タイトル:【Woi・DR】外伝マスター:碧風凛音

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 18 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/07/12 08:54

●オープニング本文


●“第二次五大湖解放戦”
「‥‥以上を踏まえた上で、“第二次五大湖解放戦”を実施する」
 作戦会議室のテーブル上で、ヴェレッタ・オリム大将が宣言した。
 居並ぶメンバーはオリム大将の幕僚と、そして特殊作戦軍のハインリッヒ・ブラット少将である。
 スクリーンに映し出される北米大陸の地図には、重要ポイントとして強調されているのは五大湖周辺である。北米各地の拠点から五大湖周辺の戦力の集中。ヨーロッパからの援軍も五大湖へと配されており、太平洋方面からの援軍が手薄になった西海岸、とりわけロサンゼルスを穴埋めする形となっている。
 五大湖地域。それは言わずとしれた北米大陸でも屈指の工業地帯であり、2008年2月の大規模作戦において解放を目指した地域である。
 極東ロシアでの華々しい勝利は、バグア軍の戦略的意図の粉砕、重要兵器の鹵獲、豊富な地下資源の眠るシベリアの奪還などの成果を得た。だが、1つ目についてはあくまで防衛上の達成であり、2つ目、3つ目については目に見える効果があがるまでには、時間を要するであろう。
 極東ロシアでの勝利の勢いに乗って、より即効性のある戦果を求める声は当然であり、それが巨大な工業地帯を要する五大湖周辺の解放であるのは自然な流れであろう。
「バグア側への情報のリーク、感づかれるなよ?」
「むろん、その点はぬかりなくやってみせます」
 オリムが幕僚の一人に念を押すと、幕僚は自信ありげに答える。
「ブラット少将からは何か?」
「思い切った作戦だとは思います。が、やってくれると信じます。作戦名は決まっているのですか?」
 オリムに聞かれたハインリッヒは作戦の困難を指摘しながらも、それを克服できるという自信を見せる。
「The American Revolution(アメリカ独立革命)‥‥というのはさすがに身贔屓が過ぎるな。War of Independence(独立戦争)だ」
 大規模作戦の本格的な発令は6月末。作戦期間中、アメリカは233回目の独立記念日を迎える。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

●サンディエゴ
 サンディエゴ付近で戦闘が激化している。そんな報が入ったのは大規模作戦が第一段階に入った直後だった。
 そして偵察にでたサラ・ディデュモイ(gz0210)が見たのは本星型HWに率いられた中型HW2機と、小型HWの群れ。
 それを軍に報告したが、軍では動く様子はない。
 そしてサンフランシスコまで後退したサラは、グリューンムービーのセルゲイ社長に一つの話を持ちかけられた。
「いやな『新たなる敵バグア』ってコンセプトで、ドラグナイツの外伝を撮影したいんだよ」
「ちょっと待ってよ。勝敗がどうなるかわからないのよ? それに合わせて演技しろって言うの?」
「ああ、そうだ。本星型はともかく、周りの雑魚は蹴散らせるだろう?」
「まあ、人が集まれば不可能ではないけど‥‥演技はどうするのよ。バグアも含めて」
「それはグリーン・スクリーンの前でやってもらう。要するに合成だな。ついては軍からも戦場カメラマン役のKV乗りを何人か出させることになった。本物のバグアの脅威を知らせるいいチャンスだ。そして、人類が負け戦ばかりじゃないって事もな」
 それを聞いてサラは考え込んだ。
「あたしに異論はないわ。問題は人が集まるかどうかね。それと配役とか設定のつじつま合わせはどうするの?」
 それに対してセルゲイはこう答えた。
 本星型HW乗りボスとして、中型乗りをその配下。合計3人のバグア役を求める。
 KVについてはAUKVと一緒で地球を裏切った科学者が開発していたが頓挫したものを地球の一部の優秀な科学者の開発とバグラムの超科学で実現。結果似たようなコンセプトの可変戦闘機、となる。KVは専用機ではないので適性があれば操縦可能。
 今回のシナリオで集まる新人さんのはバグラムかUPCのKV乗りを演じてもらう。
 台詞はアフレコでとり、戦闘シーンに重ねる。
「ほかにもあるが、まあ、KVメインということで進めたいと思う。実のところ軍からも似た要請ははいっていてな。本星型HWを除く全HWを全撃墜せよっ。可能ならドラグナイツのメンバーでやってくれれば北米の士気向上にもなるってことでな」
「了解。あたしは乗ったわ。でもほかのメンバーにはセルゲイが話してよ」
「無論だ」
 こうしてグリューンムービーの生き残りをかけた撮影が始まったのである。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●依頼内容 本星型HWワームを覗いたHWの撃墜
 ドラグナイツシリーズの一環として演技すること

 旧来のドラグナイツメンバーはドラグナイツのキャスティングのままに。
 新規加入メンバーはバグラムかUPCかどちらかに、
 戦場カメラマンとしてベテランのKV乗りが数人参加しますが、皆様の邪魔はしないので思いっきり戦ってください。
 演技はグリーン・スクリーンの前でおこなう。 

●参加者一覧

/ 漸 王零(ga2930) / 守原クリア(ga4864) / クラーク・エアハルト(ga4961) / ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751) / 瑞姫・イェーガー(ga9347) / イスル・イェーガー(gb0925) / 鬼道・麗那(gb1939) / チェスター・ハインツ(gb1950) / 月影・白夜(gb1971) / 烏丸 八咫(gb2661) / エミル・アティット(gb3948) / ドニー・レイド(gb4089) / 冴城 アスカ(gb4188) / ルーイ(gb4716) / ウレキサイト(gb4866) / キャプテン・エミター(gb5340) / 日野 竜彦(gb6596) / 安藤ツバメ(gb6657

●リプレイ本文

●撮影終了
 KVのコクピットからぞろぞろと人が降りてくる。撮影のカメラマンも含めれば20名以上の大所帯だ。
「お疲れ様でしたー」
 命がけの実戦。さらにその上演技まで気をつけないといけないのだから能力者たちにかかる負担は並大抵のものではなかったはずだ。
「はじめてのKV戦、とても怖かったですわ〜」
 とウレキサイト(gb4866)がドニーに胸を押し付けるように抱きつく。
「私の戦闘、如何でしたか? 上手に出来ていましたか?」
「危なげが無くてよかったと思うよ」
 ドニーはそういうとウレキサイトの頭の上に手をぽんぽんとおいた。
「無事に終って何よりだね」
「そうですわね〜。本星型がかかってきたらどうしようかと思っていましたわ〜」
(「本当は頭を撫でてほしかったんですけど、今回はこれで我慢しますわ」)
「あー、お腹すいたんだぜ」
 エミルがそう言って岩場に座る。
「そうね、KV戦って思ったより体力使うのね。おかげでもうくたくただわ」
 サラはエミルの隣に座りながら言った。
「役者の皆さんお疲れ様でした。皆様の勇姿はしっかり三台のカメラに収められましたので、後はこれをサンフランシスコのグリューンムービーに持ち込んでの編集作業となります。後はグリーンスクリーンでの演技が待っていますが、そちらのほうも頑張ってください」
 それから固形燃料でお湯を沸かし、木の枝にマシュマロをさして焼くと、簡単なお茶会と相成った。

●視聴注意
 サラ・ディデュモイ(gz0210)演じる藍・カレンが画面に現れる。
「この映像は事実を基にした娯楽映像です。現実には不可能な出来事もドラマの演出として含まれておりますがご了承ください。また、テレビを見るときは画面から離れて部屋を明るくしてみてください。ドラグナイツとの約束ですよ♪」

●どちらでもないもの
 烏丸 八咫(gb2661)がスポットライトを浴びる。いつものシルバー・クロウの格好ではなく髪を黒く染め目の色を変えている。

 あれ以来彼女は追われる立場になった‥‥
 その事に後悔はしていない失った物を取り戻せたのだから。
 とは言えシルバー・クロウ背負った罪が、消えることはない。
 失った時間は取り戻すことは出来ない。
 妹を見守ることさえ出来ればそれで構わない。
 それが彼女の思いだった。
 今の彼女がエオス・アイオーンでもシルバー・クロウでもない存在だとしても‥‥

●Knight Vogel
 激化するバグラム戦に対応する為、新兵器『ナイトフォーゲル』を開発したUPC。
 一方バグラムも、それを予想し同等の兵器を開発していた。
「新兵器‥‥ですか?」
 訓練中に呼び出しを受けた月影・白夜(gb1971)は新兵器と聞いて戸惑う。
 格納庫には飛行機が入っていた。そして格納庫のモニターにクリア・サーレク(ga4864)演じるUPC嘱託科学博士クリア・アストライアがハイテンションで説明をした。
「これぞ我が開発した、UPCの戦士の魔を断つ剣にして空を翔る翼、ナイトフォーゲル、KVじゃ!! それはただの飛行機ではないぞ。ロボットにも変形して陸戦を行うことも可能だ。そして何よりAUKVのように専用装備でなければ特殊な資質も必要としない。まさしく万能兵器なのじゃ!」
「こんなの作れるなんて‥‥軍ってやっぱりすごいんですね」
 チェスター・ハインツ(gb1950)が感嘆の溜息をつく。
「軍じゃなくて我がすごいんじゃがの」
 クリアは自慢げにそう言う。
「確かに‥‥前回の敵も機龍咆哮が無ければ倒せなかったでしょうし‥‥」
 こういう装備も必要なんだろうと白夜は言う。
「これが新たな力か‥‥なんか燃えてくる〜!」
 安藤ツバメ(gb6657)が格納庫に入ってきながら言う。
「あの、あなたは?」
 カレンが尋ねる。
「私は安藤ツバメ。ツバメでいいよ。これのパイロットの一人さ。それにしても格好良いなぁ。よし、これからこいつはガンバイザーって呼ぼう。そうしよう♪」
「そして俺もこれに乗ることになる。これでカレンたちばかり危険な目にはあわせないぞ」
 ドニー・レイド(gb4089)演じる藍・祥龍(ラン・シャンロン)が義妹のカレンやドラグナイツのメンバー達に慈愛の表情を見せながら言う。
「祥龍さんと一緒に戦えるのか‥‥なんだか嬉しいな」
 キャプテン・エミター(gb5340)演じるニュクス・アイオーンがそう言うと、祥龍も「俺も嬉しいよ」と言った。
「あと何人かパイロットはいるのじゃがその者達は遅れて来ることになっている。とりあえずテストと訓練には間に合うように来るはずじゃ」
「それで、テスト飛行はいつに?」
 クリアの言葉に白夜が尋ねる。
「サンディエゴで、五日後じゃ」

 一方、バグラム。
「これが新兵器だ。コピーAUKVと一緒に出来上がった。きみ達にはこいつを使ってもらうよ」
 ルーイ(gb4716)がバグラムの精鋭クラーク・エアハルト(ga4961)と漸 王零(ga2930)をはじめとした数名に、変形機構をオミットしたAUKVのような戦闘スーツと共に、まさしくUPCのKVのような戦闘機を見せる。
「いいのか? 我にこんなものを見せて? この鎧の秘密を知るために幽閉されていた我だぞ?」
「以前廃棄した擬似AUKVとは違うよ。おかげで被験者だったキミも解放されたんだ。感謝してほしいね」
 王零が挑発するように言うがルーイは軽く受け答えをする。
「さすがはルーイ殿。UPCでも優秀な科学者だっただけはある」
「これもバグラムの科学力のおかげだ。僕と同じでバグラムの力を求めて裏切ったきみなら良くわかるだろう?」
 と言っても本来はバグラムの本部で作られた機体であるのだが、ルーイがその外見を気に入らずにKVに見えるように勝手に改造をくわえたものだった。無論性能もカスタマイズしているが‥‥
「即実践投入したいところだけど、色々と手を加えたから念のために試験飛行を行う。当日は僕も出るよ。日取りはサンディエゴで五日後だ」
「ルーイよ、その前に試し乗りしておきたい。よいだろうか?」
 王零が尋ねると、ルーイは許可を出した。
「有り難い」
 王零はそう言いKV雷電に乗り込むと各種スイッチをオンにして、機体が正常に動作していることを確認するとハッチを開かせた。
「雷電、出るぞ!」
 そう言って出撃した雷電は、バグラムの基地にミサイルを撃ち込む。
「何だ! 王零、何をする!」
 ルーイが叫ぶ。
「我をわざわざ解放してくれて礼を言うが、恩は仇で返させてもらう!」
 幽閉を解かれてからというもの脱出の機会をうかがっていた王零は、ここぞとばかりにブーストをオンにすると高速で離脱していった。
「追いますか?」
 部下がルーイに問うと、ルーイはその部下を睨み付けながら言った。
「KVのハッチが全部壊されてるのにどうやって追える! ましてやブーストしているKVを!」
「とりあえずは修理か」
 クラークがそう言うとルーイは頷いた。
「必ずテスト飛行に間に合わせろ。ハッチを最優先で修理だ!」

 こうして偶然にも同じような機体を開発し、同じ日取りで同じ空域で飛行テストを行うことになったUPCとバグラム。運命の皮肉は誰を嘲笑するものか。
 
●謎の少女
 UPCの面々がテスト飛行と訓練のために実弾装備でサンディエゴに向かって巡航速度で飛び始めてからしばらくしたころ、ロス南部で前触れもなくバグラムからの対空砲火を受けた。しかも銃弾ではなく炎を纏った衝撃波だった。慌てて地上に降りてKVをロボ形態に変形させるUPC。
「くっ。何なの?」
 カレンがそう言うと、モニターのクリア博士の映像が指をさす。
「あそこに何者かおるぞ!」
 そういわれてUPCの面々はモニタの映像を拡大させる。そこには純白のエナメル服を着た美少女がいた。
 それはどう見てもイツメバイユでKV☆スターホワイトを演じている鬼道・麗那(gb1939)だが、それに気がつくような者はいない。
「ウフフフフ」
 集音マイクがその少女の声を拾う。
「ふぅん、アナタたちがドラグナイツね」
「何者だ!」
 祥龍が声をかけると
「私はレイナ‥‥白い魔女とでも憶えておきなさい!」
 との叫びと共に拳を振るモーションがかけられる。
「いけない‥‥!」
 武術を嗜んでいる白夜がそのモーションで危険だと見抜き散開するように指示を出す。
 すんでのところで散開したUPCの面々が見たものは、レイナの掌から放たれた衝撃波で、ビルが吹き飛ぶ場面だった。
「生身でなんていう力なんだ!」
 チェスターが驚愕の声を上げる。
「私に任せな」
 ツバメがKVロッドでレイナに攻撃を仕掛ける。生身だからと甘く見ては危険だと判断したのだ。
 だが、直接攻撃したのが悪かった。
「私に触るな!」
 炎を灯した右拳がツバメのKV、バイパーを弾き飛ばす。それは正にバーニングホワイトの必殺技バーニングナックルであった。
「うわあっ!!」
 吹き飛ぶバイパー。しかしそれを受け止めるニュクスのKVロジーナ。
「大丈夫か?」
「あ、ああ‥‥なんとかね」
 安堵の溜息を漏らすツバメ。そこにレイナがもう一度先ほどのモーションをかけようとしたその時だった。
 ガトリングガンの弾丸がレイナを襲う。
「っ!!」 
 慌てて回避するレイナ。
「アンタらが噂のドラグナイツか、こちらはUPCのAUKV試験部隊レイブレスだ。これより、そちらの援護に入る」
 それは日野 竜彦(gb6596)のKV翔幻から発射された弾丸だった。
「こちらレイブレスのユーリだ。援護をするようにと、言われてきた。宜しく」
 ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)がKVイビルアイズから通信を入れる。
「同じくレイブレスの冴城 アスカ(gb4188)。援護するぜ!」
 ツバメと同じバイパー乗りのアスカが150mm対戦車砲を発射する。
 転がって回避するレイナ。
「うぅぅ‥空が‥空が墜ちてくる‥‥」
 と、突然頭を抱えて何事かを呟き始める。
「うう‥‥頭が、頭が痛い‥‥」
 集音マイクが拾うのはレイナの苦しみの声。
「うわあああああああああ!」
 レイナは叫ぶとバグラムの超技術で転移した。
「なんだったのかしら?」
 カレンの呟きに、ニュクスは「さてね」と答える。ともかくこんな所で手間取っている場合ではなかった。試験飛行空域に向かうために戦闘機形態に変形して強引に飛び去っていく。

●KV VS KV? 〜邂逅〜
 一方、バグラムのメンバーもサンディエゴに向かって飛び立っていた。
 そしてかくも皮肉な出会いが始まる。
「5時の方向より熱源。識別コードはなし」
 竜彦が翔幻を操りながら、接近する謎の飛行物体を告げる。
「各員旋回して接近するunknownに備えよ」
 祥龍の指示を受けて各KVは旋回し、unknownに対して正対する布陣になる。
 そしてやがて見えてきたそれは、KVそのものであった。
『そこのKV、所属と官位を名乗れ』
 祥龍の問いかけに、そのKVからは知った声が聞こえる。
『それはKVか!? AUKVの時もそうだったが、何故これからと言う時にそんな物を完成させる!』
『ルーイ!? ルーイか! まさかバグラムも‥‥』
 お互いに知った声が自分達と同じような機体に乗っていることで狼狽しているようだった。
『敵も同じようなものを作って‥‥迎撃しますよ、各機!』
 チェスターがロビンを操り警戒の体制に入る。
「宿命‥‥なのかな‥‥」
 無線の発進をオフにしていた白夜の呟きを聞くものは誰もいなかった。
『中に載ってる奴らもAUKVみたいなのを着ているわよ。もしかして‥‥』
 ロジーナを操ってカレンが推測を告げると、驚いたことに敵から返事があった。
『そうだ。俺達はAUKVの変形機構をオミットしたコピーAUKVの装着者であり、同時にこのKVを駆る者だ。俺はクラーク・エアハルト。短い間だが地獄に行くまでお付き合い願うぜ』
『地獄には一人で行ってね! 新たな力、ナイトフォーゲル‥‥存分に味あわせてあげるよ!』
 そう言ってツバメがトリガーを引こうとしたときだった。まさに此処に初のKV同士の戦闘が始まる―――皆がそう思った刹那。
『高エネルギー体接近! 散会しろ!』
 ルーイが、祥龍が指示を出す。
 人工的に作られた空白を、一本の光が引き裂く。
 そしてその空間に現れたのはヘルメットに砲台がついたような飛行物体。
「レーダーに反応が無い? 何だあれは‥‥??」
 竜彦が計器類をチェックしながら一人言う。
『ルーイ、何だあれは!!』
『僕が知るか! UPCの新兵器なんじゃないだろうな、祥龍?』
『そんなわけが無いだろう』
 そして祥龍とルーイが言い合っている間にもその物体は発砲を続けこちらに迫ってくる。
『くっ! KV同士で争っている場合じゃないな』
 ニュクスのその通信が謎の飛行物体に届いたのだろう。ひときわ異彩を放つヘルメット型の物体(以下HW)から通信が流れてくる。
『私は神無城冥夜(カンナギメイア)。バグアの幹部の一人だ。地球人よ、そしてバグアまがいのバグラムよ、消えてもらうぞ!』
 そう言ったのは柿原ミズキ(ga9347)。KV☆スターブラックを演じる女性である。
『さぁ、新入りのあなた達の実力を見せつけさせて貰う、存分に暴れて来なさい』
 冥夜がそういうと一回り大きなHW2機からの通信が流れる。
『はい、神無城様‥‥攻撃を開始します‥』
 イスル・イェーガー(gb0925)がそう言って機体を前に出す。
『合点だぜ、姐さん!』
 エミル・アティット(gb3948)演じるアティ・アティーがイスルに合わせるように動く。
 それは双方初めて目にする、宇宙からの新たな侵略者であった。

●鏡よ鏡
「このままでは‥‥しかしこのままでは」
 新たなる敵バグラムとの三つ巴の戦闘に、彼女は歯噛みする。
(「私達の妹の為にもやはり、この力を使わなければならない様ですねシルバー・クロウ」)
 鏡に映る自分に投げかける言葉。もう一人の自分は頷いたような気がした。
「そう言えば一度も使うことの無かった専用機があったはず‥‥あれを探してみましょう」
 彼女はそう言うとバグラムの基地に転移した。
 見張りの戦闘員を気絶させて衣装を剥ぐと、それを纏って基地内をうろつく。やがてハンガーにたどり着き、カバーを外されている自分の機体を見つける。
「いましたね、不死鳥。完成を見ることは有りませんでしたが、残されているとは思いもしなかった。ん‥‥コーヒーの香りが? 誰かこの機体をいじったものがいるのでしょうか?」
 それはともかくとして、彼女は妹のニュクス・アイオーンを助けるためにもこのKV、プロト・フェニックスに乗り込むしかなかったのだ。戦闘員のスーツを脱いで彼女は白銀の魔女となる。

●デットヒート
 そして‥‥‥‥
『ルーイ、シルバー・クロウの機体が消えたよ。これからあたしもそっちの援護に入る。何、数分待っていればいい。それまで、死ぬんじゃねえぞ』
『了解した』
 短い通信でルーイは状況を把握する。
『ルーイ、このままじゃ拙い。一時休戦‥‥そうだ、共闘しないか?』
『悪くない提案だね。そのほうがいいだろう』
『お前達の力、今はアテにさせて貰う!』
『お前の実力はお前以上に知っているつもりだ。当てにさせてもらうぞ、祥龍!』
 そして二人は一時的に手を組むことになったことを仲間たちに知らせる。
「まさか、バグラムの連中と手を組む事になるとはな」
 竜彦はそう呟くと今まで攻撃していたバグラムから離れ、HWに向かって84ミリロケットを発射する。
「何者かはわかんないけど、早々に退場をお願いしようかね! いけ、ガンバイザー!」
 自らのバイパーをガンバイザーと呼びながら、ツバメがホーミングミサイルを発射する。
 それは小型のHWを一機落とす。ツバメ自身は一旦空域から離脱する。
『面白い。助太刀しよう!』
 その通信は唐突に入った。
『我は漸 王零。バグラムからの逃走者だが、この戦は興味深い。ゆえに助太刀しよう』
『真逆そっちからのこのこ戻ってくるとはなぁ。今だけ一緒に戦ってやろうじゃないか?』
 クラークが王零に近づいていく。
『ロッテだ。二人であの中型のを狙うぞ』
『応!』
 クラークと王零はロッテ戦術(2機1組となり1機が攻撃、1機が牽制を基本とする戦術)でイスル機を追い詰めていく。
『‥‥ッ! ‥敵、速いね‥‥油断禁物‥‥』
 だが中型HWは急制動をかけて重力に身を任せる。急激な落下。クラークと王零は一瞬虚を突かれる。
 小型HWの砲撃。
「ぐっ!」
 装甲をめくる。
『‥‥援護する』
 ユーリのイビルアイズがさらに王零たちに狙いをつけていた小型HWの群れに攻撃を仕掛ける。
『‥‥共闘、なのだろう?』
 ユーリは寡黙に二人の援護を続ける。
『そのまま、そのまま三機一組の状態で戦ってください。敵の数はこちらの三倍です。こちらも単独では行かず組んで行きましょう』
『‥‥了解だ」
 白夜の指示にユーリが答え、王零とクラークも従う。

『さすがだな祥龍!』
『お前こそな、ルーイ』
 この二人はUPCにいたころのように息をぴったり合わせながらロッテで戦っていた。
 といっても二人は指揮官でもあるので戦闘しながらもほかの機に指示を出していかねばならない。
『敵と共闘するっていうのも‥‥なんだか変な気分だな‥‥』
『私もよ。でも彼らの強さはわかっているから、今は安心して背中を預けられるわ』
 チェスターのぼやきにカレンが同調する。
『敵をかく乱させる。援護よろしく』
『了解!』
「アリスシステム、起動!」
 チェスターは機動性を上げるシステムを起動させると、敵の群れにレーザーカノンを撃ちっぱなしにしながら突っ込んでいく。そして撃ったら離脱する。これを数回繰り返す。
『今だ!』
 カレンが混乱した敵の群れにホーミングミサイルを叩き込む。連鎖して爆発する小型HW。チェスターの戦術は一定の効果を上げたようだった。
『此処で仕留めます‥‥貴方達に明日はありません‥‥』
 シュルテンを操りながら白夜は小型HWにドッグファイトを仕掛ける。カレンは少し引いて様子を見守る。

 ニュクスは機体の防御力を生かして祥龍とルーイのロッテに入り込む。
「おらおらおらぁっ!! この程度なのか? まったくもってつまんないぜ!!」
 アティが中型HWで暴れる。そこにニュクスたちのチームが割り込む。
 三機編成に苦しめられる中型HW。
「あちっ!? っと、や、やりやがったなぁ!!」
 手痛い反撃を受けて毒づくアティ。
 と、突然新型機が現れた。
『こちらバグラムのドロマイト。ルーイ、アンジェリカで援護する』
『きたかドロマイト。状況は把握しているな?』
『ああ。余所者に地球を渡す訳にはいかねぇ。バグアとやらには悪いが死んでもらう!』
 ドロマイトが叫んで小型ルーイ達のチームに入り込んでいく。
「こいつら(UPC)はあたしのターゲットなんだよ。お前らに殺らせるもんか」
 戦車砲が撃ち放たれる。墜落する小型HW。
 そして――
 一斉砲火で狙われる祥龍たち。
「あぶないっ!」
 ニュクスはとっさに前に出る。直撃を受けて装甲がボロボロになる。祥龍やルーイ、ドロマイトもダメージを受けるがそれほど深刻な傷ではない。
「くっ!」
 そしてさらに追撃を受けようとしたところに、新たな機体が割って入る。
『ニュクス、貴女は私が守ります。貴方たちに好きなようにさせるわけには行かない。天翔る白銀の魔女シルバー・クロウの名にかけて!』
 シルバー・クロウが名乗りを上げる。
『貴方は‥いったい、何故‥‥』
『大丈夫か、ニュクス君!』
『あ、あは‥‥体はともかく機体が‥‥』
『おーっと、大丈夫じゃぞ。その機体には秘密があってな‥‥コードを入力せよ、機鳳転生と!!』
 クリア博士が、ニュクスのロジーナのモニターに突如出現する。
「‥‥コード入力、機 鳳 転 生 !!」
 ニュクスがコードを入力した途端ロジーナの装甲がパージされ中から新しい機体が現れる。
「博士、これは?」
『これぞ、我が最初に作り、使いこなせる者が無く封印されていたKV、プロト・フェニックス。そう、御主らは龍の鎧のみでなく、空を駆ける鳳凰の翼も手に入れたのじゃ!』
「‥‥プロト・フェニックス‥‥これが‥私達の新たな力‥‥」
『ねえ、クリア博士! 私のロジーナにもあれはあるの?」
『無論じゃ』
『じゃあ、試してみるわね。‥‥コード入力、機 鳳 転 生 !!』
 カレンがロジーナにコードを入力すると、ニュクスと同様に装甲がパージされて中から不死鳥が現れる。
『それの使い方はわかるな? エミタを通して操縦法が流れていくはずじゃ』
『わかる‥‥わかるぞ。これが鳳凰の、不死鳥の力か!』
『さあ、行くがよい、不死鳥よ!』
『了解!』
『了解!』
 ニュクスとカレンが同時に答える。
『行きますよ、ニュクス。UPCにハッキングして作らせたものとはいえこれも不死鳥。3機の不死鳥の力を見せてあげましょう。あのバグアという連中に‥‥』
『りょ、了解』
 そしてニュクスとカレンのモニターにシルバー・クロウが考えた作戦が送られてくる。
 それを理解すると一気にアティ・アティーの操縦する中型HWに接近する。
 まず中距離から砲撃をし、『空中で人型に変形する』。
「逃げてなんて居られない、挫けてなんて居られない、この世界の明日の為に、来るなら来い、バグア!!」
 ニュクスが叫ぶ。
「愛する妹のために、これが私にできる唯一の方法です!」
 エオス・アイオーンが吠える。
「誰にもこの地球を好き勝手にさせない!」
 そしてカレンが。
 3機の不死鳥は手にした剣をアティ・アティーのHWめがけて振るい、変形して離脱する。
 爆発するHW。
『う、うそぉっ!? あたしがこんなところで‥‥コ、こんな冗談、面白くもないぜ!?』
 叫ぶアティに「その程度でやられてしまうとは所詮は人間か‥‥、いや人間以下と言うことか‥‥」と冥夜は冷たく言い放つ。

 一方――
『しこたま鉛玉ぶち込んでやるから遠慮せずに突っ込みな!』
『さぁ、こっちこい!てめぇのケツは頂くぜ!』
 アスカはそう叫びながら小型HWを次々と落としていく。
 そして王零とクラークがユーリも交えながらもう1機の中型に猛攻を仕掛ける。
「止め! 穿て‥‥DarknessBullet!!」
 王零は雷電の超伝導アクチュエーターを発動させながらブーストをかけ中型HWに突っ込む。そしてソードウィングで中型を切り裂いた。
『‥‥ここまで。‥‥ごめんなさい‥神無城様‥‥』
 こうして中型は撃墜され、残るは冥夜の乗る本星型といくつかの小型HWのみとなった。
『残っているのは実質上お前だけだが、どうする? この数を全部相手にするつもりか?』
 竜彦が本星型HWのパイロットに向けてそういうと、
「我らを倒したからといって我々にはゾディアックそしてシェイドが、いるのだからな。それを忘れるな!」
 そう言うと高速で戦場を離脱していった。

 それから小型HWを掃討し、バグアをすべて倒したとき、気がつくとシルバー・クロウと王零の姿が消えていた。その報告を受けてルーイは悔しがりドロマイトは笑った。
「どうする祥龍、このまま決着をつけるか?」
「いや、そっちさえよければ今日はよしておこう。些か疲れた」
 それには多くの者が同意した。
 パイロット達は着陸してKVを人型にするとコクピットの中でしばしの休憩をとった。
 そして戦いは終わり、消耗した双方は勝負を預け帰還する。
 後に残されたのは新たな侵略者の影と、其々の思惑だけだ。

 ――UPC本部
 無人の室内で、誰も操作しているはずの無いコンピューターが勝手に動いていた。モニターにはKV調整計画書と記されている。