●リプレイ本文
●撮影終了
「カーット!」
セルゲイ・グリューンがそう叫んだ。撮影終了の合図だ。
「お疲れ様でしたー」
スタッフが役者たちに声をかけると、チェスター・ハインツ(
gb1950)がアーマー形態を解除してバイクに座り込む。
「ふう。疲れましたね‥‥」
「でも‥撮影がうまくいって‥良かったですね」
同じくバイクに座り込みながら月影・白夜(
gb1971)が言う。
「そうだね‥」
キャプテン・エミター(
gb5340)も同意しつつバイクに座り込む。
「まさかアクションシーンに時間がかかるとは思わなかったわ。でもこれだけ撮り過ぎると、放送の枠に合わないんじゃないかしら。時間オーバーしそうよ」
サラ・ディデュモイ(gz0210)もバイクに座りながら言う。
「そうだな、最悪喫茶店のシーン以降は次回の頭になるかも知れないな」
セルゲイがそう言うと、「それじゃあ、あたしの出番がなくなってしまうかもしれないですね〜」とウレキサイト(
gb4866)がぼやく。
「私の出番も冒頭だけになる可能性もあるのか‥‥」
長い髪、隻眼で右目を覆い隠すほどの革製の眼帯、右顔額まである深いひっかき傷と言う容貌に、露出度の高い、身体にフィットしたアーマーと皮のグローブとブーツを履いた女が、クールに言う。烏丸 八咫(
gb2661)だ。
「UPCの出番を今回は減らした方が良いかもな」とはドニー・レイド(
gb4089)の言葉だ。
初回と言うこともあって説明が多すぎて、番組の放映時間である25分の枠に収まるかどうか微妙なのだ。
「僕としてはある程度活躍できたし、次回にも出れるかもしれないからこれで良いかな?」とはルーイ(
gb4716)。
「後は放映を待つだけですけど、恥ずかしくて直ぐには見られないかもしれません‥‥」
ルノア・アラバスター(
gb5133)はそういって頬を赤らめた。
「まあ、みんなが頑張ってくれたおかげで、良いものが撮れた。次回もよろしく頼む」
セルゲイの言葉に、皆、様々な思いを込めて答える。
片付けた後は打ち上げとなって、皆は自宅に帰り番組の放送日に合わせて録画器機を調整していた。
●Aパート
バグラム秘密基地。
『ドロマイト‥こちらドロマイト。応答願う』
八咫演じる女幹部が映し出されると、シルバー・クロウとテロップが付く。
「どうしました、ドロマイト?」
場面変って暗い部屋。画面にはシルバー・クロウと、長く美しい髪を持ち、女性に間違いそうなほど整った顔立ちの男が映っている。悪の科学者ルーイとテロップが流れる。
そして、声だけではっきりと女と判るそれは、ドロマイトと名乗った女の声だった。
「明日、対バグラム用の新装備が基地まで輸送されるらしいぞ。何かわからないが破壊した方が良いんじゃないか?」
ルーイが顔をしかめる。それを見たシルバー・クロウが、「あなた元UPCの科学者じゃなくて? 何かわからないのかしら?」と尋ねた。
「はい。以前開発していた装備があるのですが、技術的な問題で開発はストップしたはずです」
「取りあえずヤバそうだから破壊しておいた方が良いんじゃないかと提案しとくぜ」
ドロマイトの言葉に、ルーイは「はっ、心配症なことで。まあいい。わたしが出向きます、シルバー・クロウ様」との自信たっぷりな言葉とは裏腹に、(「やはりAUKVか? しかしアレは出力や変形機構の問題で‥‥」)と考えこんでいた。
本を読みながら軍の輸送車と通り過ぎる少年。テロップでチェスター・ハインツと流れる。
と、突然戦闘員と人型キメラが現われ輸送車を襲い始める。
「こんなところで、戦闘?」
困惑しながらも読みかけていた本をしまい、輸送車へ走る。
「兄さんを知らないかしら? 藍祥龍(ラン・シャンロン)って言うんだけど」
軍の窓口でそう尋ねたサラ・ディデュモイ演じる赤毛の少女に、カレンと言うテロップが付く。
「ああ、祥龍中尉だったら、何かこっちに届く荷物の護衛をやるとか言っていたね。あんた祥龍の妹さんなのかい?」
「ええ、義理のね。あたしの名前はカレン。それで、祥龍兄さんは?」
そう尋ねた途端、街で爆発が起きた。
「なに!?」
「ちょうど時間的に『荷物』の可能性が高いね。祥龍もそこにいるはずだ。いっておやり」
窓口係の女性に感謝しながらカレンは街へと走っていった。
ブレザー姿で懐中時計を片手に持った少年。テロップで月影・白夜と流れる。
「さて、転入手続か‥‥しかし僕の腕前を見たいなんてどんな身元引受人なんだろう‥‥」
怪鳥の叫び声のような音とともに人型のキメラに突如襲われる。とっさにバッグで防御する白夜。
「なんでこんなところにキメラが!」
白夜が叫ぶと、周囲には怪我人が何人もいた。白夜は怪我人を守るためにバッグから手甲と槍斧を取り出して装備すると、それをキメラに向かって振るうがフォース・フィールドに遮られて傷一つ与えられない。
「っ‥」
しかたがないので白夜はキメラの攻撃を防ぎながら怪我人を誘導していく。そしてその先にはUPCの車があった。
「あー、バイトにおくれる!」
そう叫びながら走っていくキャプテン・エミターが演じる少女に、ニュクス・アイオーンと言うテロップが付く。そしてニュクスが曲がり角を曲がったその時、爆発に巻き込まれる。
少女が起き上がると額から血が流れていた。
「あいたたた‥‥」
そして辺りを見回すと同じように怪我人が何人もいる。彼女は同じく巻き込まれた人々の救助をしながら町を移動していった。
「藍中尉! バグラムの襲撃です。目的は『荷物』だと思われます」
部下の一人が報告する。そしてドニー・レイド演じるUPCの中尉の階級章をつけた人物に、藍祥龍とテロップが付く。
「こんな街中で! 護衛部隊全隊へ、大型火器の使用を最大限禁止する。火急の場合のみ使用すること」
『了解!』
部下が答えると祥龍は戦闘を指揮し始めた。
藍中尉の命令を聞いてほくそ笑んだ者がいる。ルーイだった。
「フッ。指揮官が正常で助かった。強力な兵器が使えないように街中で待ち伏せしたかいがあったというものだ」
やや説明めいた台詞を言うと部下の戦闘員と人型キメラに命令を出す。
「輸送車両を狙え。荷物がなんだか知らんが、研究材料になるかも知れないしな」
戦闘員とキメラは奇声を上げて命令に答えると、祥龍が守る輸送車へと向かっていった。
「くっ! 撃て! 撃て!!」
祥龍の的確な指示の下、善戦するUPC。
「なかなかに粘るじゃないか。だが、そこまでだ。力の差というものを見せつけてやろう!」
それに感心しながらも、参戦して一気に決着をつけるためにルーイは変身する。金色の髪と瞳が深い深い漆黒へと変化する。
そして、謎の機械の力によって電磁波を操り、圧倒的な力で輸送車へと近付いていく。
崩壊しかける戦線――
爆発。
揺れる車内。
「何事だ!」
大人びた口調でそう尋ねる少女に、ルノア・アラバスターとテロップが付く。
「博士、バグラムの襲撃のようです」
「むう、基地まであと少しだというのに!」
悔しそうにそう言ったルノアの耳にさらなる爆音が聞こえる。
「‥‥これが新装備とやらを積んだ車だな?」
扉を開けたルーイがそう尋ねると、「貴様、バグラムか!?」とルノアが尋ねる。
「そうとも。さて、質問に答えて貰おう。これが新装備とやらを積んだ車だな?」
「ああ、そうだ。我々人類の希望だ。貴様等にはわたさんぞ、バグラム!」
「その君たちの希望、僕達が有効に使ってあげるから安心して死んでくれるかな」
怯える様子のない少女に感心したその時、白夜の斧がルーイを襲った。
「おっと!」
だがそれは余裕を持って躱される。
「子供だと?」
そう呟くルーイの近隣に、続々と子供が――定められた戦士たちが現われる。
「UPCの‥新装備‥‥」
白夜が。
「これが兄さんの運んでいた『荷物』? バイク?」
カレンが。
「こんなに怪我人が‥‥バグラム!」
チェスターが。
「‥‥何のつもり、バグラム!」
ニュクスが。
そして、静かな起動音。
「まさか‥‥竜が彼等に反応しているというのか!?」
驚いてバイクを見るルノア。
「わたしは藍・カレン。藍中尉の妹よ。あなたは何者? そしてこれは何?」
そのルノアに尋ねるカレン
「まさか‥‥AUKV‥‥だと?」
そしてバイクを見て驚愕するルーイ。
「その通り、AUKVだ。だが、バグラムの貴様がなぜそれを知っている? いや、人に名前を尋ねるのならば、自分から名乗るべきだろうな。私はルノア・アラバスター。天才科学者だ!」
「ふっ。これでも元はUPCの科学者だったのさ。そして、これの開発に携わっていた‥‥」
髪をかき上げて、ルーイが答える。
「裏切り者というわけか‥‥だがこの私には及ばなかったようだな。これを完成させたのは、この私だ!」
「なん‥だと? こんな小娘が?」
「小娘と言うな! それよりもだ、お前たちはどうやら竜の戦士の適性があるらしい。本来ならば基地で軍の人間を登録する予定だったが、奪われるよりはましだ。お前たちはドラグナイツになれ!」
急な展開に二人の科学者以外はついて行けなかったが、ルノアの言葉に反応する戦士たち。
「ドラグ‥ナイツ?」
白夜が尋ねると
「これは我ら人類の希望。バグラムに対抗する為の装備だ。お前たちにはコイツを扱う適性がある。少々不本意だがコイツはお前たちに預ける。‥‥頼む」
白夜はルノアの話を聞いて多少戸惑うが、周囲の惨状を見て承諾する。
「わかりました‥」とひと言だけ言って特殊なカラーリングがされていないバイクに跨る。
「エンジンをかけて念じろ! 力をよこせと!!」
「力を!」
「この状況で、私に出来る事があるのなら。ためらう理由は、無い」
ニュクスがそれを見て戸惑いもせず漆黒のバイクに跨る。
「力を!」
「兄さんのためなら地獄のはてまでも‥‥ってね」
市民や軍人が倒れていく様を見ながらカレンは青いバイクに跨る。
「力を!」
「戦いたくなんか‥‥戦いたくなんかありませんよ。でも、僕だけ何もしないってわけにはいきません」
チェスターは恐怖を押し殺すようにそう叫んで緑のバイクに跨る。
「力を!」
『エミタ移植‥‥完了。ドラグナイツ、覚醒セヨ。ドラグナイツ、覚醒セヨ』
光が、満ちる。そして、だんだんと弱まっていく光の中で‥‥
バックライトで映し出される主人公達のシルエットと番組ロゴのアイキャッチが入り、ドロームの様々な商品のCMと、UPCの兵士募集のCMが流れる。そして再びアイキャッチが入りBパートへ。
●Bパート
人型キメラが銃を放つ。それが祥龍に命中する寸前、青色の何かがその前に立ちはだかる。
「兄さんはやらせない!」
それは青い鎧だった。銃弾を盾で受け止めたその鎧は、祥龍を兄と呼んだ。
「その声、カレンか!?」
「そうよ」
「その鎧は軍の新兵器じゃないか。どうしてお前が?」
祥龍の疑問に答えたのは緑の鎧だった。特殊能力ドラゴンアイズを発動させながらガトリングを派手に撃ち放して戦闘員や人型キメラを薙ぎ払うと、「僕たちに竜の戦士の適性があるとかなんとか、小さな女の子が言っていましたが‥‥」と言いながらカレンの隣に立つ。そして車の方から、「そこ、小さいと言うな!」との叫び声がした。
「君は?」
「僕はチェスター・ハインツ。いつも喫茶店で会ってますよ、僕たち」
「ああ‥‥君か」
それで祥龍は納得がいった。チェスターと祥龍はとある喫茶店の常連客だった。
「心は熱く、されど頭は冷たく‥‥ただ、今は目前の敵を、討つ!」
そして漆黒の鎧を纏ったニュクスは十手刀を手にルーイと戦っていた。
「くっ! はじめてにしてAUKVをそこまで扱うとはな! それにこの出力‥‥カタログスペック以上だ」
「ふふん‥‥私の偉大さを思い知ったか、裏切り者!」
ルノアが尊大な態度で自慢と罵倒をする。
「賢しいわ小娘が! ならば鹵獲して行くのみだ」
「小娘と言うな! AUKVを完成させられなかった低能が!」
「だれが低能だ! 貴様の才能はたしかに認めよう。だが、バグラムの技術を手にした私を舐めるなよ!」
プライドの高い科学者二人の舌戦は譲らない。
だがそこに白夜が割って入る。
ハルバードを自由自在に操る
突き。
切り。
群がる戦闘員を薙ぎ払い、キメラを斧で立つ。
そして
「竜咆!」
必殺技でルーイを弾き飛ばす。派手なエフェクトと共に吹き飛ばされるルーイ。
その衝撃で変身が解けたルーイは、見知った顔を目にする。
「祥龍、祥龍じゃないか!」
そう、彼はUPCの時代、祥龍の友人だった。
「まさか、ルーイか!?」
驚愕する祥龍。
「お前はバグラムとの戦闘に巻き込まれて行方不明になっていたはずだ。無事だったのならなぜ姿を現さなかった?」
「ふっ‥‥バグラムの超科学をこの手にするためにバグラムに付いたのさ。それよりもどうだ祥龍、お前もUPCなどやめてバグラムに来ないか? 地球は必ず負ける。俺と共に生き延びよう!」
「ルーイ、正気か?」
「正気だとも。さあ、俺といこう祥龍‥‥」
ルーイがさしのべる手を、だが祥龍は振り払う。
「ふざけるな! 俺は大切なものを守るために軍人になったんだ。そんな誘惑には乗らない!」
「交渉決裂か。しかたがない。ならばそこの緑のAUKVをいただくとしよう」
ルーイは再び変身すると、電磁波を増幅させてチェスターを狙う。
「うわあああ!」
苦悶するチェスター。そこに1つの影が割り込む。青い鎧、カレンだ。
「竜咆!」
白夜と同じ必殺技でルーイを吹き飛ばす。
「くっ‥‥今日はここまでだ! さらば!」
バグラムの超科学力で姿を消すルーイ。
「ルーイ‥‥バグラム! 絶対に許さないからな!!」
祥龍が叫ぶ。そして、キメラ達と戦い続けている白夜とニュクスをみて、己を鼓舞する。
「彼等にだけ任せるな、第ニ・第三分隊は援護。第一分隊は俺に続け、UPCの意地を見せろ!」
祥龍の指揮にしたがって生き残っていたUPC兵士達が反撃を開始する。
『うおおおおお!』
『人間を舐めるなよ、化け物ども!』
『UPC! UPC!』
勢いづいた兵士達は叫びながら銃を撃つ。
そしてガトリング砲でそれを支援するチェスター。カレンも剣を手にキメラ達を切り伏せていく。
●エピローグ
その後敵を全滅させたドラグナイツと祥龍は、喫茶店で打上げをしていた。
「‥‥ってことなんですよ」
祥龍が、ウレキサイト演じる喫茶店の女店主に事情をかいつまんで話す。喫茶店の店主ウルとテロップが流れる。
「大変だったのね。じゃあ、これは奢りよ」
と言って祥龍にコーヒーを出す。
「ありがとう、ウルさん。ところで、ニュクスちゃんは参加しないのかい?」
「これもお仕事。正義の味方であっても、手は抜けないから」
祥龍にそう尋ねられ、ニュクスは苦笑しながら言う。それから暫く喫茶店のシーンが続いて、エンディングへと入るのであった。