タイトル:【低】空戦訓練マスター:碧風凛音

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/11/14 19:51

●オープニング本文


「さて、明日は仮想のHWを相手にしたKV訓練を行います」
 技術教官がシミュレーターの前で説明を開始する。
「これは軍が独自に開発したKV運用シミュレーターです。ほかのシミュレーターと違うのは、計算上のKVの動きと、シミュレーターの操縦席の動きがほぼ完全にシンクロすることです。従って、無茶な機動をすればGもそれなりにかかります。また、ダメージを受ければ激しく振動します。それから、実機のデータを安全に配慮しながらも、限りなく忠実に再現できるのがこのシミュレーターの強みです。ですから皆さんの装備はそのまま再現されます。ということで、明日の訓練までにこのディスクにKVのデータを入力してきてください。あ、チートは受け付けませんのでズルはしないでくださいね」
 そういって技術教官は笑う。
「まあ、エル君はもう慣れたものでしょ」
 そう。確かに最初エル・ウッド(gz0207)はデータの入力方法すらわからなかったものだが、今ではもうコンピュータの扱いにも慣れた。
「戦闘相手は一番楽な小型HWが8機。君たちと同数ね。指揮官機はいないわ。各自独自のプログラムで行動します。戦闘フィールドは廃墟の都市上空。ただしHWが都市に下りることはありません。あくまでも今回は空戦のみです。敵は千キロ離れた前線基地から侵入してくる。そこを警戒中の君たちが見つけるという完全な遭遇戦です。遭遇戦だと教えるのは結構なハンデよ。せいぜいやられない様にがんばってね。じゃ、解散」
 と教官は言ったが作戦を練るために教室に残っているものがほとんどであった。

●参加者一覧

ゲオルグ(gb4165
20歳・♂・DG
上条・瑠姫(gb4798
20歳・♀・DG
周太郎(gb5584
23歳・♂・PN
諌山美雲(gb5758
21歳・♀・ER
ホゥラリア(gb6032
21歳・♀・SN
佐月彩佳(gb6143
18歳・♀・DG
守部 結衣(gb9490
14歳・♀・SF
能見・亮平(gb9492
23歳・♂・SF

●リプレイ本文

(「実戦感覚が味わえるのですか、楽しみです。この機会にKV戦になれるとしましょう」)
 翌日、シミュレーターの前に立ったゲオルグ(gb4165)はそんな決意をしながら他のメンバーの到着を待っていた。
(「兄上の手掛かりを得るためLHにまで来ました。‥‥漸くこれで一歩踏み出せる。今はまだ、遠いかもしれません。けど、必ず見つけ出します」)
 そんな決意を秘めて部屋に入ってきたのは上条・瑠姫(gb4798)。関東陥落時に失踪した従兄の行方を捜すために傭兵になったという経歴を持つ。
「おはようございます」
 ゲオルグが挨拶をする。
「おはようございます」
 瑠姫も挨拶を返す。と、そのとき周太郎(gb5584)が入ってくる。
「おはようございます」
 周太郎の挨拶に二人が答える。
「いよいよですね」
「そうですね。上手くいくといいのですが」
 周太郎の言葉に、瑠姫がそう答える。
「おはようございます」
 冴木美雲(gb5758)が入ってくる。
「おう、冴木さん、おはよう」
 美雲と友人の周太郎が声をかける。
「今日はよろしくお願いしますね」
 美雲が頭を下げると、周太郎も「ああ、よろしく」と答える。
「おはよう」
 ホゥラリア(gb6032)が入ってくる。
「美雲さん、同じチームですね。よろしくお願いします」
「こちらこそ‥‥」
 ホゥラリアの挨拶に美雲が返事をしたそのとき、佐月彩佳(gb6143)が入ってきた。
「おはよう」
 大きなバッグを背負い、何かを食べながら入ってくる。
「また食ってるのか‥‥」
 同じ小隊の周太郎が呆れたように言う。
「ねえ、今日の訓練って‥‥ご飯、食べながらやっちゃだめ、だよね?」
「コクピットブロックは振動するそうですから、確実にこぼしますよ」
 同じ小隊の美雲がいう。
「そうだよね‥‥」
 彩佳が残念そうに言う。
「おはようございますなのですよ」
 守部 結衣(gb9490)が若干緊張した様子で現れる。
「うな、みなさんよろしくなのですよっ」
 ぎこちなく敬礼する結衣。
「よろしく」
「よろしくおねがいします」
 口々に挨拶と敬礼が帰ってくる。なんとなく感動する結衣であった。
「おはよう」
 能見・亮平(gb9492)が入ってくる。
(「俺はLHに来て日が浅いし、経験も他の能力者たちよりも圧倒的に少ない。早く一人前になるためにも訓練をしなければ」)
 そんな決意を秘めながら亮平は入ってくる。
「おはよう」
「おはようございます」
 そんな返答が口々に帰ってくる。しゃべるのが苦手な亮平もこれには感激した。
「おはようございます」
 そして最後にエル・ウッド(gz0207)が入ってくる。
「あ、俺が最後ですか。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「よろしく」
 やはり口々に返答が帰ってくる。
 そして技術教官が登場した。
「よろしい、みんな揃ってるわね。じゃ、早速データを渡して頂戴」
 そう言う教官に皆はディスクを取り出して渡す。
「おーけー。入力完了よ。それじゃ、シミュレーターに乗り込んで」
 そして乗り込む能力者たち。
「バイタルチェックオーケー。システムオールグリーン。シミュレーター起動」
 教官の声が通信機越しに聞こえる。
「それでは、GooDLuck」
「‥‥覚醒完了。作戦行動を開始します」
 結衣が覚醒しVKの操縦を開始する。
「みんな揃ってる?」
 美雲が確認すると、周囲に仲間の機影が見えた。
「シュミレーターとはいえ、この臨場感は、凄いの一言に尽きますね‥‥」
 美雲が独り言を言う。
「みんな聞こえる? そろそろ敵を出現させるから、周囲に警戒してね。特にエル君は電子戦機なんだから、情報戦はしっかりとね」
「はい」
 エルはそう答えるとレーダーを確認する。
「敵影、8時の方向にあり。目視はまだできません」
 早速レーダーに感があった。
 全機が8時の方向に旋回する。
「敵機捕捉。機影8。HW。‥‥オープン・コンバット」
 やがて敵機を目視できる距離になると、結衣が武器のセーフティーを解除しながらそういった。
 しかし先に仕掛けてきたのはHWであった。ケッテを組んで3チームに分かれているKVに対し、HWは2機編成を4組で襲い掛かってくる。
 そしてそのうちの2機。識別するならHW1とHW2がゲオルグに集中攻撃をした。
 回避は不可能と悟ったゲオルグは装甲の厚い部分で受けに入る。
「くっ!」
 それでも相当なダメージを受けた。
 そしてHW3とHW4は美雲に集中攻撃を仕掛ける。
 一機の攻撃はかわすがもう一機の攻撃は受けてしまう―ーかに思えたときラージフレアを放出しその攻撃を何とか回避する。
「さすがは所持金はたいて買ったF−108ディアブロ改。性能テストのつもりでしたが上出来ですね」
 そしてHW5とHW6は亮平を攻撃する。周太郎と彩佳の後ろにいた亮平だったが、HWの慣性制御をフルに生かした機動により回り込まれてしまう。
 一発目は受ける。が、
「かすり傷だな‥‥」
 たいしたダメージではない。
 そして二発目は回避する。
 HW7とHW8は様子見なのか攻撃を仕掛けてこない。そして、ここから能力者たちの反撃が始まった。
「タイミングはそちらに預けます。連携で行きましょう」
 ゲオルグがエルと瑠姫に通信を入れる。
「こちらの射程に捕えました、いつでも行けます」
「こっちもいつでも行けます」
 瑠姫とエルが答える。
「タイミングを合わせます。3、2、1、いけぇっ!」
 瑠姫の掛け声と共にゲオルグのスナイパーライフルが、瑠姫のホーミングミサイルが、エルのロケットランチャーが一斉に火を噴く。
 それはHW1に大ダメージを与え、2発目で撃墜する。
「倒せた‥‥の‥‥?」
 瑠姫が呟く。そして3発目でHW2を攻撃しようとするが、接近しすぎたので旋回し次に備える。
「こちら美雲。私は、お二人をバックアップします! 前衛は、お任せしましたっ!」
「了解。‥‥ターゲットロック。ミサイルいつでも発射できます」
「了解!」
 結衣とホゥラリアが答える。
「全機、HW3に大して連携攻撃を仕掛けます! アタック!」
 ホゥラリアと結衣がガトリングを、美雲がスナイパーレーザーを放つ。
 その連携攻撃は一撃でHW3を撃墜し、旋回してからHW4に接近しHW4も撃墜する。
「こちらアングウィレル。割り込んできたHWを落とす。5から連携で行こう」
「了解です」
「了解!」
 周太郎の言葉に彩佳と亮平が答える。
 周太郎のホーミングミサイルが、彩佳のP1マシンガンが、そして亮平のグレネードが自機も巻き込みながら炸裂する。
 それは一撃でHW5を撃墜し、続いてHW6も撃墜する。だが亮平がグレネードランチャーで受けたダメージもそう軽いものではなかった。
 そして生き残ったHW1とHW7、HW8がケッテを組んで瑠姫を狙ってくる。
 プロトン砲の三連射が瑠姫を襲う。
「早い‥‥けど、見えないわけではっ!」
 だが瑠姫は高い回避能力で3発ともかわす。
「こちらBチーム。残った敵は一機ずつ行きましょう」
 美雲がオープンチャンネルで通信を入れる。
『了解!』
 それに対して全機が同意を示す。
 そしてAチームがHW2を、BチームがHW7を、CチームがHW8を落とす。
「そこまで。見事な圧勝ね。シミュレーターを停止するわ」
 技術教官の言葉と共に動いていたコクピットが次第に停止していく。
 一瞬電源が落ちてから再び明かりがつき、ロックが解除される。
「どうでした、皆さん?」
「中々に良い経験でした。これを踏まえて実戦に向かいたいですね」
 教官の言葉にゲオルグが答える。
「‥‥戦闘終了ですね。皆さま、お疲れ様でした」
 瑠姫がそう言って頭を下げる。
「おつかれ」
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
 各々に返事が返ってくる。
(「待っていては始まらない。だから、私は‥‥」)
 この戦訓を得て従兄を探す決意を新たにする瑠姫。
「それにしてもホゥラリアさん、良く旧式のR−01でがんばりました。あなたの改造の成果はすばらしいわね」
「あ、ありがとうございます‥‥」
 技術教官の言葉にホゥラリアは素直に礼を言う。
「周太郎さん、自分の動きどうでした?」
 彩佳が周太郎に尋ねると、周太郎は
「機体の性能もあるがそれを十分に使いこなしていたと思うぞ。攻撃のタイミングの合わせ方もよかったし」
「そっか。ありがと」
 亮平はシミュレーションが終わって感じたことや反省点を早速メモにとっていた。
「さて、今日の訓練はこれで終了です。お疲れ様でした」
 技術教官が終了を告げると、亮平は不器用な言葉で皆に礼を言い、帰っていった。
 彩佳はレーションの封を開け、それを口にしながら帰っていく。
「うん、訓練後のレーションは格別だね」
 そんなことを言いながら。
「それからエル君、あなたはもう訓練の必要はないでしょう。実戦も経験したことだし、あとはバグアから故郷を取り戻すためにがんばりなさい」
「はい。ありがとうございます」
 そして皆が思い思いのことを考えながら帰路につく中、エルは故郷のことを思い出していたのであった。