●リプレイ本文
●イントロ
「博士、急いだって。みんながまっとるんや!」
鳳(
gb3210)がハンガーで叫ぶ。ハイパーデストロイヤーの組み立てに10分かかると博士は言っていた。だが、KV戦は基本短期決戦である。装置が出来上がるまで弾薬やエネルギーが持つか鳳は心配だった。
「あわてるな。こいつはいつ爆発するかもわからん試作品の欠陥装置だ。組み立てには細心の注意が必要なのだ。どうしてもと急かすならKVで装置の連結を手伝え。そうすれば多少は早く終わるだろう」
「了解や!」
鳳はそういうとKVに乗り込み装置のパーツを運んだ。
●10分間の攻防その1
「キメラの心臓の正確な位置情報、各部位のサイズや形状を知りたい。データを送ってくれ」
諫早 清見(
ga4915)が基地に連絡を入れる。
返答はすぐさま帰ってきた。心臓の正確な位置はわからなかったが、これまでの観測のデータから3Dモデリング化された怪獣のデータが送られてきた。
そのデータを受け取った清見はバルカンで尻尾の攻撃範囲外から砲撃を仕掛ける。
「ジョー、合わせろ!」
「了解!」
流 星之丞(
ga1928)とともに怪獣の足関節を狙って攻撃する。
ジョーこと星之丞はスナイパーライフル「稲妻」での攻撃だった。
その攻撃は脚部の間接に傷を負わせ、怪獣のバランスを崩す。
そして戦闘を続ける合間にもジョーは高性能カメラを使って心臓や頭部、副脳の位置を調べ、そのデータを各機に送る。
「各機に告げる。どうせ装置が動くまでこいつにダメージなんてねぇんだ。無駄弾撃つんじゃねぇぞ? 勝負は‥‥装置が動いてからの1分だ、わかったな!?」
『了解!』
須佐 武流(
ga1461)がMSIバルカンRで怪獣を攻撃しながら味方に告げる。
確かにどれだけダメージを与えても回復してしまう以上、ハイパー・デストロイヤーが発動するまでは攻撃は無意味に近いと言って良い。精々足止めに牽制を行う程度で十分だと武流は考えていた。
「あのデカブツを倒すことが出来る時間はたった1分、か。本当に漫画かアニメの世界だね。けどまぁ‥‥ボクたちならきっと出来る!」
ジーラ(
ga0077)はそう叫ぶと、UK‐10AAEMで空から自分と同じ名前の怪獣を狙い撃つ。
だが当たり所が悪く、装甲に阻まれたその攻撃は怪獣にダメージを与えられない。
「装置完成まで10分程度? それまでこいつを抑えてれば、倒せる可能性が出てくるってわけか。なら、やってやるさ。こいつだけは、何が何でも絶対仕留めなきゃいけないんだ!」
そう言ってブレイズ・カーディナル(
ga1851)はハイ・ディフェンダーで怪獣の足に切りかかる。
それはジョーと清見がダメージを与えた足とは反対の足にヒットし、怪獣は完全にバランスを崩して倒れる。
ずしーん、という大きな地響きとともに怪獣は倒れこみ、立ち上がろうと暴れてもがく。
「今だ!」
綿貫 衛司(
ga0056)がジョーから送られてきたデータを元に倒れて晒されている副脳と思しき腫瘍めがけて420mm大口径滑腔砲を放つ。
2発放って衛司は場所を移動する。
その2発は副脳の周りの装甲を露出させ、副脳の一部を破壊することに成功した。
「ぎゃおおおおおおおおおお!」
予想外のダメージに怪獣は水素を吸収し傷を回復する。そして立ち上がると目標を探す。そしてそれは空中で「夏に五月蠅い蚊のように舞い、蚊のように刺す」という戦闘スタイルを自認している火絵 楓(
gb0095)に定まった。
「うーざうざうざうざうざうざ」
うざうざアタックをかけ続ける楓に怪獣もイラついたのだろう。口を大きく開けて息を吸い込む。すると口の中で炎がちらちらと燃え上がり、息を吐き出すとともに火炎が放射される。
が、圧倒的な機動力で楓はそれを回避すると、「うにゅら〜ウザイかろ〜ウザイだろ〜ウザすぎるだろ〜」といいながら怪獣の目の前でちょろちょろ飛び周り、スラスターライフルで攻撃を仕掛ける。
脳を狙ったその攻撃は、頭の皮膚を破いた。
橘川 海(
gb4179)はスナイパーライフルD−02で怪獣を狙撃すると、リロードして移動、そしてまた射撃を繰り返す。
「絶対に、守ってみせる!」
海はそう叫びながら戦っていた。機盾「アイギス」を構えながら戦う海は、さながら戦の女神アテネであった。
「ジーラか。今でもいろいろとアウトーと思う敵だけど、放っておくととんでもない被害を出すことになるから、何としてでもやっつけないとね」
アーちゃんことアーク・ウイング(
gb4432)は澄野・絣(
gb3855)と連携してジーラの脚に攻撃を仕掛けていた。
「そこっ!」
アーちゃんがスナイパーライフルD−02で射撃を行うと、絣は「行かせないわよ?」と言いながらレーザーカノンをはなつ。
「敵脚部にダメージ発生! 地上班はそのまま連携攻撃願います」
そしてクラウディア・マリウス(
ga6559)は常に怪獣の動きや状況を機体搭載カメラにて怪獣撮影しモニタリングしながら損傷データなどを重ね合わせ、各部ダメージ蓄積度合いを予測計算、味方に随時伝えるという行動をとっていた。
その一方で怪獣が空戦隊に攻撃するそぶりを見せたら即座に頭を攻撃し気をそらすということもしていた。
「はわ、本当に回復しちゃう‥‥」
回復した怪獣を見てクラウディアは驚きの声を上げる。それでも自分のなすべきことは忘れない。基地に通信を入れ博士に質問する。
「忙しいとこゴメンなさいっ。あのね、ジーラの補助心臓って正確に左右対称で良いのかな?」
博士は作業をしながら「ああ、そのはずだ」と答える。
「ありがとっ。作業がんばってください」
「ああ、任せておれ」
博士はそう言って通信を切る。
クラウディアはなおも散発的に頭部を攻撃しながらモニタリングを継続していた。
「もうすぐ、もうすぐハイパーデストロイヤーが完成するはずです。それまで皆さんがんばりましょう」
番場論子(
gb4628)は皆を励ましながら、怪獣の死角になる側面部より空中からツングースカで砲撃を加える。
その攻撃はかすかに怪獣の皮膚にかすり傷を入れるのみにとどまったが、横から攻撃されたことで怪獣は向きを変え、基地から離れる。論子の目的は達成されているといえた。
「博士も、大変な過去を背負っていたようだ。少しは楽にしてあげたいよねぃ」
ゼンラー(
gb8572)はそんなことを呟きながら高速二輪モードで怪獣に突撃すると、ハイディフェンダーで怪獣の足を狙う。
だが、その攻撃も皮膚にかすり傷を与えたのみ。
「まあ、足止めだしこんなものだねぃ」
ゼンラーはそれで良しとし離脱する。
ソード(
ga6675)はエニセイで射程範囲ぎりぎりから攻撃を行う。目を狙い攻撃するが若干ずれて額に命中する。
怪獣の額が割れてそこから血が流れ出る。
「ソードさん、射角をもう少し‥‥、そう、そうです」
クラウディアがモニタリングの結果からソードに最適な射撃角度を伝え、ソードは再度目を狙って攻撃する。
その攻撃は怪獣の片目をつぶし、怪獣は痛みから絶叫し、水素を吸って傷を回復させる。
「ちっ! すぐに回復するんじゃ意味がないな!!」
ソードはそう言うと回避行動に移った。
●インターミッション1
「博士、まだか!?」
鳳が戦況をモニターしながら尋ねる。
味方はほぼ順調に怪獣を足止めしていたが際限なく回復する怪獣に焦りを隠しきれない。
「慌てるな若造! この装置は繊細なんだ。きっちりとやらんと一分どころか十秒も持たんぞ」
「そうは言うても!」
「もっと仲間を信頼しろ。あの程度でやられるほどやわな連中じゃないだろう? ちがうか? ん?」
「う‥‥確かに、そうやけど」
博士の言葉に鳳がつまると、博士は得意げに「だったら信頼してまっとれ」と言った。
博士はせわしなく動き回りながら鳳に話しかけてくる。
「若いの、世の中大切なのは信じることだ。その人物の能力を信じ、任せる。その人物の人柄を信じ、任せる。そうして人と人の絆は出来上がっていく。絆の力を信じろ。そうすれば更により多くの絆を呼び込むことができる。お前さんと今戦っている傭兵の中にははじめてこの仕事で会った奴もいるのかもしれない。それでも、こうして肩を並べて戦っている以上は戦友だ。戦友は、この地獄のような世界で何よりも信頼できる絆だ。バグアという名の横暴な運命に反逆できる限られた力だ。信じろ、仲間を。そして何より自分自身を。ついでに、このわしも信じてくれれば言うことはない」
「結局それかい!」
鳳は突っ込みながらも、心が軽く、そして強くなるのを感じた。
「まあええで、おっちゃんも信じたる。みんなも信じたる。そして自分も信じたる」
「その意気込みだ。では、作業を続ける。若いの、覚醒して作業を手伝え。覚醒すれば器用さもあがるんだろう?」
「ああ、わかった」
●10分間の攻防その2
熾烈な戦いは続く。
さまざまな角度から繰り出される攻撃に怪獣は完全に目標を見失い、基地を狙うと言うことはなくなっていた。足止めという目的は正常に果たされているといってよい。
だが、10分と言う時間は長い。通常の戦闘ならばすでに決着がついている時間だ。能力者たちの精神の疲弊は激しかった。
「ジョー、今度は左右に分かれよう。奴の目標を分散させるんだ!」
「わかった。じゃあ、仕掛ける!」
清見とジョーは二手に分かれると同時に、それぞれ左右の足を狙って射撃を行う。清見の攻撃はフォース・フィールドに阻まれたが、ジョーの攻撃はフォース・フィールドを貫通して怪獣の足にダメージを与える。とはいえバランスを崩すほどでもない。だが、それでも怪獣の意識を分散させると言う点においては成功していると言える。
「装置の到着が待ち遠しいな‥‥」
武流はそうつぶやきながらバルカンによる射撃を行う。両目めがけて連続してバルカンを発射し、怪獣の目をつぶす。
「いくら再生できても、しばらくは感覚を封じれるだろう」
その言葉のとおり目をつぶされた怪獣は、パニックに陥り転倒する。そしてその後水素を吸収してつぶされた目を修復したところにブレイズと衛司の連携攻撃が入った。
「綿貫さん、行きますよ!」
「ええ、了解です!」
衛司の援護射撃を受けながら、ブレイズが倒れた怪獣のかかとに突撃する。ハイ・ディフェンダーで人間で言うアキレス腱に相当する部分を切り裂く。その攻撃は怪獣にも存在したアキレス腱を破壊し、怪獣が立ち上がるのを妨げる。
暴れる尻尾がブレイズを襲うが、紙一重で回避するとそのまま離脱する。
「海、今よ!」
絣が海に連携のタイミングを指示する。
「わかった。アーちゃん、クラウちゃん、ゼンラーさん、お願い」
「おーけー。今のうちに足をつぶしちゃおうね。この、アウトーなやつの」
「了解。海ちゃん、かすりん、がんばるね」
「任せてだねぃ」
絣、海、アーちゃん、クラウディアのKVから一斉に射撃が行われる中、ゼンラーがもう片方の足に突撃する。
「ハイパー・デストロイヤーが起動したら使えないからねぃ! 出し納めのキャバリーチャージ‥‥! ぶちぬくよぅ‥‥っ!」
ハイ・ディフェンダーを手に突撃するナナハン。ゼンラーの攻撃はクラウディアのモニタリングから伝えられたデータにしたがって、もう片方の足のアキレス腱を切断する。
射撃の効果もあって怪獣の足は骨まで露出するほどのダメージを受けた。だが、怪獣は水素を吸収して傷ついた足を再生させる。
だが回復して立ち上がった怪獣の前には、武流、ジーラと楓と論子、ソードによる一斉射撃が待っていた。
「喰らえ!」
「行くよ!」
「うにょら〜、ウザイぞウザイぞ〜」
「手加減はしませんよ!」
「行くぞ!」
頭部に射撃が集中し、頭蓋骨が破壊され、脳がダメージを受ける。それによって怪獣は一時的に行動を停止し、しばらくしてから補助脳からの指令によって脳と頭部を再生させる。
「うーん。攻撃してもきりがないなあ。そろそろこいつの再生能力のほうがウザイ様に思えてきたー」
楓がぼやいたその頃、ハイパー・デストロイヤーは完成を見ようとしていた。
●完成
「よし、そこをつなげて‥‥よし、完成だ!」
「やったなおっちゃん!」
装置の完成に歓声が上がる。
「よし、若いの。KVでこいつをハンガーの外に出せ。そしたら、お前の戦友の援護に向かう」
「OK。任せたって」
鳳はシュルテンに乗り込み言われたとおりにすると、一度降りてからハイパー・デストロイヤーをシュルテンにくくりつけ、博士を補助シートに載せてゆっくりと離陸した。
「こちら鳳。みんな、待たせたな。ハイデス完成や。今から宅配するから、待っといてや」
「了解した。待っているぞ」
武流が代表して返事をする。
「みんな、攻撃をもっと激しく! やつの目を鳳からそらすよ!」
ジーラがそう言うと、皆が了解と返答し、更なる攻撃が怪獣に叩き込まれる。
「ジョー、右足に集中攻撃だ。やつをこかすぞ」
「わかった。タイミングを合わせる‥‥いまだ!」
バルカンと稲妻が右足関節を狙って叩き込まれる。
吸い込まれるように命中したそれは怪獣の関節を砕き、横方向に転倒させる。
「空戦班、やつが立ち上がったら一斉攻撃だ。今はまだ待機を」
『了解!』
武流の言葉に空戦班のメンバーが答える。そして陸戦班の連携攻撃が継続された。
「ブレイズさん、こちらも右足を狙いましょう。再生を少しでも遅らせるんです」
「ああ! こいつが暴れだしたら多くの被害が出ることになる、そんなことにさせないためにも‥‥今ここで必ず倒すんだ! 何より‥‥その名前が一番許せない! その名前は、俺の好きなやつの名前なんだ!」
ブレイズは戦うことに熱くなってテンション上がりすぎ、本人が近くに居るのを完全に忘れていた。
「‥‥ってブレイズ、何言ってるの!? う、うぅ‥‥い、今は集中、集中しなきゃ!」
ジーラがKVの中で赤面しながらつぶやく。
衛司の砲撃とブレイズの斬撃が砕けた関節をさらに破壊させる。怪獣は苦痛にうめき大きな悲鳴を上げる。
そして‥‥
「みんな、待たせたな!」
鳳のシュルテンが到着した。
「博士、着陸するから、注意してや」
「わかった」
そして鳳は絣とクラウディアの援護射撃を受けながらゆっくりと着陸し、博士とともに一旦シュルテンから降りる。
それからワイヤーを切断して博士が装置のスタンバイの体勢に入ると、再びシュルテンに搭乗して人型に変形させ、装置を庇うような位置取りに立たせる。そして無線で装置の発動の連絡を入れ、全機がハイパー・デストロイヤーの効果圏内から退避するのを確認した後、シュルテンから飛び降りて博士に合図を送る。そして、ハイパー・デストロイヤーが怪獣が足の傷を回復させて立ち上がるのとほぼ同時に発動された。
●発動
「よし、脳を狙うぞ!」
そう言って武流は8式螺旋弾頭ミサイルを発射する。
「ボクは補助脳を狙うよ! PRMシステム全練力消費、発動。DR−2荷電粒子砲発射!」
荷電粒子砲を三連射すると、補助脳のある脊椎へそのエネルギーは吸い込まれるように命中する。
「うにょ? アレがハイデスの威力かにゃ〜迂闊に近付いたらダメって言っても難しいにょだ〜」
そう言いながらオーバーブーストを発動させるとスラスターライフルで脳への攻撃に参加する。
「まだまだ逝くよぉ〜〜〜〜〜〜ウザウザアタック再開なのら〜」
「ストームブリンガー起動。ロケットランチャー発射!」
論子は奉天製ロケット弾ランチャーを脳にめがけて4発発射する。
「兵装1、2、3、4発射準備完了。PRMをAモードで起動。マルチロックオン開始、ブースト作動」
「ロックオン、全て完了!」
「『レギオンバスター』、――――発射ッ!!」
2千発のミサイルが怪獣の胸部に命中する。
頭部はえぐれて脳漿が飛び出し、補助脳も完全に破壊される。胸部が骨が折れて左右の心臓がむき出しになった。
それでもまだ、強靭な生命力の怪獣は生きていた。
「海、博士と鳳を崩落から守って!」
怪獣の足元、荒れ狂うハイパー・デストロイヤーの発生するエネルギーの渦の中で、怪獣の破片が博士と鳳に向かって落下しようとしていた。
「おっちゃん、白額虎の影に! 白額虎。ちと辛いかも知れへんけど、皆のためにも気張ってな」
鳳は博士を連れて白額虎と名づけたシュルテンの陰に隠れる。
「わかったよ、絣さんっ! 新型複合式ミサイル誘導システム、起動っ!」
海はロングボウのシステムを起動させると、落下してくる破片に向かって狙いを定めた。
「皆が、私が、笑顔でいられるように‥‥ロングボウ、お願いっ!」
90発のミサイルが複雑な起動を描いて落下物を破壊する。
「打ち落とせええええええええええ!」
海が叫ぶ。
ミサイルは違うことなく標的を貫き、粉々に砕く。
「クラウ、破壊部位のモニタリングお願い。心臓のデータを皆に!」
「うん、かすりん!」
クラウディアは左右の心臓のデータを陸戦班の全機に送ると、ホールディングミサイルを発射する。
「マイクロブースター、アリスシステム起動! オメガレイ、発射!」
それにあわせて絣がオメガレイを連射する。左右の心臓に一発ずつ。
「変形、垂直離陸システム作動! RPMシステム起動! 8式螺旋弾頭ミサイル発射!」
アーちゃんが変形、離陸し心臓に向けてミサイルを発射する。
「怪獣さんよぅ。回復できなくて焦るのは分かる‥‥でも、それが生き物のアタリマエってやつだよぅ。覚えとくと良い。短い間だけどねぃ」
ゼンラーが哀れみの視線を怪獣に向けながら、スラスターライフルを左右の心臓に連射する。
それらの連続連携攻撃は左右の心臓を完全に破壊し、不死身に思われた怪獣の生命活動を停止させた。
全員が攻撃を終えてから10秒後、巨大怪獣はゆっくりとその巨体を倒していく。
「ロングボウ!」
海がアイギスを構えながらハイパー・デストロイヤーの動作圏内に入る。動作が停止するがそれは鳳のシュルテンをかばう位置であった。
「赤い外套は騎士の誓い。円卓の志は、この胸の中に。博士と鳳さんは絶対に守る!」
動作を停止したロングボウの中で、海はそう叫んでいた。
幸いにも怪獣はシュルテンとロングボウから外れた位置に倒れた。
「残骸すら残すな! 地上班、全機集中攻撃だ!」
清美が叫ぶ。
「了解! 人々の平和を守る為にも! 打ち抜け稲妻!」
ジョーが吼える。
「兵士ってのは、己の身を犠牲にしてでも民を守るものです!」
衛司が徹甲散弾で怪獣を撃ち抜く。
「滅びろ怪獣!」
ブレイズがスラスターライフルを連射する。
「クラウ、ゼンラー、海には当てないでね!」
絣がそういいながらオメガレイを連続で撃つ。
「もちろん!」
「とうぜんだねぃ!」
ホールディングミサイルとスラスターライフルの銃弾が怪獣の体に吸い込まれる。
そしてフォース・フィールドの反応がないままそれらの攻撃は怪獣の死体を破壊し、完全に再生不可能なまでに破壊しつくす。そして30秒後、ハイパー・デストロイヤーが停止しゆっくりと崩壊した。
「敵、生命反応なし‥‥完全に倒したよ」
クラウディアが通信を通して全員に告げる。
歓声。
「やったな、おっちゃん!」
鳳が博士とハイタッチを決める。
「ああ‥‥」
博士は脱力したように座り込む。
『諸君、ご苦労だった。おかげでレティシアは守られた。全機、基地に帰還せよ。酒とジュースを用意して待っている』
『了解!』
●戦士の帰還後
「なあ、アレみたいなのがまた出てこないとは限らんし、今度はもっと機械も効果範囲も小さくして、接近戦もできるようにできんかな。例えば受信機を撃ち込んだ相手だけに効果与える、みたいにや」
鳳が基地で博士にそう言うと、博士は頭を振った。
「だめだ。KVの起動やエミタのことを考えれば、あれがバグアに悪用されたときに恐ろしい」
博士の気持ちを代弁するかのように清見がそう言う。
「そうだな‥‥」
博士がそれに頷く。
「うーん。一時はどうなるかと思ったけど、何とか倒せたね。しかし、あの手の敵は再び現れそうな気がするなー‥‥何というかお約束的に」
アーちゃんがそう言うと、衛司が
「そうですね。まあ、映画ならそうでしょうが、いくらバグアでもあんなキメラを何匹も作っては来ないとは思いますがね」
と答える。
「博士、長いことおつかれさん。やりきったねぃ。肩の荷は、下りたかい?」
「ああ、なんとかな。お前達もよくやってくれた。感謝する」
「なに、これも仕事だから、当然だねぃ」
ゼンラーは博士をねぎらうと、一気に酒を煽った。
「ぷっはー。一仕事のあとの一杯は最高だねぃ」
「そうだにゃー。でも酒も良いけどおなかがすいたのらー。ラーメンたべたひ」
酒のあとはラーメン。これは鉄板であろう。
「ぇっと、ブレイズ‥‥さっき言ってたことだけど‥‥ぁ、忘れてるならいいから、うん」
ジーラはブレイズとそんなやり取りをした後ぼそっと馬鹿と呟いた。乙女心は複雑である。
そして祝宴が続く中、戦士達は戦いを終えてひと時の安らぎを満喫しているのだった‥‥
END