心。
 地球は明日を象徴するように――――灰色の空。



 ――それでも兵士達は、見た。



 ――――最後の希望を。



 ――――絶望の世界に光が差すのを。





 ――――――――――LHの傭兵が、赤い草を踏むのを。





●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
クレア・フィルネロス(ga1769
20歳・♀・FT
旭(ga6764
26歳・♂・AA
火茄神・渉(ga8569
10歳・♂・HD
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA
武藤 煉(gb1042
23歳・♂・AA
遠見 一夏(gb1872
20歳・♀・DG
御門 砕斗(gb1876
18歳・♂・DG

●リプレイ本文

――SAMURAI――

「やれやれ‥‥。――なにやら日本文化を誤解した怪物が勢ぞろいのようで」
 戦場に映えた――白銀に輝く甲冑。
 重厚なヘルムの下からは吐息が漏れる。
 人を苦しめる悪を討つ為。
 現代に甦る若きナイト、――両手に剣と銃を抜き放つ。
「そんな怪物の為に。‥‥これ以上、味方の血が流させるわけにもいきませんか」





――――――――――旭(ga6764






「手前ぇらさっさと退きやがれッ! ぶった斬るぞッ!!」
 一般兵を逆行して駆走する漢あり。
 マントを翻して草を踏む――赤バンダナの二刀武者。
 鮮紅と漆黒。凶獣と狂兵。
 両者のサムライは――邂逅す。
「姓は武藤、名は煉! 偽りでも手前ぇに武士魂が宿ってんなら――――尋常に勝負しやがれッ!!」





――――――――――武藤 煉(gb1042






――GEISYA――

「‥‥所詮宇宙人。――分かってませんね」
 阿鼻叫喚の戦場に響く怜悧な声。
「本物の芸妓は舞踊なんて当たり前。他に歌唱、詩歌、演奏、書画、時勢。様々な教養で全ての人を喜ばし。楽しませ。――しかし決して媚びる事無い、凛と咲く百合のような存在なのです」
 血の饗宴に現われた清美な葵の着物。島田髷の髪には一輪の花が咲く。
 その手に持つ扇子――『ほるがー』という筆の文字。
「――――偽者芸妓の化けの皮、私が剥がして上げましょう」





――――――――――水上・未早(ga0049






 揺れる髪は、遠いあの頃のように長くはなく。
 想い果たされる日まで戻る事も無いだろう。
「私が居る場所、居る戦場だけでも――守りたい。この想いに狂いたくは無いから‥‥」
 戦場に無縁だった――――復讐の令嬢。
「‥‥生きている限り。例えどんな苦しみが待ち受けていようと。
 私はもう――――絶望の蔓延を許しません」





――――――――――クレア・フィルネロス(ga1769






――RIKISHI――

「こらガキッ! ふざけんな、お前ら能力者だろうッ!!」
 怒気を孕んだ声で叫ぶ兵士。少年はその背中を盾として隠れる。
 初冬の草原で半袖の赤いジャケット。
 そしてその体とは不釣合いに長い小銃サイクロン34を手に、少年は無邪気な笑顔を上げる。
「――だってオジサン、大人でしょ? だったら子供を守りなよ!」
 純粋な正論を投げて――少年は駆ける。
「よぉし行くぞ! オイラと勝負だっ――!」





――――――――――火茄神・渉(ga8569






「RIKISHIね‥‥キメラも趣味が良いのか悪いのかこうなると良く分からなくなってきたよ」
 渉と同年代の少女。
 可愛らしいチャイナドレス、しかし両手に握るは自分の身長ほどの大剣。
 さらにスリットの下に二丁のホルスターが潜む。
「ただ分かるのは‥‥貴方は私の敵だってこと」
 全身を武器に固め、彼女は闘志に突き動かされるように走り出す。
「まずは飴玉のプレゼントだよ。体がおっきいからね‥‥たくさんあげる――!」





――――――――――アセット・アナスタシア(gb0694






――NINJA――

 純白の大型バイクに跨るは漆黒の眼鏡メイド。
「――――精一杯、ご奉仕させていただきましょうか」
 その熱い眼差しの先には――UPC軍兵士へ手裏剣を投げ付けるNINJA。
 即座、メイドのバイクが変形する。その人型機械の頭部に――強烈なスパークが迸る。
「〈竜瞳〉起動‥‥」
 飛空する敵の暗器が兵士の首を刈り取るよりも――速く。
 死の凶器を殺すため――三発の銃弾が空に線を引いた。
「‥‥これ以上、誰一人だって――やらせるものですかぁッ!!」





――――――――――遠見 一夏(gb1872






「さてと、さっさと潰すか‥‥」
 気だるげにバイクに跨る学生服の青年。
「まったく持って悪夢だ、あんなのは‥‥」
 ユニコーンのように角が付いた蒼いバイクが、逃げ惑う味方の間を縫い危険地帯に突入する。
 もう一度放たれた手裏剣は、兵の一人の首を飛ばそうとした所で――空中に静止した。
 否。
 ――蒼のリンドヴルムに、掴み取られていた。
「おめぇさん達‥‥。これだけ暴れたんでぇ――――ツケ払う覚悟ぁ出来てんだろうなぁっ!?」





――――――――――御門 砕斗(gb1876








 ――曇天の空の下、朱に染まる草原に現われた八つの希望。
 戦線は崩壊。
 敗走は必至。
 だがその中を――――流星のように彼らは逆行する。





「う、うあああああああああああああッ――!!!」
 兵士の悲鳴へ吸い込まれるように梳かれるSAMURAIの刃。
 そこへ突然割って入った月詠がそれを受け止め――赤い火花を散らす。
「くっ‥‥! 早く退却して下さいッ! この敵は僕達が――倒しますからッ!!」
 叫ぶ騎士が放つ正義の弾丸が――敵のニ太刀目を弾き返す。
「このタコ野郎がっ! 俺を無視してよそ見してんじゃねえ!!」
 野獣のように突進し、SAMURAIへ蛍火の刃を荒々しく振るう武士。
 既に打ち合わされた数は――百か、二百か――。
 ――激しく飛び散る火花が草を焦がす。
 ――銃声はまるで戦場を盛り上げるドラの如く。
 ――その中心で疾る白銀の旭と赤の煉、黒のSAMURAIの鍔迫り合いの狂想曲。
 収まる事無き三人の剣舞は、更に加速し激熱していく――!

「つっ‥‥、まったく、芸者などとは程遠い化け物ですっ――!」
 未早の着物の裾を掠めるは、流れるような舞いから放たれたGEISYAの扇。即座に未早の機械剣が、幻惑を断ち切らんと反撃を試みる――。
「――危ない、未早さんっ!」
 直前、一筋の光がクレアの手から繰り出された。
 敵は未早を迎え撃つように次の一手を用意していたのだ。だが紙一重――回転する扇は空を切り裂く。
「大丈夫ですか!?」
 声を掛けながら、二突目、三突目の槍を振るうクレア。空気を貫いて肉薄する槍の猛突と、舞うような動きから繰り出される扇が激しく悲鳴を上げる。
 白熱する力と技の乱舞は――戦場に圧倒的光景を作り出す――!
「‥‥く、銃さえ使えれば‥‥!」
 悔しそうに歯噛みする未早。辺りには撤退に手間取る負傷兵達。
 恐らく流れ弾を恐れたのだろう、未早の手に銃は無い――。

 アセットは駆け出しながらバジリスクを撃ち放つ。
 続く渉も銃を撃ち、敵へ左右から激しい十字砲火を浴びせる。
 戦場の虚空に響く炸裂音は――しかし、巨体の腹の中に消えた。
「‥‥っ! まるで効いてないみたいだね‥‥! ふん、望むところ――我が胸中にあるものはただ一つ‥‥一戟必殺の心のみ。行くよコンユンクシオ‥‥!」
 アセットは撃ち尽くした拳銃を投げ捨て――背中の大剣を振り抜く。
 幼き大剣の少女に立ち向かうように、RIKISHIも自らのマゲに手を掛け――――蒼き刃を抜き放つ。
 そこへ放たれる、――第三の声。
「ほらおまけだ、取っておきなよッ――!」
 後方――渉が撃ち放った最後の弾丸が、赤い力場を突き破り敵の体を鋭く貫通した。
 ――怯むRIKISHI。
 そこへ大剣を手に駆るアセットが、――――彗星のように敵と激突する。

 空中を変幻自在に翔ける幾つもの手裏剣。
 それはまるで獲物を狙う鷹のように旋回――急転直下で二機に襲い掛かった。
「そんな攻撃ッ――!」
 純白のAU−KVが頭上で盾を構える。
 しかしそれすら断ち割らんとする勢いで手裏剣は雨のように降り注いだ。まるで神話の英雄が直面するような危機を彼女は耐え凌ぐ。
「べらんめぇ――!」
 降り注ぐ凶雨の中を駆りだす一角のリンドヴルム。
 その蒼の鬼人は、模造刀剣で手裏剣を打ち払いながら接敵。夜刀神と夕凪に持ち替え竜の咆哮を叩き込んだ――!
 弾き飛ばされるNINJA。しかしその影は――空中で何かを落とす。
 それが何か見極める為に二人が目を凝らした瞬間――。
 ――辺りに太陽が爆発したような光が放たれた。



「――――その戦場を、憶えているかって―――?」
 顔に大きな傷を付けた兵士は、私の問いに呆れたように笑った。
「憶えてるに決まってる。あそこに居たヤツなら全員そうさ――」
 兵士は手を止めて、小さな溜め息を吐く。
「‥‥戦闘は絶望的だった。あのままだったら‥‥俺は軍に復帰しなかったろうな。あんな化け物に勝てるわけが無いと思った」
 言いながらしかし、兵士の目は穏やかに遠くへ向けられる。
「‥‥だが俺は戻ってきた。この戦争に勝てると思ったからだ。‥‥何故かって?
 ‥‥俺は見ただけさ。


 ――――この世界に居る、英雄達の背中をな」





 死闘の火蓋が切られて一体いかほどの時が経っただろうか。
 激しい戦闘の末に旭と煉の体には無数の切り傷。
 しかし、SAMURAIは――泰然自若として静かに立つ。
 ――――ニ対一ですら劣勢なのか。
 そんな絶望を後方の兵士が感じた時――。
「――――ふぅ。ようやく体が暖まってきやがったな――?」
「‥‥ですね。そろそろ決めましょうか」
 煉と旭が――何でも無いように語る。
 それを隙と見たか――SAMURAIは弾かれたように駆け出した。
 しかし構わず、旭は右手の月詠を高く掲げる。
「――月が落ちた後、世界には大輪の光が差す――」
 スキルを解放し、その赤刃が捉えるは――目の前の敵。
「作り物の侍に、大和魂ってモンを教えてやろうか‥‥」
 両手の先、スブロフによって赤々と火焔を上げる煉の蛍火。
 その二人が――疾駆する。



「月落とすこの一振り! ――――暁ぃッ!!!」

「手前を屠る、この一撃! ――――紅蓮蛍ぅッ!」



 まるで巨星を放つように燐然と打ち下ろされる一撃、煉獄の炎を秘めた二刀がSAMURAIに集束する――!
 咄嗟に受ける黒刀は――その衝撃に粉砕。
 それでも止まらない渾身の三振りはそのまま最後まで振り抜かれ――!!

「BUSIDOOOOOOOOOOOOOOOOッッ!!!!!!!」

 断末魔を上げる敵を木っ端微塵に粉砕した――。


 ――響きあう剣戟、舞い飛ぶ扇、繰り広げられる乱舞――。
 機械剣と扇、長い槍が交錯する状況は長く逼迫していた。気が付けばその周りから生者は消え去り――まるでそこは彼女達の舞踏の華舞台のようであった。
「さてクレアさん‥‥そろそろフィナーレと洒落込みましょうか」
 機械剣をスッと下ろし、未早がそう宣言する。
「フィナーレ? えぇ‥‥、分かりました。――次の一撃に全力を注ぎましょう」
 クレアはすぐに頷き、槍を構える。
 信頼する二人――齟齬は無い。
 クレアが走り出す――!
 素早く敵の側面に回りこみ、その赤い穂先を彗星のように一直線、GEISYAへ繰り出した――!
 だが、それすら扇で受けられぬ技では無い――。GEISYAは両手の扇を開き――。
「普通‥‥スナイパーが、銃を持たずに戦場に来るなんて有り得ると思えます――?」
 突如、二人の空間に未早の声が割って入る。
 その左手は着物の合わせに滑り込み――太ももを露わにした。
「最後まで見せないから‥‥――切り札って言うんですよ?」
 微笑んで抜き放つ芸妓の隠し玉。激しい炸裂音と共にGEISYAの手に衝撃が走る。舞い飛ぶ両の扇――。そして――
「この想い――――この一撃に込めてっ!!!」
 ――クレアの渾身の一撃が、GEISYAの胸へ一直線に走るッ――!!

「DOSUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEッッッ!!!!!」

 貫いた槍がGEISYAの動きを止め、その舞台に幕を下ろした――。


「‥‥ハッ!」
 RIKISHIにコンユンクシオを突き立てたアセットは――そのまま手を離し、懐から真デヴァイスターを抜き放った。
 銃口を抉りこむようにしての連撃――! ゼロ距離から弾丸がその体内へばら撒かれる。
 さらにその後ろから連携する――赤い少年。渉は飛剣『ゲイル』を駆け抜けざま斬り放つ。その一振りごとに飛剣の羽は開き――まるで荒ぶる鷲のように敵を切りつける――!
 しかしそれでもなお――RIKISHIは動きを止めない。
 圧倒的な体力で試みる反撃。二人に蒼き刃が、そして破壊の閃光が放たれた――。
 衝撃。
 まるで地面ごと爆ぜたように二人は吹き飛ばされる。
「くっ――。‥‥やるよ渉。ただの連携じゃだめだね。‥‥合体技で今度こそあいつを仕留める!」
「ててて‥‥うん、やろう! ――オイラは翼の戦士! この剣で――お前を倒すぞっ!!」
 息を合わせ走り出す――幼き翼の戦士と一撃必殺可憐少女。
 それを寄せ付けまいと閃光が奔る。空を裂き、地面を穿ち、立ち上る土。
 しかしその奥から――二人は跳躍した。


「コンユンクシオ――貫けぇッ!!」

「オイラの剣を――受けてみろぉッ!!」


 二人が左右から放つ両断剣。小さき手によるニ撃は――巨体の肩から腰までを完膚無きほどに叩き切る――!
 着地する二人。その後方でRIKISHIの両腕が宙を舞い――。

「NOKOTTAAAAAAAAAAAAAAAッッ!!!!」

 一際大きな花火が、轟音と共に地面を焦がした。
「あの世で相撲でもとってなよ‥‥誰も見てないとは思うけどね――」
 アセットはポツリと呟いた。

 青白い火花、微かな黒煙。
 敵の閃光手榴弾により劣勢に追い込まれていた砕斗と一夏の機体は、騙し騙し動いているような状態だった。
 しかし、それでも。
「〈竜翼〉展開。突撃ぃっ!」
 限界を超えて。
「こちとら、気が短けぇんだ――」
 二機の竜騎兵は敵へ駆る――!
 しかし投げ放たれたNINJAの手裏剣。それがほぼ虫の息の二機を直撃し、沈黙――。
「AU−KVが――――無くったってぇッ!」
「甘ぇんだよッ!」
 中から二人の人影が躍りだす。血を流しながら、接敵を果たした。
 敵を仕留めたつもりだったNINJAは一瞬反応が遅れた。その隙を突くように――砕斗が腰の機巧居合刀に手を掛ける。
 ――空気を吸い込み、『真達』がその白刃を解放ッ――!!
「――――閃」
 一瞬の輝き。
 NINJAは深手を負って草地に倒れこむ。そして振り向いた視界には――巨人の鉄槌が映った。
「――――メイド、舐めんなぁッッ!!!」
 フリルをなびかせ一夏が跳躍していた。手には100tと書かれた巨大なハンマー。
 ――視界を侵食する『死』に、NINJAはなす術も無く――!

「MUNEEEEEEEEEEEEEEENNNッッ!!!!」

 断末魔と共に、その体を地にめり込ませ圧壊した――。
「終わりましたね‥‥」
 一夏が膝を突く。
 砕斗は納刀しながら頷いた。
「――Auf Wiedersehen(さようなら) 六道廻って出直してくるんだな‥‥」




 ――激しい戦闘の末、その戦場には静寂が訪れる。
 平原には四つの炎。それはJAPANキメラ達の慟哭か。
 悲鳴は過ぎ去り、悲劇の幕は下ろされ、大勢の犠牲の上に――彼らは勝利を掴み取った。
 そこで見た八人の英雄を、兵士達は永遠に忘れないだろう――。


 戦いは終わらない。





 それでも今は――――勝利の美酒に酔いしれよう。








※報告官が極度にノリノリだったため、一部過剰表現が散見している。閲覧者は注意されたし。