●リプレイ本文
●出発
「‥‥文字通りの汚れ仕事だな。ひとつ、頑張ってみるか」
戦争は見えない所にこそ、深刻な爪痕を残す。一人の傭兵として、ホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)はこの事態は見過ごせなかった。
「オペレーターさん、下水道の地図はもらえないのかい?」
「ああ、それでしたら軍のほうから地図が来ていますね。プリントアウトしてお渡しします」
ホアキンの言葉にオペレーターは端末を操作しながら答えた。
「街の奉仕活動は良い事ですよ‥‥」
終夜・無月(
ga3084)はそう言うと下水道に降りていった。
「‥‥確かにキメラ相手じゃ俺たちが戦わなくてはいけないのは分かるけどよ。こういう仕事をする為に傭兵になったんじゃない気がするのは俺だけか?」
Anbar(
ga9009)は口では文句を言いつつも、受けた仕事をきちんとこなすのは彼なりの矜持であった。
「‥‥さすがに臭いがきついですね‥‥」
そう言いつつユーリ・クルック(
gb0255)は苦笑する。
「キメラの行動パターンを尋ねてきた。それによれば主に人肉を好むとのことらしい。まさしく我ら自体が囮と言えよう」
フラウ(
gb4316)は至極真面目な口調でそういう。
「下水道のお掃除ですか‥‥見えないところで頑張るのは‥‥良い事です‥‥汚れ対策に‥‥長靴とレインコート着て‥‥行きましょうか‥‥‥‥‥‥‥‥え? キメラ、ですか‥‥?」
「雇われ者ですから、ね。依頼である以上、どんな仕事でもこなさないと‥‥」
ハミル・ジャウザール(
gb4773)にフィルト=リンク(
gb5706)がそういう。
「そうだな。人が嫌がる事だろうとも、相手に手応えが有るならば相対するのも叉一興」
加賀・忍(
gb7519)がそれに同意する。
そして一行は
・前衛
無月、フィルト
・中衛
Anbar、フラウ
ユーリ、忍
・後衛
ホアキン、ハミル
といった陣形で進んでいく。
忍はランタンは腰に据えて、盾と機械剣を構えて進んでゆく。
「なかなかに、気味が悪いものだな」
「キメラがいると思えばなおさら」
AU−KVをがしゃこんがしゃこんさせながらフィルトが忍に答える。
「何か動いた!」
ハミルが何かの影を確認するが、よく見るとそれは巨大なドブネズミだった。
「ふう‥‥天井まで警戒しないと‥‥いけないから‥‥神経を使いますね」
ハミルがそう呟くと、フラウが
「物音にも警戒せよ。どこから襲ってくるか分からぬ」
と答える。
フラウはAnbarの直衛としてスキルを使って探査を続けるAnbarを守っていた。
「臭いがだんだん強くなってきてますか‥‥?」
ユーリが臭いに反応する。
また、探索した場所の地図にはマーキングを施していくのも忘れない。
「ゴミ溜まり‥‥一応ペイント弾を打ってみましょう」
そう言うとユーリはペイント弾を放つ。だがフォース・フィールドの反応は見受けられない。
「まあ、帰りの目印程度にはなるだろう」
そうAnbarが言う。事前に目撃情報を集めた限りだとこの付近にキメラが潜んでいる可能性は高いので、彼はスキルを使っているのだ。
「問題は敵の強さですね‥‥」
無月が言うとホアキンが周囲を警戒しながら答えた。
「まあ、俺と無月がいればたいていのキメラはなんとかなるだろ」
それは自惚れではなく自信。能力者が登場した初期から戦い続けてきたものとしての。
そして‥‥
●発見〜戦闘
ぞわり
「何だ、この感覚」
Anbarが奇妙な悪寒を覚える。
探査の眼とGooDLuckで警戒していたAnbarは感じた奇妙な感覚に敵の気配を察知し、仲間に警告する。
「キメラがいるぞ。気をつけろ!」
「どこだ!?」
ホアキンが叫ぶ。
「っ‥‥上だ!」
Anbarの警告に全員が上に目を向ける。
天井に張り付いて移動している物体が五つ。これが報告にあったヘドロキメラだろう。
「ちぃっ!」
ホアキンの超機械「雷光鞭」で一体が焼け焦げる。
それを機に残りの四体が地面に落ちてきた。ネバーっと粘りながら、天井から床に移動する。
「くぅっ‥‥」
「うっわ‥‥」
「う゛っ‥‥」
フィルトなどは吐き気すら覚える。
嫌悪感を隠せない能力者たち。
そしてさらに焼け焦げた部分から脱皮するかのように、もう一匹のキメラも床に落ちる。
「くそ。殺しきれていなかったか」
ホアキンがほぞを噛む。
キメラは能力者たちを前後から挟むような形で布陣した。
これに対し前衛と後衛が同時に動く。
「さぁ‥‥大人しく皆の為に掃除されなさい‥‥」
前衛の無月、フィルトは無月の月詠と機械剣による二段撃とフィルトの機械剣。この連携攻撃で2撃目にして一匹のヘドロキメラを倒すことに成功する。ただし無月の場合は全身に、フィルトの場合はAU−KVにヘドロを浴びる。その際、ヘドロキメラの体液も同時に浴び、酸の攻撃を受けることになった。
「くっ‥‥」
「つぅ‥‥」
なんと言っても臭いが半端でなくひどい。鼻が曲がるかといった具合だ。AU−KVを装備していても大差ない。
一方の後衛はホアキンの雷光鞭とハミルのエナジーガンの攻撃が飛ぶ。
「‥‥しつこい汚れだな。綺麗にしておかないと、安心して住めやしない」
一発、二発、三発。三発目でようやくヘドロキメラを打ち倒す。こちらは距離を開けての攻撃だったためにヘドロを浴びることは無かった。
次いで中衛のAnbarとフラウが連携攻撃でホアキンの攻撃でダメージを受けたキメラを狙う。Anbarは超機械で電磁波を発生させフラウはナイフを投擲して遠距離からの攻撃を狙う。しかし三度にわたる攻撃でもキメラを倒すことは出来なかった。
「清掃開始っと!」
ユーリがエネルギーガンで、忍が機械剣で引き続き同じキメラに攻撃を仕掛ける。二度目の攻撃でキメラを倒すことが出来たが、忍は近距離からの攻撃だったためヘドロと酸を浴びてしまう。
そして今度はキメラの番だ。
前衛に位置どるキメラがユーリに向かって触手を放つ。回避を試みるがユーリは触手に掴まり絞めのダメージを受ける。
「うわああああああ!」
「ユーリ!」
Anbarが叫ぶ。
後衛に位置どるキメラはハミルに向かって触手を放つ。同じく回避を試みるハミルだが僅差で触手に絡めとられてしまう。
「くあああああ!」
「ハミル! 畜生!」
ホアキンが叫ぶ。
「この、腐れキメラめ!」
雷光鞭で電磁波を加える。立て続けに、二度、三度、四度と‥‥そして何度目かの攻撃の後、キメラは息絶え、ハミルは解放された。
そして無月の月詠と機械剣による二段撃とフィルトの機械剣。この連携攻撃でユーリを捕らえているキメラを倒すことに成功する。だが例に漏れずヘドロと酸を浴びてしまう。
「ふう‥‥終りましたが」
「洗濯とシャワーは避けられないですね」
無月とフィルトがそう言って笑いあう。だが、笑いでもしなければやりきれないくらいの酷い臭いだった。
●仕事後
「あ〜やっと太陽の下に戻れた〜」
ユーリは伸びをする。
そしてシャワーを浴びれる場所を探す。
「早くこの臭いをどうにかしたいですからね」
彼は苦笑しながらそういった。
「本当、はやくシャワーを浴びたいです‥‥」
フィルトがそう言うと、忍も
「シャワーは必須ね」
と言う。そして‥‥
「長靴とレインコートのおかげでなんとか‥‥でも、これは処分ですね‥‥」
ハミルはそう言って長靴とレインコートを処分し、シャワーを浴びた。
Anbarは仕事後、匂いが染みついてどうしようもなくなった衣類等をアルコール消毒していた。
自身も風呂に籠もって少しでも匂いを落とすようにする。
「匂いで周りに敬遠されるのは正直勘弁して貰いたいからな」
それでも一週間は臭いが取れなかったが。
そして一行にはロサンゼルス美化委員の称号が授与され、規定の報酬も受け取り、無事仕事は終了したのであった。
了