タイトル:【ジーラ】ジーラ襲来マスター:碧風凛音

シナリオ形態: シリーズ
難易度: 難しい
参加人数: 14 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/12/03 14:37

●オープニング本文


 南米、コロンビア、レティシア。
 メデジン基地の方面から、巨大なキメラが襲来した。
 高層ビルディングほどの高さを持つ、巨大怪獣型キメラ。
 火球を吐きながらジャングルを進んでくる。
 至急KV隊が出発した。

 だが――

『だめだ! こいつ、回復するぞ!』
『メーデー、メーデー。敵は高度な回復能力を持っている。タロスなんか比じゃない!』

 KV隊の攻撃は確実に怪獣型キメラにダメージを与えていた。だが、ダメージを与えるそばから回復するのである。
「これは‥‥」
「どうしました? 博士?」
 メルス・メスからレティシアの南中央軍基地に出向していた老科学者が言った。
「こやつは大気中の水素を吸って己の活力としている。いわば、無敵だ」
「そんな! どうすることもできないのか!」
 基地司令は机を叩く。机が抗議の声を上げた。
 と、老科学者の様子がおかしい。基地司令は科学者に何かあるのかとたずねる。
「レティシアに借りている私の研究所にハイパー・デストロイヤーと言う試作装置がある。欠陥が多すぎて廃棄処分寸前のものだが、そいつを使えば周囲の一定空間の水素を希薄にすることができるかもしれない‥‥だが‥‥」
「だが?」
「装置は分解してあるとは言えKVでないと持ち運べないほど大きい。そして研究所にはKVの離着陸に必要な滑走距離がない」
 科学者のその言葉に、基地司令は「シュルテンや斉天大聖なら‥‥だが、南中央軍にそのような高級機はほとんどない」
 そう悔しそうに言う。
「司令、傭兵の力を借りるしかありません。傭兵にやつを足止めさせると同時に、垂直離着陸能力を持つ機体でハイパー・デストロイヤーとやらのパーツを運べばよろしい」
「なるほど‥‥それしかないか。よろしい、ULTに依頼する」
 そうして傭兵たちが集められたわけであった。

●参加者一覧

綿貫 衛司(ga0056
30歳・♂・AA
ジーラ(ga0077
16歳・♀・JG
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
ブレイズ・カーディナル(ga1851
21歳・♂・AA
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
諫早 清見(ga4915
20歳・♂・BM
ソード(ga6675
20歳・♂・JG
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
鳳(gb3210
19歳・♂・HD
澄野・絣(gb3855
20歳・♀・JG
アーク・ウイング(gb4432
10歳・♀・ER
番場論子(gb4628
28歳・♀・HD
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER

●リプレイ本文

●基地にて
「驚異的な回復力‥‥でもなによりもあの姿。バグア、なんて恐ろしい物を‥‥皆さん、人類の平和の為にも、なんとしてもジーラをやっつけましょう!」
 ジョーこと流 星之丞(ga1928)はきっぱりとそう言い切ってから、とある一点を見つめた。
「えっと、ジーラ(ga0077)さん‥‥ジーラといっても、あっちのジーラですから‥‥うーん、やっぱり紛らわしいですね、あの怪獣の方が後からの出現ですし、いっそ後ジーラとでも」
「ちょっと待った。どっちにしろそれだとボクが怪獣に聞こえちゃうよ。どうにかならないかな?」
 ジョーの言葉にジーラが抗議すると、ジョーは少し考えてから
「では、怪獣と素直に呼ぶことにしましょう。ややこしいですしね」
「博士、宜しくお願いします‥‥ハイパー・デストロイヤーと博士の頭脳が、怪獣から人々を守る希望ですから」
 そう言って差し出されたジョーの手を、博士は気まずそうに握り返した。ジョーの頭に疑問が湧くが今はそれどころではないと気を取り直し骸龍へと向かった。
「あ、ブレイズ! ‥‥ぁ、いや、なんでもない、けど。その‥‥気をつけて。怪我したら、駄目だよ? ‥‥あ、後から看病するのが大変だからね! ‥‥ホント、気をつけて」
「怪我するなって言われても、今回はあんなのが相手だしな‥‥。それはちょっと難しい注文かもしれない。だけどまあ、できるだけのことはやってみるよ。そっちも、何とかって装置の方は任せたぜ」
 ブレイズ・カーディナル(ga1851)がそう言うと、有名ツンデレアイドルことジーラは素直に返事をした。
「う、うん」
(「‥‥ここで「君は俺が守る」みたいなこと、本人の前で言えたら良いんだがなぁ‥‥」)
 ブレイズがそんなことを考えている間にも怪獣は基地に向かって進んできていた。
「水素を吸収‥‥ってエミタと動力源一緒ってことだよね。あのキメラもさることながら、装置もなんの為に研究してたのか気になるな。何を聞くにしたって無事にこの危機を乗り越えてこそだね、急いでパーツを持ち替えるよ、皆、それまでどうか無事で‥‥!」
 諫早 清見(ga4915)がそう言うと、ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)が
「もちろんやられるつもりはないさ」
 と答えた。
「あれだけデカいと、空飛んでても普通に攻撃されそうや。気ぃつけんと」
 鳳(gb3210)は基地と研究所の位置と怪獣の動きをチェックし、より安全に、より早く行き来できる航路を頭に叩き込んだ。

●空戦部隊
「ギガワーム程ではないにせよ、常識外の巨体だ。基地到達前に倒せる条件を整え、弱点を探りたいところだな」
 愛機雷電操縦しながらそう言ったのはホアキンである。
「エンゲージ。これより足止めに入る」
 怪獣は大きく息を吸ってから火炎を吐いてくるが、ホアキンは機体の回避能力を生かしてそれを回避する。
「こちらホアキン。敵は火炎の予備動作として息を吸う。警戒されたし」
『了解!』
 ソード(ga6675)は交戦を開始するとまずK−02ミサイルを至近距離から発射する。美麗な軌跡を描いてミサイルが飛翔する。
 250発ものミサイルは怪獣の全身にくまなく命中しダメージをあたえる。
 だが怪獣は大きく吼えると水素を吸収し傷を再生させる。そして鍵爪を振り上げ、振り下ろす。ソードはその攻撃を回避すると、鍵爪の予備動作を全員に知らせた。
 そして今度はミサイルをアンロックした状態で同じく至近距離からK−02ミサイルを発射する。それは美しい軌跡を描いて怪獣の腹に命中する。
 怪獣はまたしても大きく吼えると、傷を回復させた。
 火絵 楓(gb0095)はなぜかピンク色の鳥の着ぐるみを着てVKに乗っていた。
「コチラ空戦部隊の楓ちゃんです♪ コレより敵の注意をひきつけるためにウザウザアタックと開始したいと思うニャん♪」
 楓はそう宣言すると怪獣の周りをうろつきながらスラスターライフルをあちこちからはなった。怪獣はうっとうしそうに鍵爪を振り回しが当然届くはずもなく、業を煮やして火炎を吐いてくる。
「オーバーブースト!」
 楓はオーバーブーストで回避力を上昇させるとその攻撃をかわす。ぎりぎりのところを火炎が通り過ぎていく。
「ふー。あちちちち」
 熱はよけきれずコクピットの中で蒸し鶏になる楓。ポン酢をつけておいしく頂けます。
「巨大怪獣に戦闘機で立ち向かった場合、撃墜されるのが映画とかのお約束だけど、こっちはそう簡単に落ちる気はないわよ」
 澄野・絣(gb3855)はそう叫びながらマイクロブースターで急接近する。
 ドゥオーモを発射し、小型帯電粒子加速砲で牽制しつつ反撃に備えて回避機動をとる。鍵爪が振るわれそうになったところを、マイクロブースターで回避する。
 そうして空戦班が時間を稼いでいるところに陸戦班がやってきた。

●陸戦部隊
「どこかで見たような怪獣だな。だが‥‥デタラメな再生方法をしていやがる。タロスなら再生できなくなるまで殴ればいいのだが、こいつは‥‥!」
 須佐 武流(ga1461)がシラヌイで怪獣に接近する。
 レーザーカノンを打ちながら牽制し、ソードウィングを叩き込む。
「ギャオオオオオオオオオ!」
 怪獣はダメージに叫び、水素を吸収して再生する。
「ちっ! デタラメすぎる!」
 武流は毒を吐いた。
「でっけぇ‥‥こんなキメラ初めて見たぜ」
 ブレイズはそんなことも言いながらも怪獣に近づくと、スラスターライフルで足を狙って撃つ。バランスを崩して転ぶ怪獣。その巨体はブレイズの雷電を押しつぶそうとする。
「うわわ!」
 慌てて回避行動をとるブレイズ。幸いにも潰されることは避けたが、怪獣が倒れた振動でバランスを崩して、ブレイズ他陸戦組のKVが転倒する。三本の尻尾が地面を叩く。
「‥‥二足歩行巨大怪獣対自衛官‥‥どこかで聞いた様なシチュエーションですな、既視感と言いますか。‥‥撮影協力だと序盤の端役と言った所ですか。もっとも、只のやられ役で終る気は毛頭ありませんがね。足止めの役はキッチリ果たさせていただきます」
 綿貫 衛司(ga0056)はゼカリアを戦車形態で移動させると、倒れた怪獣の側面に回りこみ、そこから420mm砲で膝に集中攻撃を加える。だが怪獣の頑健さの前にゼカリアの攻撃力では手が出なかった。フォース・フィールドではじかれる。
「くっ。火力が足りませんか‥‥」
 しかし立ち上がろうとしていた怪獣の邪魔をすることはできた。再び倒れこむ怪獣。
「ジーラかー。なんか、色々とアウトー! みたいな気がするけど。まあ、好き勝手させるわけにはいかないから、がんばろうか」
 アーク・ウイング(gb4432)はそう呟くとシュルテンを操作する。衛司の隣に回りこむとスナイパーライフルD−02でジーラの足を狙う。
 皮膚が破れて骨が覗くが、ジーラは吼えるとダメージを回復させる。しかし、アーちゃんの妨害により立ち上がることには失敗した。そして足止めという目的を十分に果たしたのである。
「でっかい怪獣にたくさんのKVで挑むシチュエーションは燃えるねぃ‥‥ッ!」
 ゼンラー(gb8572)はヘルヘブン750を高速二輪モードにすると、怪獣に向かって突撃しスラスターライフルを放つ。やはり脚部に向かって。
 立ち上がっているところに足を狙われ、再び倒れる怪獣。こうして空陸両班が足止めをしている間に、コンテナ運搬班が怪獣の脇を通り過ぎていく。

●運搬部隊 往路
「清見、このルートが安全だ!」
「サンキュー、ジョーさん。じゃあ、みんな行こう」
 ジョーは骸龍で進路を偵察しつつ清見以下運搬班に安全なルートを知らせる。それを受けて全員がそのルートを進んでいく。
「良し、安全高度に到達。このままいこう!」
 ジーラは高度を捕って怪獣の攻撃範囲から逃れると、そのまま研究所へと飛んでいった。
「あかん、狙われとる。スモークディスチャージャー!」
 鳳はシュルテンから煙幕を発射すると怪獣の視界をさえぎる。怪獣は立ち上がり、目の前をうろちょろする運搬班に狙いを定めていたからだ。
「させん!」
 ホアキンが怪獣に接近しK−02ミサイルを発射する。弾幕は怪獣の注意を空戦部隊にひきつけることに成功し、運搬部隊は安全に怪獣のそばを通り過ぎることができるようになった。
「それにしても博士、なぜあのような装置を発明なさっていたのです?」
 番場論子(gb4628)博士を補助シートに載せながら博士との会話を続ける。
「それは‥‥今は言えん」
 しかし博士は何か秘密を抱えているのか、詳細を語ろうとしない。
「水素を剥奪するとなるとSESシステムにも障害が齎されると見受けますが、その辺はどうお考えですか?」
 論子のその言葉を聞いて、博士はびくっとなる。
「そ、そりゃ効果範囲内のKVも行動不能になるだろうな‥‥」
「そうですか。それでは慎重な運用が必要ですね」
「そうなるな‥‥」
 博士の言葉はどうにも歯切れが悪い。論子は不審に思いつつも博士と会話をしようと試みるが、返ってくるのはそっけない返事ばかりであった。
「あれだ、あれが研究所だ!」
 博士の言葉に論子がその方向に視線を転じると、そこには密林にカモフラージュされるようにして、小さな建物と大きな倉庫のある施設があった。
「ジーラ、清見、鳳、星之丞各機へ。研究所を発見した。データを送るので至急着陸されたし」
 論子はデータを送ると自身も研究所の空きスペース上空に待機し、着陸の順番を待った。論子のロジーナが着陸すると博士は即座に飛び降り、能力者一行を倉庫へと案内した。
「装置はあそこに四つに分解してあるやつがそれだ。諸君はそれをフォークリフトでコンテナに搭載し、更にそこからフォークリフトでKVの下まで運んでくれ。そして論子君のロジーナでKVにワイヤーを取り付ける。これが一番手っ取り早い方法だ」
『了解!』
 4人の能力者はフォークリフトを運転しハイパー・デストロイヤーのパーツをコンテナに入れる作業に取り掛かる。慣れない作業だがAIの補助もあって何とか装置を傷つけずにコンテナに運び込む。
 それからコンテナをリフトで持ち上げ、各自のKVの下まで運ぶと、人型に変形した論子のロジーナがワイヤーをKVに接続する。
「それにしてもホントでっかい装置やな。こんなん何のために発明しとったんやろ?」
 鳳がそう独り言を言うが、それに答える声はない。フォークリフトを倉庫に戻し、一行は再び愛機に乗り込む。
 垂直離陸機能でゆっくりと離陸し、装置を傷つけないようにゆっくりと速度を上げて飛行を開始した。

●運搬部隊 復路
「基地への帰還ルート、僕が骸龍で進路を偵察しつつ先導します‥‥高性能カメラ、感度良好」
 ジョーが偵察し清見が後を行く。小隊でなれた連携であったが、今回の場合もそのパターンで行くようだ。
「こちら清見。防空班、基地とキメラの位置情報を送ってくれ。出来るだけ安全な進入経路を探したい」
「了解。こちらソード。これよりデータを送る。参考にしてくれ」
「サンキュー。ルートを解析した。運搬班全機へ、このルートがもっとも安全に基地に帰れるルートだと思われる。このルートに沿って飛行されたし。オーバー」
『了解!』
 そして運搬班は清見が提示したルートに沿って飛行する。高度を上げ、怪獣に捕らえられないように警戒しながらゆっくりと移動する。
「行きましょう清見君、何としてもこいつを基地に届け、怪獣をやっつけましょう!」
「応! とにかくこの‥‥ハイパー・デストロイヤーを完成させてもらって希望をつなげないと」
 ジョーの掛け声に清見が答えると、ジーラが叫んだ。
「いけない、狙われてる。煙幕!」
 怪獣は上空に向かって火炎を吐く予備動作をしていた。そこでジーラは煙幕を発生させ、怪獣の視界を奪う。
 炎が飛んでくるが、運搬班は何とかそれを避けると、煙幕が残っている隙を狙って離脱を行うことにした。
「ジーラはん、感謝です」
 鳳が礼を言う。
「よし、今ね」
 論子も一般人の博士が耐えられる可能な範囲で加速をし、一機に離脱を図る。
「K−02ミサイルロック完了。お前の標的はこっちだ。発射!」
 ホアキンがK−02ミサイルを発射する。250発のミサイルが煙の中の怪獣に向かって飛んでいく。
 命中した手ごたえ。
 怪獣が大きく叫びダメージを回復させる。
 そして急に炎が飛んでくるが、ホアキンはとっさに回避行動をとる。
「ちぃっ!」
 何とかかわして炎の射程範囲外に離脱する。
「ホアキンから各機へ、煙幕が晴れ次第空陸両方からの連携攻撃を提案する。オーバー」
『了解!』
「再度ホアキンから各機へ、ライフルでやつの注意を頭上にひきつける。その隙に攻撃開始されたし。オーバー」
『了解!』
「ソードから各機へ、最初にレギオンバスターをぶっ放す。それをきっかけに連携を開始してくれ。オーバー」
『了解!』
 三度目の応答で作戦の概要が各人の頭の中で組みあがる。
 そして煙幕が晴れると、ホアキンが怪獣の上空から頭部に向けてライフルを発射する。ホアキンの狙い通り怪獣の注意はホアキンに集中する。
「いまだ!」
「兵装1、2、3発射準備完了。PRMをAモードで起動。マルチロックオン開始、ブースト作動」
 ソードの手が素早くコンソールを操作する。
「ロックオン、全て完了!」
 ロックオンを示すアイコンが画面上の各所に表示される。
「『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
 そして――1500発のK−02ミサイルが怪獣に向かって、壮大な飛翔パターンを描きながら飛来する。そして怪獣の表皮がはがれ筋肉がえぐれ骨がむき出しにされる。しかし、怪獣は吼えると水素を吸収してそれらのダメージ全てを回復させた。
「くそっ! なんてバケモンだ!」
 ソードが悪態をつくが、それでもそれは怪獣にとって大きな隙となった。
 即座に空陸両班から攻撃が飛ぶ。
「オーバーブースト! 変形! ガルーダ!! いっけええええええええええ!!」
 楓の変形したフェニックスから放たれる大剣ガルーダが怪獣の胸にヒットする。
 怪獣が炎を吐こうとしたその瞬間、
「マイクロブースター起動! オメガレイ発射!」
 絣のオメガレイが怪獣の口の中に吸い込まれる。
「これは痛いでしょ!」
 事実フォース・フィールドの発生しない体内に入ったオメガレイは怪獣に大ダメージを与えたようだった。
「陸戦組、右足を徹底して狙うぞ!」
 武流の掛け声に陸戦組が一斉に応答する。
「試作剣、雪村!」
 武流の剣が右の膝に決まる。
「これは、どうだあああああああああ!」
 それとタイミングを同じにしてブレイズのスレッジハンマーが右膝に命中する。
「よし、いまです!」
 さらに衛司の徹甲散弾が攻撃を終えて回避した2機が空けたスペースに決まる。
「行くよ!」
 そして同時にアーちゃんのスナイパーライフルD−02の弾が、
「このサイズならはずさない‥‥! ‥‥拙僧の後ろに道ができるのさっ!」
 ゼンラーのキャリバーチャージからのハイ・ディフェンダーが膝に切り込まれる。
 それらのタイミングを合わせた同時攻撃は怪獣に予期しない大きなダメージを与えた。苦しそうにうめく怪獣。だが、大声で吼えてこれらのダメージも瞬時に回復してしまう。
「なんて回復力なんでしょう‥‥!」
 衛司が呻く。ここまでのダメージを与えても瞬時に回復してしまうとは思いもよらなかった。
「アーちゃんはハイパー・デストロイヤーが完成するまで待つしかないと思うよ」
「そうですね‥‥」
 アーちゃんの呟きに衛司が同意する。何とかしてこの回復力をとめるしかない。そう思えた。
「とにかく足止めするしかない。回復しようが何だろうが、攻撃を続けるしかない!」
 ブレイズがそう言うとゼンラーが同意した。
「拙僧もそう思うぜぃ。とりあえず攻撃あるのみ」
「ならば行くしかないな。全機攻撃続行だ!」
 武流がそう言うと、全員が応じた。
「こちらジーラ。もうすぐ装置が基地につくから、あまり無茶するんじゃないわよ、ブレイズ」
「了解! 首を長くして待ってるぜ」
(「とはいっても、無茶をしてでも止めるしかないんだよなぁ‥‥」)
 ジーラの言葉にブレイズは心の中で首をすくめる。
「運搬班、早いところ、荷物を持って逃げてくれよ? 夜逃げは借金取りに見つかったら終わりだからな?」
「了解です!」
 武流の言葉にジョーが答える。実際のところ運搬部隊は怪獣を通り過ぎ、基地へと向かいつつあった。
「超伝導アクチュエーター起動! ソードウィング!!」
 武流が怪獣に接近してソードウィングを叩き込む。
 怪獣の注意が武流に向いた。
「今だ!」
 武流の合図と共にまたもや連携攻撃が発動される。
「メトロニウムステーク!」
 ブレイズがメトロニウムで出来た杭を怪獣の足に突き刺し地面と縫い合わせる。
「スレッジハンマー!」
 そしてハンマーでその杭を更に打ち込む。
「ギャアアアア!」
 怪獣は悲鳴を上げる。
「たとえ貫通しなくても足止めくらいは!」
 衛司が420mm大口径滑空砲を三連射する。3発の砲弾がほぼ同じ箇所に命中し、今度は怪獣の防御力を打ち破る。膝がぐずれ落ちる。
「今だ!」
 アーちゃんがスナイパーライフルD−02で膝を狙う。2連射。そして離脱。
 怪獣は更に膝を崩し、片足立ちになる。
「もう一発行くぜい!」
 そしてゼンラーのキャリバーチャージからのハイ・ディフェンダーが膝をえぐる。
 度重なるダメージの蓄積に、膝から下が切り離されて地面に落ち、怪獣は地面に倒れこんだ。
「ギャオオオオオオオオオオオ!」
 怪獣は悲鳴を上げ、それから水素を大きく吸い込む。膝から下に新しい足が生え、ゆっくりと立ち上がる。その目は能力者たちへの憎悪に燃えていた。
「まだまだ!」
 ホアキンは立ち上がった怪獣に突入すると95mm対空砲「エニセイ」で怪獣の頭部を攻撃すると離脱し、再突入して粒子加速砲を発射する行動を繰り返す。
 怪獣の頭部が半壊するが、それでも怪獣は生きていた。口からではなく皮膚から水素を吸収し、頭部を回復させる。
「やっかいな‥‥」
 ホアキンが呟く。頭部をやられても生きているというのは厄介だった。関節などの物理的な弱点はあっても生命体としての弱点がないことになるではないか!
「いや、そんなはずはない。とにかく攻めるだけだ‥‥」
「その通りだぜホアキンさんよ!」
 ソードはエニセイを怪獣に向かって6連射する。
「ウザウザアタック続行にゃん♪」
 楓は長距離砲グリフォンを二発発射し、即座に離脱する。
 害獣は蓄積したダメージを回復させるべく大声で吼えて水素を吸収するが、傷が塞がりきらなかった。
「やったよ! 回復力を上回るダメージを与えることに成功したよ」
 絣が覚醒して感情の起伏がない状態の中でも歓声を上げる。それほどこれは大きな戦果だった。
「いくよ!」
 UK−10AAEMを発射し離脱する。怪獣の注意が絣に向かう。さらにUK−10AAEMを発射して離脱し、怪獣の注意を完全に自分にひきつける。

●秘密兵器到着
「清見、到着だ!」
 ジョーが基地を目前にして清見に連絡を入れる。
「了解。慎重におろせよ。壊れ物を運んでるんだから」
「分かってる!」
 ジョーと清見がまず垂直着陸機能でゆっくりとコンテナを下ろし、それから自分も着陸する。
「まいどー。秘密兵器の到着や!」
 鳳がついで着陸する。
「はやく、早くしないと」
 ジーラはブレイズが心配であせっていた。それでも慎重に着陸をするとコンテナを切り離し、急いで防衛組のところへと飛んでいく。
 論子が着陸すると博士は飛び降りて、基地のメカニックに指示を出し始めた。
「博士、何か手伝うことがあったら手伝うで」
 鳳がそう言うと
「おお、ありがたい。ではこのコンテナをハンガーに運んでくれ。あそこなら設備もある」
 博士はそう答えた。
「了解!」
 鳳は論子と清見、ジョーにも手伝いを要請すると、コンテナをKVハンガーまで運んだ。そして運ばれたコンテナからパーツが取り出され、博士の支持のもと次第に組みあがっていく。
「博士!」
 レティシアの基地司令がやってきた。そして博士に装置の完成時間を聞く。
「10分から20分というところだ。それから、この装置は欠陥だらけの試作品。動いてもせいぜい1分がいいところだ。その時間以内にやつを倒さねばならん。しかもやつにはある秘密があってな‥‥」
「秘密?」
「そうだ‥‥」
 そう言って博士が語りだした秘密は非常に衝撃的なものであった。

続く